森に引きこもる、歴代最高魔女   作:うたた寝犬

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第6話「久々に、魔法っぽい魔法を使うことにしよう」

 夏休みの風物詩とも言えるラジオ体操が始まる時間に、真新しい紺色のツナギを着て魔女は家を出た。

 

「ふぁ……」

 

 あくびをすることでまだ目覚めきってない頭に刺激を送るが、それでもまだ眠い。重い瞼をなんとか頑張って薄く開けつつ、足取りは迷い無く家の裏に向かう。

 

 森の中にポツンと佇む一軒家なので、そこにあるのは当然ながら森だけなのだが……今はそこに、真っ白い居候がいた。

 

「やあ、おはよう」

 

 すでに起きて、魔女を待ち構えるような体勢だったユニコーンに向けて、魔女はにこやかに挨拶をした。

 

 当然ながら言葉は帰ってこないが、決して友好とは言えない雰囲気を漂わせ始めたのを察して、魔女は苦笑いした。

 

「んー、やっぱ嫌われるなぁ。昔は……むしろ、君らみたいなのにモテモテだったんだけどね」

 

 遠い遠い過去に思いを馳せて、魔女はほんの少しだけ懐かしく、悲しい気持ちになった。

 

 そうしてるうちに、ユニコーンの視線と意識が自分から逸れてったことに魔女は気づく。

 

 ユニコーンの意識の先にあるのは、魔女が持ってきた桶だった。

 

「ふっふーん。コレが気になるかね?」

 

 乾草を詰め込んだ桶を……ユニコーンからすれば朝ごはんを、魔女はいかにも魔女らしい笑みを浮かべながら見せびらかし、ユニコーンの反応を楽しんだ。

 

 見せびらかしこそすれど、焦らしはしない。食べ物の恨みは怖いことを良く知ってる魔女は、その桶をユニコーンの前へと差し出す。だが……待てど暮らせど、ユニコーンはご飯を食べるために近寄っては来なかった。

 

 内心少しムッとして、魔女はユニコーンへと歩み寄るが、歩み寄った分ユニコーンは魔女から遠ざかっていった。

 

 ここまで嫌われるようになったのか私は……と実感した魔女は、流石に落ち込んだ。

 

 ショックを受ける魔女だが、ひとまずその気持ちの処理を後回しにして、ユニコーンに朝ごはんをどうやって食べさせるかを考えることにした。

 

(とりあえず私が桶持ってるのが問題っぽいし、その辺に置いて私が距離を取れば勝手に食うか?)

 

 これで食べなければ朝ごはんのメニューに問題があるが……と考えたところで、魔女は森からやってくる足音に気づいた。

 

 早くて弾むようなリズムの足音にユニコーンも気づき、2人は揃って森の方に目を向ける。すると案の定、朝花姫花が勢いよく森から飛び出してきた。

 

「魔女さんおはよう!」

 

「おはよう、姫花。だいぶ早いけど、ラジオ体操はサボりかい?」

 

「私もう中学生だから、ラジオ体操出なくていいし」

 

 そう言えばこの地域のラジオ体操に自主参加するのは小6までだったか、と魔女が思っている間に、姫花の笑顔はユニコーンへと向いた。

 

「君も、おはよう! 朝ご飯は……これからかな?」

 

 説明せずとも状況を察した姫花に、魔女は困ったような表情を見せながら口を開いた。

 

「そうなんだけど……この子が食べてくれなくてね」

 

「そうなの? ……この草が好みじゃない的な?」

 

「そんなグルメ的理由じゃなくて、どうやら私がコレ持ってるのが気に食わんらしい」

 

 魔女は再度桶を持ったままユニコーンに近づいてみるが、案の定近寄った分ユニコーンは後退りしていった。

 

「……な?」

 

 魔女の嫌われっぷりを見た姫花は思わず微苦笑しながら魔女の隣に歩み寄った。

 

「みたいだね。……その辺に桶を置いたら、勝手に食べてくれるんじゃないの?」

 

 適当なところを指差しながら姫花が提案し、

 

「そう思ったところに姫花が来たんだ」

 

「なるほど」

 

 とりあえずその場所に置こうと試みて姫花が魔女から桶を受け取った、その瞬間、

 

「お?」

 

「わ!?」

 

 さっきまで近寄る気配をカケラほども見せていなかったユニコーンが打って変わって駆け寄ってきて桶に頭を突っ込み乾草を元気よく食べ始めた。

 

 姫花はそっと桶を地面に置き、ユニコーンから一歩離れる。そしてガツガツとした食べっぷりを見ているうちに、姫花の頬が無意識に緩んだ。

 

「いっぱい食べて大きくなってね。……こんなに必死になって食べるくらいなら、最初から食べてればいいのに」

 

「全くだ。……私から食べ物をもらうのが、よほど嫌だったんだろうか……」

 

「えー、そんなことないんじゃない? 心底嫌だったら、魔女さんが触ってたってだけで食べるの拒否しそうだし」

 

「……そうかもしれないね」

 

 会話をしながらも姫花の目線と意識は、ご飯を食べるユニコーンへと向いていた。姫花の意識が自分に向いていないという事実は魔女にとって少し、ほんの少しだけ面白くなかった。

 

「……ああ、そうだ。姫花、その子にご飯を食べさせるのもいいけど、まずは着替えてきたらいい」

 

「着替える?」

 

「うん。姫花はちゃんと汚れてもいいように学校のジャージ着てきたみたいだけど、こっちでもそういうの用意したから、それに着替えておいで」

 

 家の方を指差しながら魔女は言うが、それに対して姫花は遠慮するように首を振った。

 

「大丈夫だよ魔女さん。リュックの中にも予備のジャージ入れてきたからその辺は心配無用!」

 

「んー、そっか……」

 

 姫花の答えを聞いた魔女は露骨に落ち込んで見せ、姫花はそこにわざとらしさを感じながらも一応心配することにした。

 

「魔女さん、どうしたの?」

 

「んー、べっつにー? ……せっかく昨日、いいとこのホームセンターに行って、なるべく可愛くて姫花に似合いそうで私とお揃いの作業服(ツナギ)を探してきたのに、姫花はそれを着てくれないんだぁ……とか思って、落ち込んでるわけじゃないから安心してくれ」

 

 言いながらどんどん落ち込んでいく魔女を見て、姫花は思わず口元から笑みが溢れた。

 

 魔女は普段から喜怒哀楽をあまり隠さないが、割合としては喜や楽といった、明るくプラスな感情の方が圧倒的に多い。怒や哀と言った感情を見せることがないわけではないが、頻度としてはとても少ない。

 いつも楽しそうにしていると言ってもいい魔女が今、あからさまに落ち込んでみせている。演技でそう見せている部分もあるが、偽りではない。

 

 負の感情を見せることがあまりない魔女の姿を見た姫花は、ちょっと珍しいものを見れたという気持ちと、この人こんな理由で拗ねてるの可愛いなという、微笑ましさから笑みが溢れてしまった。

 

「へえー、そうなんだ。魔女さんわざわざ自分の分と私の分の服用意してくれたんだ?」

 

「そうだけど……でも、着てくれないんでしょ? 用意してきたジャージを着るんでしょ?」

 

 わざとらしくそっぽを向く魔女の正面に回り込んで、姫花は笑顔で言う。

 

「やー、そこまでしてくれたなら着るよ。家の中にあるの?」

 

「ん、ある。リビングのテーブルの上に畳んで置いてあるよ」

 

「わかった。じゃあ着替えてくるね!」

 

 軽い足取りで歩き始めた姫花に向けて、魔女は思い出したように声をかけた。

 

「姫花、家の中に行くついでだ。テーブルの近くに今日使う道具一式をまとめて置いてあるから、それも持ってきてくれ」

 

「うん、いいよ。それ、行けばパッと見で分かる?」

 

「うん。分かると思うけど、もしわからなかったら呼んでね」

 

 はーい、と姫花は返事をして家の中へと入っていった。

 

 その姿が完全に見えなくなってから魔女は、

 

「誰か1人の気を引きたい、だなんて……百年ぶりくらいかな」

 

 自分の心の中を占める姫花の割合が、思った以上に大きくなってきたことを、言葉にして実感した。

 

 *** *** ***

 

「とりあえず姫花は、川原の方でこの子と遊んでてくれ」

 

 魔女と色違いの作業服を着て、言われた道具一式を持って出てきた姫花に、魔女はそう告げた。

 

「遊ぶだけでいいの?」

 

 ご飯を食べ終えたユニコーンにまるで甘えてくるように鼻先で小突かれつつ、姫花は魔女に質問した。

 

「うん、とりあえずはね」

 

 魔女は家の裏にある、微かな道らしきものを指差しながら説明を続ける。

 

「川に行くにはあの道を使うように。で、行く時と帰る時は手綱を握って姫花が前を歩くこと」

 

 言いながら魔女は、姫花が着替えてる間にユニコーンに取り付けたらしい手綱を姫花に手渡した。

 

「……魔女さんさ、この子に逃げられるのにどうやって手綱(これ)付けたの?」

 

「魔法でこの子を動けないようにして結びつけたけど?」

 

 それが何か? と言いたそうな魔女に向けて、姫花は呆れたようなため息を吐いた。

 

「そういうことするからこの子に嫌われるんじゃないの?」

 

「何しても嫌われるんだから別にいいんだよ」

 

「えー……まあいいや。あとは何かすればいいことある?」

 

 会話をしながらもユニコーンのテンションが徐々に上がり、遊ぼうと催促されているような気がしてきた姫花は、宥めるように首筋を撫でながら魔女の説明を受け続ける。

 

「あとは適当に道草を食べさせてあげることと、この子のボロの回収だね」

 

「ぼろ?」

 

「うんちのこと」

 

 魔女は姫花に持って来させた、『今日使う道具一式』の中の黒いゴミ袋とスコップと軍手を姫花に差し出した。

 

「何がなんでも全部回収しろ、とは言わないけど、なるべく全部回収するようにね」

 

「ん、わかった」

 

 あっさりと返事をして受け取った姫花の態度と表情を見て、魔女は拍子抜けに近い気持ちになった。

 

 ゴミ袋を丁寧に折りたたんでポケットに入れる姫花を見ながら、魔女は尋ねる。

 

「ちょっと意外だね」

 

「うん? なにが?」

 

「だって普通、うんち回収しろって言われたら少しは嫌そうに思うもんだと思ってさ」

 

 正直魔女は、姫花にボロの回収をさせなくてもいいと思っていた。

 

『知り合いの家に遊びに来ました』

『そこではペットを飼っています』

『遊んでいいよと言われました』

『粗相をしたからそれの処理を頼まれました』

 は、魔女の中では理屈に合わない。

 いやそれは飼い主がやれや、と言いたくなることだからだ。

 

 姫花はユニコーンの世話をするつもりで今日から来てはいるが、それでも魔女の中では姫花は、『私の家に遊びに来てるお客さん』であった。魔女としては姫花(お客さん)にそこまでさせるつもりは元々無く、頼まれた姫花が嫌そうな反応をわずかでも見せたなら、上手いこと口先で誤魔化してボロの回収をさせない事にするつもりだった。

 

「んー、嫌って思う人はいるかもだけど……」

 

 そんな魔女の予想と考え(りくつ)をあっさり否定して、姫花は自分の答え(りくつ)を魔女に返す。

 

「でもさ、散らかったり汚れたものをそのままにしておく方が気持ち悪い……って私はなるから」

 

「あっはっは、そうかそうか。姫花は綺麗好きだね」

 

「このくらい普通だよ。魔女さんがその辺雑なだけで」

 

「なんて言い草だ。まるで私が掃除や整頓に無頓着みたいじゃないか」

 

 顎に手を当てて不満げな表情を作ってみせた魔女に対して姫花は間髪入れずに突っ込む。

 

「無頓着じゃん! さっき家に入った時見たけど、また散らかってたじゃん!」

 

「私にとってはあれくらいがデフォルトだし……それに不思議なことに、私の家は定期的に綺麗になったり本棚が見やすく整理整頓されるから無問題だよ」

 

「不思議も何も、掃除してるのも整理整頓してるのも私なんだけど?」

 

「おやおや、そうだったのかい? 私はてっきり、掃除する魔法を無意識に発動してるものだと思ってたよ」

 

 わざとらしく笑って魔女は姫花を揶揄い、揶揄われてるのがわかった姫花は不満気ながらもどこか嬉しそうな表情を見せた。

 

 時折、手綱で繋がれたユニコーンが早く行こうよと言いたげに足踏みするが、姫花は小声で「もうちょっと待ってね」と嗜めながら、手綱を握ってユニコーンを待たせていた。

 

「あ、魔女さん質問いい?」

 

「いいよ」

 

「この子って、逃げないの? この子に本気で走られたら私なんて追いつけないし、森から出ちゃったらどうするの?」

 

 姫花が心配していたのは、ユニコーンの脱走だった。

 姫花にとってこの森は10年近く通って遊んだ庭のようなもので、仮にこの森で人間相手に鬼ごっこや隠れんぼをすれば、そうそう負けない自信がある。

 

 そんな自信のある姫花だが、ユニコーンの脚の速さには到底敵わない。昨日駆けっこで遊んでいたが、完全に遊ばれているのが姫花にもわかった。脚の速さが余裕で上回るユニコーンが脱走しようものなら、柵などない森を抜けるのは容易である。

 

 そんな姫花の心配を聞いた魔女は、作業服のポケットに手を突っ込みながら質問に答える。

 

「とりあえず答えとしては、心配は不要だよ。この子は森から出ることなんてできないし……そもそも姫花の指示にちゃんと従ってるから、言い聞かせてあげれば大丈夫さ」

 

 自信満々に答える魔女だが、姫花はそれでも不安があった。もし、万が一があったらどうするのか、という不安が拭えなかった。

 

 そんな姫花の不安を見透かしていたかのように、魔女は穏やかな表情のままポケットから出した小さな笛を姫花の首にかけた。

 

「それでもこの子が姫花の声を聞かずにどこかに逃げていったり、どうしていいかわかんなくなったりしたら、この笛を吹きなさい。私がすぐに駆けつけるからさ」

 

 かけた笛を指先で弄りながら、姫花は尋ねる。

 

「駆けつけるって……やっぱり魔女さんは私たちと別行動なの?」

 

「うん。私はほら、この子の小屋を作らないとね。夜寝る時とか雨降った時に、野晒しにするわけにいかないし」

 

 ここらへんに建てようかな……と家の裏にあるスペースを示しながら魔女は呟く。

 

 小屋を作る、と言う魔女に対して、姫花は好奇心から尋ねた。

 

「……魔女さんさ、どうやって小屋を作る気なの?」

 

「どう……って言われても、そこらの木を斬って、いい感じの大きさに切り揃えて加工して、組み立てるけど?」

 

 この子は何を当たり前のことを聞くのだろうか、と思いながら魔女は答え、それに対して姫花は、ああやっぱり木を斬るつもりなんだなと納得した。

 

 そして納得すると同時に湧き出る、別の疑問。その疑問を姫花は続け様に魔女へとぶつける。

 

「木を……切るんだよね?」

 

「うん。木を斬るよ?」

 

 魔女は木を切るつもりらしい。

 普通、木を切ろうと思えば、ノコギリやらナタやらチェンソーやらを使うはずだが、魔女が今持っている道具はそのどれでもなかった。

 

「……()()で、切るの?」

 

 確認するような、疑うような、そんな口ぶりで姫花は尋ねつつ、魔女が手に持ってる道具を……木刀を、指差した。

 

 やや長めで黒塗りな刀身が特徴的なその木刀を、軽やかに片手で振り回しつつ、魔女は笑顔で答える。

 

「……あはは、まさか。これはこの前、日帰り北海道旅行をした時に、お土産屋さんで一目惚れして衝動買いしちゃっただけの木刀さ」

 

 旅先で衝動買い、と言われて姫花は半ば呆れてため息を吐いた。

 

「旅先で無意味に木刀買うなんて、男子くらいしかしないと思ってた」

 

「えー、そう? サムライみたいでカッコいいし、つい買っちゃわない?」

 

「買いません」

 

 魔女の前ではやや生意気な姫花だが、学校では模範的な優等生。修学旅行で無意味に木刀を買う男子を真っ先に嗜める立場であった。

 

 呆れる姫花に対して、魔女は笑顔のまま木刀の切っ先を森の中へと向けた。

 

「昨日のうちに良さげな木を見つけておいて、その近くにチェンソーを置いてあるからね。木はそれで切るよ」

 

「まあ、そうだよね。うっかり自分を切っちゃわないように気をつけてね」

 

「大丈夫だよ。腕吹っ飛んだくらいならすぐに治せるし、頭さえ残ってれば私は死なないから」

 

「ナメック星人じゃん」

 

「誰がナメック星人だ。……って言いたいけど、その気になれば大抵の願いを叶えられるだろうし、口から卵出そうと思えば出せるし、あながち私は魔女じゃなくてナメック星人かもしれないね」

 

 クックック、と喉を鳴らしながら笑った魔女は肩に木刀を背負った。

 

「じゃあ、お喋りはこの辺にしとこうかな。私は適当に小屋作ってるから、姫花もお昼前……11時くらいに、家の庭(ここ)に戻っておいで」

 

 魔女はそう言うと、姫花の返事を待つことなく歩き始め、森の中へと姿を消していった。

 

 残された姫花は、一言、

 

「……魔女さん、口から卵出せるんだ……」

 

 しれっと言われた衝撃の事実を呟いてから、ユニコーンと共に川の方へと歩いていった。

 

 *** *** ***

 

 生い茂る木々の隙間から届く日の光が照らす森の中を、魔女は迷いのない足取りで進んでいた。

 

 鳥の声や風で揺れる葉の音に鼻歌を混ぜながら歩くこと数分。魔女は目的地へと辿り着いた。

 

「小屋はちょっと広めにしようかな〜」

 

 森の中でも特に木が立派に育っている地点にやってきた魔女は、軽く屈伸をして準備運動のような動きをしながら独り言を呟く。

 

 魔女よりは年下だが、長い年月をかけて太く立派に成長した木を前にして、魔女は担いできた木刀を右手に持ち、左手の指先を刀身の根本に添えた。

 

 笑顔で、

 

「姫花に言ったように、チェンソーで切ってもいいんだけど……」

 

 魔女は言う、

 

「……やっぱ久々に、魔法っぽい魔法を使うことにしよう」

 

 と。

 

 息を吐いて、吸う。魔女はゆっくり、意識して呼吸を取ってから、唱える。

 

「『我求む、対の魂を砕く囲い鳥、彼の業を此処に』」

 

 言葉に合わせて添わせた指で刀身をなぞり上げると、木刀の黒い刀身が仄かな光を纏う。

 

「『同属殺し』」

 

 唱えた魔法の名前を言い切ると同時に刀身をなぞり切った魔女は、大木に向けて力強く踏み込み、木刀を薙ぐように振るった。

 

 切れ味などあろうはずがない木刀が、大木をまるで紙のように、事もなげに斬り裂いた。

 

 深々と斬られた大木はバランスを崩し、めきめきと軋むような音を立てながら傾き始める。

 

 倒れゆく大木に目を向けて、魔女は、

 

「思った通り、ここの木は質が良さそうだ。ついでに、あと2、3本斬っていこうか」

 

 にこやかに言い、綺麗に木刀を構え直した。




こここら後書きです。

『同属殺し』
同じモノ(材質・物質など)に対して一方的に強く出ることができ、それ以外のモノに対しては弱くなる魔法。木刀に使うと、木材に対しては名刀になり、それ以外だと豆腐すら切れないナマクラになる。何をもって『同じモノ』と定義するかは、使用者の技量によって選択可能。同じ魔法をかけたモノ同士だと効果が拮抗する。

この魔法を開発した魔女曰く、
「カッコウを見てこの魔法を思いついた」
らしい。
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