「……なるほど。やはり君の精神は地球の人間のものなのか。だとすればゾフィーが態々、俺を呼び戻したのにも納得がいく。もう少し話を聞いても構わないか?」
そう言うとヒカリは腕を組み納得したように頷くと、私に話の続きを促す
あの後、私に攻撃の意志が欠片もない事がどうにか証明された事で私とウルトラマンヒカリは私が寝かされていた作業部屋から出て、すぐ隣にあった机と大型ディスプレイが設置された清潔感のある部屋に場所を移すと正面から向き合う対面する形で『会話』を交わし続けていた
『はい、どうしてこうなったのかは私にも全く分かりません。ですが私は、私の心は間違いなく地球人です。そう思っています』
とは、言っても私は殆ど言葉を発する事は出来ないし、ウルトラサインに使われていたような光の国の文字も流石に表も無しに会話が出来る程に成通している訳でもない
『ありがとうございますウルトラマンヒカリ。意識を取り戻して以来、命懸けの戦いばかりでしたので、こうして落ち着いてあなたと会話できる事がとても嬉しいです』
と、言うのもヒカリが『翻訳用』として取り出したヘッドギア型の装置を装着する事で私が伝えようとしている言葉が自動的にヒカリの横にある空中ディスプレイに表示され、それのお陰でヒカリと会話をする事が出来ていたのだ
「そうか……。しかし、すまないホシカワ。君のその身体を入念に調べては見たが、この星の技術でも君を元の人間の身体に戻すどころか、君がいたと言う元の世界に戻す方法すら見当が付かないんだ……」
そして私はウルトラマンヒカリと言う人物を十分に信用した上で私の真実、つまりは自分がウルトラマンが創作上の存在である世界から来た人間である。と、言う事を早々に明かしていた。が……流石に情報量の多さと混乱、更に私と言うイレギュラーの存在で世界がどう動いて行くかが全く不明な為に、ウルトラマンエース以降の昭和ウルトラマンがどうだとか、平成や令和の特殊な生まれのウルトラマンの事は話さないでおいたが
『そうですか……でしたら残念ですが、仕方ないですね。私はスクラップになる寸前の所を助けていただいた身ですから、これ以上の贅沢は言えません』
申し訳なさそうに謝罪するヒカリを前に私は迷わずそう答える。実際、むしろ私は感謝の言葉でも言いたいくらいにこの状況に感激していたのだ
「(本当に信じられない……! 私はいるんだ、あの光の国に……ウルトラの星に……! 本当の身体じゃなくても……自分の脚で立って空気を感じて……!)」
そう、しつこく言うが私がいるのは光の国。M78星雲にあり地球からは三百万光年離れた通称ウルトラの星。初代ウルトラマンは勿論として多くのウルトラ戦士達の故郷。生前の私が狂おしい程に憧れ夢見た場所であり、小学生の頃、名前を同じくするM78星雲と言う星がオリオン座の方角にあると知ってからは理科の勉強の名目で買って貰った望遠鏡で必死になってオリオン座を睨みながらM78を探し続けていた程に夢にまで見た星。その場所に空想でも夢でもなく私がいる。ウルトラシリーズを幼少期から愛し続けた者にとって、これに全身が震えそうな程に感動しないものがいるのだろうか? それには断じて否と断言しよう
だからこそヒカリが私個人の最低限のプライベートを守ってくれたのか、それとも単に機械の仕様なのかは分からないが私の意思を文字としてディスプレイに映し出すこの装置は幸いな事に、断言こそ出来ないが私自身が『伝えたい』と思っている事しか表示されないようで心底、助かっていた。もし、本当に私が思った事、そのままが伝わってしまうならば、いかにヒカリが優れた人格と知能を併せ持ったウルトラマンの一人だとしても良くて困惑させてしまうだろう
「(あぁ……っ! 正直、仕方ないとは言えエース本編中故に私が来たタイミングがバット星人の戦争後の光の国だと言うのは気掛かりですし、何故かヒカリがいると言うのは既に私の知る歴史からずれているのも心配です……! ですが……! あぁ……それでも光の国に来たならこの場で銀の広場やクリスタルタウンを見てみたい! いや……許されるならウルトラタワーや宇宙警備隊本部も……!!)」
「では次に…………。…………うん? どうした?」
考えれば考えるほど無限に欲望は沸いてくる。一度は死んだ身故にそう言った感情は控えめになるかと思いきや、いざ、こうしてチャンスが目の前に転がってくれば、頭の片隅では会話中に他の考えにうつつを抜かすのは失礼だとは思いながらも、坂を転がるかの如く都合の良い考えばかりが頭の中に次々と浮かんで冷静さを薄め、ヒカリが何かを言ってるのかさえ聞き逃してしまっていた
「(ひょっとすればまだ、宇宙警備隊で訓練中のマックスやメビウス……! 更にはウルトラの父やウルトラの母……! もしかして運が良ければウルトラ兄弟達が会うより先にウルトラマンキングにも……!)」
「ホシカワ……!? ホシカワ、大丈夫か!? 私の声が聞こえているか!?」
「(あえ……?)」
と、そんな妄想に耽っていた最中だった。何処か焦りを感じる様子のヒカリに声をかけられる。その理由を僅かに考え……直ぐに妄想に夢中になってた私を案じてヒカリが声をかけていてくれた事に気が付いた
「(…………ししし、しまったっ! 折角、ヒカリ……ウルトラマンヒカリが私と親身になって会話してくれていると言うのに! 私とした事が光の国に来たことが分かった途端、己の欲望に任せて何と言う無作法を……!)」
その瞬間、受かれていた私の心は冷水を頭からぶっかけられたかのように急降下し、機械の物に変わってるのにも拘らず頭が冷える。と、言う感覚を強く感じた
『申し訳ありませんヒカリ。まだ状況に混乱して頭が追い付いて無くて、つい考え事ばかりをしてしまいました』
その動揺を必死で押し殺し、私は即座に文章を頭に思い浮かべると装置を経由してそれをディスプレイに映し出す
前世で10年間社会人として生きた経験上、こう言う単純なミスをした時にはまず第一声で非を認めて謝罪するに限る。光の国の礼儀作法は流石に見た資料が無いのでこれが本当に正しいのかは分からないが少なくとも私の知る限り彼らの精神は人間と非常に似通っている事が多いのでこれが間違い。と、言うことは無いだろう。……尤も真に反応出来なかった理由を言える訳が無いので『嘘ではない』と言える言葉で誤魔化したが
「……そうか。それも当然か。……すまないホシカワ。起きたばかりの君に少し無理をさせてしまったようだな。今日はもう話は終わりにするから、ゆっくり休んでくれ。この部屋は好きに使ってくれて構わない」
だが、そんな私の言葉をヒカリは真摯に受け取ってくれ、少し言葉を詰まらせると申し訳なさそうに私に向かってそう告げるとそっと、ヘッドギア状の装置を私から外すと、部屋からゆっくり出ていってしまう。当然、後悔はあるがやらかした私にそれを止める権利などある筈もなく、黙って見送る事しか出来なかった
「(あああああぁぁ……。私とした事が何と言う失態……これじゃあ子供の頃と何も変わりないではありませんか……)」
結局、私は激しく後悔しながら部屋に取り付けられたベッドに横たわり、悶々とした思いのまま過ごすことしか出来なかった
……唯一、嬉しかったのは私の使うベッドがウルトラマン物語でウルトラマンタロウが使用していたものとそっくりそのまま同じデザインだった事か
「(光の国のベッドは種族関わらずに、これが主流なのでしょうか…………?)」