超人転生   作:塩ようかん

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 これにて一先ずの決着。一区切りです。


第八話 決 着

 

 

「ゼッ………」

 

「(うぐっ……あっ……)」

 

 私の放ったウルトラスラッシュとバキシムのミサイルにより発生した激しい爆煙が収まったその瞬間、私は限界を越えたダメージにより身体を支える事が叶わず、尻餅をつくような姿勢で力無く崩れ落ちる

 

「(くっ……これは……不味いですね……。無傷では済まないと覚悟はしていたとは言え、ここまでのダメージを受けてしまうとは……!)」

 

 私に痛みの感覚は無い故、センサーが伝える情報以外は全身の様子を目視と動作によって自身の身体の状況を確認するしか無いのだが、それでも即座に分かるほどに状況は更に悪化していた。

 

「(前面装甲のあちこちに穴……脚部の違和感がさらに大きい……これでは、もう走れもしないでしょう……その上に右腕は……)」

 

 そこで私は既に自覚はしていたが改めて右腕に視線を向ける。

 

 エースキラーとバキシムとの連戦。その戦いの中での限界を越えた勢いでのロボットメタリウム光線と、その状態から更に無茶な賭けで放ったウルトラスラッシュ。その代償を大いに引き受けた私の右腕は肩部分的から破損して手首から先以外の殆どが吹き飛んでしまい、その断面から配線コードだけが繋がった状態でだらりと力無く風に吹かれて揺れている

 

 そして肝心のバキシムはと言うと

 

「グウウゥゥゥ……!」

 

 私の切り札に等しかったウルトラスラッシュはバキシムの首を掠めただけに留まり、バキシムは首に一目で分かるようなダメージこそあるものの、それは到底致命傷とは言い難く。全く戦意を失っていない目付きで碌に動けぬ私を睨み付けていた

 

『いいぞ! もはやエースロボットは光線技も録に撃てはしない! トドメを刺せバキシムよ! 徹底的に破壊しろ!』

 

 そんな明らかに勝敗が分かれたような状況にヤプールはますます気をよくしたのか興奮覚め止まぬ。と、言った様子の口調でバキシムに指示を飛ばす。その瞬間、バキシムの両手からそれぞれミサイルが一発ずつ私に向けて発射された

 

「(ぐっ……!!)」

 

 そのミサイルを何とか動く左手と右足を使い、地面を蹴り付け尻餅をついた不格好な姿でかなり危うい所で直撃を回避する。が、その距離はただ直撃を回避するだけの動きだった故に一瞬遅れて大地へと激突したミサイルの破片が散弾銃の弾のように私に襲いかかり破損していた装甲が更に傷を負い、損傷が広がって行く

 

「(回避すらもはや満足に出来ない! これは……!)」

 

 今の一撃は運にも助けられて直撃を回避できたような物だ。もう一度、ミサイルが放たれた時、同じことが出来るとはまず考えられない。しかしかと言って今の私の負った損傷は立ち上がると言う行為すら満足には出来ず、戦闘など夢のまた夢。そしてバキシムにはまだ体力に余裕があり何時でも追撃を行える状態

 

 つまり、私は決定的に『詰み』へと追いやられていたのだ

 

『トドメだバキシム!』

 

 そして、そんな私に向けて勝ち誇ったヤプールの声と共にバキシムが鼻からミサイルを放とうとし──

 

「ギャオォォォンッッ!?」

 

 

 

 背後から飛んできた『スペシウム光線』の直撃を頭部に受けると、着弾場所から爆煙をあげると共に私に向けていたミサイルをあらぬ方向へと飛ばし、頭から転がるようにひっくり返り

 

  

 私の視界に丁度、スペシウム光線を放った主、一人のウルトラ戦士の姿が見えた

 

 

 

「(ま、間に合ってくれましたか…………『ジャック』!!)」

 

 

 そう、カラータイマーこそ激しく点滅しているものの、しっかりと自分の足で立ち、『左腕』に装着されたウルトラブレスレットを煌めかせながら油断無く構えているウルトラ戦士こそ、先程まで十字架に拘束されていた帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックその人だった

 

『な、何ぃっ!? 馬鹿な!! いつ拘束を抜け出したと言うのだ!?』

 

「シェアッ!」

 

「ギャアァァ!?」

 

 既に勝利を確信していた様子だったヤプールはその事実に非常に焦った様子の声を出し狼狽え、ジャックはそれに答える必要は無いと言わんばかりに掛け声だけを放つと起き上がりこそしたものの、未だにふらついた様子のバキシムへと向かい、軽く助走を付けると飛び蹴り、否、流星キックを炸裂させると、バキシムは再び倒れこみそこにジャックが馬乗りになって更なる追撃を仕掛け始め出した

 

「(かなりギリギリでしたが……予想が間違ってなくてたすかります……)」

 

 その様子を眺め、ダメージにより起き上がることも出来ず、仰向けの状態ながら私は心底安堵した

 

 実の所、先程の私が残るエネルギーを出しきったウルトラスラッシュとバキシムとのミサイルの対決。勿論、あの一撃でバキシムを倒すつもりだったのには間違いは無い。だがしかし、あの時、私の真の狙いは別にあったのだ

 

「(生前、初めて見た時から疑問に感じてたんですよね……。何でゾフィーやセブンはエースキラーにタイマーからエネルギーを吸われてダウンしていたのに、何故ジャックだけブレスレットを奪われたらダウンしていたのか……って……この様子だと私が生前に考えていた『未知のマイナス宇宙と言う環境を警戒してジャックはブレスレットにエネルギーを溜めていつでも大技を使える準備をしていた』と言う説は正しかった……と、見るべきでしょうか? 無茶をしてでも投げ渡して正解でした……)」

 

 そう、あの時ウルトラスラッシュとミサイルが激突して爆炎が発生した瞬間、僅かにバキシム。ひいてはこの戦いを監視してるヤプールの目が煙によって遮られた僅かな隙を突き、ダメージを覚悟で爆炎の中へと飛び込む。そこまでのリスクを負ってまで私が狙ったもの。それこそがバキシムの足元で無造作に転がっていたエースキラーの置き土産。ジャックから奪い取っていたウルトラブレスレットだった

 

 今になって思えば、主観的に見ても公式な記録もなく。生前に仮定していたオリジナルの説を頼りに試す。と、言う無謀極まる、と言うよりは最早、狂気にも似た事……ではあったがそれでも私に後悔は無い

 

「(だって……信じるならヤプールの技術で作られた今の私の身体より、私が生前から心底、憧れて心底、尊敬したウルトラ戦士ですから……)」

 

『おのれ……! だが、先程まで動けなかったウルトラ戦士、一人ごとき……!!』

 

 一度、安堵した事で精神に限界が来たのか先程まで機械へと変わったこの身体を自在に動かせていた事が嘘のように力が抜け、視界までも霞み始める中、ヤプールの怒号がくぐもり掠れそうな感じで私に聞こえていた

 

「(いいえ……もう、あなたの敗けなんですよ……ヤプール……)」

 

 その声を聞いても私に動揺は無い。何故なら、本来あっさりと倒された私が粘ってエースキラーに打ち勝ち、更にバキシムとも戦う。それは原作本来の流れと比べてどれ程の時間を消費したのだろうか。そうなれば当然

 

「トゥゥアァァ!!」

 

 その瞬殺、バキシムと激突するジャックを援護するように上空から一人のウルトラマンが現れた。そう、彼こそ最も私が憧れたウルトラ戦士

 

「(ウルトラマン……エース……!)」

 

 今の私と見た目は良く似ている。しかし、偽物でしかない私より圧倒的にしなやかで尚且つ、力強く神秘的な赤と銀のボディー

 

「(この目でその姿を見れて……よかったです……)」

 

 徐々にぼやけていく視界の中、それでもその勇士をしっかりと目に焼き付けながら私の意識は落ちていく

 

「(死ぬのはこれで二度目なのですが……。それでもずっと……前よりは怖くないですね……)」

 

 もはや視界は完全に閉ざされ、暗闇の中でエースとジャック二人がバキシムと戦う声だけが響く中、私はそれでも恐怖は無かった

 

「(それは……一応、憧れていたヒーローに……少しだけでも近付けたから……です……かね……?)」

 

 そうして何処か満足感を感じながら私の意識は消えていくのであった

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