チェンソーマン外典:The AvengeDevil 作:霧屋堂
獅子舞の悪魔を倒した後、公安のデビルハンターに任意とは名ばかりの強制的な事情聴取を東京で受けることになった。
本来は東京にまで行く必要は無いのだが、事情が事情なだけあって東京で扱う事になったと説明された。
もうこっちに戻って来れない可能性があると言われ、1日だけ猶予を貰って少ない荷物を整え、不要なもの以外をカバンに詰め込んだ。
どうやら例の肉片は持っていると色んな意味で危ない代物らしく、回収されてしまった。
翌朝から3人の黒服に連れられて出発し、電車と新幹線を乗り継ぎ、数時間かかって東京駅に到着した。
広い構内を通って外に出た後、自分たちを待っていたらしい黒塗りの自動車に乗せられ、物々しい建物に連れていかれた。
車から降り、黒服に従って門を通り抜け、中に入った後、受付らしき所の近くで待つように言われた。
窓口の方を見ると黒服の1人がこちらを指差しながら説明しているのが見えた。
数分程経ったあとだろうか、眼鏡をかけた男についてくるように言われたので、彼に続いて移動し、とある部屋に通された。
その部屋は窓が1つしかなく、窓には鉄格子が嵌めてあり、まるで漫画で読んだような独房のような雰囲気を感じる。
「そんなに固くならなくても大丈夫ですよ、別に君を尋問しようって訳では無いのですから。」
と、眼鏡の男が温和そうな声で話しかけてきた。
「は、はぁ…」
どうにも返事に困っていると、眼鏡の男が、
「こちらの事情があるとはいえ、半ば強引に東京にまで連れてきてしまってすみませんでした。」
と言って深々と頭を下げたので、ついビビってしまった。
「あ、頭を上げてくださいよ、着いてきたのは一応自分の意思なんで」
「それなら良いのですが…ああ、申し遅れました。私は公安特異2課の隊長の段組 類(だんぐ るい)と申します。」
眼鏡の男、段組はそう言って名刺を手渡してきた。
それを会釈しながら受け取る。
「ではそろそろ本題の事情聴取に入りますね。」
「あ、はい。」
「まずあなたの名前をお願いします。」
「絵共 弾です。」
「絵共さんですね。」
段組はバインダーに挟んだ紙に記入しながらさらに続ける
「では次に、貴方の契約悪魔について教えてください。」
「は、はい。えーと…」
果たしてどこまで言っていいのか困り、頭の中で呼びかけてみる。
「(おい、どこまで言っていいんだ?)」
『契約条件以外は言っていいぞ、理由は適当に繕っとけ。』
「(わかった)」
「えー…契約悪魔は「復讐の悪魔」です。」
「復讐の悪魔…なるほど、容姿や能力、契約条件はなんです?」
「容姿は俺の前では人型の黒い炎で、能力は身体強化と黒い炎の行使と悪魔から言われました。」
「なるほどなるほど、契約条件は?」
「…それに関しては言えません。」
段組は怪訝そうな顔をした
「それはどうして?」
「悪魔との契約条件に、「契約条件を他言しない事、但しこの契約条件のみは他言しても良い」という条件がありまして」
段組はちょっと考えるような様子を見せたあと
「ふむ、随分と具体的に指定してくるんですねぇ。」
と言って、話題を切り替えた。
「実を言うと貴方の経歴についてはある程度調べがついているんですよ。…銃の悪魔の被害に会われたそうですね?」
「ええ。家族、友人、思い出、故郷全てを破壊されました。」
「お気の毒な話です…」
そういうと段組は目を伏せた。
「失ったものは戻りませんから、今の俺は奴への復讐で動いています。」
「なるほど…その復讐心が復讐の悪魔を呼び寄せたのかもしれませんね。」
『中々に察しがいいなぁコイツ』
自分と同じ事を思っていたのでついつい返事をしそうになってしまった。
「ではそろそろ、貴方が先日倒した獅子舞の悪魔から出てきたモノについての話をしましょうか。」
段組は机の上に銀色のアタッシュケースを置き、鍵を開けて中身をこちらにみせた。
「これは?」
「獅子舞の悪魔から出てきたモノと同じ、銃の悪魔の肉片です。」
「これがあの…」
「銃の悪魔はあの事件の後、肉片をいくつかばらまいて消失しました。あまりにも強大かつ強力かつ強烈な力を持っている為に、肉片は肉片同士で引かれあってくっついて、このようになります。」
「ただの肉片が?」
「ただの肉片ですらこうだということです。」
段組は頷いた。
「コレを食べた悪魔は本来よりも強力な力を持つようになります。貴方が相対した獅子舞も異常に強かったのでは無いですか?」
「ええ、かなり」
「それだけ銃の悪魔の悪魔が及ぼす…いや及ぼしている影響は強大です。」
段組は言い終わると同時にアタッシュケースを閉じ、鍵を閉めて近くの黒服に先程記入していたバインダーと共に手渡した。
そうしてこちらに向き直ると、どこぞの特務機関の総司令のようなポーズをして声を低くして話し始めた。
「さて、ここからいわゆる商談のようなものになるのですが…」
「しょ、商談?」
「絵共さん、公安に就職してうちの隊に入りませんか?」
あまりに突拍子もなく言われたので、言われた事を理解するのに数秒かかった。
「お、俺が公安!?」
「無理にとは言いませんよ。と言えれば良かったんですけどねぇ…」
「へっ?」
一体どういうことだろうかと思っていると
「絵共さん、あなた正式なデビルハンターとしての登録を出してませんね?いくつか貴方の狩った悪魔は討伐依頼が出ていたりしたものがありまして…」
言い逃れができない事態を突きつけられ、冷や汗が垂れる。
「あとですね、嵌めたのは悪いと思っているんですが、銃の悪魔に関する今の情報は本来公安でしか扱えない物なんですよ。」
「はあァ!?」
開いた口が塞がらないとは正しくこれだろう、いつの間にか自分は四面楚歌に陥っていた。
「断った場合、今の情報が上に行くのですが…上の決定が最悪の場合…この場で殺害されてもおかしくありませんよ?」
もはや選択肢など存在していなかった。
「わかりました。入ります…」
段組はその言葉を待っていたと言わんばかりに書類を取り出し、
「それではこちらに色々書き込んでください、住む所も手配しますよ。」
『とんだ目にあっちまったなぁダァン!』
「うるせぇよ!黙ってろリヴェ!」
思わず叫んでしまった。室内の視線が一気に自分に集まってくる。
「あ、すいません。復讐の悪魔の一部が体にいるもんで」
「ハハッ、仲が良さそうで何よりですね。」
と段組は笑っていた。
数十分かかって書類を書き上げ、段組に手渡す。
「では明日からよろしくお願いしますね、絵共君。」
「…よろしくお願いします」
手を差し出されたので礼儀としての握手を交わした。段組の手はとても冷たく感じた。
これが自分の復讐譚に大きく関わる、公安への加入のきっかけだった。