闇鍋パロ   作:Amouve

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闇鍋強襲狂詩曲(ケイオスレイドラプソディー)〜【死兵白無垢/夜霧郎党】➀〜

 

 月詠の《そして七度喇叭は鳴り響く(アルマゲドン)》が大地を穿ち、狂気に侵してから数分。

 生存者(まつばやし)の証言から、月詠以外のメンバーは後方の即席要塞に集い、クレーターとなった最前線を遠巻きに眺めていた。

 

「何あれ、地獄?」

「大体そう」

 

 堕ちた月が作り出したクレーター内部は《そして七度喇叭は鳴り響く(アルマゲドン)》によって生み出された、特殊なフィールド効果【狂気空間】に汚染されている。

 

 遠目からでも空間そのものが薄紅色に侵され、世界そのものが歪んでいる様子が見て取れる。

 だが、それ以上に恐ろしいのはその【狂気空間】に平然と居座り今もレーザーを連発して《霧夜叉》に追い打ちをかけている月詠だろう。

 自分由来の効果だから効かないのかと言えば、そんなことは無い。こんなのは自ら火を付けた森の中に放火犯が平然と居続ける事が出来ないのと同じだ。

 だが、何故か平然としている。なんでだろう。

 

「なんであの中でマキナさんは平気なんだろ……」

「まぁマキナさんだし……」

「ねぇ、ちょっと気になったんだけど。渚沙さん……誰か回収した?」

「「「「………………」」」」

「って、あれ? 《霧夜叉》のHP……空になってね?」

 

 と、そんな事を話しているうちに松林が気が付いた。

 ここまでの大技ラッシュの果てに、ついに《霧夜叉》のHPを削り切ることに成功していたのだ。

 

「やった! 勝った!」

「いや、リザルト出てないからまだあるでしょ」

「え゛っ」

 

 空になったHPバーを見て一部のメンバーがぬか喜びしたのもつかの間、月詠の展開した【狂気空間】すら塗りつぶして、これまでよりも遥かに濃い霧が辺りを包む。

 

ォォォォォォォォ──ッ! 

 

 そして、霧の奥から響く鬨の声。

 大地を踏み鳴らす無数の足音。幾重にも重なった甲冑の跳ねる音。

 

 あの霧の奥から、何かが来る。

 それはきっと、遥か昔に置き去られた合戦の残り火。

 もはやか細い小さな火種。さりとて、決して消える事の無い地続きの日々。

 

 かつて《霧夜叉》と共に戦った、数千数万の戦士達。

 彼らが今、霧の向こうからこちらへと駆けている。

 

 

 ゆらり。

 士気逸る無数の輩を背に、いつまでも地を舐める大将がいるだろうか。

 

 

 否。

 

 既に肉体は朽ち果てていようと。

 

 霧に焼き付いた妄念だけが残ろうと。

 

 だからこそ、《霧夜叉》は立ち上がる。

 

 竜に嬲られ、大津波に飲まれ、魂を穢され、落月に打たれ狂気に蝕まれようと。

 

 それだけでは、夜叉を祓う事は叶わない。

 

 

 もはや、夜叉が眠ることは無いだろう。

 そして、夜叉も眠ることを望まない。

 

 それでも夜叉を討たんとするならば。

 

 その妄念の楔を砕く他ないだろう。

 

【死兵白無垢】

並びに

【夜霧郎党】

 

 

 古の合戦が、今ここに。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「うぉぁぁぁ!? めちゃくちゃいっぱい敵出てきた!!」

「いち! に! さん! いっぱい!! いっぱい!!」

「何ふざけてんですか葉っぱーズ!」

 

 危険区域から退避するため、闇鍋の面々は後方の即席要塞に避難していた。

 そのおかげで、無数に出現した白武者達に一瞬で飲み込まれて乱戦という自体は避けられた。

 だが、その分状況を把握出来てしまった。

 

 数百、数千、ともすれば万に届く程の無数の白き甲冑武者達。

 サイズこそ一般的な人型に相違は無いが、その数が異常の一言に尽きる。

 

「ひえ〜、危ない危ない。【狂気空間】も塗りつぶされましたし、《湖面の月》が少し遅れたらお陀仏でしたよ」

 

 唯一前線で魔法パーリィーを愉しんでいた月詠が、自前の移動手段をフル活用してそそくさと帰ってくる。

 どうやら、彼をして「このまま前線に留まるのは無理」と判断するレベルのようだ。

 

「どーすっかな……。対多数戦は望むところではあるんだけどなぁ……さすがに多過ぎるだろ」

「防衛戦かなぁ。けど、この砦だって勝手に作ったものだから本来は想定されてないはずなんだよな……」

「奏雨、どうだ?」

「今見て……はァ!?」

 

 


 

死兵白無垢(シヘイシロムク)

 

《霧夜叉》のフェイズ4状態

 周囲一帯の霧を吸収し、自身の肉体の損傷を補う状態

 

 この状態の時、《霧夜叉》はダメージ及び状態異常を受けず、HPが1分間に最大HPの10%の割合で回復し続ける。

 また、この状態の時に《霧夜叉》が敵対存在のHPを0にした時、最大HPを+10%する。

 この効果はHPが完全に回復するまで継続する。

 

 なお、各効果の"最大HP”はフェイズ4開始時点での最大HPを参照する。

 

 HPが最大まで回復した時、フェイズ5に移行する。

 

 また、この状態の《霧夜叉》は濃霧の奥よりかつての軍勢である【夜霧郎党(ヨギリノロウトウ)】を無制限に呼び出す。

 


 

 

「なっ、うっそでしょう!?」

「ど、どうした!? そんなヤバいのか?」

「いやヤバいってかカス。フェイズ4【死兵白無垢】、だってさ。とりあえず内容共有するわ」

「おう、サンキュ……うわぁ……」

 

 凍星の《餓えし賢者》により、《霧夜叉》の状態が暴かれる。

 しかし、それは必ずしも朗報とは言えないだろう。

 

 あらゆるダメージとデバフを無効化し、分間10%の継続回復が10分間。つまり、無敵のレイドボスが無数の取り巻きを引き連れて暴れ回る中をひたすら耐久する事が要求されているのだ。

 しかも、殺られようものならボスの最大HP上昇……つまり、制限時間が実質増加するのだ。

 

「いやいやいやいやいや! HP全回で復活すらキツイのに間に耐久フェイズ生やすなよ!!!」

「しかもこれ、1人やられるたびに1分追加ですよ。普通に全滅有り得ますって」

「塩は10分……行ける?」

「雨葉さんは?」

 

 カス仕様にキレる椒の後ろで、闇鍋における耐久の要のタンク2名がチラリと戦場を見下ろしながら分析する。

 

 相手は高難易度レイドボス。そして、その無数の取り巻き。

 烏合の衆ならばともかく、軍隊のように統率の取れた動きで着実に要塞へと近付いてくる。

 それを見た2人の結論は、当然と言うべきか、同じであった。

 

「タイマンならギリ……? 取り巻きいたら無理」

「私も似た感じです。さすがに《霧夜叉》専念してる時に取り巻き捌く余裕は無いです」

「取り巻き一体一体がどれだけ強いか次第って感じかぁ……」

「私と雨葉さんの2人なら……と思いましたが、結局は数で圧殺されそうですね。取り巻きもさすがに雑魚ってことは無いでしょうし……」

 

 偶然にも手に入れた接敵までの猶予時間で、闇鍋達は頭を悩ませる。

 

「あれ、フェイズ3飛んだ?」

「あれだけ大技ラッシュでHP削り切ったんです。何もさせずに倒したんでしょう。知りませんけど」

 

 若干2エルフ程、適度に緊張感の抜けた会話をしていたが。

 

「んー、奏雨。取り巻きの方って見た? 情報が欲しい」

「あっ、そうじゃん。忘れてた。えーっと……【夜霧郎党】ね。んー、おっ? どうにかなりそうだぞコレ!」

 

 白金に促され、凍星が取り巻きにも《餓えし賢狼》を向ける。そして、すぐに光明を見付けたように顔に喜色が浮かぶ。

 


【夜霧郎党】

 

《霧夜叉》によって呼び出された、古き時代の(つわもの)達。

 総大将たる《霧郎党》を楔として、黄泉路より霧の器で駆け付けた彼等は、一人一人が歴戦の猛者である。

 

 しかし、その在り方故にその命は《霧夜叉》と繋がっている。

【夜霧郎党】が倒される度に《霧夜叉》は最大HPが0.1%減少する。

 


 

「結果共有しました。これ意外とチャンスかも」

「ほーん。一体につき0.1%……1000体倒せば最大HP0で倒せるって事か?」

「どうだろ、さすがに10分で1000体は倒せないでしょ。倒せば倒すほど制限時間も減ってくし」

「欲しいのデカ目の範囲攻撃かぁ……渚沙さんの使い所ここ説あった?」

「いやぁ、結果論でしょう。さっきの体内爆発も十分効果的な切り所だったと思いますよ」

 

 わいのわいの。

 ああでもないこうでもないと、会議が踊る。

 それは、光明が見えたが故の「まぁ何とかなりそう」感もあれば、幾人かは切り札の使い道を探っているが故もある。

 

 大前提として、【夜霧郎党】による最大HP減少ギミックが無い単純な耐久であってもクソゲー! と叫ぶ事はあっても諦める事は微塵も考えない様な集団である。

 

 そんな闇鍋は究極的に、いつでもゴーイングマイウェイなのだ。

 

 だから、こんな事も言い出す。

 

「ねーねー、とりあえずさ。大砲、ブッパなさない?」

「「「それだ!!!」」」

 

 砲弾を抱えた彩音の一声で闇鍋達が沸き立った。

 

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