ブルペンは今日も平和です。   作:通りすがりの猫好き

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前から書く内容は決めていたのに……どうしてこうも時間がかかってしまったのか


#9 part4

「えー、では恒例のコーナーやってまいりましょ! 『黒鵜座一先生の~? お悩み相談室ー!』」

 

 

 

「ようテンションもちますなぁ。そういうとこは素直に尊敬できますわ」

 

 

 

「全部まるっと素直に尊敬しやがれ生意気な後輩よ。まぁいいでしょう。僕は寛容な先輩なので許してしんぜよう。それはそれとして、早速悩みを聞かせてもらおうか! ……大体予想はつくけども。どうせレギュラーが取りたいとか言い出すんでしょ?」

 

 

 

「へぇっ!? なして分かるんですか!? さては……エスパーか何かやな!」

 

 

 

「はぁ……しょーもな。もっとさぁ、捻ったものを用意してくれよ。エンターテイナーとしての資質に欠けるなぁ」

 

 

 

「んな芸人でもあるまいし! え、扱いひどない? 一応俺ゲストなんやろ?」

 

 

 

「ゲストである前に後輩だし」

 

 

 

「そういう事言ってたら後輩から嫌われますで黒鵜座先輩」

 

 

 

「いいんだよ言うべき相手はちゃんと見極めてるから。お前みたいなのは底から這い上がってくるタイプ。海原みたいなのはノればノるほど調子を出せるタイプ。はい、この差」

 

 

 

「鬼や! 鬼がおる! てか、そこまで言うからには何か対策とか用意してるんでしょうね!」

 

 

 

「まぁ水でも飲めよ」

 

 

 

「え、あ、ありがとうございます」

 

 

 

 黒鵜座が武留へコップ一杯の透明な液体を差しだす。武留が喉に流したそれは、無味無臭。言うまでもなく中身は水だ。ブルペンでの飲み物は基本的に水である。スポーツドリンクもなくはない。

 

 

 

「……水やん」

 

 

 

「水ですが何か? 旨い水があればエネルギーが湧く。そして何より、安い!」

 

 

 

「随分安上がりな事で。ってか水代とか考えなくてもいいのでは?」

 

 

 

「うるさいよ。昔からの習慣なんだから仕方ないでしょ」

 

 

 

「で、何かアドバイスくれはるんですか?」

 

 

 

「まず第一に、言うまでもなく僕は投手。武留は野手。そこは分かるよね?」

 

 

 

「……まぁ」

 

 

 

「投手には投手でプロフェッショナル。野手には野手のプロフェッショナルがある。だから正直あんまり参考にならないというか、あんまりピンと来ないかもしれないけどそれでもいい?」

 

 

 

「いやもう本当に打撃コーチにも監督にも色々指導をもらった末でこれなんです! 藁にもすがる思いなんです!」

 

 

 

「頼りないのは分かってるけど今から教えを乞う相手に藁とか言うな」

 

 

 

「あ、すんません。何とかお願いしやす!」

 

 

 

「そうは言ってもウチは外野陣の面子が固いからなぁ……。センターには李選手がいるし、ライトは和でレフトに志村さんでしょ? 正直言って穴がないよ」

 

 

 

「んな殺生な!」

 

 

 

「いやだって本当に外野手は基本固定だし仕方ないよね。ああたけるよ、しんでしまうとはなさけない」

 

 

 

「ちょい待って待ってまだ死んでないから! バリバリ生きるから! 生涯現役だから!」

 

 

 

「てへ♡」

 

 

 

 舌をペロリと出しながら黒鵜座は笑みを浮かべる。美少女とかならまだしも、アラサーのてへぺろ顔なんて誰が欲しいのだか。全く需要が分からない。

 

 

 

「軽めにジャブをかましたところで冗談はさておき、本題に移ろうか」

 

 

 

「ジャブ!? 右ストレートやろ今のは! ストレートっちゅうかもはやただの全力直球やわ!」

 

 

 

「はいそこ五月蠅いよー。まぁ自分に持ってないものをあれこれ悔やむのも仕方ないし、今持っているものを考えよう!」

 

 

 

「持ってるもの?」

 

 

 

「じゃあシンキングターイム! 武留が今持っているものはなーんだ! リスナーの皆も考えてみて下さいね! ①高い身体能力。②人並み外れたバッティングセンス。③スラッガーの素質。④残念ながら何もない。どーれだっ!」

 

 

 

「えー、何やろな。うーん④は無いやろうし……どれも捨てがたいな」

 

 

 

「ごー、よん、さん、にー……」

 

 

 

「え、制限時間あんの!? うぇー、じゃあここは③で!」

 

 

 

「ふむ。コメントでは①と④が多いみたいですね。では正解発表といきましょう」

 

 

 

「ごくり……」

 

 

 

「はい不正解。どれでもありません」

 

 

 

「クソ問題やんけ! いくらなんでもずるいでそれは! 汚い! 黒鵜座先輩汚い!」

 

 

 

「ありがとう、最大の褒め言葉だ。というわけでリスナーの方も残念でした。え、一人だけ当てた人がいる? やりますね、素質ありますよあなた」

 

 

 

「今のどこに素質とかあるんや!」

 

 

 

「いいか武留。常識に囚われてるようじゃまだまだだぞ。真に優れている者とは壁を簡単にぶち破る事の出来る人間なのだ。一流になりたくば殻を壊さなくてはな」

 

 

 

「ひねくれ者がひねくれた事喋ってる。ってかそう言うからには黒鵜座先輩にはあるんやろな、殻をぶち破るような何かが!」

 

 

 

「……あるヨ」

 

 

 

「え、何その間。何で片言っぽいの?」

 

 

 

「いやホント、ちゃんとあるヨ」

 

 

 

「あ、露骨に目ぇ逸らした! 人に対して言っておいて自分は無いのかよこの裏切り者!」

 

 

 

「まぁ無いけど……例外っているもんじゃん?」

 

 

 

「それはそれとしてそろそろ教えてもらいませんかね。黒鵜座先輩が何を思っているのか」

 

 

 

「愚かな君に教えてしんぜよう」

 

 

 

「シンプルにうざい」

 

 

 

「武留の持っているものはズバリ、守備の上手さ。元々高校で投手やってただけあって並外れた肩の強さは勿論、足が速くて打球判断もいい。無理に突っ込んで逸らすケースも少ないし、ここぞという時は果敢にダイビングキャッチでチームの危機を救える、まさに『フェンス際の魔術師』と言えばいいのか。まぁ地味だけど」

 

 

 

「……褒めてるんよな?」

 

 

 

「投手としては本当に助かるんだよね。センターには李選手がいるから中々守る機会はないだろうけど、ライトやレフトの守備はもう80点よ」

 

 

 

「何とも言えん点数やな! そこは100点とかとちゃうんかい!」

 

 

 

「レフトなんて基本志村さんが守ってるからそれに比べたらもう軽快だのなんの。やっぱ野球は守備だよね!」

 

 

 

「お、おお……ありがとうございます」

 

 

 

「でもそれだけじゃレギュラーになるには足りない。打つ方でも、特に得点圏でどれくらい結果を残せるかが大事なんだよ。普段は大して打てないような選手でも、チャンスに強ければそれだけ好印象だしレギュラーとして使おうと思えるでしょ?」

 

 

 

「あれ、それって暗に俺が確実性の低い打者だって言ってないですか?」

 

 

 

「あ、バレた? だって打率2割前半じゃあねぇ……」

 

 

 

「うっ、痛いとこ突きますなぁ。だから教えてもらおうって言ってるやないですか」

 

 

 

「はい、じゃあ得点圏打率言ってみ?」

 

 

 

「1割9分です……」

 

 

 

「……終わったな。では解散! かいさーん!」

 

 

 

「えっちょっと待っ、カメラさん!? カメラさん!? 噓でしょマジで終わるの!?」




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