ダンジョンにお姉ちゃんがいるのは間違っているだろうか 作:姉を名乗る不審者
―――姉達の力、思い知れ!
・・・・・コイツらに勝てる存在、この世界に居るのか?
―――その日、ベート・ローガは人生で初めてコイツには一生勝てないのでは無いかと考えさせられた。
喧嘩をふっかけられた時、負ける気はしていなかった。相手のレベルが不詳だったが、自身のレベルは5。上に立つような冒険者は今の時代には、そう多くない。最強と呼ばれる〈
―――しかし、何だこの女は?いくら自分が
ベートは眼前の
「さて、
ジャンヌダルクがそう唱えると、鎧から競泳水着へと姿を変える。所謂、水着霊基の第2再臨だ。
「エンジョイアンドエキサイティン―――んっん!なんでもありません」
「痛ってぇじゃねぇか、クソがァ!―――ッ?!」
起き上がったベートはジャンヌダルクの姿を捉えると彼女へ向かって走り出す。しかし、それを横からの体当たりで止めた存在がいた。
「ありがとうございます。リース」
ベートの進行を止めた存在は、ジャンヌダルクの使い魔のイルカであるリースだ。彼女は、ジャンヌの命に従い、地上を闊歩し空を飛ぶイルカである。知能も高く、視界の右端から決してつかず離れず出現し続けることもできるのだ(おまえを消す方法を知りたい)。
なお、その出会いは困っていたイルカをジャンヌが助けた、というシンプルかつふわっふわしたガールミーツドルフィンである。
「何が・・・・・イルカ?」
ベートは何が起こったか分からず目を白黒させる。それもそのはず、地面からまるで水面から飛び出すようにイルカが出現し、そのまま宙に留まっているのである。見た目は水中モンスターが1番適切であるが、地面の中も空中も泳げるなど、戦う側からしたらたまったものじゃない。なんせ、何処からでも攻撃を繰り出し、何処へでも逃走が可能なのだから。
ベートがリースに意識を割かれていると、彼の背後に魚影が1つ浮かび上がる。
「あそぼ」
「うぉぁ?!」
それは宙に浮く事と話す事さえ目を瞑れば、ただの巨大なホオジロザメであった。
―――リースXP。彼女もまたジャンヌダルクの使い魔である。こちらはこちらで、ラムダリリスが持つ、海の生き物を従えるリヴァイアサンの権能も効果を発揮しない何かになっているようだが・・・・・
ベートは背後から襲いかかってきたリースXPの攻撃を転がりながら避ける。イルカやら、鮫やらが襲いかかってくる未知の状況、しかもまだ本人は手を出してすらいない。ベートの状況は絶望的だった。しかし、本当の絶望はこれからだったのだ。
「さて、そろそろ終わりにしましょうか。では、
次の瞬間、まるで大海原の真上にいる錯覚をベートはした。
―――
海に祈りを捧げたことによる、幻獣召喚。幻獣に縁があるのか、海に纏わるものなら大抵呼び出し、力を行使することができるという滅茶苦茶なジャンヌダルクの宝具の一つ。ここが地球ならシロナガスクジラのスクルージを召喚しベートを押し潰していただろう。
―――なら、この世界では?
地球という神秘が少ない地だったからこそ、シロナガスクジラで済んでいた。それがモンスターが溢れるこの世界で行使されるとどうなるか。
「GYAAAAAAAAASS!!」
―――こうなる。
現れたのは、海蛇のような細長く青い鱗に覆われた身体、龍のような顔、そして所々に存在する鰭などの魚を連想させる部位を持つ巨大な生物。その正体は、〈陸の王者〉ベヒモスと〈隻眼の黒龍〉ジズに並ぶ3大クエストの1つ。
―――〈海の覇王〉 リヴァイアサン
打ち倒されたはずの悪夢がそこにあったのだ。
「嘘やろ!?」
ロキ・ファミリアの主神、ロキは目の前の怪物を目の当たりにし声を上げた。彼女だけでなく、ロキ・ファミリアの面々や偶然店に居合わせた冒険者達は1部を除き殆どがリヴァイアサンのプレッシャーに押しつぶされそうになり、残った1部の冒険者達も武器を構えることすらままならなかった。
「おいドチビ!なんやアレは!?いや、そんな事は今はどぉでもいい!止めんとベートが死んでまうで?!アンタの眷属やろ?早よ止めてや」
「あんなのボクだって知らないよ!それに彼女はボクの眷属じゃないんだよ」
「なんやて!?―――ッ!アイズたん?!」
ロキとの会話でヘスティアに止められないと悟ったアイズはジャンヌダルクに向かって走り出し、剣を抜いた。しかし、その剣はジャンヌダルクに届くことはない。
「邪魔しちゃ、ダメだぞっ☆」
シズルによって剣を抑え込まれてしまったからだ。おかしな事に剣は確かにシズルに触れている、しかし斬れないのだ。驚いているアイズを余所に彼女はそのままアイズに向かってチョップを振り下ろす。第一級冒険者の勘か、アイズは剣を手放しチョップの軌道から回避し、そしてそれが正しかった事がすぐに証明された。
チョップで地面が割れたのである。それも、チョップ自体が地面に当たっていないのに関わらず。もし、あのまま受けていたらなんて事は考えたくはない。
「いい加減にしてください!お、お―――お姉ちゃん!」
2人の姉によってピンチに追い込まれた2人を救ったのは1人の少年の言葉だった。2人はプルプルと身体を震わせながら停止し、お互いに向き合った。
「お、弟くんが、ついに・・・・・ついに!お姉ちゃんって呼んでくれたぁ!!」
「やりましたね、シズル!今までの苦労がやっと報われた気分です!こうなったら、もう姉ビームしかないとも考えていましたが、よかったです」
姉達は戦闘中をほっぽり出して喜び合う。周りは目を点にしているが、これは彼女達にしか分からない喜びだろう。
助かったベートはその場に腰をその場につき、アイズは何故か期待に満ちた目を姉達に向けていたのだった。
なんやかんやで、サブタイトル考えている時間の方が長い気がする・・・・・