チェンソーマン外典:The AvengeDevil   作:霧屋堂

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File6:強襲作戦。そして、(前編)

マムシの悪魔を討伐した日から数日の間、自分はまともに仕事が手につかなかった。

段組が逆井出のお兄さんの失踪の原因かもしれないという情報は、自分を少し人間不信にした。

段組と話している時も、何もしていない時も、その一挙一動に疑いの目を向けてしまう。

別に自分と逆井出兄に関係があった訳では無いが、行っていた研究も相まって、きな臭さを感じさせたのだった。

そして数日が過ぎた後、突如2課の全員に招集がかけられた。

 

「忙しいのに集めてしまってすみません皆さん、何しろ今回はかなり重大な案件ですので…」

と段組が申し訳無さそうにしていつものように謝っている。それが終わるか否かのうちに、あのいかにも武闘派に見える女性が口を開いて

「2課全員を集めるほどの重要な案件って事は、やはり大規模な討伐作戦ですかね?」

と、段組に質問する。段組は頷き

「ええ、藍田さんの言う通りです。2課に大規模討伐作戦の司令が下りました。」

(あの人は藍田って言うのか…関わりが無さすぎて知らなかった)

そんなことを思っていると、眼帯の女性が口を開き

「指令が下ったって事は、討伐対象の情報とかはもう届いているんですよね?」

と聞く、また段組は頷き

「ええ、こちらの資料を見てください。」

と言って机の上に大きな資料を広げた。場の全員が身を乗り出して覗き込む。

そこには建物らしき地図と、対象の悪魔であろう写真とそのデータが貼られていた。

「今回の討伐対象は蟻の悪魔です。本来大規模討伐対象になるほどの存在ではない悪魔のはずなのですが、銃の悪魔の肉片を多く取り込んだ事で多大な被害を及ぼしています。」

「この建物はもしかして巣なんですか?」と、逆井出が質問した。

「ええ、この建物は蟻塚と地下の巣の両方の性質を併せ持っているようです。ですから今回、2課を二手に分けて強襲作戦を決行します。」

それを聞いた逆井出は嫌そうな顔をした、自分にはどこが嫌なのか分からないので、逆井出は詳しいのかもしれない。

「部隊はどう分けるのですかな?」

「そこは不破さん、貴方にお願いします。こういう事は私より向いているでしょう?」

「ふむ…わかりました、請け負いましょうぞ。」

不破の返答に安心したように頷き再び正面に向き直ってから

「作戦開始は2日後です、それまでに各々準備をお願いします、以上で今日は解散です。」

と言い。それによって会議は終了した。

 

その後家に戻り、布団の中でぼーっとしていると、暇なのかリヴェが話しかけてきた。

『どうやらめんどくせェヤツとの戦いみてぇだなァ?』

「でもこれで銃の悪魔に近づけるかもしれないんだ、やるしかないだろ」

『にしても蟻ねェ…デカいし気持ち悪いんだろうなァ』

這い寄ってくるデカい蟻の顔面を想像させられてしまい、少々気持ち悪くなってしまった。

次の日には分担が不破から伝えられた。

おそらく本体がいると考えられる上空部分には自分、不破、逆井出、慈慧(眼帯の女性)

本体の子供であろう個体が眠っている地下部分に有村、藍田、蛇村、類田(真面目そうな女性)

となった。蛇村は契約悪魔の能力的に、地下の方がやり易いと自ら志願したらしい。

武器を整備し、1秒1秒を潰していく。そうでなければ落ち着けない。

しかし死地に向かう気分とは、ここまでも高揚するものだろうか?

自分はとうとうネジが1本2本程ぶっ飛んでしまったんだろうか

 

そして、作戦当日になった。

黒塗りのバンに8人が所狭しと乗り込む。運転席にはハゲ頭のサングラスをかけた人が乗っていた。

窓から段組がこちらに呼びかける

「皆さんの健闘を祈ります。無事に帰還してくださいね」

そう言って段組が窓から離れてから、車が走行しだした。

車の中はとても静かだが、いつも以上に誰もが殺気だっているように感じた。

数十分して、外れの方に出る。そこには遠目からでもわかる程異様な廃ビルが建っていた。

骨組みらしき部分は土のような物質で覆われ、付近の地面には何かがはい出たような穴が空いていた。

「ここが安全地帯ギリギリの場所です。ここから先は足でお願いします。」サングラスの男はそう言ってバンを停車させた。

各々が無言で降りていく中、類田だけが礼を言っていたのが聞こえた。

「では、ご健闘を。」

そう言ってサングラスの男の運転するバンは来た道を引き返して行った。

「では入口までは共に行きますか。」

不破はそう行って先頭を歩いていく。遅れまいと他の人達もそれぞれついて行く。

あちこち穴が空いた地面は歩きにくく、中から変な匂いもしている。

「さっきから地面の下がガシャガシャうるさいねここ。本当に大量みたいだ。」

「私の蜂もちょっと頼りになるか微妙だな…」

蛇村は耳をヘッドホンで塞ぎながらボヤき、逆井出はナイフを少々頼りなさそうに見つめていた。

「こっちは蛇村の索敵だけが頼りだ…不破さん、あんたの方は大丈夫か?」

「戦闘力は絵共君と逆井出君が保証してくれますよ、索敵に関しては慈慧君がいますしね。」

「なら良い…」

有村と不破は互いに慣れたような確認をしていた。

藍田や慈慧は「虫系は嫌だ」とかのボヤきをしていた。わかる、それは自分も嫌だ。

数分歩いて、ようやくビルの下にたどり着いた。

「では、ここで別れるか。蛇村、安全な地下への入口は分かるか?」

「わかるよ、こっちだ。」

地下組は蛇村を先頭に穴に入っていく。

「我々も行きましょうか。」

自分たちも不破について入っていった。

 

中は外側と同じような物質で覆われていた、本来のビルの材質であろう部分が時折見えたりしている。

当然の如く電気は通っておらず、辛うじて上がれそうな階段を上がり、一気に5階まで行く事ができた。

「この先の階段は崩れちゃってるね、目的地の10階までどうする?」

「『視て』見たけど他に階段は無いみたいだよ、でもエレベーターシャフトからなら6階に行けるかも」

逆井出の質問に答えた慈慧は続けざまに

「その前に敵襲だ、みんな構えて。」

と言った、その言葉に呼応するように蟻の悪魔の足音らしきものが迫ってくる。

「熊蜂」

逆井出はすぐさま蜂を呼び出した。自分も黒炎をまとい、室内戦闘に向いた短めの方の刀を抜く。

奥の壁が音を立てて崩れ、平均的な熊の大きさ程度の黒い蟻が4体姿を現す。

「俺が行きます!」

そう言って地面を蹴る、素早く先頭の蟻の足元に潜り込み、頭と胴体の間の部分を斬り捨てる。

蟻は一言も発せず、切り口から黒炎に包まれ消滅した。

攻撃を仕掛けてきた2体目の腕を刎ね、首を落とす。こちらは苦しむ声を上げながら燃え尽きる。

さすがに危険を感じたのか、奥にいた4体目が

「キケン、テキシュウ、シラセル」と言ったかと思うと、一目散に逃げていった。

『オイオイマズいンじゃねェのかダァン!』

「わかってる!」

3体目をほっといてでも知らされる訳にはいかない、その攻撃を避けて奥の壁に入り込む。

「すみません、コイツの相手頼みます!」

「任せて!」

逆井出に任せて、蟻を追う、まだ廊下のすこし先にそれは見える。

「炎飛ばせたりできねェのかリヴェ!」

『できるかんなもん!オレは火の悪魔じゃあねェンだよ!』

「不便だなチクショウ!」

遠距離攻撃ができないなら追いつくしかない。炎が勢いを増すイメージを思い浮かべ、能力による身体強化をさらに強力に使用する。

軽く地面を蹴っただけで、廊下を曲がろうとしていた蟻に肉薄する。

「ギガガッ!」

肉薄された蟻は死に物狂いで4本の腕による攻撃を仕掛けてくる。力だけはあるようで周囲にバカスカ穴が空く。

落ちないように慎重に避け、腕を一本一本刎ねる。今度は首を落とさず、心臓部分を突き刺す。

蟻はピクリピクリと動いたかと思うと、黒炎に包まれながら崩れ落ちた。

「ふぅ…何とかなったか?」

『いや、来るぞダァン!』

リヴェの声と同時に、天井が崩れより強力そうな蟻が現れた。

「人間如きがよくも我が部下を殺したな!」

「部下?じゃあお前が女王か?」

そう自分が問うと蟻は笑い

「フッ、我ごときが女王を名乗るなど恐れ多い。我は将軍よ。」と答えた。

「将軍ねェ、少しは骨があると良いなァ、殺したお前の部下よりもよ!」

リヴェの能力を強く使用しているせいか、興奮して普段言わないような啖呵を切る。

「貴様ァ!タダでは殺さんぞ人間!」

将軍蟻は怒り、口から何かを飛ばしてきた。避けたので当たらなかったが、代わりに当たった壁が溶けていた。

「ギ酸ってやつか…?にしては強力過ぎるぞオイ!」

『そりゃあ悪魔だから元になったものの性質より曲解されることもあるに決まってるだろダァン』

悪魔に常識は通じないとはいえ、これはさすがに意外すぎた。

「どうするかな…刀で防ごうもんなら刀も溶かされるだろうしなァ…」

右へ左へ、飛んでくる攻撃を避けながら考えていると、不意に横から煙が吹き込んできた。

「何者だ!?」

「悪魔に名乗る名など持っておらんな。」

声の方向を見ると、不破がZIPPOの火口を蟻に向けて構えていた。

「何でここに!?」

「慈慧君が教えてくれたのですよ。そちらに強力な個体が居ると。」

あの眼帯の人に助けられたのか、後で礼を言っておかなければと思う。

「煙が晴れる前に倒してしまいなされ、1秒の遅れが死に繋がりますぞ。」

「はい!」

視界が塞がれ、明後日の方向に攻撃を仕掛ける将軍蟻の背中に接近し、心臓に刀を突き立てる。

「貴ッ様ァァァァァ!」

「将軍なら潔く死ぐらい受け入れろ、醜いぞ。」

そう言って首を刎ね、トドメを刺した。

「お見事ですな絵共君。」

「不破さんの助けがなかったら死んでましたよ。」

刀の血を払いながら不破と会話を交わしていると、自分が来た方向から逆井出と慈慧が走ってきた。

「2人とも無事?」

「なんとか五体満足です。」

「なら良かった!」逆井出はほっと息をはいた。

「そっちは大丈夫だったんですか?」

「不破さんが遠くからある程度補助してくれたから問題無かったよ〜」

不破はこっちの補助だけでなく逆井出達の補助まで行っていたと聞き、改めて格の違いを思い知る。

「契約悪魔が戦闘向きではないからこそ出来る芸当です、大したことではありませぬとも。」

不破は埃を払いながら答えた。

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