「(な、何ですか……一体何が起こっているんです……これ……!?)」
ゾフィー隊長との対面での一対一での訓練が始まって既に3日。私のブランクにより鈍っていた格闘技術もどうにか少しは戻ってきたのでは?と、思う程度には戻り漸く一歩は進めたかと思えるようになってきたある日、いつものように訓練所を訪れたある日、私はそこで見た信じがたい光景に思わず硬直させられていた
「やぁ、君とこうしてしっかり向き合って話すのは初めてかな? 初めまして、ホシカワ」
そこにいたのは昨日のように業務の合間を縫って来てくれたゾフィー隊長だけでは無い、ゾフィーと顔の作りこそ(地球人である私視点では)似ているが左腕に装着されたブレスレットが訓練所のライトに照らされて目映く戦士にしてウルトラ兄弟のNo.4。地球のファンの間では今尚多くの呼び方で呼ばれ、もう一人のスペシウム光線の使い手と呼ぶべきヒーロー
帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックがゾフィー隊長の隣に立ち、私に、まるで街中で挨拶をするように友好的に挨拶を送って来てくれていた
これだけで既にゾフィー隊長とほぼ1日訓練を共にした事で得た、雀の涙程ではあるがウルトラ戦士達が生活のすぐ側にいる事実への『慣れ』はさながら必殺光線を浴びせられた死に際の怪獣の如く爆発四散して行ったがそれだけではない。更なる事に私は気が付いてしまったのだ
「(そして……そして……あの展望席から私を見ているのは……!)」
そう、私とゾフィー隊長が昨日も訓練を行っているこの訓練所は教官のウルトラ戦士が手本を見せるためなのか、あるいは逆に生徒のウルトラ戦士のテストに使うためなのか、訓練所全体を上から見下ろせるような位置に席が作られている
それ自体はごく普通の事であったが問題なのは遠目でも分かるほどに膨大なオーラを隠さず、二人肩を並べて私に視線を送る二人の戦士
かたや地球人を最も愛してくれた戦士であり、地球では放送されて半世紀以上が過ぎても今尚不動の人気を誇り、ウルトラマンゼロの父親たるヒーロー、ウルトラセブン
かたや彼を無くしては決して語れない全ての始まりにして、歴史と常識を塗り替え、日本どころか世界に轟き、子供も大人も憧れる伝説のヒーロー、初代ウルトラマン
長らく語ってしまえば、この訓練所に今も地球で戦っているであろうウルトラマンエースを除いたウルトラ兄弟の大半が集結していたのだ
「(ま、まだ三日目だと言うのに……こんなにウルトラ兄弟が集まるなんて……本当に一体全体なんなんですか!? これ!?)」
全く予想の範囲外にあった出来事に私は脳内で激しく混乱と困惑を繰り返し、結果としてその場から指一本動かすことは出来なかった
◆
「……すまないホシカワ、いきなりこんな大人数で現れて困らせてしまったかな?」
そうやって私がいつまでも硬直している時間が長かったのを心配したのかジャックは少し申し訳なさそうな口調で私に話しかけて来てくれた
「(と、いけないいけない。何回同じ轍を踏むつもりですか私は。いくらなんでもいい加減に慣れないと私自身が恥ずかしい思いをするだけですし、彼等に迷惑をかけてしまいます)」
『……………………』
その言葉でどうにか正気を取り戻した私はジャックの言葉に返答するべくゆっくりと首を左右に振り、何ら問題が無いことを伝える
「そうか……それならば話を初めても構わないか?」
『………………』
幸いな事に私の行動をジャックは特に気にした様子もなく、そう言ってくれたので私は今度はゆっくりと頷く事でそれに返答する
「今回は私がゾフィー兄さんに無理を言って君の訓練の様子を直接、この目で見て、自らの身体で感じてみたいと頼んだんだ。そうしたらマン兄さんとセブンさんも君に興味を持っていてね、私に付き合ってくれたんだ」
「私は道場で指南役をやっている身だし……あの時、君に助けられた者としては是非に……と、思ってね。どうだろうかホシカワ」
「今日はゾフィー兄さんではなく訓練相手が私でも構わないだろうか?」
『……………………』
ジャックがそう言ってくれた言葉に私は困惑する。確かにあの時、私は自分の意思でブレスレットを拾ってジャックを助けた。しかしながら、それは今になって考えてみれば、あくまで私自身が追い詰められた中で自分の身を守る為の打算的な行動に過ぎず、到底ウルトラ兄弟から認められるような『正義』の行動とは言い難い。
……言い難い。と、私自身は思っている。の、だが、だからと言ってここで折角ジャックが誘ってくれたのを拒絶するのは礼儀に反する。だからこそ答えなど最初から私の選択は決まっていて
「そうか……! 引き受けてくれるか、ありがとうホシカワ!」
結果から言えば失礼に当たらない程度の時間に押さえて私はジャックに頷く事で了承の返事を出した
「兄さん達の目があるが必要以上に緊張する必要は無い。今の君に出せる全力を私に見せてくれ!」
「(いやいや……ウルトラ兄弟に囲まれて『緊張しない』ってのは無理ですよ……!)」
まぁ、だからと言って当然ながら私の精神が安定する筈もなく、心の乱れが動きに出ないよう必死になりながら私はジャックとの模擬戦を開始するのであった
◆
「セブン、ホシカワの動きだが……君はどう見る?」
ジャックとホシカワの訓練が始まって数分が過ぎ、今の今まで一言も話さずじっとその様子を観察していたウルトラマンとセブンであったが、不意にウルトラマンが口を開き、そうセブンに問い掛ける
「……そうだな、あくまで俺の所感、になるが……構わないか?」
ウルトラマンの問いにじっと腕組みをしながら今も尚、ジャックとの模擬戦を続けるホシカワの様子を見守りながらセブンは言葉を思案するように語りだす
二人の足元では隙を突かれたホシカワがジャックに脚を払われ、投げ飛ばされていた。が、すぐにホシカワは機械音を響かせややぎこちない動きで立ち上がると再びジャックへと立ち向かっていく。模擬戦が始まってから変わらずこの状況は続いており、何度倒れようがホシカワはジャックに挑むことを止めなかったのだ
「あの戦い方……改めて今の彼が端末を通してでしか我々との会話が成り立たなくとも伝わる。……あれは俺がこの目で見た懸命に困難に立ち向かう地球人そのものだ。含む所など欠片もない」
だからそれを見たセブンはかつて地球で肩を並べて戦った地球の人々を思い出したのか、嬉しそうながらも何処か寂しそうに、そう言いながら、ホシカワを肯定する
「……私も同意見だ。念には念を入れたこの視察だが……やはりホシカワ自身は心から信頼できる存在だと私も思うよ」
セブンの言葉にウルトラマンもまた同意する。確かにジャックの言う通り、今回ウルトラ兄弟がここまで多く集結してまでホシカワの戦闘訓練を視察しているのは大きな目的がホシカワの安否確認の為である。が、しかしそれを兼ねる形で目的は一つ、ゴルゴダ星の時のように意識が朦朧とした状況ではなく、真に落ち着いた状態でホシカワの戦闘を見て、万に一つでもその精神に邪な物がないか徹底的に見直す、その最終確認の為も兼ねてのものであったのだ
「これで最早、僅かも迷うことは無い。我々宇宙警備隊は引き続きホシカワを護り、その行く先を支援していくとしよう」
こうしてホシカワはまたしても本人の知らぬ所で己の評価を順当に上げていったのだが、当の本人とは言えば
「(な、何と言う事ですか……今のは……今のは間違いなく『ウルトラ投げ』! 勿論、私が相手ですから手加減してくれてますけど! あの大逆転でナックル星人を撃破した技!! まさか私が受ける事になるなんて……!! か、感動だ……!!)」
そんな事はつゆとも知らず、ジャックからウルトラ投げを受けて大感動していたのであった