『いえ、そこまで私に気を使ってくれる必要はありません。私としては保護して私のこの身体の修理をしていただいただけで十分に感謝仕切れない程に感謝しているのですから。……とは言え勿論、必要以上の無理は当然しませんが』
ヒカリに頼み込んでホシカワとの対面を取り付けたゾフィーは質問が始まって早々の所で告げられた言葉に思わず息を飲む
「(これほどの過酷な状況に晒されていると言うのに……心が強いな彼は)」
過酷な状況に立たされ、それを理解している筈なのにも関わらず特に動揺もせず語るホシカワに自然とゾフィーは内心で感嘆の声をあげる
「(私達でさえ未だに理解しきれないような突飛もないこの現状で、ただの地球人でしか無いホシカワがこれ程までに落ち着いているとは……私は地球人と言う存在を未だに見くびっていたのだろうか? いや、しかし……)」
勿論、弟達のように長く地球に滞在した経験はこそゾフィーには無い。しかし弟達からの報告や数少ない経験ながらもゾフィー自身も地球に赴いて地球の人々と交流した事もある。しかし、それと比べてもあまりにも目の前のホシカワと言う青年から感じる落ち着きはゾフィーから見て少々異端にさえ見てとれた
「…………そうか。君がそう言うのならば、それで構わないとも」
だからこそゾフィーはホシカワの意思を尊重する形で必要以上に踏み込まずにその提案を受け入れ、予定どおり質問を始める事にした
「(それに……どうしても今、私は事実をホシカワに伝えなくてはいけないのだ。これを隠せば彼を後々余計に苦しませてしまう事もあり得る。それに何より戦士でも無いのに命を懸けて私達を助ける為に戦ったホシカワに対する侮辱だ。……例えそれが彼にとって残酷な事実でも)」
事実、会議の後からここに来る直前までゾフィーはヒカリを交えて何とかロボットの身体に封じ込まれたホシカワと言う地球人を元に戻してやれないものかと方々に手を尽くしていた。が、やはり光の国の宇宙科学技術局の力を持ってしても今回の一件は不可解としか言いようが無く、ベテランからルーキーまで屈指の頭脳を集めても尚、具体的な光明は見えてこなかった
「(だが、だからと言って諦める訳にはいかない。何としても彼を元の身体に戻して彼が来たと言う地球に送り届けるまでは何としても守り抜いて見せる。それが私達が成すべき責任だろう)」
そう考えたゾフィーは真実と共にありのままの思いを隠すこと無くホシカワに伝えた。のだが、その言葉を途中で遮るように放たれたホシカワからのメッセージに再びゾフィーは驚愕させられる
『ゾフィー隊長、どうか私をこの星で鍛えてください。私自身の身を護る為だけではなく……宇宙の平和を護る為、戦えるように』
「……………………!」
今度こそゾフィーは動揺を隠せはしなかった。同じくこの場に立ち会っているヒカリをもまた驚きを隠せない様子でホシカワとゾフィーを交互に見ていた
「(彼は戦おうと言うのか……自分が置かされた現状を理解しても……自分の安否よりこの宇宙の為に……!)」
実のところホシカワ保護に向けて即座に動き出したのはホシカワを身を案じる意図の他にもう1つある
それはゾフィーとしても光の国としても決して快くは思えない事ではあるが、人間の精神しか持ち得ぬホシカワが封じ込められた身体が光の国でも有数の力を持つウルトラマンエースと殆ど変わらぬ程の力を持ち、そして尚且つその身体を製作したのが狡猾で何度も地球人やエースを苦しませたヤプールだと言う事実
何より人間とは比べ物にならない程大きなその力にホシカワ自身が溺れてしまったり、悪意を持つ宇宙人に発見されて利用される等、宇宙の平和を乱す事に強大な力が向けられてしまう可能性から『監視』。……本当に最悪の場合はそこから被害を最小限に抑えるべく武力による鎮圧を即座に起こせる為に、と、言う意味合いもあった
だからこそこの状況下でホシカワが『平和を守るために戦いたい』と言い出すのはゾフィーにとっては完全に予想の外にある答えだったのだ。さながらその精神は本当に光の国の戦士のようで──
「……分かった。君の気持ちを尊重して、その話は慎重に考えておこうホシカワ」
数秒の葛藤の後、ゾフィーはそう言ってホシカワの言葉を否定せず受け入れ、そう返答する
無論、ここでホシカワの提案した事はその戦うと言う以上、どうしようもなく危険である事は避けられないうえに、これが切っ掛けで当初から恐れていたような事態になる事も予想できる。それに仮にこの提案を自分が突っぱねたとしてもそれが原因でホシカワが問題行動を起こすことは無いだろう。と、言葉を交わした短い時間でゾフィーは考えていた
「(だが、そうだとしても私は……私はホシカワと言う一人の人間を信じてみたい。何の打算も無く、決して逃げずに戦った彼を……私達を信じてくれている彼を……)」
だからこそゾフィーは理論より己の直感、そして何よりホシカワと言う人間を信じる事に決め、順当にホシカワへの質問を続けていくのであった
◆
「……と言う次第で私は彼の要望を受け入れ、宇宙警備隊で戦士としての訓練を受けさせる事に決めました」
その一言が告げられた瞬間、囲むように立つ周囲のウルトラ戦士達の多くからざわめきが起こる。そこにはゾフィーの判断に対する抗議は無い。……が、困惑が強く現れていた
「しかし勿論、万が一に備えて彼の監視を兼ねた警護は続行します。定期的なメンテナンスも行ってヤプールからの干渉を防ぐ措置も行う事を既に宇宙科学技術局からも承認を得てます」
現在、ゾフィーがいるのは銀の広場。そこには以前に兄弟だけで行われた緊急会議とは異なり、ウルトラ兄弟を中心として宇宙警備隊に所属する多くの戦士、さらには勇士司令部の上層部までもが集結しており、その中心に立つゾフィーはこの場の代表であるウルトラの父の前に立ち、報告を続けていた
「そして、彼に戦士としての修練を付ける役割ですが……私自身が担当するつもりでいます」
『!!』
ゾフィーのその言葉に驚愕の声が響く。が、それに反対する声は無い
当然ながら、ここに集まっている者達の中にウルトラマンエースを、そしてその強さを知らない者はいない。故に全くエースと同じ力を持つと言われる存在を相手にする以上、その監督役には不測の事態が起きても対処できる程の力量は必須となる
その点から言えばウルトラ兄弟の長男であり、知能と実力も申し分なく、長い付き合いの中でエースの使う技をも知り尽くしているゾフィーは最適解の一つ……と、判断できた
「分かった、君の提案に反対する理由はない。彼の事は言う通り君に一任しよう。頼んだぞ、ゾフィー」
ゾフィーの話を全て聞き終えるとウルトラの父はそう言ってゾフィーの意見をそのままの形で了承した
「報告によれば彼……ホシカワは訳も分からないまま戦いに巻き込まれ、それでも逃げずに戦って君達ウルトラ兄弟の窮地まで救って見せる程の強い心を持った人間だそうだな。そんな彼が今度は誰かの為に再び戦おうとしているのだ……私はその気持ちを信じてみたいんだ」
「だからゾフィー、どうか彼を支えてあげてくれ」
「はい、必ず……!」
ウルトラの父の言葉にゾフィーはそう力強く頷いて答えた
こうして星川の知り得ぬ所で彼の評価はどんどん上がっていったのだが……それを彼自身が知るには、あともう少々ばかり長い時が必要であった