「(えっ……はっ……!? ウルトラ兄弟!? 私が!? 私がですかっ!?)」
ウルトラ5兄弟に加えてウルトラの父と母の夫妻、更にはウルトラマンキングの登場と言う事態にただでさえ正気を失いかけていた私に告げられた耳を疑う以外あり得ない言葉に私は脳内で盛大に動揺する。機械の身体で無かったらその場で泡を吹いて失神する自信があった。
「君は突然与えられた力に決して溺れない非常に勇敢な心を持ち、尚且つ弛まぬ努力を怠らず、それでいて地球人の誇りと魂を持ったままウルトラ兄弟の危機を二度に渡って救った。この活躍は正にウルトラ兄弟に相応しいと私は考えているが……君はどうかな? ホシカワ」
『…………!』
しかし現実と言うものは私に思考する余裕すら与えてはくれないらしい。キングが未だに混乱をし続ける私にそう話しかけてきたのだ。
『私がウルトラ兄弟に……大変ありがたい話だと思います。光栄でしかありません』
キングは勿論だが今この銀の広場にはウルトラ兄弟に加えてウルトラの父と母の夫妻まで揃っている。ならば私が動揺したからと言って何時までも沈黙して何も語らないのはあまりにも失礼。だからこそ頭の中で次に喋る言葉を考えながら私は返事を返す
軽く言ってのけるものの私にとっては中々に大変な作業ではあったが既に答えは決めていた為に何とか違和感が無いように伝えられたと思う
『ですが今回はその話、私は辞退させていただきたいと思います』
「…………!」
私がそう告げた瞬間、周囲の空気が一気に変わるのを感じる。流石に声を出すものこそはいなかったが明らかな困惑と疑問の空気が伝わっていた。その空気に怯みそうになるが私は必死に堪えて自分の思いを伝える。
『ウルトラ兄弟とは私の考える限り、光の国で最も誇り高い証の一つにして地球を含めた侵略宇宙人の脅威に晒される多くの人々にとって希望の象徴だと思うのです』
『だからこそ……戦士としての経験が浅く、ウルトラマンエースの技の真似だけしか出来ない私にはその称号は相応しく無いと私は思うのです』
そう、私が活躍を認められてウルトラマンキングの名によりウルトラ兄弟に選ばれる。それは私にとってはあり得ない程の幸福だ
転生してからウルトラ兄弟に訓練を受けてその技を眼前で見たり、ウルトラマンエースと共闘してヒッポリト星人を倒すなど1人のファンとして正に奇跡のような出来事を噛み締めて来たが、その中でもこれは間違いなく一番の出来事。例え死ぬ度に転生を繰り返したとしても奇跡的な確率でしか得られないようなチャンスだとも考えている
「(でも、だからこそ……です)」
しかし、だからこそ私は、今の私がウルトラ兄弟になると言う事を私自身が受け入れる事が出来なかった
「(転生してから私の戦いは相手が悪いとしても紙一重。それもエースキラーないし、それを操っていたヤプールにせよヒッポリト星人にしろ相手が油断していてくれた事でどうにか手繰り寄せたような勝利に過ぎない。それに加えてどうしようも無いけど圧倒的な経験の短さ……これじゃあ到底ウルトラ兄弟なんて無理だ)」
そう言う理由で実の所、驚愕こそしたが話を聞いた直前から私は自分の中でそう結論付けていたのだ。
が、勿論、ただここで『NO』とだけ返事をするつもりは無い。例え譲れない事でも自分の主張を言うだけでは無くフォローしてこそ。と、私は十年と少し社会人生活を送る事で学習していた。それに何より善意で明らかに身の丈に合わないであろう私をウルトラ兄弟に推薦
してくれたのであろうウルトラ戦士達に申し訳が立たない
『ですから……もしもこの先、私が自分を立派な光の国の戦士だと思える程に成長出来たその時。それでも尚、私をウルトラ兄弟へと推薦していただけるのでしたらその時、末席へ加えさせていただきます』
「(まぁ……この先、確定事項としてタロウがNo.6として入るのに加えてレオ兄弟、80、メビウスとヒカリまでウルトラ兄弟に加わります。私はそれまでは辞退するつもりですし、そもそも、それ程時間が過ぎても尚、私が注目されたままなんてそんな奇跡的な日が来るとは思いませんがね……)」
内心では私はそんな事を思ってはいたが決して言葉には少しも表したりはしない。こればかりは心底、表情にも身体の反応にも出ない機械の身体で助かったと痛感する。
「(そして何より、こんなタイミングで私が加入したりしたらタロウがNo.6では無くなってしまうじゃあないですか……それは私の解釈違いです!)」
「……そうか。ホシカワ、君の気持ちは分かった。ウルトラ兄弟への加入については見送りとしよう」
私の発言の後、暫しその場で沈黙が続いた事で不安を感じたがやがてウルトラの父が口火を切ってそう言ってくれ、私は心の中で胸を撫で下ろす
「だがしかし、だ。ここまでの活躍をした君に何も与えないと言う訳にもいかない。そこで代替案と言う訳では無いが……」
と、私の安堵も束の間にウルトラの父は、一言置いて更に言葉を続ける
「ホシカワ、君がこれまで見せた活躍は十分に宇宙警備隊に入隊に相応しい実力だと私は判断する。後に宇宙語等の学習プログラムを受けてもらうが……特別枠と言う形で君の宇宙警備隊入隊を認めようと思うのだがどうだろうか? あぁ、勿論、この事はゾフィーも了承済みだ」
「(やはり……そうきましたか……)」
ゾフィー隊長と一瞬、目配せしながらそう告げるウルトラの父を前に私は心の中で唾を飲み込む。正直に言えば私がウルトラ兄弟加入を断る際の妥協案としてそんな事を言ってくる事は想像していたのだ
何せ私の実際の活躍はともかく私、つまりはエースロボットの存在はあまりにも今回のエースと共にウルトラ兄弟を救った一件により有名になり過ぎた。と、なれば落とし所を付けるのは必然。そしてそれが優れた精神を持つ光の国の戦士達なら私が前々から言っていた宇宙警備隊所属への要望を汲み取ってくれると考えるのは必然だった
「(そしてウルトラ兄弟加入を辞退した私にこれを断る理由など無い)」
『分かりました、ウルトラの父。その提案をありがたく受けさせていただきます。未熟者ですが誇り高い宇宙警備隊の一員となる以上、粉骨砕身の気持ちで務めさせていただきます』
迷わずそう返事を返すと私はウルトラの父へと深く頭を下げて一礼する。が、その内心では私は徐々に焦りを感じ始めていた
「(……目指していた宇宙警備隊に入れたのは嬉しいのですが、入ったら私は否応なしに注目されるでしょうね。実績で採用された以上どうしても注目されてしまいますからね。うぅ、注目されるのは苦手なのですが……)」
事実、私の身体が人間であった時に勤めていた会社でも私は多くの同期と共に入社した当初から可能な限り自分の趣味は隠し通し、悪目立ちするような行動を避け、仕事には誠実さを意識し、とかく目立たないように意識していたのだ
「(いえ今の私がエースロボットの身体である以上、どうしても宇宙警備隊にはいったら目立つ事は理解してましたが………)」
銀の広場に集結した多くのウルトラ戦士達からの視線を浴び、身を縮こまらせたくなりながらも私はそう頭の中で悩むことになるのであった