「た、隊長………なんでしょうか……アレは一体……」
絶体絶命の危機から脱し、漸くTACが落ち着いて周囲の様子を見れるようになった最中、その場にした全員の脳裏に浮かんでいるであろう疑問を代表するように山中隊員は呟く
今、彼らの目の前ではヒッポリト星人が銀色の両腕でガッチリと組まれたヘッドロックの拘束から逃れようと両腕を激しく動かして暴れ、周囲に土煙と轟音を撒き散らしていたのだ
『………………………!』
暴れるヒッポリト星人の抵抗による攻撃を受け、多少よろけながらも声も殆ど発せず決して拘束を続ける銀色の両腕を持つ主は一見すればウルトラマンエースそのものに見えた
が、しかしその両腕、両足、そして首や腹部には明らかに生体とは異なる金属製らしき黄金色のパーツが取り付けられており、何より両者が戦うその背後では彼が現れる前と変わらずエースを始めとしたブロンズ像へと変えられたウルトラ兄弟の姿があった為、それが益々『アレは何者なのか?』と、TACのメンバーを困惑させていた
「私にもあれの正体は分からない……だがしかし、それでも確実に今、理解できる事はある」
隊員達から迷いと戸惑い、両方が込められた視線を向けられた竜隊長はヒッポリト星人と死闘を繰り広げるエースに似た謎の戦士の姿をじっくりと観察しながら口を開く
「彼は我々の味方のようだ。所々、戦い方に未熟な部分はあるが……それでもさっきから我々に被害が出ないように明確に配慮してくれている。こうして様子を伺えることがその証拠だ」
そう、ヒッポリト星人との戦いは非常に激しく、互いに組み合ったまま殴り、蹴り、あるいは関節技で絞める肉薄した戦いが続いていたがその戦いに既に疲弊していたTACのメンバーが巻き込まれる事は無く、時折土埃を被る程度で戦いをじっくりと観察する事が出来ていた
「で、あれば我々のやる事は一つ。………まだ戦えるな?」
竜隊長はそう言うと自分へと視線を向けていた部下達へ視線を向けた
「「「はい!!」」」
竜隊長の言葉にTACの隊員達は疲労も感じない程、力強く返事を返した
◆
「ぐっ……! このっ……いい加減にしろっ!!」
押し倒し、マウントを取った状態でヒッポリト星人の顔面へと連続して拳を放ち続けていた私であったが拳を振り上げた僅かな隙間にヒッポリト星人が右腕を向ける
「(これは……ヒッポリトミサイル!? しまっ……!)」
その意図に私が気付いた瞬間、既に掌からミサイルが発射され、頭部に直撃した瞬間、衝撃と共に私の視界を激しく揺らし、身体が強制的に後ろに仰け反ってしまう。回避も防御も全く出来なかった故にこの一打は私にとっては間違いなく大きなダメージとなった
「ふん……! この程度の攻撃で私を……!?」
だが、それだけだ。まだこの鉄の身体は動いてくれる。戦う事が出来る。なら、態々止まる理由なんて私には無い
だから私は体重をヒッポリト星人にかけたまま、決して掴んだ胸ぐらを離さず、あらん限りの力で締め付け続けていた
「(まだだ……まだ……!!)」
戦闘が始まってからTVでも頻繁に見せたヒッポリト星人の瞬間移動を警戒して密着して攻撃を続けていた私ではあったが、その経過は私の所見で言えば思わしくない
確かに私の拳や手刀、膝蹴り等はヒッポリト星人に幾度も直撃し、ダメージと共に怒らせて冷静さを失わせている事は出来てはいる。だがそれだけ、ヒッポリト星人が疲弊した様子は無く、決定的と言えるようなダメージを与えた感覚も無い。簡単に言えば一か八かで仕掛けたインファイトの戦いは徐々に手詰まりへと追い込まれ始めていた
「(そうなると、やはり狙うべきなのは光線技ですが………改修こそされたけど私の各種光線技を放つタイミングは相変わらず鈍い……直球で攻めても良くて回避、下手をすれば私もヒッポリトカプセルに閉じ込められて一巻の終わり……困りましたね……)」
「ええい! 貴様……! 次から次へと……私をコケにしおってぇ……!!」
『………………!!』
そんな風に思考を巡らせる中で僅かに抑える力が緩んでしまったのだろうか、私は四肢を動かして激しく暴れるヒッポリト星人の上から振り落とされ、地面に叩きつけられてしまった
「このっ!! このっ!! 調子にぃ! 乗るなぁ!!」
倒れた直後、ヒッポリト星人は所謂サッカーボールキックを繰り出し、私を連続して蹴り続け地面を転がしていく。当然、私はその蹴りを回避する事など出来ずダメージをその身体に蓄積させていく
『ゼッ……!!』
が、当然やられっぱなしになる訳には行かない。蹴られる瞬間、ダメージを受けながらも密かに蓄積させたエネルギーを片腕に集中させウルトラナイフを蹴りつけてくるヒッポリトの足に向けて放った
「ぐおっ……!?」
その一撃は狙い通り直撃してヒッポリト星人は苦悶の声をあげ、攻撃の手が一瞬、止まる
「(今だっ……!!)」
その僅かな隙を利用して私は前回りを繰り出しヒッポリトの蹴りの範囲から逃れる事を試みる。元よりウルトラナイフは僅かでも状況を打開せんとする半ば苦し紛れの一打。元からダメージには期待していなかった。が
『…………!』
その瞬間、前転を始めた私の身体に衝撃と共に爆風が発生し、私は吹き飛ばされ、強制的に前転を停止させられ倒れる
「馬鹿め! そう簡単に逃れられると思ったか!!」
「(これは……ヒッポリトミサ……!!)」
僅かに遅れて衝撃の正体を理解できた瞬間、ヒッポリト星人の蹴る笑い声が響き
『グッ…………!!』
爆風に包まれた視界の中、僅かに見えたヒッポリト星人の角が光ったかと思った瞬間、今度は私の身体に電流のようなエネルギーが走ったかと思った瞬間、私は衝撃で再び吹き飛ばされた。直接は見えなかったが間違いない。ウルトラセブンとの戦闘時に使い、セブンをダウンさせたあの一撃、ヒッポリトビームが炸裂したのだと断言できた
「(くっ………うっ………! 僅かに反撃されるだけでこうあっさり戦況をひっくり返されますか……自らの未熟を嫌でも感じてしまいますね……!!)」
ビームの影響か、普段よりも更に鈍く感じる鉄の身体を動かしながら私は心の中で自分自身の無力を呪う
ウルトラ兄弟に鍛えてもらう事で気持ちが浮ついていた事は事実として認めるが、それと同程度に訓練で気を抜いた事は無い事も断言できる。それでも尚、ヒッポリト星人に簡単に押し返される程度にしか成長していない己の実力が悔しくして仕方が無かったのだ
「ハッハッハッハッ! 多少は粘った様だがこれで終わりだ!!」
中々起き上がれぬ私に向かってヒッポリト星人の嘲笑が響く。ヒッポリト星人は最早、その場から動こうとはしないがその必要が無いのだろう。と、言う事は間違いなく私にヒッポリト星人がトドメとして使うとしているのはウルトラ兄弟を葬ったヒッポリトカプセルであり……
と、その時だった
「……!? ぐわぁああぁぁっっ!!」
ヒッポリト星人の頭部付近が集中的に小爆発の連続を繰り返すとヒッポリト星人は悲鳴をあげると大きく仰け反る
「(この攻撃は……まさか!?)」
その光景には見覚えがある。そう間違いなく本来ならばウルトラの父によってウルトラマンエースが復活した直後、行われたTACの支援攻撃そのものだったからだ
「(タイミングが違うとか……どうして見るからに怪しい私に力を貸してくれたのかは分からない……でも……!!)」
その隙を逃さない理由等は無かった
『ゼヤッ…………!!』
私はありったけの力を込めると膝立ちの形で無理矢理立ち上がり、両腕に力を込め、瞬時に解き放つ
「何いっ!? きさっ…………!!」
ヒッポリト星人の動揺する声が響く中、私のホリゾンタルギロチンは頭部に向かって真っ直ぐに飛んで行った