理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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九十二話 天使と戯れる

 世界樹前広場へとつながる通りにて、いまだに防衛線を張りながら参加者たちが戦っていた。

 

 先ほどカズヤと法によりロボ工場は破壊されたが、それでもロボの数は大量。

なかなか数を減らせずにいたのだった。

 

 

「くそー! こっちは人数が減ってるっつーのに、敵が減らねぇぞ!?」

 

「一体どうなってるんだろうね……」

 

 

 だと言うのに敵の数は未だ減らず。

幾度と無く襲い掛かる敵に、誰もが疲れを見せ始めていた。

 

 刃牙もこの敵が減らぬ現状に、困惑を隠せていなかった。

このまま味方だけが減り続ければ、こちらが潰されることは必然だからだ。

 

 その横でアキラも、どうして敵が減らぬのかと困った表情で話していた。

 

 

「またあの攻撃が来るぞ! 気をつけろよ!!」

 

「は、はい!」

 

「わかってる!」

 

 

 また、目の前のロボ軍団は銃を手に取り、こちらに狙いを定めてきていた。

それはつまり、あの強制時間跳躍弾を使用するということを意味する。

あれを受ければたちまち失格、3時間後へと転送されてしまう。

 

 それだけは、なんとしてでも避けなければならない事態だ。

故に刃牙は、亜子やアキラに注意を促し、自分も回避行動を取ろうと構えていた。

 

 刃牙の注意を聞き、二人はしっかりと返事を返した。

二人は刃牙から説明を受け、あの弾に命中すれば消えてしまうことを理解していたからだ。

それに、アレにあたれば失格となる。それは二人の望む結果ではない。

 

 しかし、敵は目の前にロボ軍団だけではなかった。

なんと別の方向からも、ロボ軍団が攻めてきたのだ。

 

 そして、そのロボ軍団は無慈悲にも、マシンガンなどで強制時間跳躍弾を撃ち放ち、そのひとつが刃牙へと向かっていったのだった。

 

 

「あ、危ない!!」

 

「何ぃぃ!?」

 

 

 迫り来る弾丸に、何とか回避しようとする刃牙。

その刃牙に、危険を知らせようと必死で叫ぶアキラ。

 

 それでも、すでに遅かった。

もはや避けようの無い弾丸は、無常にも刃牙へと刻一刻と接近していくのだった。

 

 誰もが刃牙がやられたと思った。思っていた。

 

 だが、そこへ一人の男性が、バイクにまたがり猛スピードで駆けてきた。

リーゼントの男が、バイクを操りやってきたのだった。

 

 

「”クレイジー・ダイヤモンド”!! ドララララララァッ!!」

 

「こ、こいつぁ……!?」

 

 

 なんということだろうか、リーゼントの男は状助だった。

バイクを直進させながらも、弾丸と刃牙たちの間を通り抜けるように突っ走る。

 

 ただ突っ走っている訳ではない。

すさまじい速度でバイクを走らせつつ、すさまじい拳のラッシュを地面へとぶち込んでいた。

 

 その地面は破壊され、破片が粉々になりながらも散らばっていく。

その破片はクレイジー・ダイヤモンドの能力により、修復されて壁となっていったのだ。

 

 そう、状助は地面のブロックを壁のように修復し、その弾丸を全て防ぎきったのである。

 

 その光景に、誰もが驚いていた。

刃牙もその光景に驚きを隠しては居なかったが、もっとも驚いたのは状助の姿とスタンドだった。

 

 

「大丈夫っスか? えーっと、()()()()()さん?」

 

()()……()()……だと?」

 

「あの人はたしか……」

 

 

 状助もまたバイクを刃牙の近くで止め、その姿に驚いていた。

刃牙は状助の言葉にデジャブを感じながらも、やはり状助の姿に驚くばかりだった。

刃牙は、初めて自分以外のスタンド使いに出会ったことに、そしてその能力がクレイジー・ダイヤモンドだったことに驚いていたのだ。

 

 さらにそれが敵でなくて良かったと思っていた。

敵だったならば、クレイジー・ダイヤモンドほど強敵は居ないからだ。

 

 また、亜子は状助が三郎の友人だったことを思い出し、驚きの表情をする二人の下へと駆け寄ったのだった。

 

 

「状助さん、どうも」

 

「あ、どうもっス。助太刀にまいりました」

 

「あれ、亜子の知り合い?」

 

 

 亜子は状助が三郎の友人だと紹介されていたので、とりあえず挨拶すれば、状助も同じだったので、ペコペコと挨拶しつつ、助けに来たと話してす。

 

 その光景に、アキラは亜子がこのリーゼントたる状助の知り合いなのかと、不思議に思っていた。

 

 確かに状助はたまに見かける男子であり、リーゼントという印象深い髪型をしている。

なのでアキラも状助のことは名は知らないが、姿だけは見覚えがあった。

 

 ただ、見覚えがあるというだけの存在だったので、亜子が知り合いのように接していることが不思議だったのだ。

 

 

「あー、この人三郎さんの友達なんやって」

 

「そういうコトか」

 

 

 アキラのその質問に、亜子は状助が三郎の友人であると答えた。

そう言われたアキラは、なるほどと納得した様子を見せていた。

 

 確かに亜子と付き合っている三郎を知るアキラは、その友人ならば知り合いでもおかしくは無いと思ったのである。

 

 

「んで、三郎のヤツはどこに?」

 

「三郎さんはさっきウチをかばって……」

 

「何……!? くそー、遅かったかぁ……」

 

 

 そこで状助は今も姿を見せぬ三郎を気にかけていた。

一体どこへ行ってしまったのだろうか。そのことを亜子へと聞いてみたのだ。

すると三郎は、亜子を庇って強制時間跳躍弾の餌食になっていると言う。

 

 なんということだ、すでに遅かった。

状助はそのことに、悔しい気持ちを味わっていた。

 

 だが、この攻撃で命を落とすことは無い。

とりあえず気を取り直し、この場の敵を倒そうと考えたのだった。

 

 

「アンタももしかして()()()側か?」

 

「そうなるっスねぇ~。まあ、自己紹介は後にして、ここいらのロボを倒しますか!」

 

「それもそうだな……!」

 

 

 そんな悔しがる状助に、刃牙が話しかけてきた。

それは自分と同じ転生者なのだろうかと言う質問だった。

また、『こっち』には味方側かという意味もこめられていた。

 

 状助はそれを察しそうだとすぐに答え、自己紹介は後にして周りに集まるロボ軍団を倒そうと、強気で刃牙へ言ったのだ。

 

 刃牙も周りを見て、確かにそれが一番だと思い、その言葉を肯定していたのだった。

 

 

「と、その前に……”ドラァ”!!」

 

「おう? おお、助かるぜ」

 

「これで万全ッスかね? んじゃ行きますかァーッ!!」

 

 

 だが、その前にと状助は、突如刃牙へとクレイジー・ダイヤモンドの拳を振り上げた。

その拳は優しく刃牙へと突き刺さると、刃牙の怪我が直っていくではないか。

 

 そう、状助はあちらこちらに巻いてある包帯を見て、刃牙が怪我をしていることに気がついたのだ。

それを治して万全な状態へと戻すことが、先決だと思ったのである。

 

 刃牙は今の状助の行動に感謝し、いやはや便利なもんだと思いながら礼を述べていた。

そして、再び両者はロボ軍団へと視線を移し、状助の号令と共にそのロボ軍団へと突撃して行ったのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 ネギたちを先に送り出し、メガネことマルクと対峙する楓と真名。

もはや周りは暗くなり、夕日はほとんど落ちてきていた。

 

 そんな中、すでに壮絶な戦闘が繰り広げられており、楓はミカエルを、真名はマルク本人を相手にしていた。

 

 

「くっ! 悪しきものに神の裁きを!!」

 

「悪しきものというのは、ソチラではないのか?」

 

「何をほざくか!! 汚らわしい魔族と人のハーフめ!!」

 

 

 マルクはまるで神にでもなったかのように、相手にする真名を裁くと豪語していた。

 

 一体何様のつもりだろうか。

そんなマルクに呆れた気持ちで、マルクこそが悪なのではと、真名はすかさずツッコミを入れていた。

 

 確かに姿は中学生に見えぬ真名だが、行いそのものは中学生を襲うメガネの成人男性の図である。

悪と言われれば誰もがマルクを指すだろう。

 

 しかし、その言葉はマルクにとって、禁句同然の言葉だった。

マルクは突然沸騰したヤカンのように煙を噴出し、怒りのままに真名を罵倒したのである。

 

 

 そこでマルクが罵倒の叫びを言い終えた後、真名は両手に拳銃を握り締めてマルクへと距離を縮め、近距離での戦いに挑んだ。

 

 マルクも同じく両手に拳銃を握り、真名と銃と銃、腕と腕をぶつけ、真名の攻撃を防いでいた。

 

 しなやかな動きで無駄の無い攻撃。

その銃と腕のぶつかり合いはまるで芸術。

すさまじい速度で繰り出される真名の腕と銃は、全てマルクの腕と銃により防がれていく。

 

 さらにマルクと真名の攻撃の速度が徐々に増していき、すさまじいゼロ距離での攻防となっていたのだ。

 

 さて、真名は何故マルクに接近戦を挑んだのだろうか。

その答えは強制時間跳躍弾にある。

 

 強制時間跳躍弾は、マルクも先ほど使っていた弾丸だ。

この弾丸に触れれば、その着弾地点を中心に黒い渦が発生し、呑み込んだ対象を3時間後に飛ばすというものだ。

 

 だが、それは呑み込む対象を選べないということでもある。

それこそが強制時間跳躍弾の欠点だ。

 

 故に真名はマルクへ、銃を握っての格闘を選んだ。

至近距離で強制時間跳躍弾を使用すれば、使用者であるマルクすらも巻き込まれてしまうからだ。

 

 マルクもそれを理解していたので、何とか距離を取りたかった。

されど、真名はそれを許さない。巧みな動きでマルクを翻弄し、しっかりと密着して攻撃を繰り出していたのだ。

 

 

「ひどい言い方だな。傷ついたぞ」

 

「黙れ! そんな顔で言っても説得力などない!」

 

 

 いやはやそのようなことまで知っていたとは。

真名はその部分に素直に驚きつつも、フッと笑いをこぼしていた。

別にその程度の言葉など、まるで意にも介していなかった。

 

 その表情にもマルクは心底頭に来たようで、さらに叫び声をあげていた。

本当に何が気に入らないのやら。真名は本気で呆れてきていたのだった。

 

 

「このデカブツ、なかなかダメージが入らないでござる……!!」

 

「当たり前だ! 虫けらどもめ! 我が持霊は大天使ミカエルなのだからな!!」

 

 

 楓は影分身を使いながら、ミカエルを迎え撃っていた。

影分身による牽制と気で強化した風魔手裏剣での連携攻撃。

一方的にミカエルを叩きのめす様は、楓がミカエルを圧倒しているように見えていた。

 

 が、楓はミカエルにダメージを与えることがなかなか出来ず、戸惑うばかりだ。

そのため楓もミカエルもイーブンな状況であり、むしろダメージが与えられていない楓の方が不利な状況だったのである。

 

 それを理解していた楓は、内心多少なりに焦りを感じていた。

ただ、ミカエルの攻撃は単調なので、ハッキリ言えば簡単に攻撃が避けれる。

こちらがミスをしない限り、絶対に負ける事も無い。

そう楓は考えていた。

 

 それでもなんという泥沼な戦いだろうか、こうなれば真名が本体であるメガネを倒すのを待ち、ひたすら耐えるしかないと思い始めていたのだった。

 

 しかし、そんな楓の心境など知ってか知らずか、マルクは自分の持霊が大天使であるミカエルだと、非常に偉そうに暴露していた。

自分の持霊たるミカエルが、そこらの女子中学生に負けるわけがないと、高をくくっているのだ。

 

 確かに間違ってはいないが、ミカエルが倒されないのは相性の問題も存在した。

 

 楓も真名もO.S(オーバーソウル)を破壊する術があまりない。

そのためミカエルに苦戦を強いられているというのが現状だった。

 

 そんなこともあまりわかっていないのか、はたまたわかってて言っているのかはわからないが、とにかくマルクは自分が有利だと信じて疑っていなかった。

 

 

「アレが噂に名高い大天使様なのか。思っていたものよりも、随分と機械的だな」

 

「ほう、私のO.S(オーバーソウル)が見えるのか」

 

「まあね、”眼”はいいほうなんでね」

 

 

 真名は楓が相手している機械的なナニカが、あの有名な大天使だと聞いて、自分が思っていたものと随分違うものだな、と考えていた。

実際は天使の破片を車に与えて作られた機動天使なので、実際の姿とは多少違うかもしれない。

 

 マルクはそう言う真名が、自分のO.S(オーバーソウル)をしっかりと目視していることに気がついた。

それを聞くと真名は、眼がいい方だと話した。

 

 真名は左目に魔眼を宿している。

つまり、その言葉はそれを意味するものだった。

 

 そして普段は使ってないが、ここぞという時には使っている。今がその時だった。

それにより霊などといったものを見ることが出来るのだ。

 

 

「ならば私の相手でなく、私が操るミカエルの相手をすればよかろう!」

 

「私の得物では不利なんでね。それに、あの程度ならば楓一人で十分さ」

 

「拙者には、確かに見づらい相手でござるが、動きが単調ゆえに問題なく相手出来るでござる」

 

「何だと!? なめたことを!!」

 

 

 そう、O.S(オーバーソウル)が見えるならば、わざわざこちらと戦わずに二人でミカエルと戦えばいい。

マルクはそう感じたので、怒りを込めてそう言い放った。

 

 真名もそうしたい部分もあったが、武器が銃器ではミカエルの相手は相当不利だと理解していた。

 

 単純な打撃などはO.S(オーバーソウル)には通用しない。

それを察していたのである。

 

 それだけではない。

ミカエルが強力な手札だろうが、楓一人で戦えている。

ならば楓にミカエルを任せ、こちらは本体らしきメガネを倒せばよいと考えていたのだ。

 

 それは楓も同じ。

確かにミカエルはすさまじい強さを持っている。

ただ、動きが単調で大振りだ。この程度の攻撃ならば、簡単に防ぎ避けれる。

 

 楓は額に汗をたらしながらも、口元は柔らかく微笑んでいた。

それに、こちらがミカエルを抑えていれば、真名がメガネを倒してくれると考えていた。

 

 そう信頼しているからこそ、全力でミカエルを抑えているのだ。

倒せないのならば、せめて動きを封じてしまおうという考えだった。

 

 両者の思考は一致しており、これこそ強い信頼があればこその連携だったのだ。

 

 楓に余裕ある返答をされたマルクは、ますますヒートアップしていくばかりだ。

この程度の挑発で沸騰していては、あまりに大人気ないというもの。

 

 いや、だからこそ煽り甲斐があるというものだろうか。

マルクは完全に女子中学生とは思えぬスタイルの少女二人に、完全に遊ばれてしまっていた。なんと情けないことか。

 

 

「しかし、なぜ麻帆良や私たちを悪く言う? 何か理由でもあるというのか?」

 

「理由だと? 貴様ら魔法使いの一味は麻帆良の認識を阻害する結界を使い、罪無き一般人たちを騙し、惑わしているからだろうが!」

 

 

 そこでふと真名は、なぜこのメガネは麻帆良の魔法使いを、眼の敵にして居るのだろうかと疑問に思った。

 

 別に魔法使いたちは普段魔法を隠しているというだけだし、特に何かしたわけでもなかった。

正直言って、なぜ責められているのかまったく理解出来なかったのだ。

 

 それをマルクに質問すると、マルクは啖呵を切るようにその理由を話し出した。

 

 麻帆良の魔法使いたちは認識阻害の結界を使い、一般人たちを騙して惑わしている。

マルクはそれを事実と受け止めていた。

信じて疑っていなかった。

 

 ――――認識阻害の結界。それはネギまの二次創作において登場する結界の名称。

 

 ネギまには認識阻害という魔法が存在する。

それは名の通り認識を阻害する効果がある魔法。

あるものに眼を向けさせないようにするために使う、隠蔽のための魔法だ。

 

 杖を使って空を飛ぶネギが使っていたりする場面などがあり、そう言った異常な光景を、他者に気づかせない魔法である。

 

 そのような魔法を結界に混ぜ込んでいるからこそ、麻帆良に存在する異常な科学力や運動能力などの”不自然”が、あまり気にされていないと考えられた。

 

 確かにそれだけを考えればつじつまが合うだろう。

ただ、そうしているという証拠はどこにもなく、ただの一つの推測に過ぎない。

 

 それをあたかも絶対に存在するかのように思い込んでいたのが、このマルクだったのだ。

 

 

「…………? 一体何のことだ……?」

 

「しらばくれても無駄だ!!」

 

 

 とは言え、そのような話はまったく聞いたことが無い。

そんなものが本当にあるのか眉唾物だ。そう考えていた真名は、一瞬思考が停止していた。

何のことなのだろうか、理解できずに呆けていた。

 

 自分も裏の仕事をしてきたが、学園の結界にそのような効果があるなど、一度として耳に入れたことが無かったからだ。

そんな風に考えながらも、その攻撃の手だけは休まらず、むしろさらに速度が増していく。

 

 そのため真名は本気で何の冗談なのかとマルクへと聞いたのだ。

 

 それがマルクにはとぼけているように聞こえたのか、さらに怒りを燃やしウソをつくなと叫んでいた。

知っているくせにとぼけるとはいい度胸だと、本気でそう考えていたのである。

 

 

「いや、本当に一体どういうことだ? 確かに麻帆良には結界がある。だが、それは魔族や妖怪などの、魔のものを封じるためのものでしかないはずだが……?」

 

「何も知らせれていないようだな! ならばハッキリと教えてやろう!」

 

 

 しかし、本来麻帆良に張られている結界は魔族や妖怪といった、怪異のものに対する防御策だ。

妖怪や魔族などが結界内に侵入すると、その能力の大半を奪われ、動けなくなるというのが麻帆良の結界の効力である。

 

 だからこそ”原作のエヴァンジェリン”が、ただの人間レベルにまでになるという状況になっていたのだ。

いや、あのエヴァンジェリンが、ただの人間程度までになるほどに、すさまじい効果がある結界ともいえよう。

 

 しかし、それ以外の効果ははっきりと明言されていない。

つまり、麻帆良の結界は、魔封じの結界ということになるのだ。

真名はマルクの言葉がまったく理解出来なかったのは、そういう理由もあったからである。

 

 それを真名がマルクへと説明したが、マルクはまったく信用しなかった。

むしろそれは間違えだと指摘し、本当のことを教えてやると自信満々に言い出したのだ。

 

 

「この麻帆良には、魔法使いどもが張った認識阻害の結界も存在するのだ!!」

 

「何……?」

 

 

 マルクはこれこそが真実だと言わんばかりに、認識阻害の結界が存在すると豪語した。

それは絶対に存在する、存在してはならないものだと、そう言ったのだ。

 

 だが、やはりそんなものがないと思っている真名は、目をパチクリさせてどうしてそこまで自信が持てるか、わからない様子を見せていた。

 

 

「麻帆良の魔法使いどもは、一般人を惑わす結界で、魔法使いや世界樹の存在を隠し通そうとしているのだ!!」

 

「それはどういうことだ……? ならば今、この状態は結界が作動していない。それが本当だとすれば、今頃パニックになっていてもおかしくないはずだが……」

 

 

 そう、その結界を使って麻帆良の魔法使いは、世界樹や魔法のことを隠そうとしている。そうマルクは叫んでいた。

 

 確かに世界樹はでかい、目立つ、しかも光る。

普通に考えれば非常に怪しいとしかいいようがない。

 

 魔法使いも表立っては行動していないが、魔法おじさんやら魔法ジジイなるものが危機を助けに来るという噂も存在した。

それを考えればそうかもしれないと考えることも出来るかもしれない。

 

 されど、それには大きな穴があった。

なぜなら結界で一般人を惑わしているならば、今この現状においてはどうなんだろうと言う事になる。

何せ今は結界が落とされ、まったく機能していないからだ。

 

 ならばマルクが言う認識阻害の結界すらも、消滅してしまっているのではないだろうか。

そうすれば今まで魔法で騙してきたものがよく見えるようになり、一般人たちはパニックに陥るだろう。

 

 その結界が存在しているのならば、今頃はパニックとなった一般人たちが逃げ回り暴れていることだろう。そう真名は考えた。

 

 しかし、現実にはパニックどころかイベントと称されたこの戦いに、ノリノリで参加している。

さらにロボ軍団をイベントの敵として倒し、喜んでいるではないか。

 

 この作戦にて一般人たちは、悪い言い方をすれば騙されている。

ただ、この騒動をただのイベントだと言われて”はい、そうですか”と答えられるかと言えば、普通はNOだろう。

 

 それでも麻帆良の一般人たちは、ロボ軍団は用意されたもので、謎の光線が出る杖で攻撃すれば倒せると信じている。

さらに魔法先生からも、そのぐらいの装備があれば、ロボ軍団と戦えるだろうと言わしめるほどのポテンシャルを、麻帆良の学生たちは持っていた。

 

 つまり、麻帆良の住人たちは、そのような結界で惑わされているのではなく、単純にノリのいい連中ということになるだろう。

 

 

「その通りでござる。御仁は何か勘違いをしているのではなかろうか?」

 

「そんな戯言など!!」

 

 

 真名の言うとおりだ。

そんな結界が存在したのなら、今頃大惨事だろう。楓も同じ考えだった。

ならばこのマルクという男が、こじらせて勘違いをしているに違いない。

 

 実際マルクは勘違いをしている。それは間違えなかった。

だが、それを認めるような男ではない。その説明を受けても、デタラメだと叫んでいたのだ。

 

 

「……一体どこでそんな情報を得たのかしらないが、そのような事実は存在しない」

 

「この私に勝てぬからと言って、騙そうとしても無駄だぞ!!」

 

「勝てないからだと? 別にソチラに負けるつもりなど、まったくないがな……!」

 

 

 どこでそのようなデマを聞き、踊らされているのやら。

真名はマルクの言葉を否定した。マルクの証言は明らかに不自然だからだ。

 

 しかし、マルクはそれを認めない。

いや、認めないどころか、真名の説得すらも負け惜しみと思い、それで戦いを終わらせようなどと無意味なことだと、さらに声を高くして叫んでいた。

 

 その言葉、真名には聞き捨てならなかった。

真名は振るう腕と踏み込む速度を上げて、さらにマルクへの攻撃を早めていったのだ。

 

 その攻撃の速さにもマルクは追いつき、真名の攻撃を全て防いでいた。

ゼロ距離での銃を使った格闘。そのけたたましい腕の動きは、常人では理解できないものとなっていた。

 

 とは言え、加速する攻防の中、真名は多少焦りを感じ始めていた。

このマルクという男が、中々強いからだ。加えて戦いが長引けば、こちら側が不利になるからだ。

 

 楓もミカエルの相手をしており、今はまだ余裕があるが、その余裕がいつまで続くかはわからない。

 

 真名はすぐにでも決着をつけるべく、本気でマルクへ攻撃していた。

それでもこのマルクは、その攻撃に耐え、ついて来ている。

 

 真名はマルクという男を侮ってもなめてもいない、手を抜いているわけでもない。

むしろ、全力で相手をして居る状況だった。

 

 つまり真名の攻撃に耐え、それについてこれるマルクが、それだけ強いということだったのだ。

 

 

 ――――マルクは確かに膨大な巫力を使って、ミカエルを何度もO.S(オーバーソウル)して攻撃するゴリ押しタイプの男だ。

 

 しかし、それだけでは自分が手薄となってしまう。

それを恐れたマルクは、ある程度接近戦などを行えるよう、自分を鍛えていたのだ。

 

 いやはや、シャーマンの能力をもらったのならば、そちらを伸ばせばよかったというものを、あえてそちらを伸ばしたのである。

 

 ただ、それにはある程度理由があった。

何せネギまの世界では、シャーマンなど転生者以外存在しない。

そんな状況でシャーマンとして伸ばすよりも、自分を守れるよう自分を鍛えた方がよいと判断したのだ。

シャーマンとしては半人前程度だが、本人自身の戦闘技術は中々卓越したものだったのである。

 

 そう、それでも真名を追い詰めたマルクの、怒りと執念と技術は本物だったということだ。

……まあ、下水道でタカミチと戦ったのは、相性の問題もあったので、随分苦戦させられてはいたようだが。

 

 

「そうは言っているが、随分焦っているのではないかね?」

 

「……どうかな?」

 

「まあいい! この私を騙そうとしたところで無駄だったということだな!!!」

 

「……やれやれ……」

 

 

 マルクは内心焦る真名の心境を言い当てた。

真名が自分を騙そうとしているのは、余裕が無いからだと思ったのだ。

 

 騙そうとしているわけではないのだが、焦っていることに関しては間違えでは無かったので、真名もとぼけながらもマズイと思い始めていた。

 

 逆にマルクは自分を取り戻し、有利に経って居ることを理解したのか余裕が溢れてきていた。

流れは完全に自分の方へ向いていると考えたマルクからは、勝利の笑みがにじみでていた。

 

 真名は焦りつつも、この男は話をまったく聞かないと、あきれ果てていたのだった。

 

 

「しかし、こちらも負けぬがアチラもなかなか倒せないでござる」

 

「……やはりあのでかいの、相当厄介なようだな……」

 

 

 その少し離れた後ろの方で、楓がミカエルと激闘を繰り広げていた。

こちらはミカエルの攻撃を簡単に回避し、さらに影分身にて防ぐことが出来る。

 

 しかし逆にこちらからの攻撃は、ミカエルにまったく通用しない。

楓はそう考えながらも戦っていた。まさに完全に平行線の戦いだった。

 

 真名はそれをチラリと横目で見て、ミカエルが相当厄介なものだと改めて痛感していた。

 

 あの技術は多分刹那の友人たる覇王が操っていたものと近いもの。

いや、同じものだと理解していたからだ。O.S(オーバーソウル)と言う名は知らぬが、技術だけなら”眼”で見てわかったのである。

 

 

「しかし、そろそろ終わりにしてやろう!! 先に貴様を滅ぼしてくれるわ!!!」

 

「……そううまくいくかな……?」

 

 

 だが、逆に痺れを切らせたのはマルクの方だった。

もはやこの二人の相手をしているのは疲れたのか、さらにミカエルを暴れさせようとしていたのだ。

 

 そう叫ぶマルクから少し視線を移した真名は、すぐにマルクへと視線を戻し、冷たい言葉を述べていた。

すると、少し離れた建物の屋根の上から、黄金の輝きが近づいてきていたのだ。

 

 

「”王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)”!!!」

 

 

 そして、そこに一つの槍が、突如として空から矢のように飛んできた。

それは楓と戦闘していたミカエルの頭部を撃ち抜き、ミカエルは後ろへのけぞりながら破壊されたのだ。

 

 すさまじい神秘を宿した一本の槍は、誰もが目を奪われるほどの神々しい輝きを放っていた。

 

 

「何ぃぃ!?」

 

「これは……!?」

 

「気にするなと言ったんだがな……」

 

 

 この槍は一体なんだというのか。

マルクと楓はその光景に驚き目を開いていた。

さらにマルクは突然降ってきた槍一本のみで、自分のO.S(オーバーソウル)が破壊されたことを受けて、驚愕の声を出していた。

 

 何せO.S(オーバーソウル)はただの槍で破壊できるものではない。

それが槍で破壊されたのならば、その槍自体が強力な力を宿していると考えるのが普通だからだ。

 

 ただ、真名はその槍を放った人物の正体を理解しており、小さな笑いをこぼしていた。

まったく、大丈夫だと言って置いたのに戻ってきてしまうとは、そう考えながら笑っていたのだ。

 

 そして楓も聞きなれた声が聞こえたことに気づき、その声の方へと顔を向けたのだ。

 

 

「待たせたな!」

 

 

 そこに居たのはあのカギだった。

カギは建物の屋根の上で、腕を組んで仁王立ちしていたのである。

 

 戻ってきてしまったカギに笑う真名と驚く楓。

そんな二人をカギは、したり顔で見下ろしながらも、真名の危機に間に合ったことに安堵していたのだった。

 

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