前回のあとがきに遅くなるとは書きましたがまさかこのまでになるとは…
っと、無駄話はこれくらいにして。今回は何時もの倍ほどの文量があります。
どうも戦闘描写が拙い感はありますので気になった場合はアドバイスをくれると有難いです。
それでは、どうぞ
敵総勢70体を掃討する作戦で私達第八班とカノン達第五班はアラガミ防壁手前の最終防衛ラインに配置された。
居住区を守る最終防衛ラインに私達新人8名しか配置されなかったのは人員不足と私達の班の約半数がそれぞれの支部で防衛班に所属していたためだ。
時間は既に10:40を回っている。神機使い全員の配置もそろそろ終わり戦いが始まるだろう。
「シリアちゃん。皆さんは大丈夫でしょうか」
「分からない。でも、皆は大丈夫だと思う。根拠はないけどそんな気がする。だから私達は自分達が死なない様に頑張ろう」
「戦闘が開始されたみたいだ。各自警戒を怠るなよ」
今回の合同パーティーのリーダーを務めるギルさんから連絡が入る。ついに始まった。ここも直ぐに戦場になるだろう。沢山のアラガミがこれからコッチにくるとなると怖くて仕方が無い。深呼吸をして心を落ち着けようとしても上手くいかない。沢山のアラガミがコッチに来るという場面を想像しただけで私の動悸は激しくなって震えが起きる。
何も変わってない。初戦でオウガテイル相手に腰を抜かした時と同じだ。恐怖に身体が竦む。
ーーーーーこれはダメかもしれない。
そんな考えが浮かんだ時、フワリと私の手に温かい温もりが宿った。
「大丈夫ですよシリアちゃん。シリアちゃんは一人じゃないです」
「カノン・・・」
その温もりの主であるカノンがさっきまでの不安そうな表情を消して柔らかく微笑んでいた。
「私達が居ます、ここには居ないけどレオン君やエリックさんも別の場所で闘ってます。皆と一緒なら何とかなりますよ」
「何とかってそこは絶対大丈夫とか絶対勝てるって言うべきじゃないの?」
「残念ながら絶対に勝てるなんて言える程余裕もないですから」
「ハハ、確かにね。でも、うん。そうだね。皆が頑張ってるなら私も頑張らないとね」
カノンの言葉で私の震えが少し軽くなる。まだ恐い。けど、恐怖は悪じゃないから。自分の弱さに向き合うことだから。だから立ち向かえると思う。この恐怖とも闘える。私だけじゃ無理でもカノンが、エリックさんが、レオン君がいる。なら何とか出来ると思う。
「お前ら敵影を発見した‼ 各自戦闘用意。交戦に入るぞ‼」
ギルさんの声が響く。私とカノンは互いに頷き合って神機を構える。そして迫り来る小型アラガミ達に向かって狙撃用レーザーバレット<背向ノ閃光>を撃ち出した。
シリアside out
ーーーーー
ーーー
ー
レオンside in
「皆さん厳しい戦いになると思われますが、出来るだけ生きて帰りましょう。では、作戦を開始します」
リリアさんの静かだが意思の強い声に頷きをもって返す。俺たちは今敵の右側側面にいる。他の場所では既に戦闘が始まっており、偵察用に置かれていたコンゴウも此方に向ける意識が疎かになっており、アラガミの層も薄くなっている。俺たちはそこをついてスサノオ及び取り巻きの大型種に接近、殲滅する。
「レオン。背中は任せて。もう昔みたいに足手纏いにはならないから」
「秋菜の実力は風の噂で聞いてるよ。背中は任せたぜ」
「そういえば二人は同じ支部出身だったわね」
「えぇ。同じ支部の同期です」
「なら連携の問題はなさそうですね。あなた達の動きに期待してますよ」
俺達が喋っている間も敵陣に突っ込んで行く。そしてコンゴウの相手をする班と道中の小型アラガミを掃除するメンバーが次々と離脱していく。
そうして敵陣を切り開いていくとまるで大型種の戦闘場所を確保するかのように周りにアラガミがいないエリア入る。
「大型種を確認! その少し先にスサノオの姿も確認しました‼」
「よし、大型種討伐隊は各自交戦開始。スサノオ討伐隊はこのまま突撃する」
確認出来る大型種は三体。猫が二匹と蠍が一匹。これも報告通りだったので大型種討伐隊のメンバーがそれぞれの敵に向かって突撃して行く。俺達はそれを横目に見ながらヴァジュラの横を抜けてスサノオに接近する。
スサノオはまるで俺達を待ち受けるかのように佇んでいた。その姿は神機使い殺しの名に恥じない神々しさを纏っている。
だが俺達は神々しさなんぞに微塵も影響を受けずにスサノオに向かっていく。俺達の行動から自分と闘おうとしているのにやっと気が付いたのか、スサノオが先頭を走っていたリリアさんを尾についている剣で貫かんとする。だが、リリアさんは冷静に手に持つ自分の神機を振り上げて攻撃を逸らす。それに合わせて秋菜はその銃撃に弱い剣に対してモルターをぶつけ、俺はすれ違いざまに切り裂く。
突然の自体に驚いたスサノオは苦悶の声をあげながら後退する。その隙に今度は三人がバラバラになって違う方向から攻めにかかった。
ここでの俺の役割は二人のサポートだ。ショート使いの俺はスサノオ相手には決定力に欠ける。だから攻撃の主体はバスター使いのリリアさんとブラスト使いの秋菜に任せて俺は神機の結合破壊を狙っていく。神機が壊れれば破砕系と切断系の攻撃が格段に通りやすくなるからだ。
スサノオの神機を振り回す攻撃を身体を沈めて躱し、尻尾による回転攻撃をジャンプで避ける。そうやって何度か攻撃を貰いつつも少しずつ攻撃を加えていく。一進一退の攻防戦が続く中、とうとうスサノオの神機と剣が結合崩壊を起こした。
「グワァァァァア‼」
それにはスサノオも耐えられず苦悶の声をあげる。だが、俺達には結合崩壊を喜ぶ余裕は無い。何故なら、
「グワァァァア‼」
「スサノオが活性化しました。二人とも細心の注意を払ってください」
結合崩壊を起こしたということはスサノオが活性化することを意味しているからだ。俺達が更に集中力を高めるとスサノオは剣を上に向けた。これは光の柱を出す技だ。見るのは剣ではなく地面。何故なら剣を見るために上を向くと地面が光るという攻撃の兆候を見逃してしまうからだ。だが、俺のところにも秋菜やリリアさんのところにも攻撃がこない。その事実に嫌な予感がしてスサノオの剣をみるといつも適当に掃射するガトリング弾を
「二人とも上だ‼」
それにいち早く気づいた俺が二人に警告する。それが功を奏して二人も弾雨に気付きリリアさんはタワーシールドを開いて防ぎ、秋菜は爆発モルターを撃って弾道を変更することで攻撃を防御する。リリアさんと違い装甲が薄い俺は立ち止まることが命取りになるので決して足を止めず迫り来る弾をステップで躱し、剣で斬り裂き、はじいていく。しかしそれで全ての弾丸を防ぐことは出来ず、装甲を掠めて飛んでききた弾が、爆風から逃れた弾が、そして躱し損ねた弾が俺たちに容赦無く降り注ぐ。
それでも何とか凌ぎ切った俺たちに追撃をかけるように神機をプレデターフォームにしてスサノオが襲い掛かってくる。それに対し咄嗟にステップで躱す俺たちだが、さっきの弾雨を防ぐ際に足を止めていたリリアさんと秋菜は一瞬だけ避けるのが遅れた。
「しまった⁉」
その結果直撃こそしなかったものの攻撃の風圧でバランスを崩してしまう。そしてそれを見逃すほどスサノオは甘くない。閉じた神機を横薙ぎに払って秋菜達を薙ぎ飛ばす。スサノオはそのまま秋菜達にトドメをさそうと二人に意識を向ける。が、
「余所見してんじゃねぇ‼」
その前に俺の剣が脆くなったスサノオの神機を斬り裂いた。それによって俺にヘイトが移ったようでやっとスサノオがこちらを向く。
「二人とも、二十秒。それ以上は厳しい」
「それくらいあれば大丈夫です! 星村さんあまり無理しないでください」
俺はそれだけ言ってスサノオの攻撃に集中する。剣による刺突を、神機による薙ぎ払いを、身体を使ったスタンプを何とかギリギリで躱す。対象を俺だけに絞ったスサノオの攻撃は過激で、何発か被弾しつつも何とか捌いでいると後ろからオラクルの弾丸が飛来し、スサノオの口当たりで炸裂した。
「レオン下がって!」
「悪い。すぐ戻る」
俺は前線に出るリリアさんとすれ違いざまにそう呟いてスサノオの攻撃が届かない範囲まで下がり、回復錠とレーションを頬張りつつ体の調子を確かめる。
(体のあちこちが痛む。特に右足が痛むがまだいける。だが、レーションを食ったといえ体力と集中力が限界に近い。見たところ二人も似たような様子だし、そろそろ勝負を決めないとヤバイかもしれないな)
そこまで考えを巡らせた俺は神機を握り直してまた前線に戻っていく。
「二人とも! そろそろ勝負に出よう‼」
「奇遇ですね。私もそれを提案しようと思ってました」
「私も。集中力も落ちてきたし、このまま長引けば不利になる一方だからね」
やはり二人も歴戦のゴッドイーター。このままでは不味いと理解し、リスクのある選択を選ぶ勇気を持っている。強敵と戦う時にリスクを避けているだけでは自分達の敗北=死だということを弁えている。
「星村さんから貰った
「OK。ここが正念場だな」
リリアさんからの指示で俺は懐から一粒の錠剤を取り出す。それはサカキ博士がついこの間完成させた試作品。まだ試作段階だがもしもの時の為に持たせてくれていたそれを二人にも渡してある。
リリアさんは全員が錠剤を取り出したのを確認すると残り少なくなったスタングレネードを投げつけた。スサノオの目の前で炸裂するスタングレネードの閃光。それを見ないようにしながら俺は手に持っていた錠剤を呑み込んだ。
その瞬間やってくる途轍もない倦怠感と鋭い痛み。だがそれも一瞬で次にやっていたのは体の底から湧いてくる力と気力。先程の倦怠感が嘘のように体が軽くなる。
ーー<強制解放剤>
それがこの錠剤の名前。凝縮したオラクル細胞を取り込むことで人為的にバースト状態を引き起こす錠剤だ。
だか当然その反動も大きい。このバーストが切れれば先程の倦怠感が襲ってくる。体内のオラクル細胞を無理矢理活性化させる。この薬はいわば諸刃の剣だ。だから俺たちは何としてもここで勝負を決めなければならない。
いまだスタングレネードの閃光に怯んでいるスサノオにリリアさんのチャージクラッシュが鈍い音をたてて振り下ろされる。それに怯んだスサノオの懐に一息で飛び込んだ俺が神機を中心に連続で斬り裂き、秋菜のモルターが剣と神機にぶつかり爆ぜる。そこへ追い討ちをかけるように振り下ろされるリリアさんのバスターブレード。
今までより連携の取れた動きを今までより遥かに速い速度で行う俺たちにスサノオは後手に回らざるおえなくなる。
このまま倒し切れれば。そう思うがスサノオも黙ってはいない。徐々にだがこちらの攻撃に反応して反撃を仕掛けてくる。
「隊長、もう時間があまり残ってません。最後のスタングレネードを使用します‼」
「分かった。星村くん。聞いての通り次で決める」
「了解しました。俺が撹乱しますからリリアさんは重いのお願いします」
それだけ言って俺は今までの連携の輪を飛び出す。統率の取れた連携攻撃からいきなり単独での猛攻にスサノオは一時反応が遅れたがすぐに俺に併せて迎撃しようとする。だが俺からしてみればその隙が出来ただけで十分な収穫だったので深追いせずに一度後ろに下がる。
それと同時に秋菜が最後のスタングレネードを炸裂させた。
「二人ともこれで決めるよ‼」
チャージクラッシュを決めるリリアさんに続き秋菜のモルターと俺の斬撃が剣と神機を襲う。薬の効果も切れかかっている今此処でどうにかしないといけない。俺たちはスサノオが怯んでる間に何とか勝負を決めようとする。
だが、あと少し届かなかった。怯みから抜け出したスサノオは回転攻撃をする動作を見せる。攻撃動作の最中だった俺とリリアさんは咄嗟に装甲を展開してその攻撃を防ごうとする。が、
---ゾクッ⁉
その瞬間俺の背筋に悪寒が奔る。この感覚はあまり外れたことが無い。殆ど反射的に装甲の展開をキャンセルしてジャンプ回避に切り替える。回避を選択した俺と違いリリアさんは神機の先端を地面に突き刺し、背中で神機を担ぐように構えた。元々重量の重いバスター+タワーシールドの組み合わせなので受けきれるという判断だろう。
---そしてこれが俺たちの運命を分ける
放たれるスサノオの攻撃。しかしその威力は今までのものより比べ物にならないほど重い。
「ガハッ!」
神機を地面に突き刺し全体重でそれを防ごうとしたリリアさんは吹き飛ばされ地面を転がった。回避が間に合わなかった俺は巻き込まれた右足が嫌な音を立てながらリリアさん程では無いにしろ飛ばされる。
「二人とも‼ 今助け・・・」
唯一回避に成功した秋菜が助けに向かおうとするが急にその場に崩れ落ちる。とうとう強制解放剤の効果が切れたのだ。
右足に走る激痛と全身を覆う倦怠感で上手く体が動かせない俺の元にスサノオがゆっくりと近づいてくる。その足取りは勝利を確信しているような、それでいて自分を此処まで追い詰めた俺たちを賞賛するかのような足取りだった。
(クソッ。此処までか。長いようで短い人生だったな)
俺の正面まできたスサノオはゆっくりと剣を振り上げる。それをただ見ている俺の脳裏に今までの思い出が蘇る。
ーー最初に思い浮かんだのは親や家族の顔。共に戦場を駆けた仲間の顔。志半ばで倒れて行った仲間達の顔。
ーー「子供の心配をしない親なんていない。俺たちは何時でもお前の帰りを待ってるよ」
ーー次に思い浮かんがのは神機使いになった当日。俺より少し早く神機使いになったタツミさんとハルオミさん。同時期に神機使いになった秋菜との記憶。
ーー「真壁ハルオミだ。堅苦しい挨拶なんか無視して気楽にいこうや。同期なんだしな」
ーー「大森タツミだ。二人とも頼りにしてるぜ!」
ーー最後に思い浮かんだのは出撃前のやり取り。
ーー「それより私はレオン君が心配です。第一種接触禁止アラガミとの戦いなんて大丈夫でしょうか?」
ーー「俺はそんな柔じゃ無いぜ。絶対生きて帰ってきてやる。だからお前達はお前達の仕事をしっかりこなせ」
ーー「よし、お前ら‼ 全員生き残ってまたこの場所で再開するぞ‼」
そういえば約束したんだっけな。全員生きて帰るって。そういえば俺がいつも新人に言ってたっけ。最後まで諦めるなって。
なんだ。じゃあ俺もこんなとこで諦めるわけにはいかねぇじゃねぇか。最後まで諦めるなって俺が散々言ってきたんだ。痛みは走るがまだ両手も動く、左足も動く。なら、
まだ諦めるには早いじゃねぇか
「ウアァァァァァァ‼」
スサノオが神機を振り下ろすと同時に、俺は仰向けのまま左側に転がってその攻撃を避ける。その結果スサノオの剣は俺のすぐ隣に突き刺さった。その剣目掛けて俺は自分の神機を突き刺した。
「グワァァァ‼」
殺ったと思った相手が攻撃を回避し、攻撃を仕掛けてくる。この予想外の事態にスサノオは堪らず苦悶の声を上げて剣を引き抜く。
俺は神機を剣に突き刺したまま振り落とされなように握り締める。片足が使えない俺が地上で踏ん張ってもどうしようも無いし、機動力を奪われて何時もの戦いを出来ない。
だから俺はスサノオに自身の上空へと運んでもらった。ある程度の高さについた俺はスサノオの
剣から神機を切り裂くように抜いた。そのまま俺は重力に従ってスサノオの口元あたりに落下していく。
「これで終わりだ! スサノオ‼」
上を見上げたスサノオの口に俺の全体重に落下速度を乗せた攻撃が当たり、とうとう行動不能に追い詰めた。
「ハァ、ハァ、ハァ。終わった…のか?」
戦いの決着に安堵する傍らで俺は秋菜の悲痛な叫びを聞いた。
「レオン‼ 隊長が‼」
録に動こうとしない体を何とか動かして秋菜の元に向かうと、そこにはピクリとも動かないリリアさんの姿が、
「秋菜。リリアさんは…」
俺の問い掛けに答えるように確認を終えた秋菜は瞳から垂れる涙を拭きもせずに首を横に振った。
その後の討伐戦は統率者を失ったアラガミ達を神機使いに倒されて終結した。
こうしてロシアで起こった大規模アラガミの討伐戦はロシア支部第一部隊リリア・プーベル以下数十人の神機使いの命と引き換えに幕を閉じた。
まだリアルの時間が取れるようになったわけでは無いのでもう暫く更新速度は遅れると思います。