世界の守護者   作:匿名だよっ

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 リ・エスティーゼ王国と同じように、文字数が少ないです。申し訳ございません。


裏話〜バハルス帝国〜

 現皇帝——ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスが10代前半の頃、皇帝の座に座り改革を断行した事で、バハルス帝国は繁栄していた。改革を強行出来た最大の理由は、国境を接しているどの隣国からも、侵攻を受けないとエル=ニクス帝が確信為である。

 リ・エスティーゼ王国では、第三王女のラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフが突如として失踪し、政争中である為侵攻する余裕はない。

 スレイン法国はエルフの王国と戦争中であり、友好的に接している我が帝国に侵略し、戦線を二つに拡大する必要性は無いと考えられる。また、カッツェ平野が間にある事から、侵攻するには他国の領土を通る必要がある為、それもまた侵攻されないと考えている要因である。

 同様に、竜王国はビーストマンの国から侵攻を受けており、その侵攻に全兵力を捧げている竜王国が、帝国に侵攻する余裕など無いだろう。

 カルサナス都市国家連合は12種族からなる多民族国家であり、恨みがある彼らが手を取り合って帝国に侵攻する可能性は限り無く低いと考えられる。

 それ故に、エル=ニクス帝は侵攻されないと確信した事で、改革を断行し、内政に力を注ぎ、国力を高め始めたのだ。そして、帝国の国力を更に高める為に、肥沃な大地を持つ隣国を侵略対象とした。

 

 欲深い王国の大貴族に金を渡す事で王国の情報を得て、収穫の時期を狙い毎年戦争を仕掛けた。それによって国力を削り、併呑を画策していた。

 後数年でエ・ランテルは獲得出来る...そのような状況になったにも関わらず、帝国は突如として王国への併呑計画を破棄した。であれば、仮に他の国家を狙ったのか?

 ——いや違う。どの国家に対しても、侵略行為を起こす事は無くなったのだ。その理由は至って簡単な事である。エ・ランテルを首都として新たに建国された国家、アインズ・ウール・ゴウン魔導国を危険視している為である。

 国王はオーバーロードという異形種であり、周りは人間種国家しかいない事を考えると、異端な国家だ。また、都市を一つしか持たない国家に何故、帝国がわざわざ魔導国を警戒する必要性があるのか?

 それは魔導国が有する軍事力が強大すぎる為である。一体で帝国軍全部を相手にする事ができる伝説のアンデッドを多数保有し、魔導王は魔法一つで数万人もの命を奪った危険過ぎる魔法詠唱者(マジック・キャスター)だ。

 

 さて、強大な軍事力を有している魔導国に対し、帝国一国で戦う事は出来ない。また、表向きは魔導国の同盟国であり、帝国が対魔導国の同盟を作り上げるのは不可能だ。

 しかし、なんとしてでも同盟国が必要だ。特に、人間国家であり、同じように人間という種族を守る意志が硬いと考えられる——周辺国家最高峰の国力を持つスレイン法国を、同盟国として迎えなければ勝つ可能性は限り無く低くなるだろう。

 帝国は秘密裏に法国と接触し、密談を行うべく、何処で会談するべきか皇帝は悩んでいた。帝城は、監視されている可能性が高い為、危険だと皇帝は考えたのだ。それ故に、観客の声で騒がしいコロシアムを会談場所に変更しようと考えたその時、突如として銀色の鎧を着た戦士が帝城に現れた。

 

「少し待ち給え」

「っ...! 何者だ!」

 

 皇帝は焦る。当たり前の話だが、この密談がアインズ・ウール・ゴウン魔導国に所属する者達には、決してバレてはいけない話なのだ。だが、目の前に突如として現れた戦士は、明らかに怪しげな存在だ。

 ここにどうやって入ったのか、この城を守護している者達はどうなったのか、鎧を纏っているにも関わらず何故金属音が聞こえなかったのか、そもそも何者なのか、様々な疑問が皇帝を襲う。

 

「その場所には、素直にこの帝城を勧める。魔法学院やコロシアム、冒険者ギルドは勧めない」

 

 それ故に、怪しい存在であり、魔導国の手先だと考えていた存在故に、皇帝は驚愕した。まるで目の前の銀色鎧を纏った女戦士は、わざわざアドバイスをしに来たように感じたのである。そこは危険だから辞めておけ、と。

 魔法学院は確かに、裏切り者のフールーダ・パラダインを慕っている魔法詠唱者(マジック・キャスター)が数多く在籍しており、危険な可能性は非常に高い。

 しかし、何故コロシアムと冒険者ギルドが危険なのだろうか?

 それを聞く為に、皇帝はその戦士に対し、この場に留まるように声を掛けた。

 

「待——」

「私は警告したぞ、では、健闘を祈る」

 

 残念ながら、先程までここにいた存在は人の話を聞かない存在らしい。警告と称し、法国との密談を知っているぞと仄めかし、健闘を祈られる。よく分からないが、仮にあの戦士が魔導国の手のものだとした場合、帝国は終わりだ。

 そもそも、法国と密談をする事が分かっているのであれば、その現場を押さえればいい話だ。だがどうだ?

 あの女戦士は特に、知っているぞと仄めかすだけで、特にその会談をするなと告げるのではなく、逆に助言らしき言葉を放ってきただけである。

 

「あの戦争にて、突如現れた戦士も転移で消えたのだったな?」

「は、はい。そのように聞いております」

「そして今の戦士も転移で消えたか...」

 

 皇帝は考える。あの戦士が仮に、人間という種を守る為に行動している戦士であれば、帝国が危険だと考えたからこそ、わざわざ危険を冒してこの場に来たのだろう。

 それと同時に、あの戦士はかなりの情報通であり、頭も悪く無いという、優秀な存在、又はそのような存在を抱え込んでいるのだろう。

 どうせあの存在が魔導国の存在であれば、帝国は終わりなのだ。であれば、信じてみても良いだろう。そのように考えた皇帝は、会談場所を帝城とし、隠語や紙を使った密談を報告と行った。

 

「——()()殿()、銀の使者を遣わしてくれたのは、貴方方なのかな?」

「...申し訳ございません。そのような使者を出した記憶はございません」

「そうか...では、貴殿達は武具を取り扱っておられるが、金色の鎧或いは銀色の鎧を持っているのか?」

「...いいえ、そのような鎧は現在保有しておりません。その武具をお求めでしたら、私の友人に、王国にて商売をしている商人がおられます。私共でその武具を取り扱っているか、聞いてみる事にしましょう」

「そうか! それは助かるよ。では——」

 

 密談は成功し、法国と秘密裏の同盟を結ぶ事に成功した。また、金色の鎧を纏い、戦争に介入して来た戦士、そして銀色の鎧を纏い皇帝に助言をした戦士、共に法国の戦士では無いようだ。

 それと同時に、法国も王国側で参戦したあの戦士の事を追っており、王国に潜んでいるのでは無いかと考えているらしい。彼らでその情報を探ってくれるというのは、非常に有難いことである。

 さらに、後から聞いた話だが、あの魔導王がコロシアムにて武王と戦い、勝利を収めたという。それを聞いた時、皇帝は確信した。あの銀色の鎧を纏った女戦士は帝国に味方をしてくれる存在だと。

 

 

 

 

 帝国にて泳がしていた愚かな貴族達だが、一夜にして鏖殺されていた。いずれも高位の貴族であり、その中でもウィンブルグ公爵や魔法学院の学院長は、それ相応の権力を持っていた強者であった。

 貴族達の共通点を詳しく調べてみたところ、邪神を信仰する教団に所属する者達であった事が判明した。何故鏖殺されたのか、それを調べる為に情報収集を行ったところ、一つの情報が皇帝の耳に入った。

 銀色の鎧を纏った戦士らしき存在が、邪神を信仰する教団が根城にしていた墓場の近くにいたというのだ。間違いない、あのアドバイスをしてくれた女戦士だろう。

 

 であれば、邪神を信仰する教団は、人類の敵になるような事をしていたのだろうか?

 それを確かめる為にも、皇帝は隅々まで情報を集めさせ、ようやくその証拠に辿り着く事が出来た。何百もの生贄によって、強大なアンデッドを召喚する事が出来るというアイテムを保有していたという情報が入ったのだ。また、第七位階魔法——〈不死の軍勢(アンデス・アーミー)〉が込められたアイテムも保有していたという。両方のアイテムは既に消えていたものの、回収されたと考えるべきだろう。

 さて、そのようなアイテムを持っており、邪神を信仰する教団にそのようなアイテムを与えた存在など、魔導国以外にあり得ない。同盟相手の法国が、そのような事をする訳が無い。

 

 そして、そんな化け物が現れた場合、我が帝国だけの軍隊で討伐する事は不可能だろう。そのような事態が起きた場合、魔導国は同盟国である事を理由として、軍隊で介入してくる可能性があった。仮にその軍隊を拒否した場合、我が帝国は軍事力を消耗させ、軍事的な圧力に屈する可能性がある。

 逆にその軍隊を受け入れた場合、大きな借りを魔導国に作る事になる。そもそも、アンデッドといった異形種で構成された軍隊に軍隊など、受け入れたくも無い。あの魔導王の事だ、助けに来た振りをしつつ、いろいろと次の種を蒔くに違いない。

 

(ありがとう! 銀色の戦士殿!)

 

 銀色の戦士が帝国を陰ながら守ってくれていた事に、エル=ニクス帝は内心ガッツポーズをしていた。

 

 

 

 

 スレイン法国が対魔導国の同盟を作ってくれたことで、その同盟の拡大は今のところ順調である。アベリオン丘陵を支配していた亜人種達が突如として数を減らした事で、法国とローブル聖王国の交流が盛んになったからだ。

 ローブル聖王国のカルカ・ベサーレス聖王女は、アンデッドであったとしても、国民を幸せにしているのであれば良いではないかという——現実を見ろと言いたくなるような意見を持っていたようだが、側近の最高位神官や法国の人間に説得され、対魔導国の同盟に参加するようだ。

 したがって、現在の対魔導国包囲網に参加している国家は、スレイン法国、バハルス帝国、ローブル聖王国の三国である。

 

 同盟に参加していないものの、時が経てば同盟に参加しそうな国家も存在している。その国家は、竜王国、カルサナス都市国家連合の二国である。

 竜王国を侵略していたビーストマンの国家だが、突如として国家が亡くなったという。巨大な爆発が起きたらしいが、それによって壊滅的被害を受けたのだろう。都合が良過ぎる話である事から、恐らくだが、何者かがその爆発を引き起こしたのだと思われる。

 竜王国は復興により、対魔導国の同盟には入らなかったものの、復興後は参加してくれるらしい。

 また、カルサナス都市国家連合だが、彼らも彼らでアインズ・ウール・ゴウン魔導国を警戒しているらしい。彼らは同じ人間では無く、様々な亜人からなる多民族国家であるものの、成人以上の国民全てが兵士以上の力を持つ亜人種は、強大な武力となる。

 しかし、法国はカルサナス都市国家連合が同盟に加わる事をよく思っていない。人間至上主義の国家であり、亜人種など即抹殺の彼らからすれば、神聖な同盟が穢されるようで嫌なのだろう。

 

()()()()と共にご飯をいただくというのは、やはりダメなのだろうか?」

「...不可能でしょう。我々も、あの者も、双方共にその食卓につきたいとは思いません。しかし、共にその食卓につけば、美味しいご飯を食べる事が出来るというのは魅力的ですね」

「ふむ...やはり、彼の方が拒否されているのでしょうか?」

「...仲が悪いとは言え、永遠に仲違いし続けるのは愚かな事でしょう? 美味しいご飯を頂くのであれば、致し方ない...そのように割り切る必要があります」

「...そうだな。そう言えば、あの——」

 

 人間国家では無いものの、強大な力を持つ国家——アーグランド評議国を同盟に誘えないのか?

 そう言った意味合いを含んだやり取りだったが、なかなか話は前に進まない。いや、当初と比べると、法国の態度は軟化している。しかし、肝心の評議国の方針が変わらないのだ。

 あの国にいる永久評議員のドラゴンは、ドラゴンらしく強大な力を有しているらしい。その中でも一体だけではあるが、強大な力を有しているドラゴンがいるらしい。その力は、帝国が有する最大の魔法詠唱者(マジック・キャスター)たるフールーダさえも、軽く超える力を有しているとの事らしい。

 それほどの強者であれば、アインズ・ウール・ゴウンさえも消し去る事が出来るだろう。そう考えたエル=ニクス帝は、同盟に誘えないか報告に尋ねているのだ。

 

「それにしても、貴方の友人...王国の商人はなんとおっしゃったのか?」

「残念ながら」

「...そうか」

 

 愚かな事だが、リ・エスティーゼ王国は対魔導国の同盟に参加しないようだ。戦争によって多数の貴族、平民が亡くなった事で、国内が不安定化している事が原因だろう。

 だが、同盟にさえ参加してくれれば、秘密裏に不安定化している原因を取り除く事さえ出来る。それを仄めかしても尚、首を縦に振らなかったという。

 王国さえ同盟国に参加してくれれば、完全な包囲を結成出来る事となり、いきなり戦争行為を行わなくても、経済制裁といった行為を持って魔導国を締め上げる事も可能だ。もちろん、そのような行為をすれば逆に戦争を仕掛けられる可能性があるものの、戦争を仕掛けられれば大々的に被害者であると訴える事が出来る。

 

 法国の者と会談し、いろいろと考案していたその時、秘書官が部屋に入ってくる。

 

「陛下、失礼します!」

「今は商人殿との交渉中だぞ!? すぐさま退室せよ!」

「陛下、()()の要件でございます!」

「中央の要件!?」

 

 魔導国の要件らしい。それも、法国との対談中にも関わらず、皇帝に伝える必要がある要件。

 エル=ニクス帝はその要件を聞く為に、法国の者に軽く謝罪し、報告内容を聞いた。

 

「何? 王国貴族が魔導国の馬車を襲った?」

「はい。魔導国は王国の貴族に食料援助を行っていたようで、食料援助を行うべく食料を抱えた馬車を王国内で襲撃したようです」

「それは事実なのだな?」

「はい。帝国の情報省が得た確かな情報です」

「そうか、下がってよいぞ」

「はっ」

 

 今のような、正常な国交のままでは居られ無いだろう。面子に唾を吐かれたのだ。それ相応の報復措置を取らなければ、魔導国が軽んじられる事となる。では、魔導国はどのような対応を取るのか?

 法国の者がいる部屋に戻りながら考える。先ず考えられるのは、国交断絶からの戦争に発展する可能性だろう。最悪な事態だが、向こうに非がある以上、大々的に批判する事は厳しい。また、新たな領土を得るチャンスをみすみす手放すとは考えられない。

 次に考えられる事は、圧倒的な軍事力を背景とした王国が不利となる条約の締結だろう。経済的、軍事的、様々な条約を締結されるのは対魔導国の同盟からすれば、面倒以外の何物でもない。軍事条約を締結されれば、魔導国を相手にした場合、王国が敵側として参戦する可能性があるのだから...

 最後に考えられる事は、これまた軍事力を背景として、王国が魔導国の属国となる事だろう。貴族の力が強過ぎるあまり、不安定と化している国家が属国化を魔導国に述べる事は、可能性として低いものの、一部優秀な存在はいる。彼らが権力を使い、その選択肢を選べば面倒な事になる。

 王国が魔導国の属国となれば、ありとあらゆる面で二国とも相手取る事になる。いくら腐るだけの、古い国家であったとしても、あの地は肥沃な大地を有している。そんな土地をあの魔導王が支配すれば、数十年で周辺国家最高峰の国力を有する国家に変貌する事になるだろう。

 

「くそっ! あの無能どもめ...人類の危機なのだぞ! 何故、軽率な行動をするのだ!」

 

 一人で抱え込んでも意味が無い。優秀な者達と話し合う事が重要だ。苛立ちながらも、エル=ニクス帝は法国の使者がいる部屋に戻る為、部屋の扉を開けた。

 

 

 

 

 アインズ・ウール・ゴウン魔導国は、リ・エスティーゼ王国に戦線を布告した。対魔導国の同盟が考えていた最悪な選択肢であり、普通の戦争ですらなかった。その行為は戦争というものでは無く、八欲王以来の大虐殺を行う集団と言える。

 スレイン法国の者達だけで無く、バハルス帝国の者達も王国に潜り込み、情報を探っていた。それ故に、最高の情報を得る事に成功したのだ。

 その最高の情報とは、探していた金色の鎧を着た戦士を発見する事が出来たという情報である。帝国がその戦士と接触する事は出来なかったものの、法国は接触に成功したようだ。また、その戦士が確実に魔導国と敵対している事も確認出来た。

 何故ならば、魔導国軍を単独で壊滅させ、魔導王の側近らしい昆虫の生き物と、女の子らしい()()()のダークエルフを殺害した為だ。あの魔導王の事だ、蘇生魔法くらい使える部下を持っているだろう。しかし、これは大きな一歩だ。何故ならば、魔導王を倒す事が出来るかもしれないからだ。

 

 この情報を聞いたエル=ニクス帝は、久しぶりに良い情報を得た事から、子供らしくはしゃいで喜んだ。

 

(素晴らしい! 我が帝国もまだ戦える!)

 

 ガッツポーズをして、何があろうとも屈しないとエル=ニクス帝は考えた。

 

(だが、今回の事で分かった。魔導国は、いや...魔導王は非常に危険だ。あれは戦争では無い。王国民という人族の淘汰作戦だ。人類の危機だと考えた私は、間違いでは無かった)

 

 エル=ニクス帝は改めて屈しない意志を固め、法国との次の会談を行う為の指示を出した。人類という種を守る為に。




 今回で完結とさせていただきます。
 ツアー視点、法国視点も書こうと考えたのですが、納得いくものが書けそうではなかった為、諦めさせていただきました。

 皆さま、【世界の守護者】を読んでいただき、ありがとうございました。
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