『こんなバカな事があってたまるか! エースキラーが……よりによって私の作ったエースロボットなぞに!』
私が回想から戻ってきても尚、ヤプールの怒りと動揺は収まり切らないらしく相変わらずゴルゴダ星全体に響くような大声で怒鳴り続けていた
「(まぁ……それはそうですよね……。あくまで性能テストと精神攻撃を兼ねただけのサンドバッグのようなエースロボットに……態々『エースキラー』って名前を付ける程対エースを意識した自信作の一手が倒される……ヤプールにとっては屈辱で以外の何物では無いでしょう……ですが、まぁ……今はそんな事を気にしている場合じゃないか)」
そう憤るヤプールの声を聞き流しつつ警戒はしながら、私は十字架に拘束されているウルトラ兄弟達の元に向かって歩き出した。先程のエースキラーとの戦闘で予想以上に損傷を受けているのか右足が目覚めた時より動かし辛く、時折よろけてしまったが距離も短いのもあって問題なく私は十字架の前までたどり着く事が出来た
「君は………君は一体……?」
私が近付くとエネルギーを失い力無く拘束されていたウルトラ兄弟達は首を動かし、視線を私に向けると不思議そうに問い掛けていた。幸いな事に4人共に私に視線を向けているがいくら注意深く集中してみてもそこに全く敵意は感じない。ならばやるべき事は一つ、信用と言う行為からは無縁にあるヤプールよりも私はウルトラ兄弟を、私が信じて憧れたウルトラマン達を信じて賭けることに何の躊躇いも無かった
「…………!」
私は迷わずウルトラ戦士を拘束する鎖の一本に手を伸ばし、意をけっして片腕に力を入れると鎖に手刀、つまりはウルトラナイフを使い鎖を切断する。どうやらこの鎖、絶対零度の冷気で弱っていたウルトラ戦士を拘束する事を前提と作られていたらしくそれほど抵抗無く斬ることが出来た
「(原作では特に特殊な描写もなく取れてたから大丈夫だとは思ってましたが……これがアストラの足の鎖並みに頑丈だったら私の手が吹っ飛んでいたでしょうね。……そうじゃなくて本当に良かった)」
頭の中に浮かんでいた最悪の想像が外れた事で内心、安堵しながら私がもう一本の鎖に手を伸ばした時だった
「……! 避けろ!」
今の今まで私の動向から真意を読み取ろうとしているのか黙って視線を向けていたゾフィーが私に向かってそう声を張り上げて叫ぶ
「…………!!」
ズダダダダダ!
ゾフィーの声を聞き、私が咄嗟に鎖を切り裂く作業を止めて大地を転がったその瞬間、連続した爆音と共にさっきまで私が立っていた場所が瞬時に蜂の巣状に抉られたかと思った瞬間、地表が爆風に包まれて吹き飛ばされた
『認めん……! こんな結果は認めん! こんな欠陥品など廃棄処分にしてやる!!』
憤怒に満ちたヤプールの声に私が振り替えると、空間が窓ガラスが割れるようにひび割れると砕け、内部の赤い空間とそこに潜む巨大な一本角を持つ生き物の姿が顔を覗かせる
「(……!? ま、まさか……あれは……そんな……!?)」
先程の地面を抉った攻撃。そして何よりその姿には見覚えがある、なんて所では無い。生前、私が特に好きだったウルトラ怪獣の一体であり、自宅ではウルトラマンエースのフィギュアと並んでTVの隣に置いてあり毎日その姿を見ていたから元から特徴的な造形をしているとは言え見間違いようが無い
『ゆけいバキシム! 付け上がった失敗作を叩き潰せ!!』
「クオオオォォ!!」
ヤプールのその声を合図に空間をガラス窓のように強引にぶち破ると、咆哮を上げながら一角超獣バキシムがゴルダダ星の大地に降り立った
「(バ、バキシム……! 放置している訳はないと思ってはいましたがこいつを送ってくるとは……!!)」
私の知る限りバキシムと言う超獣は、数多く登場した超獣の中では特段に弱いとは思わないが強豪とも言い難い、エースやメビウス相手に一時的に優勢を取る強さはある所謂、平均的強さの怪獣だ。その分だけで言えば先程、私が撃破したエースキラーに比べれば楽な相手、とも言えるだろう。が
「(私の残されたエネルギーでどの程度技を使える? どの程度動ける? そして一体、どの程度バキシムと戦えるのでしょうか……)」
眼前のバキシムと向き合いながら私は頭の中でそう思案する。もし今の私が生身の肉体だったら緊張で全身から汗が吹き出し、恐怖で脚もまともに立ってはいられなかっただろうから、転生してから何回も思ってる気がするが、こればかりはつくづく機械の身体である事に心底、感謝していた
そう私に現在進行形で迫る大きな問題は二つ
まず第一にタイマーショットやパンチレーザーと言った技を駆使し、更には反動を無視した零距離での全開のロボットメタリウム光線発射でどうにかエースキラーへ勝利した代償として、当然の結果ではあるが私の機械のボディのあちこちには損傷が広がり身体のバランスが崩れ出し、私の中に蓄積されている技を放つ為のエネルギーにも底が見え始めていた
「(流石にもう光線技は使えない、と言うレベルでは無いでしょうが……。少なくとも先程のような全力全開の一撃で決着……は無理があるでしょうね。何よりバキシムは『超獣』。ですから)」
そう、だからこそここで2つ目の問題。バキシムが超獣だと言うそのものがエネルギーの少ない私にとっては更なる状況の悪化となる
「(超獣……ウルトラマンZでエースが語った話がここにも生きてくるなら、この目の前にいるバキシムも当然、痛みや恐怖を一切感じないし、動きが完全に止まるまで攻撃し続けなければいけないことになります)」
「(ならばこのバキシムは原作同様に例え私の放った偽物だとしてもウルトラスラッシュで首を撥ね飛ばせば本当に倒れて終わってくれるのでしょうか……?)」
「(いや、そもそも素人の私が連戦かつ良いとは言えないコンディションの中、無駄撃ちが許されないような少ないエネルギーで私にそんな決定的チャンスを掴む事が出来るのでしょう……っかぁ!?)」
ダダダダダ!!
と、私がそんな思案に入る中、そんなものは知ったことではないとでも言うかのようにバキシムは私に両手を向けるとそこから小型ミサイルを凄まじい勢いで連続発射し、無防備に立っていた足元を狙ってきた
「(ぐっ……! がはぁっ!? ぐあっ!?)」
何とかその一撃自体は後方に飛び退く事で回避する事に成功したものの間髪おかず今度は鼻からミサイルを発射し、ガードを試みた私を容赦無くぶっ飛ばす。更にそれだけではバキシムの攻撃は緩まず、倒れた私に向かいバキシムは両腕と鼻から次々にミサイルを放ってきた
「(ま、まずいですね……これは……! 知ってはいたけどリアルで見てみれば悪夢としか言えない火力です……!)」
私は必死に地面にダウンしながらも前転と後転を繰り返す事で回避しようと試みるがバキシムの攻撃は止まらず、次第に押し込まれていく
「(何か……何か手は……! ……っ!!)」
と、その時だ
バキシムのミサイル攻撃によりそこら一帯一帯で爆風が吹き荒れる最中、私の視線はバキシムの足元近くにある、ある物に釘付けになった
と、言うわけで弱りきったエースロボット(星川)の第二ラウンド開幕。お相手はベロクロンと悩みましたがゲームにも隠しキャラとして登場したバキシムです。