ダンジョンにお姉ちゃんがいるのは間違っているだろうか 作:姉を名乗る不審者
多分続かない。
―――走る。走る。走る。
白髪と赤眼という兎を連想させるような見た目の少年はダンジョンの中を駆けていた。
彼は
なんで、ミノタウロスがこの層に!?
―――ミノタウロス。それは、牛の顔を持つ人型のモンスターであり、彼の探索していた層では、決して出現しない魔物である。
このミノタウロスは、中層で高位の冒険者が取り逃がした為、ここに居るのだが、そんな事は彼が知る由もない。
「―――ッ!そんな!行き止まり!?」
とうとう、少年は壁際に追い込まれてしまい、逃げる事ができなくなってしまった。
「BuHooooo!!」
ミノタウロスは、目の前の弱き者の命を奪う為、その手を振り上げ、少年はもうダメだと固く目を閉じた。
本来なら、ミノタウロスを取り逃がしたロキ・ファミリアの1人である、アイズ・ヴァレンシュタインが彼を助け、その強さに憧れた少年が英雄を目指し、英雄になっていくはずだった。
―――しかし、この世界線では、本筋とは違い2人の
「
「セイクリッドパ二ッシュ!」
掲げられた旗を基点として、ドーム状に結界が張られミノタウロスの攻撃をいとも簡単にはじき飛ばし、翼を生やした少女の一閃によりミノタウロスは、一瞬にして魔石へと変えてしまった。
「マスター、大事無いですか?」
「弟くん、大丈夫?」
彼の前に現れたのは、アイズ・ヴァレンシュタインでは無く、2人の姉であった。
「怪我は・・・・・良かった。無いですね。」
〈
巨大な三つ編みの金髪をたなびかせる碧眼の女性。修道服を身にまとい、巨大な旗を掲げているのは、ジャンヌダルク。世界が違えば聖女と呼ばれていた存在だ。
実際には、この世界でもそう呼ばれていた時期があったが、現在はご覧の通りである。
「あ〜こんなに汚れちゃって。待ってて、お姉ちゃんが綺麗にしてあげるから」
〈
薄紫色のストレートヘアの純白のドレスを纏った女性。甲斐甲斐しく少年に付いたミノタウロスの血を拭き取っているのが、シズル。世界が違っても姉を名乗っていた不審者である。
「大丈夫です。ありがとうございました」
そして、そんな2人から弟とみなされている少年。本作の主人公、ベル・クラネルである。
これは、こんな姉を名乗る不審者2人と少年1人の物語である。
―――因みに、誰一人として血縁者はいない。