「……隊長、同じ事を2度聞くようですが……本当に彼は……ウルトラマンエースによく似た……ロボットのような外見の彼は一体何者だったのでしょうか?」
ヒッポリト星人との戦いが終わり、ブロンズ像から元に戻ったウルトラ兄弟とウルトラマンエースにウルトラの父。そしてウルトラマンエースに酷似した謎の戦士が空へと飛び立ち、見えなくなるまで見送っていたTACの一同であったが。唐突に皆の考えていたであろう疑問を代表するように山中隊員がぽつりと呟いた。
「……私にも分からない。何故ウルトラマンエースと酷似した外見をしてるかの理由もまるで見当は付きそうに無い」
その問いかけに自らも思案するように長い沈黙から竜隊長は口を開き、ゆっくりと口を開いた。
「が、それでも、彼は間違いなく地球の為に戦ってくれていた。そこには間違いなく明確な意思があった。そう、ウルトラ5兄弟と同じく彼もまた平和を愛する戦士なのだと私は確信している」
そう確信を持った様子で語る竜隊長の言葉に反論する隊員はいない。その場にいた誰もがその言葉に同意していたのだ。
「星人との決着はエースと彼に任せる事になってしまったが……ならばせめて地球の人々に伝えよう!」
「彼こそは新たなる地球の味方なのだと!」
こうしてTACの報告により地球ではウルトラマンエースによく似た戦士、エースと比べると見た目や動きが何処か機械じみてた為に仮称として『エースロボット』と名付けられ、ホシカワの存在が知られる事になり、玩具店でウルトラ5兄弟の人形と並んでエースロボットの人形も飾られる事になるのだが、それをホシカワが知るにはまだ先の話であった。
◆
「(はぁ……凄い……本当に夢のような時間でした……)」
光の国へと帰還し、宇宙科学技術局で修理を終えた私はまだ夢心地でいた。
今回のヒッポリト星人との戦いもエースキラー戦よりは遥かにマシと言えるが決して少なくない損傷を負った私ではあったが、あらかじめウルトラの父が私の損傷を想定して手配していてくれたのか修理時間は想定より早く終わり、私はヒッポリト星人を撃破したその日のうちには与えられた自室に戻ることが許されていたのだ。
「(まさか私がウルトラマンエースと一緒に戦った上にメタリウム光線を放つ日が来るなんて……転生してから戦闘は何時だって死の隣り合わせで恐ろしくて仕方ありませんでしたが……その苦労のかいがあったと言うものです!)」
頭の中で『正確には、私のはロボットメタリウム光線ですけどね』と思う心を押し流しつつ私は椅子に腰掛けつつ、再び脳裏であの戦闘の光景を蘇らせて浸る。
「(それにオマケにウルトラ5兄弟に加えてウルトラの父と一緒に地球の空を飛ぶなんて原作ではあり得なかった物まで味わえたんです……感無量と言うのは正にこの事ですね……)」
それは例えるなら正しく私にとっては第二の人生における春。俗な言い方をすれば供給過多。流石に死んで良かったとは思わないが、それでも報われた。と言う実感はあった。
そんな風に呆けていたからだろう。
「ホシカワ……疲れている所、悪いのだが少し良いだろうか?」
「(…………っぁあ!?)」
私は何時の間にか隣に立ち、視線を向けているゾフィー隊長の存在に全く気が付かなかった。
『はい、大丈夫です。少々、今日の戦闘を自分で振り返りつつ精神を休めていただけですので。ゾフィー隊長こそお身体は大丈夫でしょうか?』
「(光の国にもノックの習慣があるかどうかは分かりません。ですが私がぼさっとしている間、間違いなくゾフィーは何らかの合図を送ってくれてから私の部屋に入ってきた事は間違いありません。ですからここで私がやるべきベストは何事も無かったかのように返事を返す事……!)」
脳内での動揺を必死で押し殺し、私は出来るだけ自分を落ち着かせて対話用の端末を腕に装着するとそんなメッセージをゾフィーへと送る。
「あぁ、念の為に銀十字軍でじっくりと診てもらったが疲労以外は何の問題ないとのお墨付きを受けたよ。勿論、他の兄弟達もウルトラの父も同じだ」
「……これも偏に君のおかげだよホシカワ。もし今、ここに君がいてくれなかったらこれほどの結果は望めなかっただろう。ここで改めて君に礼を言わせてくれ」
私の言葉にゾフィー隊長は力強くそう返事を返すと私に向かって頭を一度下げると、座ったままの私に向かって手を伸ばしてきてくれた。
『貴方からそんな言葉を頂けるなど身に余る光栄です。私はただ自分に出来る範囲でやれる事をしただけですから』
私の行動でゾフィーにそんな言葉を言わせてしまうと言う罪悪感が一瞬だけよぎるが、それ以上に握手に応えない方が失礼だと判断した私は興奮で震える脳内を必死で押さえつけ、失礼の無い言葉を返す。
「そうか……うん、ならばやはり皆の、そして私の判断に間違いは無かったようだな」
私が握手を返すとゾフィー隊長はそう言って2度ゆっくりと頷く。
「(……なんでしょうか? ウルトラ戦士が危害を与えるなどまずあり得ないとして……何か私に言いたいことがあるのでしょうか)」
その行動に若干の違和感を感じるが、かと言って考えた所でヒントが少なすぎるこの状況では答えが浮かばず、結局、私はゾフィー隊長が手を離すまでその感覚を味わうことにするのであった。
私がゾフィー隊長の行動の意味に気付くのはそれから3日が過ぎた時であった。
◆
『あの、すいません。私はどちらに向かうのでしょうか』
修理後、身体の慣らしを兼ねて、いよいよ本格的にトレーニングを始め出したある日、私はトレーニング後に私を待っていた1人のウルトラ戦士によって誘導される形で自室から離れ、何処かへと向かっていた。
「ハッハッハッ、心配する事はない。それほど遠くでも無いさ」
不安で思わず質問した私にそう軽く笑って答えるのはウルトラマン。そう全ての伝説の始まりしてウルトラ兄弟のナンバー2。文武両道を地で行く怪獣退治の専門家。初代ウルトラマンと呼ばれる彼が私を先導して歩いていたのだ。
「(……いや、確かに既に光の国で暮らしてそれなりの日が立ちましたし、エースこそが私の一推しなのは揺るぎませんが……! それでもレジェンドである初代ウルトラマンと二人きりと言うシチュエーションで興奮しない訳がありません! いかんいかんおさえなければ……)」
そうして脳内で必死になって興奮を押さえ付けていたからだろう。ウルトラマンに扇動されて銀の広場まで来た瞬間、私はもはや無い筈の心臓が限界を超えて止まる音を聞いた。
「(は…………?)」
そこに集結していたのは私を先導してくれたウルトラマンに加えて、地球を守っている筈のエースまでもが揃ったウルトラ5兄弟。そこに更にウルトラの父、ウルトラの母までもがいる。
「(あ、れは───)」
そして、間違うはずも無い。彼等の中心に立ち、銀色のマントをなびかせ、ウルトラ族でも4万才を超えないと生えないとされる髭を蓄えたあのウルトラマンは。
「(ウルトラマンキング…………!!)」
「………君の事情は既に知っているよ。その上で君に一つ、重大な話がある。その為に今日、来てもらったのだ」
そして私が動揺と混乱から戻れない状態のままウルトラマンキングは
「ホシカワ・ホクト、君をウルトラ兄弟の1人として迎え入れようと思う」
転生してから未だかつて経験した事が無い程の衝撃の言葉を私にぶつけてきたのであった。