その彼岸花、劇毒につき注意されたし。   作:ビターエンドは美しくあるべきだと思う

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投稿間近だったデータが全飛びし、モチベーションゼロになってたんです。
ただ、うちのたきなさんに一晩中追いかけ回される夢を見まして。急遽書き直した所存でございます。
ユルシテ……ユルシテ……。

ゆる〜くどうぞ。




配属初日ってもう少しこう……和やかに過ぎていくものだと思ってました。

 「全く、あの人は……。」

 

護衛ということで沙保里さん(護衛対象)の家に泊まり込むことになったのはわかる。その流れでパジャマパーティーをしようというのも理解はできよう。しかし、

 

 「一人任せて帰らないでくださいよ。」

 「あはは。私は不安、吹っ飛んだけど。」

 

『用意を取りに行く。』そう言って千束さんはリコリコに戻ってしまった。

もちろんそこらの相手に遅れを取るつもりはないが、実力もわからぬ新入りに護衛対象を任せて行ってしまうのは、どうにも素直すぎるというか、人を信じすぎているというか……。

 

まあ、それが彼女の美点なんでしょうけど。

 

 「やはり千束さんは不思議な人ですねぇ。」

 「あれ?知り合いじゃないの?」

 

ふむ。たしかに彼女からの距離感だと、私達は旧知の仲のようにも見えるかもしれない。しかし残念ながら、私が千束さんと出会ったのは今日が初めてだ。

 

 「へぇ。すごく仲良さそうだったけど。」

 「そこは彼女の人徳でしょう。」

 

少々距離感のつめ方が強引すぎる気もするが、なぜか悪い気はしないのが不思議なところだ。

 

 あれやこれやと文句を言っても仕方がないので、気を取り直して沙保里さんと雑談をしながら彼女の家へと向かうことにする。

 

 「〜〜斯々然々、そういう感じで、前の職場をクビになりまして。」

 「うわぁ。マジでブラックなとこじゃん。やめて正解だよ。」

 

なるほど。ある程度ぼかして伝えたが、一般的な価値観からすると、リコリスひいてはDAというのはかなり劣悪な職場であるらしい。

まあ私達(リコリス)にとって見れば実に当たり前であるため何も思わないが、客観的な意見は実にためになる。

 

 「まあ、店長のコーヒーも美味しいですし、不満はないです。むしろ感謝してますよ。」

 「わぁおポジティブ。」

 

ポジティブシンキング。この世を生きていくの必須スキルです。テストに出るので覚えておいてください。

 

 

 ……さて。ふざけるのもここまでとしましょう。

 

 「無粋な……。」

 

つい口から、酷く棘のある声が漏れた。

 

喫茶店を出て直ぐに感じ始めた無数の視線。背後から聞こえるかすかなエンジン音。そして時折視界に入り込んでくる一台の車の姿。

 

 着けられている。

正体は恐らく、というよりあの写真の男たちしか考えられない。

 

さて、どうしたものか。

流石に沙保里さんの前で銃やら刀を抜くわけにも行かない。かと言って彼女を一人置き去りにするのはあまりにも危険。

 

しかし、現常維持というわけにも行かないだろう。

 

個々で憂いを断ってしまうのが最良か。

 

 「沙保里さん。」

 「どうかした?」

 

彼女はまだ奴らに気がついていない。またその笑顔を陰らせてしまうのか、と思うと心が痛むが、これ以上彼女の心に傷を作らないためだ。ここは心を鬼にするしかあるまい。

 

 「絶対に足を止めずに聞いて。」

 

キョトンとした様子の彼女にそう指示を飛ばし、もう一度後ろに視線を向ける。……よし。問題なし。

 

 「現在、私達はストーカーと思わしき集団に尾行されています。」

 「えっ……!?」

 「立ち止まっては駄目。感づかれる。」

 

ここで悟られれば全てがパーだ。然りげ無く彼女の背中を押して歩を進ませる。

 

 「いいですか?次にそこの角を曲がります。私が合図を出したら走って逃げて。」

 「え、でも、逃げ切れるの……?」

 

ふむ。貴方のその懸念は最もだ。でも安心してほしい。

 

 「私に策があります。」

 

 

◇◇◇

 

 

 日が傾き、薄暗くなった街なかにコートを羽織った女性が一人、スマホをいじっているのが見える。

 

 それをフロントガラス越しに見た男はニヤリと笑い、仲間と互いにうなずきあう。

どうやら邪魔なガキはいなくなったようだ。なら、あとやることは一つだけ。

 

女性の直ぐ側に車を止めて、逃げられぬうちにすぐさま車から降りて取り囲む。

驚き、後ずさる女性にわざと音を立てて銃を突きつければ、恐怖からかぽとりとスマホを取り落とした。

 

 「来てもらうぞ。」

 

仲間の一人が女性の腕を掴んだのを見て、男は地面を転がるスマホに手を延ばす。

 

ここにあるデータを消せば、全てに片がつく。

しかし顔を見られた以上、女も野放しにしておくわけにも行かない。

 

男の顔に卑下な笑いが浮かぶ。

さんざん手こずらせてくれたのだ。恨むなら、自分を恨むんだな。

 

 男の手がスマホを掴んだ、その瞬間である。

 

 

 「その薄汚れた手を離しなさい。」

 

 

ダンッ!

 

その場に響いた鈍い衝突音。

男がスマホから音のした方を見ると、そこには女の手を握っていたはずの仲間が地面に倒れている。

 

 何が起きた?

 

男は確認しようと立ち上がろうとするが、それよりも早く女の足が男の手を踏み抜いた。

痛みで思わず視線が下に落ちる。

その時、ふと気がついた。この女、こんな靴を履いていただろうか?

 

 「バカを釣るのに餌はいりませんねぇ。」

 

クツクツと蔑むような笑い声。

男が顔をあげると、そこにあったのは自分たちが追っていた女の顔ではなかった。

 

 「でもタイプじゃないんですよね、あなた達。」

 

自分を見下していたのは、紛れもない。悪魔(たきな)の顔であった。

 

 

◇◇◇

 

 

 身代わり作戦大成功。本当にまんまとつられてくれた。

沙保里さんにも心配をかけていますし、ササッと片を付けてしまいましょうか。

 

 おっと……。

 

 「下手に動くと腕の骨が折れますよ。」

 「グ……ッ!?」

 

後ろから伸びてきた男……男Aさんでいいか。男Aさんの手を掴み、捻り上げて体を密着させる。こうすれば殴打は大した威力が出ず、下手に藻掻けば腕の骨が折れる。

 

くさい息が体にかかることに目を瞑れば、敵一人をを無力化するにはうってつけだ。

 

あ、そういえばこのコート、沙保里さんからの借り物だった……。

汚したらまずい。男Aさん。情けない悲鳴なんて上げてないでもうちょっとむこう向いてください。つばが飛ぶでしょうが。

 

 「このガキッ!」

 

おや。結構本気で投げたんですけど、頑丈ですね男Bさん。

でもダメージは蓄積されているようで、姿勢は膝立ちのままなうえにせっかく構えた銃もプルプルと震えて標準が定まっていない。

まるで生まれたての子鹿のよう。あ、それは子鹿に失礼か。

 

 「銃を構えたら躊躇するなと教えられませんでした?」

 「ガッ!?」

 

太股のホルスターから銃を引き抜き、即座にトリガーを引く。

直後に男の手から銃が吹き飛び、そ男Bさんはの場にうずくまった。

 

さすがの命中精度です。さすが私。さすたき(さすがたきなさん)ですね。ハッシュタグ付けて拡散願います。

 

ところで男Cさん。さっきから地味〜に痛いので足を殴るのやめてもらえません?

 

……なに?痛いからどけ?ほっほう。あなた、年頃の女の子になんてことを言うんですか。

私の体重が重いと?ん?

 

あらら。泡吹いちゃった。最後まで失礼な人ですね。

 

 

 

ーーブロロロ……!

 

 

って、運転手さん、一人で逃げるおつもりで?まあ、判断としては悪くないと思いますケド……。

 

 「逃しませんよ。」

 

少し、決断が遅かったですね。

タイヤを撃ち抜いて、車をハリボテに変えてやる。

それ以上動いたら打ちますよ(事後報告)。

 

 さて、と。足は奪った。四人のうち一人は気絶、一人は満身創痍、一人捕らえて一人は怯えて車から出てこない。

 

あとは、どう処してやりましょうかねぇ……(悪魔の笑み)

 

少なくとも、死んだほうがマシなめにはあわせてやりましょうとも。

私、手加減が苦手なんですよ。

 

 「そもそも罪のないカップルに手を出した時点で極刑ですからね。」

 

さあ、覚悟なさい。

 

 

◇◇◇

 

 

 走る、はしる、走れ!

 

あーもう、私のバカ!たきなの言う通り二人で一緒に沙保里さんを家に送り届けるべきだった。

相棒って言われてちょっと浮かれてたかも……。

 

……ってうぉっとぉ!!道間違えた!

いかんいかん。落ち着け私。一刻も早く沙保里さんのもとに向かわなければ

 

電話のとおりなら、ここの道を曲がって……いた!

 

 「沙保里さん!」

 「……千束ちゃん!」

 

沙保里さんは、薄暗くなった道の隅で、たきなのカバンを抱きかかえてうずくまっていた。

 

私の声にはっと顔を上げる沙保里さん。でも、その顔はひどく青ざめていて、私の顔を見るなり勢いよく掴みかかって……いや、縋りついてきた。

 

足元はおぼつかないし、何より顔色がひどい。

 

 「どうしよう……私、たきなちゃんを!」

 

青、というかもう真っ白だ。足元もおぼつかないし、息も荒い。これじゃあとても、話は聞けないだろう。

 

……いや、冷静になれ私。ここは一旦深呼吸。

 

 「ほら、沙保里さんも一回落ち着いて。」

 「で、でも……!」

 「だいじょーぶだって。ね?」

 

たきなだってリコリスだ。そんな簡単にやられたりしないだろうし、寧ろ大立ち回りしているかも!

 

 「吸ってー吐いてー。どう?落ち着いた?」

 「う、うん。なんとか……。」

 

よしよし。まずは沙保里さんを安全なところまで連れて行く。見た感じ仲間とかはいなさそうだけど、念には念を入れて、だ。

たきなには少し頑張ってもらうことになるけど、せっかく作ってくれたチャンスを無駄にはしたくない。

 

 「一旦離れよう。」

 

頼むぜ相棒ーー

 

prrrrr....

 

電話。こんな時に…。

誰だよ全くーーってぇ、たきな?!

 

 「もしもし!?」

 『はいはいたきなさんですよ。叫ばなくても聞こえます。』

 

たきなのすごく気が抜けた声に、私の体から一気に力が抜ける。どうやら、無事らしい。

 

 「敵は?」

 『銃こそ持っていましたが、素人の集まりでしたね。思いの外サクッと終わりました。』

 

よ、良かったぁ。

沙保里さんにもたきなの無事は伝わったみたいで、ホッと顔を弛める。

 

 『一旦全員でリコリコに戻ればよかったんですよ。私一人だったせいで沙保里さんは単身逃げることになったんですからね。』

 「うぅ……、ごめんなさ〜い。」

 

ぐはっ。

ごもっともなド正論が私に突き刺さった。

やめて!私のライフはもうゼロよ!

 

 『ま、いいです。私も最善策を取れたわけではありませんでしたし。

もう大丈夫だとは思いますけど、くれぐれも気をつけて。』

 「う、うん。わかった。」

 

あっ、最後だけ優しい。

こ、これがアメとムチってやつかぁ……。

 

 『とりあえず武装解除して拘束しておきましたけど、このあとどうすれば?行きつけのクリーナーとかあるんでしょうか。』

 「あぁ、えっとね……」

 

おっかしいなぁ。全部たきなに取り仕切られてる気がする……。

私のが年上(一つだけ)で先輩のはずなんだけど。

 

うむむ……。

 

 

◇◇◇

 

 

 「……はい、はい。よろしくおねがいします。」

 

千束さんに教えてもらったクリーナーに連絡を入れ、スマホをポケットに仕舞う。

 

さてコートは……。よかった。汚れはない。

血でもついていようものなら申し訳が立たないところだった。いくら緊急事態だったとはいえ、人のものを汚すのは良くない。

 

 「う、ぅう……!」

 「ハァ。」

 

いい加減に足元が煩い。人の忠告を聞かないからこうなるのだ。抵抗さえしなければもっと穏便に済ませたというのに。

私はね、手加減が苦手なんですよ。

 

 「もうお婿に行けない」

 「あなた達に貰い手なんているとは思えませんけど。」

 

全く。そんなメソメソされたら私が悪いみたいじゃないですか(お前が悪いんだよ)

身ぐるみ剥がして鼻っ面へし折ってワイヤーで縛り上げただけなのに。

罪なきカップルに手を出して、この程度で終わらせてあげたことをむしろ感謝してほしい。

 

しかし、反省の色が見えませんね。少しばかり釘を刺しておきましょうか。

 

 「今度同じことしてみなさい。」

 

どうなるか……わかりますよね?(敗者にふさわしいエンディングを見せてやる)

 

 「「「「(コクコクコク)!!」」」」

 

ハイ素直でよろしい。

 

 暫くして、到着したクリーナーさんたちに男たちを引き渡す。序に車の方もレッカーしてもらえば、まる最初からなにもなかったように、綺麗サッパリ消えてしまった。

ふむ。素晴らしい腕だ。職人魂を感じる。

 

彼らの働きにより、この国の清潔さは保たれていると言って過言ではない。

彼らがいなければ今頃この国は血の海になっているだろう。

クリーナー様々だ。

 

そんな縁の下の皆さんを見送り、私は軽く伸びをする。

いや、初日から色々ありすぎでは?

というか、昨日の今日で銃取引の証拠が掴めるとは思わなかった。

 

まるで、千束さんを中心に何かしらの事件が巻き起こっているような、そんな感覚がする。

 

 「本当に面白い人だ。あなたは。」

 

暫くは、退屈せずに済みそうですね。

 

 

◇◇◇

 

 

翌日

 

 「どうですか?」

 

私は今、着慣れたリコリスの制服ではなく真新しいリコリコの制服に身を包んでいる。

リコリスの制服にちなんで、色は青。

 

髪は後ろで縛ろうとしたら、強制的にツインテールにさせられた。

犯人は千束さん。彼女いわく、「ツインテールのほうが絶対可愛い!」……とのこと。

特に反対する理由もなく、この髪型を受け入れた次第である。

 

 「おおっ!かわいい!」

 「ふふ。それはどうも。」

 

千束さんの赤い和服もよく似合っている。

店内に視線を戻すと、妙にカリカリした様子のミズキさんの姿が見える。

あの写真確か……、昨日沙保里さんからもらったもののはず。

 

……あぁ、なるほど。

 

 「ミズキさん。あまり人を妬むのは良くないですよ。」

 「妬んでなんかないわ!」

 

いや、そんな血涙流しそうな顔で言われても説得力ゼロですよ。

 

 「まぁまぁ。そんなことより〜、」

 

千束さんが私をの腕を引く。

店長やミズキさんを更に近くへと寄せ、彼女は自身のスマホを構えた。

 

 「はいチーズ!」

 

パシャリ。

実際にシャッターが切られたわけでなはないが、スマホから音が聞こえる。

思えば、誰かとかこうして写真を取るなんて初めてのことかもしれない。

 

 「よーし、SNSにあげちゃおっと。」

 

そんなことを言いながらスマホを弄る千束さん。

彼女の指の隙間から見えた画面。そこに写った自分の顔に、ついつい笑いが漏れてしまう。

 

 「どったの?」

 「いえ。なにも。」

 

そこに写っていた私の顔は、いつになく楽しそうに、愉快そうに笑っていた。





一人称戦闘って難しすぎないか?
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