皆様、誤字報告いつもありがとうございます
「こ、これは……一体……?」
ディスプレイに正面から向き合い、そこに示された『エースロボット』と仮称されたロボットが示す数値を見てウルトラマンヒカリは驚愕を隠せずにいた
自身が開発した『命の固形化』の技術によるバット星人を中心とした宇宙人達の襲撃が終わり、その責任を感じて放浪の旅に出ていた自身の元に数日前、突如ゾフィーから
『地球人と思われる生命体の命が吹き込まれたロボットを保護した。不確定要素が多く是非、君の力を借りたい』
と、言うウルトラサインを受け取り、常時ならば冷静さを欠かさないゾフィーには考えられぬような様子の文面に緊急事態と判断し帰還を祝う言葉もそこそこにゾフィーの案内の元、件の『エースロボット』が回収されている部屋へと案内され、機体の損傷が酷かった為に修理をしつつ調査を開始したのだが、次第に判明していく事実はヒカリの予想を軽々と超えてしまっており、ヒカリは思わず動揺を露にして叫んでしまっていた
「この『エースロボット』を君は、どう見る? ヒカリ」
その最中、邪魔をしないようにしながらもヒカリの隣に立ち、腕を組みながら思案し続けたゾフィーがそう言って話を切り出す
「お前の言っていた通りだ。この『エースロボット』の内部。正確に言えば頭脳にあたるメインコンピューターから機械とは明らかに異なる生物の精神の波動を感じる。しかし何度、計測しても間違いなく発しているのは他の知的生命体では無く資料にもある地球人の精神の波動だ」
「……! やはり、そうか……。しかし『彼』の身体は……」
「あぁ、間違いなく『エースロボット』を構成するのは100%が人工物だ。生身の部分など欠片も無い」
ヒカリの報告にはっとした様子で返すゾフィーにヒカリが悩みながらも、そう返事を返した途端。二人は揃って黙りこくり、改めて事の異常性を認識すると次の言葉が出なくなってしまった
「……既に修理は済んでいる。俺が直接、一対一で『彼』と話して調べてみよう」
結局、他に有効と思われる方法が浮かばなかった末にヒカリのその案が通り、ゾフィーはディスプレイ越しに別の部屋から見守る形となり『エースロボット』とヒカリの対面が果たされる事となった
◇
「それでは『エースロボット』いえ、その内部に組み込まれていた人物の名前として『ホシカワ・ホクト』に関する報告を説明いたします」
そしてヒカリがエースロボット……ホシカワを休ませてから一時間が過ぎた後、ヒカリを中心としてゾフィー、ウルトラマン、セブン、ジャック、そしてウルトラマンエースと言ったウルトラ5兄弟集結し、報告会議が行われていた
「まずは結論から言えば、やはりエースロボットの電子頭脳部分には確かに地球人の魂そのものに等しいと言えるレベルのれっきとした意志が宿されています。……それも、計測された数値で言えばだと電子頭脳と人間の魂が融合していると言うレベルです」
「その人格である『ホシカワ・ホクト』と名乗ってくれた彼は自分が地球人であった事を、今は機械の身体にある事を自覚して、私の見る限り特に違和感も無く地球人としての記憶をしっかりと持っていました。彼の話では川で事故にあった子供の救助をしていた最中に水を飲んで意識を失い、意識を取り戻すとああなっていたと……」
開口一番にヒカリがそう告げると声をあげる者こそ出なかったものの、周囲の空気が一気に重たく、緊張感を増す
光の国の戦士達、その中でもここに集まっているウルトラ5兄弟は全員が地球を、そしてそこで暮らす地球人達を愛し、今も護り続けている戦士達なのだ。その護るべき地球人がヤプールの手で作られたロボットにあると聞けば動揺しない筈もなかった
「ヒカリ博士。今、その彼……ホシカワはどうしていますか? 機械の身体に変わったことで何か体調や精神に問題は?」
と、重い空気の中、真っ先に地球人の事を案じて手を上げヒカリに質問したのはセブンだ。兄弟の中でも特に地球とそこに暮らす人々を愛するセブンにとっては自らを救ってくれたロボットの中に地球人の魂が封じられていると聞いてとても耐えることは出来なかったのだ
「精神は私が観測し、彼とコミュニケーションを取った限り特に問題はありません。しかし……会話の途中で何か別の事を考え込んだり何かを堪えていた上に、ホシカワ本人から『状況に混乱して頭が追い付かない』と告げられた為に現在は調査を一時中断してホシカワには休んでもらっています」
ヒカリの言葉を聞くとホシカワと言う地球人の精神を案じたウルトラ兄弟により周囲の空気はまた一段と重みを増す。彼等からが知りうる情報では、ホシカワと言う地球人は自らの身も省みずに命をかけて他者を救おうとする心優しき生命体。正に自分達が守ろうとした心優しき地球人の姿そのものにしか思えなかった。が、彼等にとっての衝撃はこれだけでは終わらない
「……そして、もう一つ。ホシカワについて報告すべき大切な情報があります」
「彼は地球人なのには間違いないのですが……来たのは我々の知る『地球』とは異なるようで……。彼の語る話を信じるならば、そこは我々ウルトラ戦士が創作物の存在とされる世界。いわゆる並行世界の地球からホシカワはこの世界へとやってきてしまった……。と、ホシカワ本人は教えてくれました」
『なっ……!?』
その言葉に今度こそ動揺を隠せるものはおらず全員から思わず声が上がった
「待ってください! それでは彼は仮に機械から元の人間の身体に戻れたとしても……!?」
告げられたその事実を信じられない。いや、信じたくは無いと言った風な様子でジャックはヒカリへと告げる。
「……はい。私達がその世界を認識していない以上は、我々の知る地球に送り届けた所でそこは彼にとっては別の『地球』。……そこに帰る場所は無いでしょう」
『……………………』
ヒカリの言葉を受けると今度こそウルトラ兄弟達はあまりにも残酷な事実を前に今度こそ何も言えなくなってしまい。沈黙が辺りを包み込んだ
「……何故、ヤプールは態々これほどまで手間をかけてホシカワをロボットに……」
その重苦しい沈黙を破り、思い悩みながらも純粋な疑問をウルトラマンは口にする。それは特定の誰かに向けて問い掛けたような質問では無かった……のだが
「兄さん達の話を聞いて俺なりに考えたのですが……これは我々への無力感を極限まで煽るヤプールの作戦だったのかもしれません」
その疑問に、この場に揃ったウルトラ戦士の中で最もヤプールと言う存在に詳しく、今まで感情を堪えるように沈黙を貫いていたエースが答えた
「兄さん達が拘束されて行動出来ない状況で、俺に似た姿のロボットに地球人の魂を封じ込めて新型兵器の実験台にして破壊する事で……平和を守るべき技で俺の姿をしたロボットを破壊するのと同時に守るべき地球人が殺された事実を告げる。……ヤプールならば手間をかけて、そんな悪辣な作戦も立てうるでしょう」
「…………!」
エースの言葉に再び兄弟の間に衝撃が走る。ヤプールの危険性、残忍性は十分に理解しているつもりだった。しかし、それでも尚、今回のエースの予想が当たっていたとしたらそれは想像を超えた悪趣味極まる策であった
「ヤプール……なんと言う奴だ……! もし彼が奮闘してくれなければ我々は目の前で……!!」
訪れていたかも知れない最悪な結末を予想し、堪えきれない様子でセブンが声を震わせながらそう言う。兄弟達が近くにいる分、まだセブンは幾らかの冷静さを保てていたが一人ならば結果は同じだったとは思えない程、怒りを堪えるのが困難だったのだ
「気持ちは私にも良く理解出来るが……。セブン、今、悔やんでばかりではどうにもならない。今、私達がやるべき事は2つだ」
その時、セブンの怒りに弟達が影響されそうになった瞬間、ゾフィーが努めて落ち着いた雰囲気で言い聞かせるように告げる
「まず今回のような事件を再び起こされぬよう、より一層、ヤプールに対して警戒を強める事」
「そして……何としても今回、逃げもせず私達を救おうと勇敢に戦ってくれた彼を、ホシカワを守り抜く事だ。……彼をヤプールに破壊させるような事があってはならない……!」
ヤプールに対する更なる警戒強化とホシカワ・ホクトの保護の意思がウルトラ兄弟達の間で誓われたのだが、当然ながら当人、エースロボットに転生してしまった男、星川がそれを知るよしは無かった