それでは第十四話スタートです。
「改めまして、シリア・ハウンズの弟のマルク・ハウンズです」
「初めまして。台場カノンの妹の台場コトミです。これからよろしくお願いします」
「よろしく。俺は星村レオン。君たちの姉さんが新人の頃に教育係をやっていた」
「私はシリア・ハウンズ。そこにいるマルクの実の姉よ。カノンとは同期なの」
「台場カノンです。コトミのお姉ちゃんでシリアちゃんとは同じ部隊に所属してます」
あの邂逅から数分後。一回落ち着いて状況把握する為に階段上のテーブルで私たちは向かい合っていた。
そしてお互い初顔合わせの人が居たので取りあえず互いに自己紹介から入った。
「で、マルクは何で
わざとらしく『神機使いとして』の部分にアクセントを置いて向かいに座るマルクに問いかける。
「何でって、それはフェンリルから適合通知が来たからだよ。フェンリルに支援されている以上俺に拒否権なんてものはないし」
「…言い方を変えるね。なんで私に一言の報告もなしで決断したの? 職場の先輩にもなるんだし一言いって欲しかったな」
「いや…まぁ…その、本当は同じ職場にいきなり現れて姉さんを驚かせてやろう。なんていう考えだったんだ。謝るからあんまり悲しそうな顔しないでくれる? このままだと俺が悪いみたいじゃないか」
今回はどう考えても自分に非があることを分かっているのでマルクもあまり強く出られないでいる。
私もそんなに怒っている訳では無いし、マルクも反省しているみたいだからここらへんで許してあげようか。
「分かってくれればそれでいいよ。家族がいきなり危険な仕事に就くっていうのは結構来るものがあるんだからね?」
そこでハウンズ姉弟の話は終わり、次は台場姉妹の話のスタートだ。だがこちらは私たちより随分早く終わりそうだ。
「コトミは何で私に連絡をくれなかったんですか?」
「ごめんねお姉ちゃん。通知が来たのが一昨日だったからドタバタしてて報告する暇がなかったの」
そういって両手を顔の前で合わせるコトミちゃんは本当に申し訳なさそうにしている。マルクと違って悪いと思っているようだ。そしてこれだけで終わるとは、この姉妹の仲の良さが窺える。
これで二つの家族会議が終わったが、ひとつだけ解せないことがある。
「でもそんな急に適合試験をやらせるものなのかな。私の時は一週間くらい前には通知が来たよ?」
「俺もそのくらいだったな」
と私たち姉弟が疑問の声を上げるとその答えはレオン君からもたらされた。
「既に適合試験を受けることが決定していたマルク達のついでにコトミも受けさせた。ってとこじゃないか? あれって結構準備が面倒くさいから出来るなら一気にやりたいものなんだよ」
「なんか理由が凄い適当だけどそんなものなの?」
少し呆れながらレオン君に問い掛けると、苦笑いしながら「そんなもんなんだよ」と返ってきた。
「でもほぼ同時期に配属されるのに自分だけ少し遅れると俺たちと少し壁が出来るんじゃないか? 俺とコウタが男同士だからなおさら」
「確かにそれはありますね。二人より一週間位遅く配属になってたら私こんなに馴染めなかったです。これが本当の理由なんじゃ・・・」
レオン君の答えをよそに弟妹同士でなにやら別の結論に達したようだ。だけどあの支部長はあんまりそんなこと考えないような気もする。
でもここで考えてもどうせはっきりした答えなんて出ないんだから二人が思いたいように思えばいいか。
「そうだ。コトミとマルクは所属部隊について何か言われたか?」
レオン君が二人にそう問いかける。でも配属ってすぐ決まるものだっけ? 私たちは実地訓練まで全て終わらせてから所属部隊の通知が来たんだけど、
私の疑問が顔に出ていたのかレオン君が説明を付け加えてくれた。
「正式は配属は実地訓練が終わってからだがそれまでは仮って形でどこかの部隊に所属するんだ。ま、そのままその部隊の所属になることが殆どだけどな」
「あれ? 私たち仮所属の部隊ってありましたっけ?」
「書類上は第二だったはずだ。二人の場合は所属が第二で教官が俺っていう特殊な状態だったから混乱しないように仮所属の話はしなかったんだよ」
なんと。そんな理由があったとは知らなかった。私がそれに感心してると二人が仮部隊の報告をしてきた。
「新兵の三人は全員が第一部隊所属だったと思います」
「だ、第一部隊⁉」
それを聞いて思わず声を上げてしまう。だって第一部隊だよ。支部の顔ともいえる部隊に新人で配属されるなんて...これはウカウカしてるとすぐに追いつかれるかもしれない。
「ま、一人は期待の新型だし。仮配属で新兵三人を同じ部隊に配属するのはいつものことだからな」
「それって大丈夫なんでしょうか? 第一部隊は一番危険ですし」
「心配いらないぜカノン。第一には俺もいるし、多分教官にはリンドウさんが入る。新兵三人にはきっちり育ってもらうからな」
教官にリンドウさん。第一部隊の隊長で同行した神器使いの生存率90%以上のすごい人。
あの人が教官なら万が一も起きない気がする。
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「そうだ姉さん。一つ頼みがあるんだけど」
「あ、私もお姉ちゃんにお願いが」
軽い雑談も終わりかけたその時、私たちの弟妹からお願いがきた。お姉ちゃんとしては聞いてあげるべき場面だろう。
「俺たち今日はもう用事がなくてさ。ツバキ教官だっけ? あの人に支部内を見て回るように言われたんだけど、」
そこまで聞いて私とカノンはなんだかデジャヴを感じ、次に続く言葉が分かった。なんていったって私たちの配属初日も同じことで悩んだんだから。
「私たちに支部内を案内して欲しいの」
ツバキさん。支部内を見て回らせるなら誰かを案内役としてつけてあげてくださいよ...
「任せてください! 私たちがキチンと案内してあげますね」
「レオン君も一緒に来てくれない? 私たちだけだと説明不足なとこが出てくるかもしれないから」
「分かった。シリア達が迷子にならないように一緒に行ってやるよ」
「レオン君。私、極東支部で迷子になったことはそんなにないから」
「何回かあったのかよ、姉さん」
マルクが何か言ったようだけど私は聞こえないふりをする。そういってられるのも時間の問題。フェンリルの支部って無駄に広くて複雑だからね。下手するとすぐどこだか分からなくなるんだから。それにもう入隊二年目の私が支部内で迷子になるわけが無い。
「あれ? 何かまたデジャヴが...」
意気揚々と支部内を案内する為に区画移動用エレベーターに向かう最中に紡がれたその言葉は私の耳に届くことはなかった。
この後シリアがどうなったか。それは読者の皆さんのご想像にお任せします。
因みにこの頃一人新人でハブられていたコウタは第一部隊のお姉さんに支部内を案内してもらっていたとか、いなかったとか。
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