ダンジョンにお姉ちゃんがいるのは間違っているだろうか 作:姉を名乗る不審者
―――【
ベル・クラネルの成長の根幹とも言えるスキルであり、本来ならアイズ・ヴァレンシュタインによって助けられた事による、憧憬に基づいて発現されたスキルである。しかし、本作では姉達の介入によりその事象が起こらなかった為、そのスキルの発現は見送られたと思われた。
―――しかし、ベル・クラネルはスキルを発現した。
腐ってもレベルカンスト、姉を名乗る不審者の実力はダテじゃなかった。強さとしての観点で見れば、アイズ・ヴァレンシュタインの実力を大きく上回り、その強さにベル・クラネルが憧れを抱くには十分過ぎるほど姉達は強かったのだ。
ベル・クラネルと彼の主神、そして彼の姉を名乗る不審者達は現在、豊穣の女主人で食事をしていた。
ベルは、朝に出会ったシルという定員との、食事をしに行くという約束を守るために、ヘスティアはそんな彼に誘われて食事をしに来たのだ。若干2名程、誘われてもいないのに気がついたら同席していたが気にしたら負けであろう。
「弟くん弟くん、これも美味しいよ!いっぱい食べてね。ほら、お姉ちゃんがあ〜んしてあげる。あっ、口元にソースが付いてるよ!お姉ちゃんが拭いてあげるからね。恥ずかしがらなくても、大丈夫だよ?お姉ちゃんは弟くんのお世話をするものだもん!」
「マスター、どんどん食べてくださいね?沢山食べないと強く慣れませんよ。私の知り合いの方の故郷の言葉で腹が減っては戦ができぬという言葉があるぐらいですから。お会計なら心配ありません、私たちが払いますので。それもまた姉の務めですから!」
次から次へと口へ食事が運ばれる状況に、ベル・クラネルは目を回していた。それこそ、ロキ・ファミリアが入店した事にも気が付かないくらいには。もし、ジャンヌダルクのお会計の話がなければ、値段を気にして食事の味すら感じれなくなっていたであろう。
さて、忘れられているがヘスティアもこの場に居るのだ。ヘスティアは初めての眷属であるベルをたいそう気に入っており、それこそ恋心を持っている。2人に負けずとベルにあ〜んをしようと何度か試みてもいた。
―――が、
「お姉ちゃんガード!今だよ、ジャンヌさん」
「はい!弟の食事は姉の仕事ですから。さぁ、マスター、あ〜んです」
ご覧の通り、2人の見事な連携により阻まれてしまっていた。そもそも、食事の手伝いは姉の仕事ではない。
そんなこんなで、食事を進めていると1人の狼人族の男の話し声が酒場に響いた。彼の名は、ベート・ローガ。ロキ・ファミリア所属の狼人族であり、〈
「帰る途中、何匹か逃がしたミノタウロス!最後の一匹、五階層で他の冒険者に始末されていただろう!? そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎の!」
―――五階層のミノタウロス?
ベルは自身に身に覚えのある言葉に意識を持っていかれ、姉からの食事の供給を余所に、その話に耳を傾けた。
「そいつ、助けられた時にくっせぇ、牛の血を全身に浴びて・・・・・真っ赤なトマトになっちまったんだよ!そんでもって助けられた相手に甲斐甲斐しく世話されてたんだよ。ハハッ、同じ男として情けねぇったらないぜ!」
自身が笑われていることに気がついたベルは悔しさと恥ずかしさに耐えるように拳を握りしめていた。
「ベル君?―――ッ!君、いい加減に・・・・・!」
ベルの異変に気がついたヘスティアがベートに食って掛かろうと声を上げる。しかし、その言葉が言いきられることは無かった。ベルの両サイドで黒い炎を燃え上がらせている姉達がいたからだ。
「キャンキャン五月蝿いな〜?ちょっと、黙ってくれないかなぁ?」
「ダメですよ、シズル。犬に人語は通じませんから、何を言っても無駄ですよ。こういうのはちゃんと躾が大切なのです」
「あぁ!?誰が犬だ―――ッ!?がぁっ?!」
喧嘩を売られたとベートが噛み付こうとするが、そんな暇もなくベートは店の外へ吹き飛ばされていった。シズルが投げたジョッキがベートを襲ったのだ。
この時、ロキ・ファミリアの面々は目を白黒させた。ベートが反応出来なかったこともだが、ベートよりもレベルが高い面々も攻撃が見えてなかったからである。仮にもオラリオ有数のトップファミリア、その主要メンバーがだ。団長であるフィン・ディムナの親指はかつてない程に疼いていただろう。
「う〜ん、流石に街中だと力の調節が難しいかなぁ・・・・・ジャンヌさん。躾、お願い出来る?」
「おまかせください」
そうして、2人の姉は動けずに居るロキ・ファミリアの横を素通りし、外へ吹き飛ばされた