そして皆様、いつも感想および誤字報告ありがとうございます
「ふふ……まさか断られてしまうとはな」
ホシカワが立ち去った後、未だに銀の広場に残っていたウルトラマンキングは彼の語った事を思い返しつつ、僅かに微笑みながらそう言った。
「えぇ、キング。彼は我々の想定より高潔な精神をしている……と、言う事がこれにより証明されたと思います」
ウルトラマンキングの言葉を受け、ウルトラの父はそれを肯定すべき数度頷きながら答える。言い方を悪くすればホシカワの行動によって提案を無碍にされた形になるのだが二人も、そしてここに集合した全員がそこに一切のマイナスな感情は無い。むしろ心底、感心させられていたのだ。
勿論、ホシカワをウルトラ兄弟へと加入する話。それは偽りの無い話でありホシカワが肯定すれば今、既にホシカワはウルトラ兄弟6番目の弟として加わる事が正式に決まっていた。
だが結果として見れば多くの視線の前に立たされても尚、ホシカワと言う人間は臆することなく自分の意見と信条を語り、丁寧にその誘いを断って見せた。
それはその場に集ったウルトラ戦士から見れば巨大な力に溺れない理想的な地球人の姿であり、眩しくすら見えていたのだ。
「………ウルトラ兄弟と言う枠組みに形式上入れる事でホシカワを守ると言う意図もあったのだが、あのような事を言われてしまえば今、ホシカワをウルトラ兄弟に入れるのは野暮と言うものだろう」
そう言うとキングはその場に集まったウルトラの父と母、そしてウルトラ兄弟へと向かい一つ命じる。
「いいか皆、我々がホシカワに出来る最良の選択は一つ。彼の目標を守り支援していく事だ。その為に各々で力を尽くそうではないか」
当然、その声に反論する声などある筈もなく全員の賛同を以て受け入れられていった。
◇
「(ふぅ……漸く落ち着いて来ました。やはり突然ウルトラマンキングに会うなんて刺激が大きすぎますよ……それに加えて私がウルトラ兄弟へのスカウトを受けるなんて……今日はとんでも無い日ですね……)」
夕方、突然のゾフィー隊長の訪問から始まった今日一日に起きたあまりにも情報量の多い一日を振り返りつつ私は訓練所で1人、未だに油断すれば興奮のあまり奇っ怪な行動をとってしまいそうな精神を落ち着かせるべく、特訓に励んでいた。
とは言っても今、トレーニング用の機材を使えば精神の乱れにより、折角修理して貰ったばかりのこの身体に要らぬ損傷を作り、不要な手間や心配をかけてしまう可能性も高い。
『……!……!!』
だからこそ私が選んだとは基礎中の基礎、精神統一から初めて私が戦闘で行う構えの確認から空中へ拳による突きと蹴りを放つ事。時間で言えば10秒程度で終わる動きではあったがそれを2度、3度と繰り返す事で精神は次第に落ち着きを取り戻してゆき、頭の整理も出来てきた。
「(何はともあれ、今は宇宙警備隊に入隊出来た事を素直に喜びましょう。……今の私と来たら基本的な力は借り物な上に戦闘技術も道場で苦労の末に何とか段位を取れた程度。宇宙に関する知識は地球の理科学の授業で学んだ程度。つまり、これから学ぶべき事などそれこそ山のようにあるのでしょう)」
「(……小中高大と一貫して成績が上の中の上とか言う微妙な立ち位置にいた私がちゃんと学びきれるか等の不安はありますが)」
『………!』
胸に燻る不安を渾身の蹴りを放つ事で誤魔化し、そうして私はギリギリまで練習を続ける。
だからこそ、なのだろう
この時の私は自分の精神を落ち着かせようとするあまりすっかり周囲の様子を気にすることを失念していたのだ。が、尤も気付いていればいればで
「見ろセブン……あんな事があった日でも訓練を怠る事をしないとは。見上げた精神だなホシカワは」
「あぁ、あの直向きさには我々も決して負けてはいられないな。我々も丁度、少しばかり時間があるのだ共に訓練をしよう」
訓練室の上階からウルトラマンとウルトラセブンと言う栄光の2人が私の訓練を見守っていた事に気付き、落ち着きを取り戻す事など決して無かっただろうが。
(尚、後日になってご本人の口からこの事を聞かされた私は『お二人にそう言って頂けるとは大変、光栄です』と、答え続け脳内で盛大に狼狽えてのたうち回る程に錯乱したのだが)
兎も角、その日の私は十分に落ち着きを取り戻せた事を確認すると自室に戻り、機械掃除用の道具で体表を磨く事で簡易的に身嗜みを整えるとスリープと言う形で擬似的な眠りに付いたのだった。
私にとっての騒動と衝撃の1日はまだ終わってない。と、言う事にも気付きもせず。
◇
『──い。───きろ。おい、ホシカワ……いや、星川北斗。起きろ。お前に話がある』
微睡みの中にいた私にそう、若干乱雑な声がかけられる。
「(この声は……誰ですか………? 少なくとも私が出会ったウルトラの戦士達の物ではなさそうですが………)」
ぼやける意識ではありながらそれが聞き覚えのある声である事を理解した私は、まだ本調子ではない頭で思考を巡らせる。
まず最初に私は第二の生を受けてから出会い、僅かでも会話をしたウルトラ戦士の声は全て覚えているのでその選択は即座に頭から排除した。
次に浮かんだのはヤプール人やヒッポリト星人と言った相手ではあったが私に話しかけるその声には乱雑さこそあったが、邪悪さを感じる事は無かった為に考えた末にこれも排除した。
「(それでは一体この声は……)」
結局、私は答えが出るより早く声に導かれ目を開く。
「え……? えっ!?」
その瞬間、気が付いた。そう『今の私』には瞼がある。慌てて自分の身体に視線を移して見てみれば、そこにあるのは次第に馴染んできた機械の身体では無い。そこそこに鍛えたおかげで中年太りをかろうじて免れた身体。少しくだびれた灰色のスーツ。コンタクトに慣れず結局手放す事が無かった赤色の眼鏡。間違いなく生前、星川北斗と言う一人の地球人の姿に私は戻っていたのだ。
『最初に言っておくが、本当にお前の身体があの機械の身体から戻った訳じゃない』
『分かりやすく言えば、これは夢のようなものだ。だからこそお前は本当の姿である人間の姿に戻れているに過ぎない。お前の現実での今身体はまだ機械のままだ』
突然の事に私が混乱していると、再び謎の声が響く。その瞬間、私は意識が急激に覚醒した事で思い出した。そう聞き覚えがある声、等と言うレベルでは無かったのだ。
「あなたは……私が死ぬ寸前に話しかけてきた………っ!!」
『思い出したか、星川北斗? そう俺だ、お前の魂をあの世界へと送り込み、元から心など無く空だったエースロボットの中に入れたのも俺だ』
私の問いかけに謎の声は肯定を返す。正直に言えば死の寸前に聞こえた故に単なる幻聴かもしれないと思っていた声だったが、こうしてその主自らが話しかけてきた以上、紛れもなく私が死の寸前にいたあの場所には超越的存在がいたのは間違いないと判断するべきだったのだろう。そう私が考えていた直後
『さて、隠す必要もないから単刀直入に名乗らせて貰おう』
『我らの名前はデラシオン。宇宙の平和の為、宇宙正義を司る存在である』
のっけから声の主はとんでもない情報を私に明かして来るのであった。