超人転生   作:塩ようかん

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12話 星川の決意(表)

 

「(う……目が……覚めましたか……)」

 

 微睡みから意識が覚醒し、視界に光を感じると、ゆっくりと私は上半身を起こす。既に機械のこの身体に瞼は無いと言うのは理解しているが、それでも人間であった頃の癖か私は無意識のうちに目元を数度程擦っていた

 

「(あれからどれくらいの時間が過ぎたのでしょうか……)」

 

 光の国と言う異星だから当然とは言えるのだが、私が寝ていた、この柔らかい緑色の光が降り注ぐ清潔な部屋には居心地こそ決して悪くは無いが地球人の私が分かるような時計は部屋には見当たらない。なので体内時計……と、言う名の直感に頼るしか無いのだが

 

「(……そこまで精神がまいってた訳でもないですし1~2時間くらいですかね? 何となく……感覚では……ですが)」

 

 この私の身体は生身とは異なる為に『寝ていた』と言う感覚こそあるのだが、いかんせん寝たからと言って身体の疲労が取れた感覚等は全く感じられない為に私は自分の頭の中で適当な数字を捻り出し、果たしてこれが正しいのかどうかと答えの出ない答えを求めて頭を捻ることしか出来なかった

 

「……ホシカワ。俺だ、ヒカリだ。入っても構わないだろうか? ……もし大丈夫ならば扉をノックして伝えてくれ」

 

 と、私がそんな思考をしている最中、部屋の入り口の扉の前からヒカリの声が響いた

 

「(……っと、これは助かりました。このまま一人で考え続けていても無駄な時間だけが過ぎるだけでしたからね。何より……! 先程ヒカリにしてしまった非礼を返上しなくては……!)」

 

 そう思うや否や、私はベッドを寝ていたベッドを飛び降りると扉へと向かって真っ直ぐに歩き出す。生前、低血圧気味で寝ていた状態から急に起き上がると立ちくらみに悩まされてた私にとっては立ちくらみも目眩も起きないこの機械の身体が、一刻も早くヒカリに返事を返したい今、この時だけはありがたいなと思いながら私はドアを三度叩く。と、すぐにドアが開きヒカリが姿を見せ

 

「やぁ、突然ですまない。顔を直接、合わせると言う意味では、はじめまして……に、なるのかな」

 

「……!?」

 

 その瞬間、ヒカリの背後から姿を見せた人物に私は心底、驚愕させられた。冗談ではなく掛け声以外ではまともに声が出ないこの身体では無かったらきっと部屋中に響くような大声をあげてしまっただろう

 

「私は、宇宙警備隊隊長のゾフィー。どうしてもホシカワ、君と直接話してみたくて立ち寄らせて貰った。構わないかな?」

 

 そこにはウルトラ兄弟、栄光のNo.1にして長男。宇宙最強と呼ばれる必殺のM87光線を持つ、ゾフィーがそこにいた

 

 

「さてホシカワ……君にいくつか質問をしたいのだが……体調に問題は無いか」

 

『はい、いつでも構いません。今は休息のおかげで落ち着いてます』

 

 誘導される形で部屋に設備され椅子に腰掛けると、ヒカリが再び私に会話用のヘッドギアを装着してくれ、私は正面から向き合う形でゾフィーとの対話をする事になった

 

「(ゾフィーが私を気遣ってくれている……。まぁ、そりゃあヒカリとの対話で興奮していたとは言え急に押し黙って返事もしないような真似をしたらおかしくなったと心配もしますよね……。本当に不覚です)」

 

 口を開くなりゾフィーが気遣う言葉をかけてくれた事で申し訳なさや罪悪感でいたたまれない気持ちにかられながら、だからと言って同じ轍を二度も踏む訳にはいかない。私は自分の感情を押さえ込むと、出来るだけ早く自分の伝えたい言葉を頭に纏めモニターに映し出す

 

「そうか……なら、構わないが……もし少しでも異変を感じたり調子が悪くなったりしたりしたら遠慮無く言ってくれ。すぐに質問は終了して私達に出来るだけのケアを君に行おう」

 

『いえ、そこまで私に気を使ってくれる必要はありません。私としては保護して私のこの身体の修理をしていただいただけで十分に感謝仕切れない程に感謝しているのですから。……とは言え勿論、必要以上の無理は当然しませんが』

 

 どうやら私が考えていたよりゾフィーは私の事を思いやってくれていたようで、しきりに私の体調を伺ってくれている。だからこそ私はその必要が無いと言う事を伝えつつ、彼等の気持ちも無駄にしない言葉をひねり出してゾフィーに告げる

 

 実際、いくらウルトラ戦士達が人間より高い精神の持ち主だと言っても、私がゴルゴダ星で意識を失った時点で訳の分からない存在として放置されたままの可能性はあった。だからこそ私は心底、私を拾って修理してくれたウルトラ兄弟達に感謝していたのだ

 

「…………そうか。君がそう言うのならば、それで構わないとも」

 

「(あ、あれ……?)」

 

 が、その言葉にゾフィーは少しだけ言葉を淀ませる。それは決して良い様子の返事には感じられず、私は内心で少しだけ焦りを感じた。声色からしてゾフィーが不快には思ってない事だけは分かるが何処か憂いがあるように感じ、自分が何か気付かぬ所で早々に言葉を誤ってしまったのかと一気に不安が溢れ出す

 

「それじゃあ早速、質問を始めようホシカワ」

 

 と、そんな風に私が勝手に焦っている間にゾフィーは既に気持ちを切り替えたのか先程までの憂いが消えた口調で質問を始めて来た

 

「(……気になりますが今、ここで迷って再び気を使わせてしまう訳には行きません。ここは……)」

 

『はい、何でも聞いてください』

 

 だから私は胸の中に沸いた不安をぐっと堪え、今はゾフィーからの質問に答える事に集中する事にした

 

「では……まず最初にとても言いづらい話をしなくてはいけないのだが……ホシカワ。……現状では私達の技術では君を元の人間にしてやれる手段が無い……。……すまない」

 

『………………』

 

 とても言いづらそうに私に告げるゾフィーの言葉を聞いて、私は押し黙る。勿論ショックはあった、やはり本当の私の身体、特にこれと言って優れた容姿でも人に誇れるような特技も持ってはいなかったがそれでも30年の付き合いだった私の身体、惜しくない筈も無かった

 

 

「(でも……それでも……。私は最後に最後に『ヒーローになりたかった』なんて願って自分の意思で無くても……不本意な形でも……転生して何の苦労もしないで力を手にしたんだ。だったら私は……)」

 

「勿論、君が元の身体に戻る為のアプローチは引き続き行う。方法が見つかるまでの間、君の事は我々が責任を持って必ず守り抜こう。安心してくれホシカワ」

 

『いえ、ゾフィー隊長。とてもありがたい話なのですが……』

 

 心から私を思ってくれているゾフィーの言葉を遮る事を申し訳なく思いながらも、私は自分の想いを語り出す。ここを、ここだけは譲るわけには行かなかった

 

 普通に考えればゾフィーが提案してくれているのは迷わず賛同すべくようなありがたい話でしかない

 

 何せ光の国の住人はベリアルやトレギアと言った極々僅かしか悪人はいない上に何より地球に好感を持ってくれているウルトラ戦士達が大勢いる。私は、これから先、光の国を揺るがすような事件が起こる事も知ってはいるが彼らなら命を懸けてでも私を護ろうとしてくれるだろう

 

「(あぁ……でも……それでも……)」

 

「(例えこの姿が偽物だとしても……『護られているだけのウルトラマンエース』なんて……私自身が何より許せません……!)」

 

 そもそも私は生前から少しでもウルトラマン。その中でもエースのようなヒーローに憧れて、少しでも近付きたくて学生時代は勉強、筋トレ、格闘技に、水泳を初めとしたスポーツまで無作為に手を伸ばし、どれにも出来るだけ力を入れて挑んでいた

 

 だが、しかし所詮私は『ウルトラマンに近付こうとして』始めた身でしか無い。そのいずれも本気でその分野が好きで取り込んでいた人間には熱意で勝てる筈も無く、どの分野でも決してトップクラスにはなれず、その事実に気が付いたそう言う意味では私も生前から『偽物』だったのかもしれない

 

 だからこそ私は

 

『ゾフィー隊長、どうか私をこの星で鍛えてください。私自身の身を護る為だけではなく……宇宙の平和を護る為、戦えるように』

 

「………………!」

 

 私の言葉にゾフィーが驚愕で息を飲む声が聞こえる。我ながら唐突な話だとは思うが事実、それが私の偽りならざる本心であった

 

「(……まぁ、本当はそれ以外はこの体や技が偽物だとしても『ウルトラマンエースこそ最強のウルトラマン』と言う私自身の超個人的意見を証明したいのも大きいのですが……)」

 

 そう、ウルトラマンに嘘を吐く理由など無い故に確かに先程ゾフィーに言った言葉は間違いなく本心。ただ、心の中で思っていたこの言葉だけはあまりにも個人的で趣味に走りすぎている為に、ただでさえ失態を取り返そうと良好な関係を作りたい今は控える事にしておいた

 

「……分かった。君の気持ちを尊重して、その話は慎重に考えておこうホシカワ」

 

「(とりあえず……即座に否定されないと言うことは私にある程度の信頼を置いてくれていると考えるべきですね……。よ、良かった……)」

 

 一先ず、反対の言葉が出ては来なかった事に安堵した私はそれから慎重にゾフィーの話に答えていくのであった


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