GOD EATER~神喰らう者達の軌跡~   作:冬刀

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RB発売まで5日を切りましたね。
そういえば体験版でカラー変更を使うとランク4以上の装備を付けることが出来るんですよね。たまたまカラー変更したら装備が変わっててびっくりしました。


あとタイトルを考えるのが辛くなってきたのはタイトルに一語しか使ってないのが原因ですかね?


第十六話 慟哭

区画移動用エレベーターからエントランスに降りると、そこにはいつも通りの喧騒が待っていた。

 

この喧騒を聞くと今日も一日頑張ろうって思えるのは私の中でこの空間が生活の一部になってるってことだよな~。新人の時は自分のことで一杯一杯で喧騒に慣れるとか考えられなかったもん。

 

「おや、シリア君。今来たのかい?」

 

「あ、エリックさん。こんにちは。はい、つい今さっき。早朝の偵察任務に出ていたので」

 

「そうかい。ご苦労さま。済まないね。本当は華麗なる僕の役目なのに」

 

本来偵察任務は偵察班である第四部隊が主に受け持っている。だがご存じの通り極東支部は人手不足なので部隊間での人の貸し借りはよくある。だからエリックさんが気にすることはないのだが、そんなことでも一言労ってくれるのが彼の良いところだ。性格や言動から煙たがれることも多いエリックさんだけど、本当は面倒見がよくて責任感が強い良い人なのだ。

 

「いえいえ。ちょうど私がカウンターに行ったときにあっただけなんで気にしないで下さい。エリックさんはこれから任務ですか?」

 

「ああ。今日はソーマとシリア君の弟君と一緒の任務さ。噂の新型君に僕の華麗なる戦いを見せる日が遂に来たというわけだ」

 

「そういえばエリックさんってマルクとの任務は初めてなんですよね。私もまだなのにどうして先にエリックさんなんですか」

 

新人三人はまだ実地訓練中だからミッションの同行者も限られてくる。いつもは第一部隊の人たちと一緒なんだけど今日は何故かエリックさんが同行するみたい。

 

「まあ家族には華麗な姿をみせたいものだからね。男のプライドってものだよ。僕もエリナに華麗でない姿を見せることはしたくない」

 

それはエリックさんがただシスコンと呼ばれる人種だからだと思うのだが、それは言うまい。何故なら、

 

「エリック!」

 

「おおっと。エリナか。来るのなら事前に連絡くらいくれてもいいだろう」

 

「えへへ~。きちゃった!」

 

背後からエリックさんに飛びつく小さな人影を見つけたからだ。

 

「こんにちは。エリナちゃん」

 

「シリアお姉ちゃん。こんにちは」

 

エリックさんの背中に張り付いて元気よく挨拶してくれたのはエリックさんの妹のエリナちゃん。エリックさんが神機使いになって極東支部に来たのも、療養中のエリナちゃんをアラガミから守るためらしい。そのお陰かエリナちゃんとの仲はすこぶる良好でとても微笑ましい。

 

「済まないねエリナ。僕はこれから仕事に行かなくちゃいけないんだ。だからいい子で待っていてくれないかい?」

 

「えー。せっかく来たのにエリックお仕事行っちゃうの」

 

「何も連絡をしてこなかったエリナが悪いんだ。大丈夫。今日はソーマや噂の新型君もいるからすぐ帰ってこれるよ」

 

「おいエリック。何グズグズしてる。早くいくぞ」

 

エリックさんがエリナちゃんを説得していると、いつの間に来たのかソーマ君がエリックさんを呼びに来ていた。といっても本当に呼びに来ただけらしく私が一言挨拶をしても反応を示さずそのまま出撃ゲートの中に消えて行ってしまった。

 

「…君から見てソーマはどう映っている?」

 

「私から見て、ですか?」

 

その背中を追いながらふとエリックさんがそう問いかけてきた。その瞳には何か悲しみのようなものが宿っていた気がする。

 

「そうですね。一番最初に出てくるのはぶっきら棒で怖い人。ですかね。なんだか周りと壁を作ってて接し方に困る人です」

 

「確かにソーマは人と接することに消極的だ。だがそれはあの噂が関係してるんだよ」

 

「『死神』って奴ですね。私もよく耳にします」

 

ソーマ君に同行した神機使いは殉職率が高いとか、ソーマ君のバースト時間は他の人たちに比べて長いだとか。ソーマ君の近くにいるとアラガミが寄ってくるだとか。そんな噂をまとめてつけられたあだ名が『死神』。私も新人の頃先輩方にソーマ君と一緒の任務に行かない方が良い。なんてよく言われた。

 

「でも私はそんな噂気にしてないです。殉職率が高いのは難易度の高い任務によく行くから。バースト時間だって人それぞれで個人差がありますから特別長くても不思議じゃ無いです。アラガミが寄って来るって言うのも体感ですから本当かどうか怪しいものです」

 

「そうか。シリア君はソーマの事をしっかり見てくれているんだね」

 

「ソーマ君と一緒の任務に行く事は余り無いですけどエリックさんからよく話を聞いてますから」

 

そう言ってエリックさんに微笑みかけると、エリックさんも一言「それは何よりだ」ととても優しい口調で言ってくれた。

 

「あの噂もあって人を遠ざけているがソーマはとても優しい。自分の周りで人が死ぬときソーマはいつもそれを自分のせいにする。以前その理由を聞いたときソーマは『俺は化物だからだ』と言っていたよ」

 

「『化物』、ですか」

 

「だがそんなことは無い。ソーマだって笑うこともあれば悲しむこともある。実に華麗な人間だ。しかし多くの神機使いたちがソーマのことを死神や化物と称す。実に華麗じゃない。彼らは一度でもソーマと対話をしようとしたのだろうか。共に任務に出たのだろうか。ソーマのことを知ろうとしたのだろうか。いつまでも憶測だけでソーマを語らないでもらいたいよ。ソーマはこの僕が認めた華麗なる神機使いなのだからね」

 

ゲートから目を離さず、どこか語りかけるように紡がれたその言葉には色んな感情が籠っていた。私もエリックさんにつられてゲートに視線を向けると沈黙が流れる。が、その沈黙も小さい影によってすぐに払拭された。

 

「じゃあエリナも今度ソーマとお話ししてみる!」

 

元気にそういうエリナちゃんに一度視線を移した後エリックさんと目を合わせて微笑みあう。本当この年齢の子どもは素直で可愛い。

 

「じゃあエリナ、シリア君。僕はこれで失礼するよ。これ以上待たせるとソーマの機嫌が悪くなる」

 

「エリナちゃんは私の部屋でエリックさんを待って居よ?」

 

「分かった。エリック、行ってらっしゃい! すぐ帰ってきてね」

 

「すぐ帰ってくるよ。シリア君。悪いがエリナをよろしく頼むよ」

 

「任せてください」

 

出撃ゲートに向かうエリックさんをエリナちゃんと二人で見送る。

 

「じゃあ私の部屋に行こうか。確かカノン特製クッキーがあったはずだよ」

 

「カノンお姉ちゃんのクッキー! 早くいこ!」

 

カノンのクッキーにテンションがあがったエリナちゃんを宥めながら私は自室へと戻った。

 

―――――

―――

 

私の部屋でクッキーを食べながらガールズトークに花を咲かせていると扉がノックされる。

 

「エリックかな⁉」

 

「カノンは任務に出てるし多分そうだよ」

 

ノックの音を聞いた途端駆け出したエリナちゃんの後に続いて私も扉のほうに向かう。

扉を開けるとそこにはマルクが居た。

 

「なーんだ。エリックじゃ無かった」

 

「なんでマルクが此処に?」

 

確かマルクはエリックさんと一緒の任務に出ていたはずだ。マルクが帰ってきたってことはエリックさんも帰ってきているはず。なのになんでエリックさんじゃなくてマルクが来ているのだろう。

 

「姉さん。その子がエリックさんの妹さん?」

 

「うん。エリナちゃんっていうんだけど…」

 

「姉さん。少し話がある」

 

「分った。エリナちゃん。マルクとお話ししてくるから部屋で待ってて?」

 

「わかった!」

 

エリナちゃんにそれだけ言って部屋の外、自販機の近くまで移動する。

 

「それで話ってエリックさんに何かあったの?」

 

マルクの声に覇気が無く、表情も暗いことから何かあったことは想像できる。さらにシスコンのエリックさんが帰投後すぐに私の部屋に来ていないことからエリックさんに何かあったと見て良い。

私の想像通りエリックさんに何かあったようでマルクは重い口を開く。

 

「エリックさんが…殉職した」

 

「ッ⁉」

 

それを聞いて私の体が強張る。マルクがかなり落ち込んでるから予想はしていた。エリックさんから帰投後何の連絡もないことから想定はしていた。だけどやっぱり言葉にされるとそれは重く私にのしかかる。

 

「その…エリックさんの遺体とかは、」

 

「俺たちが任務を終わらせたときにはもうエリックさんの遺体は無かった。多分俺たちが目を離している隙に」

 

「そっか…エリナちゃんには私から伝えておこうか?」

 

今も私の部屋でエリックさんの帰りを待って居るエリナちゃん。彼女にどう事実を伝えるべきか。その役目は初めて戦場で仲間の死を経験したマルクより私がしたほうが良いだろうけど、

 

「俺が伝える。それはエリックさんと一緒の任務に行った俺の役目だと思うから。だから姉さんにはエリナちゃんのフォローをして欲しいんだ」

 

マルクの目には強い意志が宿っている。これなら任せても大丈夫だろう。

 

「分かった。マルクに任せるよ。エリナちゃんはいい子だからきっと解ってくれると思う」

 

私たちは連れだって私の部屋に戻る。扉をあけるとエリナちゃんは大人しく椅子に座って待っていた。

エリナちゃんは戻ってきた私を見つけると元気に近づいてきた。

 

「シリアお姉ちゃん。お話終わったの?」

 

「うん。それでね、マルクからエリナちゃんに重要な話があるの」

 

私が真剣な声音で言うとエリナちゃんは「じゅうようなはなし?」と可愛らしく小首を傾げてマルクを見る。このエリナちゃんに真実を伝えるには私の精神的HPが足りなかったかもしれない。

マルクはエリナちゃんと目線を合わせてゆっくりと真実を語っていく。

 

「エリナちゃん、よく聞いてくれ。エリックさんはもう帰ってこない」

 

「ッェ?」

 

マルクの言葉に目を丸くするエリナちゃん。幼い彼女にもそれだけである程度の予測がついてしまったのだろう。

 

「エリックさんは今日お亡くなりになった。だから、」

 

「嘘だ‼ エリックはすぐ帰ってくるって言ったもん! エリナの前から居なくならないって約束したもん‼」

 

エリナちゃんはマルクの言葉を頭を激しく振って否定する。そして私の方を縋るような眼で見る。まるでマルクの言葉を私に否定してほしいように、冗談だと言ってほしいかのように。

でも私はその期待に応えられない。エリナちゃんの期待を打ち砕くようにゆっくりと首を左右に振る。

 

「嘘だ…だって…だって…エリックは…」

 

「エリナちゃん‼」

 

エリナちゃんは目に涙をためてそう呟くと部屋を飛び出してしまう。エリナちゃんの走り抜けた場所には涙の軌跡が漂い、それがエリナちゃんの悲しみを体現しているようで思わず後を追いそうになる私をマルクが手で制す。

 

「ごめん姉さん。やっぱり姉さんでもフォローは難しかったよね」

 

「そんなことない! 今からでもエリナちゃんを追いかければッ!」

 

力なく項垂れるマルクにそういうと、マルクは首を振る。

 

「そうかもしれない。でも、エリナちゃんが部屋を飛び出して行っちゃったなら俺たちより適任の人がいる」

 

「適任?」

 

「エリックさんとエリナちゃんの伯父さん。極東での親代わりの人が今エントランスに来ているんだ。勿論エリックさんのことも知ってる」

 

エリックさんたちの伯父さん。私も何回か会ったことがあるけど温厚で良い人だった。二人のことも自分の子供のように可愛がってたしエリナちゃんも心を許していた。あの人がいるなら私が行く必要も無い、か。

 

 

 

私は結局何もしてあげられなかった。

自分の無力さを体感する。神機使いになって戦闘の面ではまだまだだけど無力さを感じることは少なくなった。

でもやっぱり戦闘以外の面で無力感を感じることは未だ多い。この理不尽な世界は常に私たちに試練を課す。

それでも私たちは自分の出来る範囲で努力して、手が届く範囲を広げるしか方法は無いのだろう。なら、エリナちゃんのことは伯父さんに任せて私は今ここで落ち込んでいるマルクのために出来ることをしよう。

 

「ほら。シャッキとしなさい。そんなことじゃエリックさんに華麗ではないって怒られちゃうよ」

 

「姉さん…でも俺がしっかりしてればエリナちゃんのあんな顔をしなくてもすんだんだ」

 

「そうだね。でも私たちはまだ新兵なんだよ。手が届かない場所の方が多い。だから強くなろうとするんだ。手の届く範囲を広げるために。だからウジウジしない。そんな暇があったら少しでも自分を強くしていこうよ。同じ後悔をしないためにも。でも、辛いことだってある。悲しいことだってある。それ全部を後悔を押さえつけて前に進めるわけないよね。だから」

 

そこまでいって私は項垂れているマルクを優しく抱擁する。

 

「その時は私を頼って。私はマルクの家族で、お姉ちゃんだから。マルクの後悔をどうこうすることは出来ない。けど話を聞いてあげられる。今みたいに胸を貸してあげることも出来る。そうやって全て吐き出せば前を向く力がつくから」

 

「…姉さんに人に貸すだけの胸があるのかよ」

 

「その発言はセクハラだよ? 私だって人に貸せるくらいには胸は大きいよ」

 

「そっか…だったら、少しだけ姉さんの胸を借りることにするよ」

 

そのあと暫く、私の部屋には涙をすする音だけが響き続けていた。




あれ? おっかし~な~。今回はエリックさんの死からシリアスendのはずが姉弟の絆endみたいになってしまった。
小説を書くと予想外のことが起こって楽しいですね。


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