とある魔術の禁書目録bug 作:らららバイ
プロローグ
「ねえ、フレン」
「んー? なにー摩利?」
とある病棟の中庭に2人の少女がいた。摩理は前を見たまま彼女の座っている車椅子を引いて共に散歩しているフレンダを呼ぶ。
「フレンってこの都市の外って出たことある?」
「ないよー。手続きめんどいから。摩理ってば外に興味があるわけ?」
摩理は生まれた時から病弱だった。そして日に日に弱って寝たきり状態。外出することはこうして病院内の中庭を車椅子に引かれて外の空気を浴びることだけで、それ以外許されていない窮屈な時間を過ごしていた。
実はというとある事情から病院を抜け出した事は多々あって、それも悪化を加速させている原因の1つなのだが、今の言葉は関係はなく純粋な興味であった。
「うん。この超科学の街、超能力者の収容所の外にはどんな光景が広がっているんだろうって、どんな目に映るんだろうって、ふとそう思ったの」
「ぷくっなにそれ。天下の第2位様がロマンチストなんて笑えるって訳よ」
ここ学園都市は科学的に超能力を切り拓いた街、能力開発を受けた学生たちは様々な異常現象を発現させる。その中でもより大きな影響を及ぼす存在が現在8人しかいないLevel5、その位階序列で第2位を定位された身体はひ弱だが聡明な少女。超能力は科学の一種、扱う事にたける程Levelは上がるものだから、例外を除き最高位であるLevel5は頭が良い。つまり理論派夢がない。
「……いいわよどうせ、私なんてやる事なくて本ばっかり読んで妄想しかできない痛い女だもの」
フレンダの返しに気分を悪くし拗ねた摩理は不貞腐れたセリフを吐いてそのあと無言になる。
「……………………………………………」
「ち、沈黙が怖いって訳よ……ま、摩理? 機嫌直して欲しいなーって。わたしそんなメルヘンチックな摩理いいと思う!」
「………モンフォルチョウ」
摩利の周りに銀粉が降り始める。その気になれば一人で軍隊をも壊滅できる力を持つ摩利が能力行使をすればどうなるか。ここ一帯が焦土に化すだろう。止められるとすれば摩利より位階が上の第1位を冠する人物とーー
「あ、あわわ、こんなところで能力行使とか洒落にならないって訳よ!? わたしどころか病院消し飛んじゃう! ……ごめんってばまりー!!! 」
摩理にとって一番の友人フレンダ・セルヴェンを置いて他にいないだろう。
しかしどう説得したかは定かではないーーーーーー
ーーーーーー
うーわ、しくったなあ。
死の直前に於いてフレンダが思った事はそんな他人事の様なものだった。
フレンダは彼女の属する『アイテム』と名付いている学園都市の暗部の組織が同じく闇に潜む組織『スクール』を追う中で捕まってしまい見逃してもらうためアイテムの情報を流した。それで逃げたはいいもののそれを知った仲間のLevel5の第4位麦野沈利と鬼ごっこをする羽目となっている。捕まれば最後死は免れない粛清だ。
スクールに捕まって情報を吐かなければ死。だが裏切っても死が待っている。それならまだ逃げ切れる可能性があった後者を選んだがそれも失敗。こうして無様を沈利の前で晒している。
身体中が穴だらけになって悶絶すら生ぬるい痛撃に絶叫を上げながらもフレンダは逃げる。這い蹲って最早亀にも劣る速度で、諦める事が頭によぎっても生きる意志を諦めない。
「ふ・れ・ん・だ、ちゃーん! 芋虫みたいに這い蹲ってどこ行こうっていうのかにゃーん。虫は虫らしく踏み潰されるのがお似合いだっていうのが分かんない?」
「ぐぎぃう、ううぎいいいいッッ!!」
ぐぎゅりと沈利のヒールの足に背骨が踏み抉られたような鈍い音が鳴った。身体中の穴から滲み出る金属同士で殴りつけたような不協和音と頭の中に鐘が鳴り響いた様な激痛がフレンダに走って遂には動けなくなった。しかしそれでも生への執着は途切れていなかった。
何故ならフレンダは知っているから。
「ま゛り……」
生きるということ、生きたいって思うこと。
あの子の頑張りに比べたらこの程度の命の危機で絶望などしていられない。
「……しつこいわねぇ」
沈利は気に入らなかった。それと不思議に感じる。
この子は果たしてこんなにも諦めの悪い性格だっただろうかと。
自分の命の為なら仲間を売ってでも助かろうとする女だから意地汚くはあるだろう。しかしそういう類の人間とは決して助からない状態に陥ると意外にあっさり諦めるか、痛みに耐え切れず殺してくれと懇願する。そうした人間を数多く殺して来たし例外は見たことなかった。
しかしどうだその例外が今倒れ伏いる。身体の絶叫が精神までも犯しているのにその表情に絶望はない。
生きたい、生きる、生き続けてやる。
そう全身から言われているようで沈利は気に入らなかった。
「ちっ、もういいさっさと殺す」
いつまでもコイツをいたぶっても面白い展開にはならなそうだ。浜面と滝壺も追いかけなきゃ逃げられるだろうし。
それは合理的な判断だが裏を返せば沈利がフレンダの殺害を急いだということで………
ーーーーーーこれはいけそうかしら。
沈利は標準を合わせるように手をかざし、背中越しの心臓を貫こうとレーザーを撃とうとする。そんな事は今の意識の曖昧なフレンダには認識できず遂には意識を手放した。
ーーーーーー
「かはっ……!? な、あ、はあ!?」
自身の能力『
ぶつかって来たであろう物体に目を見開かせる。
「銀色の蝶だぁー……?」
それは巨大な蝶だった。銀色に発光しており、ふよふよと倒れ伏すフレンダの周りを飛び回っていた。そしてフレンダの身体に同化すると……
「な!?」
倒れて意識を失い動けない筈のフレンダが脱力したかのように腕をぶら下げつつ立ち上がったのだ。目に活力を取り戻し身体中が穴だらけになっているのも関わらず歯を食いしばって耐えるどころか僅かな苦悶の表情すら浮かべないまま近くに落ちていた鉄パイプを拾い、槍に変形させる。
「能力の発動は出来たわね。母体のAIM拡散力場はこの子のだから発動できるか不安だったけど問題なさそう」
「何を言ってる……ふれんだぁ!」
此方を無視してブツブツ呟くフレンダに沈利はキレた。そしてそのままレーザーをフレンダに飛ばす。
フレンダは煩わしい蝿を払うように槍を振るうとレーザーの軌道がねじ曲がる。
「なっ!?」
「煩い」
無造作に払った槍と同時に沈利上から銀粉が降り注いできた。それは一つ一つが接触すれば爆発を引き起こして沈利を吹き飛ばす。
「かっはっ……!?」
防御した能力による障壁によって身体ごと木っ端微塵にはならなかったが廃墟のビルの壁に叩きつけられて沈利は吐血する。
「あら存外にしぶといのね
「てメェェェぶっ殺してやる!!!」
先ほどの意趣返しが如くフレンダ?に対し完全にブチギレた沈利はなりふり構わずレーザーを四方八方に乱射し始めた。
「奇遇ね。私も同じ気持ちなの………よくも
ーーーーーー
『予備プランの対象が目覚めたか。これで1236通り分の過程を短縮できる』
そこは通常の手段では決して訪れることのできない場所。通称『窓のないビル』内にて人2、三人入れるくらいの幅の大きな試験管の中の人物が呟いた。
幼子にも老人にも、女にも男にも見えるその人物は逆さまに液体の中に入っている。
「……これも貴方の計画通りという事ですかアレイスター」
『それはお前が産んだ子どもに対する憐憫か? それとも我が子を利用する私に対しての憤怒かね』
「……いいえ。僕は僕の身勝手な目的にあの子たちを利用している身です。あの子たちの夢を食い物にしている……ああなんて屑、死んだ方がいい」
アレイスターの前に現れた謎の人物は儚げな表情を浮かべていた。
『相変わらず死にたがりのようだ。死なない存在が死にたいと思っているのは創造物においてそう珍しい設定ではないが実際に証人を目の当たりにするとなると不死者にならないで正解だったな』
「ネクロノミコンなんて言う死者を蘇らせる魔導者を作成した者とは思えない発言ですね。浸父には是非とも見習ってほしいものです」
アレイスターの発言に意地汚く生きようとする同類を思い出して心からそう思った。
「......さて第四位と元第二位の対決はどちらに軍配が上がるかな?」
「白々しいですね。どうせ決着がつく前に止める気でしょうに。第一、二位と四位にはどうしようとも埋められない差がある。あの子は超能力者にして最強の
「君も大概子煩悩だな。君のお気に入りのカッコウとやらが可哀想に思えてくるよ」
ーーーーーー
「超ありえません………」
浜面にやばい状態の滝壺さんを任せた後、麦野のレーザーが見えたので発射源を辿ってきてみれば信じられない光景が広がっていた。第二位にぼこぼこにされたせいでぼやけた視界が見せた幻覚ではないかと思わせる程のありえない状況だったのだ。
「ホラもっと必死に避けなきゃ。次はこんなのはどう?」
「ちぃ!!!!!」
どういうことなのでしょうか? 銀粉が麦野に降り注いで麦野が張った障壁に触れたと思ったら爆発。続いて無数の氷の矢が麦野を襲った。それを麦野が飛び退いて躱す。無論麦野も黙ったままではいない。横っ飛びしながらレーザーを放つがどんな素材なのだろうかフレンダは槍を無造作に振るいレーザーを捻じ曲げる。
フレンダは爆発物を扱いますからそう言った爆薬を隠し持っていたと納得できますが空気中の水分を槍状に氷結して操作する兵器なんて超無いはず。
フレンダが能力を隠していた? それは有り得ません。学園都市のバンクを欺けるはずがありませんから。
そもそも能力は一人につき一つ。触れれば爆発する銀粉、氷を槍のように飛ばす能力に麦野のレーザーを弾き飛ばせるほどの武器など今分かっているだけでも3つは能力を使っている……そういえば複数の生徒が昏倒した事件が超ありましたね。その首謀者の女が複数の能力使ったと聞いた覚えがあります。なんでもAIM拡散力場の研究を専攻……AIM拡散力場?
滝壺さんはAIM拡散力場を覚えて追跡する能力がある。ただそれだけでレベル4認定されている。つまりその上……AIMを自在操れたなら? 確か昔超いましたよねそんな
思考に耽っていた絹旗は気が付いていなかった。戦闘中の麦野が複数に分割するアイテムを使ったレーザーが絹旗を巻き込んでいることに。
気づいた時には遅く絹旗の脳天を穴だらけにするだろう。彼女の能力ではレーザーの貫通を防ぐことは出来ないーーーー
「さっきから何やら考え込むのは良いけれどちゃんと視界は開きなさいよ絹旗。今回はあの子の迷惑賃として助けてあげるけど」
「…………『
「ああ考え込んでた理由ってそれ? まあ折角だから名乗らせて貰いましょうか」
フレンダが……否。彼女は絹旗の前に立ち塞がり、もはや槍を振るう事すらしていなかった。麦野のレーザーが勝手に避けていったのだ。
彼女は初めから絹旗がいた事を知っていた。それが彼女の基本能力。AIMを感じ取る事など能力を使う為の大前提だ。
絹旗が何を思考していたのか理解した彼女は名乗りを上げる。
「元・レベル5の第二位『能力支配』花城摩理。虫憑きとしての号は『ハンター』……は貴方達には関係なかったわね。この子の身体を間借りさせてもらっている居候だと思ってくれたら良いわ」