GOD EATER~神喰らう者達の軌跡~   作:冬刀

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大変お待たせしました。

春季休暇なのに休暇前より忙しいというよくわからない現象に飲み込まれて1D100のSANチェックをしてきました作者です。

今回はラストがとても難産で、自分でも少し強引な気がしますがそこはご勘弁を。


第十七話 姉弟の合同任務

「そういえば姉さんと一緒に任務行くのって初めてだよな」

 

「そうだね。私楽しみにしてたんだ。マルクと一緒に任務に行くの」

 

走行中の車内でマルクがふとそう漏らす。私もそれに少し感慨深いように返す。

そう、何を隠そう今回が私とマルクが初めて一緒の任務にアサインされたのだ。

私達は現在レオン君が運転する装甲車に乗って贖罪の街まで向かってます。

メンバーは私、レオン君、コトミちゃん、マルクの四人。マルクのほかにもコトミちゃんとも初任務だったりする。

 

「ところで姉さんは任務中いつも通りだよね?」

 

突然問われたその質問に一瞬なんの事か解らなかったが、昨日のマルクの同行者リストを思い出して納得する。

 

(そういえば昨日はカノンとの任務だったよね)

 

カノンの普段とのギャップに驚いてもしかしたら私も、なんて考えたのだろう。確かにいきなり姉の人格が豹変したら嫌だろう。私も出先でマルクの性格が豹変したらついていけないと思う。

 

「心配しない。私はいつも通りだよ」

 

カラカラと笑いながら断言した私にマルクは安堵の表情をする。

と、そこで私はあることに気づいて後部座席に乗るもう一人の同乗者に質問を投げる。

 

「そういえばコトミちゃんってカノンと一緒の任務に出たことあった?」

 

「お姉ちゃんとは二回ほど一緒の任務に行かせてもらいました」

 

「ってことは戦闘中のカノンのことも?」

 

「えっと、はい。知ってます。まさかお姉ちゃんの性格があんなことになるとは思いませんでした…」

 

苦笑いしながらそういうコトミちゃん。その雰囲気からはカノンについての負の感情が一切見受けられない。

どうやらあれを見てカノンの印象が大きく変わる、なんてことは無かったみたいで安心した。もしあれのせいで姉妹仲が悪くなっちゃったら私の責任だから。

 

「三人ともそろそろ贖罪の街に着くぞ。準備しとけー」

 

運転席のレオン君から声が掛かる。外を見てみると確かに贖罪の街外周まで来ていた。

急いで三人で準備をしていると目的地に着いたのかレオン君が車を停止させる。その頃には私たちも準備を完了していて四人で車を降りる。

 

「さて新人ども。今日の相手はボルグカムランとオウガテイル数匹だ。大型種の方は俺が足止めしとくから二人はシリアの指示に従ってオウガテイルの討伐を行ってくれ」

 

「「「了解です」」」

 

「いい返事だ。命令はいつも通り四つ。死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そして隠れろ。可能なら不意を突いて殺っちまえ」

 

それだけ言ってレオン君は崖から飛び降りた。それに続いて私たちも飛び降りていく。そこで左側から獣の咆哮が聞こえて来た。どうやらレオン君は既に戦闘を開始したみたいだ。

なら、私たちも早くオウガテイルを倒してレオン君の支援に向かおうか。

 

「二人とも。私たちもさっさとオウガテイルの殲滅を終わらせてレオン君に合流するよ」

 

それだけ言って前を向くと後ろから元気な返事が聞こえて来る。

一年前の私はアラガミ恐怖して縮こまっていたというのになんだかほんのちょっとだけ釈然としない。お姉ちゃんなのに弟より怖がっていたっていうのは姉としてのプライドに関わるから。

 

「オウガテイルを捕捉。偵察通り一ヶ所に固まってるね。乱戦になるからよく周りを見ながら戦って。私は後ろで支援射撃に徹するから思いっきり暴れてきていいよ」

 

「「了解‼」」

 

「うん、いい返事。じゃあ死なない程度に頑張っていこうか」

 

二人が飛び出したのを確認してから<バーストボム>を使ってオウガテイルの集団にこちらの存在を気付かせる。

こちらの存在に気が付いたオウガテイルの振り向きざまにマルクがロングブレードを振い、コトミちゃんのブラストが火を噴く。不意打ちとして放たれたその攻撃たちはオウガテイルに予想以上のダメージを与えたらしく、そのまま二体のオウガテイルが地に伏せる。残り三体。

でも初撃で二体倒せたのは大きい。そのお陰でマークするべき敵の数が大きく減ったので、私は二人の支援をしながら二人が攻撃しない後一体のオウガテイルを足止めすだけの簡単なお仕事をしているだけで敵の数が減っていく。

ムムム、コウタ君もそうだったけど今年の新人たちは皆優秀だ。要領が良いから飲み込みも早い。これじゃあ私なんてすぐ追い抜かれてしまうかもしれない。

これは本当に姉としてのプライドがピンチだよ…

 

「姉さん、おーい」

 

「…と、何?」

 

「いや、オウガテイルの殲滅が終わったのに姉さんが次の指示を出さずに難しい顔してたから」

 

「ああ、ごめん。オウガテイルのコアを回収したらレオン君に合流ね」

 

マルクに呼びかけられて思考の渦から抜け出す。

 

…まったく、戦場で上の空になるなんて私も随分偉くなったものだ。後輩が出来たから気が緩んだか? 一年間生き残ったから油断が生まれたか? 私はそんな状態で生き残れるほど強者じゃない。まして今はマルクとコトミちゃんの命も預かってるんだ。初陣を思い出せ私。私はオウガテイルにも恐怖してしまった臆病者だぞ。そのことを忘れるな。恐怖を忘れるな。臆病なのは悪じゃない。恐怖するのも悪じゃない。それらを忘れてしまうことこそ悪だ。それらは私たちが生き残る上で重要な感情だ。

 

「スーーーハーーー」

 

目を瞑って大きく深呼吸をする。一回、二回、そしてゆっくりと目を開ける。よし大丈夫、落ち着いてる。私は二人に指示を出してもう一つの大きい広場に向かう。

そこではレオン君が余裕のある動きでボルグカムランの攻撃をかわしてカウンターを的確に打ち込んでいた。あくまで今回は新人二人の為の任務なので私たちは支援に徹する。それが私とレオン君の考え方なのでレオン君の動きも討伐目的というより足止め目的に終始しているように見える。が、その動きには余裕はあっても油断は無い。

 

「来たか、俺とシリアは支援に徹する。二人とも自由に動いてくれ。大丈夫、危なそうだったら俺らがフォローするからな」

 

この説明も装甲車の中で済ませておいたので二人は特に驚くこともなくレオン君と前衛を交代する。

二人ともボルグカムランとの戦闘は初めてらしく、動きや表情には緊張の色が窺える。が、後ろに先輩二人がいることによる安心感からかガチガチに緊張しているのでは無いみたいだ。

適度な緊張は油断や慢心を無くし、動きを洗練させる。二人の動きも新人にしてはかなり状態まで引き上げられているが、流石にそれだけで倒れてしまうほど極東の大型種は甘くない。今も二人の動きに合わせて盾を動かしながら尻尾の針で串刺しにしようと狙いを定めている。

 

 

――まぁ、それをさせない為に私たちが居るんだけどね

 

 

暫く防戦に回っていたボルグカムランが遂に動く。マルクの剣戟に合わせてシールドバッシュを決めて体勢を崩す。マルクもすぐに体勢を立て直そうとするが、その隙を見逃すほど甘い相手では無い。避けることもままならないマルクに必中の確信を持った針が迫る。

コトミちゃんは丁度オラクルが尽きた所なのか銃の引き金を引くもその砲身からオラクルの弾丸が発射される気配は無い。ここまで計算ずくなら大したものだが、おそらくコトミちゃんの方は偶然だろう。だが結果的にマルクには致命的な隙ができ、コトミちゃんはそれに対処することが出来ない。このままだとマルクにボルグカムランの針が突き刺さって大怪我を負ってしまう。

勝利の確信を得たボルグカムランがその必中の針を振り降ろそうとしたその時、その針がマルクの後方から放たれたレーザーにより弾かれ針は明後日の方向に振り降ろされる。

そこでようやくボルグカムランは目の前の二人以外にも敵が居たことを認識するが、そこに至るまでが遅すぎた。既にボルグカムランの盾の裏側まで詰め寄っていたレオン君がその突進の勢いを乗せた渾身の一振りを前足にお見舞いする。事前に散々痛めつけていたその部位はその一撃でとうとう結合崩壊を起こし、地に伏せる。

 

「一気に畳み掛けるぞ‼」

 

「は、はい!」

 

レオン君の声で我に帰ったマルクはレオン君と一緒に神機を<プレデターフォーム>に移行する。

 

「さぁ、食事の時間だ」

 

「喰らいつけ!」

 

アラガミのオラクル細胞を取り込んだ二人がバースト状態になる。そしてマルクは神機を銃形態にしてその砲身から光る弾を一発ずつ私達に向けて発射する。

 

「受け取って下さい!」

 

「これは…」

 

その弾が私に触れた瞬間、体の中心から力が湧いて出てくるような、全身の細胞が活性化したような不思議な昂揚感に包まれる。その昂揚感は力に変わり、体内のオラクル細胞がかつてないほど活性化しているのが解る。

 

――これがバースト化。凄い力が全身から漲るみたい

 

試しに未だ地に伏せているボルグカムランにレーザーを打ち込んでみる。

 

「うわぁッ」

 

普段撃つものより数段強い衝撃に銃口がぶれてレーザーは明後日の方向に飛んでいく。ビックリしたけどこの程度ならすぐ修正出来る。

第一射を参考に調整して放った第二射は今度は私の狙い通りにボルグカムランの針に中りひしゃげさせる。前足と違い、細胞間の結合力が極めて高いので完全に壊すことは叶わなかったが脅威度は大きく下がったので結果としては上々かな。

その光景を見て好機と見たレオン君が二人に指示してボルグカムランに猛攻を仕掛け始める。

ボルグカムランも猛攻を凌ぎながら何とか反撃を試みるが、その殆どがレオン君と私によって妨害されて思う通りの行動ができず、苛立ちを募らせたのか徐々に行動が単調になり始める。

そこまでくればこの勝負は貰ったようなものだ。例え大型種が相手だろうと攻撃が単調ならば極東支部の新人は負けはしない。極東支部はそこまで軟な新人教育をしていない。盾による薙ぎ払いも尻尾による刺突も予備動作がバレバレで新人二人は私たちが援護するまでも無く的確に攻撃をかわしカウンターを打ち込む。そして、

 

「姉さん、コトミちゃん! そろそろバーストが切れるから決めちゃって‼」

 

「わかりました!」

 

「任せて!」

 

マルクの声に合わせて私は腰を落として衝撃に備え、神機の引き金を引く。

神機を通して伝わるのは今まで以上の衝撃。

濃縮されたオラクル弾が発射とともに巨大な針の形となってボルグカムランに向かって飛んでいく。

私とコトミちゃんが放った濃縮アラガミバレットはほぼ同時にボルグカムランに中り、そしてほぼ同時に――爆ぜた。

ふだん近接型神機使いから手渡されていたアラガミバレットとは比較にならない威力を持ったその攻撃にとうとうボルグカムランの動きが止まり活動を停止させる。

 

「討伐対象の沈黙を確認した。ミッションクリアだ」

 

構えを解きながらレオン君がそう言ったのでマルクとコトミちゃんも詰まっていた息を吐き出してピンと張りつめていた緊張の糸を緩める。

 

「二人とも。初の大型種討伐が終わって安心するのはいいけどここはまだ戦場だよ? 警戒を怠ったらダメだよ」

 

二人に一言注意を入れるとまた緊張の糸をピンと張りつめる。…ってそれは警戒しすぎだよ二人とも。

そんな初陣に出てきた新人みたいな様子に私とレオン君が顔を見合わせて苦笑する。

それを見たマルク達も自分が緊張しすぎていたのを自覚したのか少し肩の力を抜いた。

 

「二人ともお疲れ様。帰投準備は済んだか? さっさと帰ってゆっくりしようか」

 

それを見たレオン君が二人を労うように声をかける。捕食は既にレオン君が終らせているので問題ない。

 

「はい!」

 

「了解です!」

 

帰投という言葉を聴いて生き残れたという実感が湧いたのだろう。二人は良い感じに緊張が抜けた明るい声でそれに答える。

装甲車のほうへ歩き出すレオン君の背中を追って駆け出すマルクとコトミちゃん。その光景を少し離れたところで見ながら私は三人の後を追うように歩き出そうとする。が、私が一歩前に踏み出したときに前を歩いていたマルクが突然振り返る。

 

「ほら! 姉さんも早く帰ろう」

 

「今行くよ」

 

予定変更。

三人を後ろから見守るのでは無く、一緒に肩を並べて帰るべく私は小走りで三人の下へ向かった。

 

 

 

 

 

「で、二人とも。初の大型種戦の感想はどうだったかな?」

 

 

 

 

 




今後は少しずつ更新ペースを戻していければなー。と希望的観測をしているので皆さん期待しないで待っててください。
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