「エース……エース……目を覚ませ!」
力強く呼びかけられるその声で、暗闇へと沈んでいたウルトラマンエースの意識が再び呼び覚まされる。多くのエネルギーを失い、光を失っていた瞳とカラータイマーがそれに呼応するように再度輝き、光り始めていた。
「う……」
意識が覚醒とすると共に一気にエースに記憶が蘇る。街に現れた巨大なヒッポリト星人、折られたエースの人形、谷間での戦いで負けた事、最後の力を振り絞って兄達にSOSのウルトラサインを送った事………。
「はっ!! こ、この声は……!」
そこまで記憶が蘇った瞬間、エースは意識を覚醒させ改めて気付いた。今、自分を支え声をかけていたのは……
「お父さん!? 何故、地球に!?」
てっきり声をかけているのがゾフィー達、兄だと思い込んでいたエースは思わず飛び上がり驚きの声をあげる。
「エース、驚くのも無理は無いがまずは落ちついて私の話を聞け」
一方のウルトラの父はと言うと、エースの前に片手を突き出す事で制止させるとゆっくりと事情を語りだす。
「まず、お前のウルトラサインを受けてゾフィー達が救援に向かったが………全員が力及ばずお前同様にブロンズ像へと変えられてしまった。そして奴はまだ健在だ」
「………………!!」
その言葉を聞いてエースは思わず愕然とした。まさか自分のウルトラサインでそんな事になってしまうなど完全なる予想の外であり、ヒッポリト星人の実力が想定したよりも大きく上回っていた事を痛感させられた。
「なら俺が………!」
それを理解した途端、エースは直ぐに兄達の為にも自らの手でヒッポリト星人を打ち倒すべく起き上がり
『ゼヤッ………………!』
「!!」
そこで見た、自身と殆ど変わらぬ姿をした一人の『戦士』が気合の声と共にホリゾンタルギロチンを放ちヒッポリト星人の角の一本を吹き飛ばすその姿を。
「あれは……ホシカワ!? こ、これは一体どう言う事ですか……!?」
それはエースにとってある意味では兄達の敗北よりも衝撃的な光景だった。ヤプールの卑劣な作戦により機械の身体、それも自身に似た姿に変えられてしまった人間の青年。ホシカワ・ホクトと名乗った彼が間違いなくそこにいたのだ。
「……エース、その問いかけに答えるべく、まずは先程の質問に答えよう。ホシカワが我々が架空の存在とされる異世界から来た人間である事は覚えているな?」
衝撃的な光景を前に呆然とその光景に魅入ってしまっていたエースにウルトラの父が静かに語りかけてきた。
「光の国で訓練中だったホシカワが私に伝えていたのだ。これから先、お前達ウルトラ兄弟がヒッポリト星人によって危機的事態に陥るとな。それが自分の知る未来だと。そして知識で未来を知り、訓練の中でウルトラ兄弟の人柄を知ったから動いたのだと」
「ホシカワ自身がですか!? いえ、そうでした……彼は……」
その言葉を聞いてエースは改めてホシカワと言う人物について思い返す。自分はヤプールの脅威から地球を守るべく直ちに帰還した為にホシカワと会話する機会には恵まれなかったが、それでも彼の全身に付いた傷と兄達の話からどれほど懸命に戦ったのかは直ぐに分かり、彼が元はごく普通に暮らしていた一般人だと言う事実を知った時は衝撃が走ったのを覚えている。
「例え自分が未熟だとしても、この力が偶然の産物だとしても危機を前に見て見ぬふりは出来ない。……それが自分がウルトラマンの力を得た理由だと信じている。そうホシカワは私に言っていたよ」
「…………!!」
その言葉にエースは再びホシカワと言う人間に心底、感服した。彼は突如として手に入れたウルトラマンの力に全く溺れる事も無く、反則とも言える未来の知識を手に入れてもそれを悪用する訳でも無く平和の為に使うと言ってのけたのだ。それもウルトラの父の前で、だ。
「父さん………俺もホシカワと共に戦います! それが……っ!」
そう気付いた瞬間にはもうエースは動き出し、必殺のメタリウム光線の構えを取る。勿論、狙うはただ一つ、奮闘の末に倒れるホシカワを前にトドメを刺そうと腕を向けているヒッポリト星人。その顔面。
「それが! 輝ける命を守るのが俺のウルトラマンとしての使命だから!!」
その直後、渾身のメタリウム光線を炸裂させたエースは力強くヒッポリト星人に向かって叫ぶ。
「行くぞ! ヒッポリト星人!!」
そしてエースはホシカワ……共に戦う『友』に向かって走り出した。
◆
「トワァァ!」
『デヤァ!』
何とか反撃の一打を繰り出そうと再び放った火炎地獄をタイミングを合わせて放った私とエースの上段の廻し蹴りが炎を吹き飛ばし、霧散させる。だが、当然のように攻撃がこれで終わらない。
「なっ……!? うげえぇぇっっ!!」
炎を吹き飛ばされてヒッポリト星人が驚愕した直後。廻し蹴りによって足が上がった事を利用して間髪付けずに放った踵落としが再び同時に頭部に叩き込まれ、ヒッポリト星人は悶絶しながら前のめりに正面から崩れ落ち地面で痛みに激しく悶える。
身体は治して貰ったとは言えエース本人が言った通りそれは万全では無く、加えて私は続く激戦で精神的な疲労を隠せなかったし、エースもウルトラの父にエネルギーを分け与えられたとは言えやはり原作同様にカラータイマーは再戦直後から点滅しており、ここから更に3分戦ったり光線技の連打も不可能だろう。
だが、それでも私はヒッポリト星人に負ける気はまるでしない。
それは単純に決定打を与えられなかったとは言えヒッポリト星人が精神肉体共に損傷しているうえに、単純に私達が二人がかりと言う点も大きいのだろう。
「(す、凄い……私……本当にウルトラマンエースと戦っています……!! あの……エースと!!)」
だが、それよりも幼少期からの憧れの存在であり三十年とちょっとの人生の指針となっていたウルトラマンエースとのタッグ。その事実が私の精神を天元すら無いと錯覚するほどに高揚させる。精神的な疲労が嘘のように消し飛んでいく。
「(こんな状況で負けるなんて不格好な姿をエースに見せる………? そんなの絶対にありえませんっ!!)」
だから私とエースの攻撃は止まらない。拳を、蹴りを、あるいは手刀を極限まで精神を集中させ、エースと息を合わせて叩き込みまくる。その前には弱ったヒッポリト星人の反撃など最早風の前の塵に等しかった。
「が………は………ば、バカな………そんなバカな………っ!」
気付いた時にはヒッポリト星人は瀕死の状態であり、信じられない様子でうわ言のようにそう呟くことしか出来てないなかった。
「行くぞっ!」
『………!』
そんなヒッポリト星人を前に、私の隣に立つエースが一瞬、視線を向けて一言、言う。それだけで次に何をやるべきかは直ぐに理解できた。
「ダアァッ!!」
『ドワッ………!!』
エースが掛け声と共に腕を振り被るその瞬間、私も腕を動かす。相変わらず私の動きはエースの物と比べるとぎこちなさが残るが、それでも出来る限り早く動く事は出来た。
次の瞬間、ヒッポリト星人に向かって二本の虹色の光線、エースと私、二つのメタリウム光線が炸裂した。
「ぐっ……わああああぁぁぁぁっ!?」
当然、瀕死状態のヒッポリト星人がそれを躱すことも受ける事も叶うはずもなく次の瞬間、断末魔の叫びと共にその身体は爆散し粉々に砕けていく。
こうして私がこの身体になってから初の戦いはウルトラマンエースとのタッグを果たすと言う、あまりにも予想外のサプライズと共に終わりを告げたのだった。