闇鍋パロ   作:アメーバ

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生産職は凄惨職だと思ってる節がある


闇鍋強襲狂詩曲(ケイオスレイドラプソディー)〜【死兵白無垢/夜霧郎党】②〜

 

「撃ち方よーい!」

「砲兵長! 撃ち方が分かりません!」

「筒に弾ぶち込んで導火線に火を付けて! 簡略化されてるから適当でもだいじょーぶ!」

「砲兵長! おかわり!」

「つまみ食いすんなー!」

「彩音さーん、これ大砲自体ってまだあります? テイムモンスター(ウチの子たち)もこれなら手伝えそうなんですけど」

「ありがとー! 今出すからちょっとまってて!」

 

 ガヤガヤざわざわ。とりあえず大砲をブッパなす事に決めた闇鍋は砲撃の用意をしているが、やはりとにかく騒がしい。

 一応、こんなのびのびとしていられるのには理由がある。

 

 濃霧の奥より湧き出る無数の軍勢は、一部の騎兵を除き多くが歩兵。移動速度で言えば決して高くは無いし、高機動を持つ騎兵も突出すること無く足並みを揃えている。

 大将たる《霧夜叉》もまた、HP回復というギミックのためか、これまでの攻勢とは打って変わってこちらの様子を伺うように静かに距離を詰めてきている。

 相手からしてみれば、自身のホームグラウンドに堂々と構えられた一夜城である。無闇矢鱈に突撃して踏み潰せるものではない。《霧夜叉》がそう判断しての行軍速度であった。

 

 もちろん、有象無象のエネミー全てがこのレベルの思考ロジックを持っているわけではない。大型レイドボスたる《霧夜叉》に与えられた特権のようなものだ。

 

 幸か不幸かその特権が、両雄が奏でる剣戟が常の戦場に休符を生み出していた。

 

 そんな最中、わちゃわちゃしている砲兵組の横ではそうでない組が彩音作の砥石*1で武器の手入れをしながら砲撃後の動きを話し合っていた。

 

「とりあえず、砲撃後は朔月とか蒼星みたいなメインアタッカー組は少しでも多く敵を倒す事に注力して。私は仕留める事は考えずに打ち漏らしに防御系のデバフ入れて回るから」

「任せろって。レイドボスだし《剣鬼の戦篭手》の出番はねぇと思ってたけど、いい感じにぶっ刺さったな」

「おっけ、とりあえず殺して回るわね。取り巻き倒したら魂って回収出来るかしら。それ次第で立ち回りだいぶ変わるのよね」

「さぁ……どうでしょう。ただ、もし仮に回収出来ても質はそこまで高くはないでしょうね」

「問題はそこよねぇ……。抱えてるふたつが最上級な分、使い潰すのも惜しいし困ったものだわ」

 

 2度3度、感触を確かめるように大鎌を振るいながら蒼星が愚痴をこぼす。メンバーが続々とそれはそれは楽しそうに切り札を切り散らかしている現状、自身にはその権利自体が無い事実に蒼星は少なくないストレスを感じていた。

 

 元はと言えば急遽決まった《猟犬の群れ》への強襲(カチコミ)。そして勢いそのままに最新の……つまりは最強クラスの大規模レイドボスへの少数精鋭での挑戦(とつげき)

 

 むしろ、十二分以上の準備が出来ている方が少数だろう。

 その中でも、蒼星は要求される事前準備の敷居が高い。ならば、むしろ元々所持していたひとつに加え、《猟犬の群れ》ギルドマスターの魂という最上位の魂を抱えられている方が幸運というものだ。

 

 それでも、ふたつ揃えば最後のひとつも揃えたくなるのが人情というもの。その悔しさはおそらく、半端なものでは無いだろう。普段なら風切り音ひとつ立てないはずの大鎌も、今回ばかりは悔しさに唸り声をあげていた。

 

「まぁまぁ、落ち着きなって蒼星さん。心を乱しちゃ闇討ちは上手くいかないぞ」

「……アンタの魂かっぱらってやろうかしら」

「お? やるか? 簡単にゃ渡さねぇぞ」

「はいはい、落ち着いて。そろそろ向こうが打ち始めるみたいだから切り替えて」

「「へーい」」

 

 それぞれがそれぞれの準備を終え、嵐の前の静けさが緊張の糸を張り詰めていく。

 

 最終的に用意された大砲は5門。万に迫るかという軍勢を相手取るにはいささか少なくも思えるが……詰め込まれた砲弾を考えればそうも言えないだろう。

 

 些細な衝撃で盛大に破裂する危険アイテム『ニトロストーン』を慎重に加工した爆裂粉末。

 生体ポップコーンの異名をとる自爆生物《癇癪玉蜘蛛》からドロップした、アホみたいに燃焼する糸『炎上網』を乾燥させた蜘蛛糸火薬。

 小さくなるほど硬く鋭くなるという性質を持つ『小剛鋼』を細かくした鉄片。

 他にも『粘塵』『粉末油』『汚泥石』『聖なる白い粉』『ジャングルミントの種』『胡椒』『マイマイウッドの寄生卵』『マーキングパウダー』『とろ〜り霊障』『痺れ水晶』『岩塩』『連鎖爆竹』『パニックミミックの肝』『焦げ焦げ蛙』『症毒疫(しょうどくえき)』『盲目茸』『腐乱流木』『脆体ドラッグ』『切り裂き昆布』『永眠梟の絞り汁』『熊猿の掌』etc……、様々な効果を持つアイテムをいい感じに調合し、百鬼夜行最粘と名高い《ステッキー・スライミー》のレアドロップ品『粘核ゲル』に練りこんで作成した焼夷材を外からの影響には強く内側からは脆い特殊な金属『外面鎧鋼』で包んだ特製砲弾。

 

 そんなアホの極みな砲弾を『込めたMPに応じて程装填した砲弾の効果が上昇する』砲身に装填し、火種にする事で火属性・爆属性のアイテムの効果を高めるプレイヤーメイドの特殊な着火剤『大爆火(おおばか)やろうver.2.3』で火を付け放つ。

 

 素材と生産スキルの暴力で生み出されたソレは、ただの大砲とは比べ物にならない凶悪かつ多様な効果を持つ特性の高級炸裂砲弾*2

 そんな金食い虫を何発も何十発も躊躇い無く敵陣にぶち込む事になるのだ。

 それはそれはド派手な花火が地上に咲き乱れる事になるだろう。

 

「打ち方よーい!」

「「「「おーう!」」」」

「てー!!!」

 

 轟音と共に、大砲が火を噴く。

 適当に撃っても何処かには当たるような大軍を前に、それでも一応狙うは雑兵。《霧夜叉》にはハナから効果薄と割り切り軍勢を削る事を優先した戦略は、上手い具合に噛み合ったようだ。

 

 着弾した特殊炸裂弾は容赦無く爆ぜ、集団を内側から食い破る。さらに、爆炎を伴って拡散する鉄片は爆発の直撃を免れた雑兵達にも突き刺さり、様々な効果を孕んだ粘つく炎によって絡め取る。ものの数十秒で、戦場は生々しい地獄絵図へと変貌していた。

 

「「「「うわぁ……」」」」

「なっ、何さその目は!!! 私はみんなの事を考え……」

「ごっくん。うっわ、《悪食》なかったら死ねるレベルでヤバイデバフ塗れだよこの弾丸。人魔大戦の時にあったら非人道兵器認定されるでしょコレ」

「みんなの事を、何です?」

「……ぶっ殺してやろうと思って!!!!!」

 

 いい笑顔で叫ぶ彩音。澄み渡るような清々しいまでの笑顔である。

 

「え、てかコレ、俺らあの中に突っ込むの?」

「ちょーっと、過酷が過ぎるわね……?」

「下手に鎮火せず燃え移りやすくしてるせいで接触したらこっちも焼かれそうだよね。流石に経皮摂取は《竜化》しないと厳しいかなぁ……」

「あれ? もしかしてタンクのお二方だいぶ辛い???」

「アレに焼かれてどうなるか次第……ですかね。燃えるだけなら逆にバフまであるんですが……」

「おもしろ」

 

 特殊大砲作戦が想像以上に上手く行った結果、この後前線で戦う予定だったメンバーが二の足を踏んでいる。

 上手く行き過ぎたようだ。

 

「あ、そこはだいじょーぶ。いろいろ詰め込んだ結果、燃焼は継続するけどそれ以外の効果付与の猶予時間が短くなっちゃって。炎に触ってデバフ発生するのは着火から10秒限定だよ! 撃ちこんでから10秒待てばただのナパームな火の海だから大丈夫!」

「実はナパームな火の海って大体の生物にとっては大丈夫じゃないんだよね」

「けどまぁ、火属性の継続ダメージが発生してるだけのフィールド効果って考えればやりようはあるでしょ」

「だな。水ぶっ被るでもいいし、耐火系のスキルかアイテム使ってもいい。あー、いや、ナパームだと水じゃダメなんだったか?」

「まぁなんにせよ、普通の火属性ダメージならどうとでもなりますし、さすがに彩音さんも無策じゃないでしょう?」

「え? あっ、うん! 耐火ポーションもちゃんとある……あるよ!!」

「今インベントリ確認したよね????」

 

 何はともあれ、地上戦組も火の海の中を戦う算段は付けられたようだ。これならば、ただの集団自殺にならずに済むだろう。

 

「んじゃ、改めて。突撃ーっ!」

「「「「「「おーっ!!」」」」」」

 

*1
『高性能使い捨て砥石』使用すると武器の耐久値を回復させ、一時的に鋭さに補正を付与する使い捨てアイテム

*2
1発作るのに一般的なプレイヤーの貯金が3割は吹っ飛ぶ




【おまけ】
「あ、私と雨葉さんはデバフなしなら普通に大丈夫そうなんでお気になさらず」
「それは心強……塩宮さんと雨葉さんはなんで燃えてるんです……?」
「実験です。まぁ平気だろうとは思いますが、万一があっては事なので」
「滝行ならぬ炎行だね。流石にノーダメとはいかないけど、自己回復でどうにかなる範囲っぽい」
「屋上で蟹と竜焼いてるって字面だけなら豪勢なBBQだよなぁ」
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