クァンシ in リコリコ   作:NIRA NI

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秋桜

 

 

脳まで突き抜けるような光で目を覚ました。

明るさに慣れない目を細めて周辺を確認する。

公園だ。だだっ広い芝生と少しの樹木、あとは小さい遊具しかないただの公園。

小さい子供が追いかけっこして遊んでる。楽しげな笑い声が寝起きの頭に響く。

 

「頭いたい……」

 

私は何やってたんだっけ?どうしてココにいるんだっけ?思い出せない。

 

「なんだっけか」

 

芝生がひっついてむず痒い首をかきながら、思い出せない記憶を辿る。

何だっけ。

どうしてだっけ。

私は──────

 

『伐倒方向良し!倒すぞ!』

『はい!!』

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ

 

近くの工事現場でチェンソーが重い音を発して木を倒していく。

うるさい。脳に響いて不快でとても嫌な音だ。黙らしてやろうかと立ち上がってチェンソーを持ってる男に向かう。

 

「ちょっとアンタ危ないよ!離れて離れて!」

「その不愉快な音を、チェンソーを止め………、チェンソー?」

「あ?チェンソーがどうしたよ嬢ちゃん」

 

止まったチェンソーの刃に私の顔が反射する。

銀髪に右目の眼帯、()()()()()()()()。そうだ思い出した。

 

「私、()()に殺されたんだ」

 

思い出した。

そうだ、私は国に依頼されてデンノコ悪魔の心臓を取りにみんなで日本へ渡った。それで各国の心臓を欲しがる殺し屋達と一戦交えて地獄に落ちて、現世に戻って闇の力をもった人形女を倒したところで───マキマに殺されたんだ。

 

 

「殺されたにしては現実みたいなあの世だ」

 

地獄にしろ天国にしろあまりにも現実的な景色と感覚。

そして切り飛ばされたはずの首が跡もなく繋っている。あの世はケガを無かったことにしてくれるのか。

少し期待を込めて眼帯に手を触れるけど死ぬ前と同じように右目は無かった。代わりにチクリと中の矢先が中指に触れて血が滴り落ちた。

残念ながら右目は治ってないようだ。

 

「おいおい嬢ちゃんケガしてんのか!大丈夫かよ!?」

「気にしないでくれ、作業の邪魔をして悪かった」

 

作業員に謝ってその場を離れ公園にあったベンチに座った。

右目は治ってないし血は出た。ならばここは現実なのか?それとも()()()()()私は死んで再び地獄に来たのだろうか。

しかし空におびただしい量の扉は無いし、地面が花畑でも無い。

本国(中国)に連絡をしようにも持ち物はタバコと小さめの携帯ナイフを持っているだけで携帯電話も金銭の類も無い。

最悪奪ってしまえば何とでもなるがあれ(マキマ)に見つかるとまた殺されるだろう。そうなると選択は一つ。

 

「あの男に頼るか、」

 

日本を拠点にデビルハンターをしてる時に知り合った男、名前は岸辺。

好きな事が酒と女と悪魔を殺すことだと豪語している狂ったアイツは信用ならないがマキマを警戒しているし、昔私に惚れていたから下手なことはしないだろう。幸運なことにアイツの拠点を幾つか知っている。

 

「行くか」

 

行き先は決めた。後はマキマに見つからないよう辿り着くだけだ。

あれの()となる生物が多い裏通りは使わないようにして顔を上着で隠せば少しは見つかる可能性を下げれるだろう。

 

そうして私は岸辺の拠点に向かったが、待ち受けていたのは想像もしない事だった。

 

 

 

 

 

 

 

_______________

 

 

 

 

驚いた。

 

「ほんとに現実?」

 

開いた口が塞がらない。

にわかには信じ難い事が分かった。

 

この世界には悪魔も魔人もデビルハンターもその全てが居ないらしい。

 

岸辺の拠点に辿り着いた私に待っていたのはそこに住んでいるただの一般人だった。

記憶によれば岸辺は自身の跡を消すのが上手いがそれほど拠点を変えない主義だったはず。ここはフェイクで別の所にいるのだろう、と2つ目に向かったがそこは取り壊され建物自体が消えていた。

3つ目の地下拠点はもぬけの殻で人が立ち入った形跡は一切なかった。

 

岸辺の場所は分からない。頼りになる所が消えた。

なら私は一か八かのかけで公安に赴いた。

 

『公安対魔?そのような部はありませんが……』

私の緊張とは裏腹に意味不明な回答が返ってきた。

マキマの名前を出しても頭上に?を浮かべるだけの受付に私は舌打ちをして外に出る。

少し駆け足で街を散策して民間のデビルハンターをやっている会社を探したが見つからなかった。尋ねた人々は皆口を揃えて聞いたこと無い、とだけ。

 

本当に消えていた。まるで最初から無かったかのように。

 

あまりの予想外の事に疲弊した私はその場に座り込んだ。

ありえない、あれだけいたデビルハンターが誰一人としておらず街頭のニュースにも悪魔の事は一切報じられていないなんて。

隠蔽している線も上げたが街を回っても悪魔の気配が無く、悪魔が居ないとしか言いようがない。

本当は私が夢を見ていただけでコレが現実なだけか?

 

「だったらなぜ……?」

 

なぜ、私の()があるのだろうか。

 

「………我不明白(わけがわからない)

「あの〜大丈夫ですかー?」

「ん」

 

声をかけられ頭を上げる。

目の前には私と似た髪色にリボン付けて可愛らしい()()()()制服を着た少女が立っていた。

 

少女は心配そうな顔で私と目線を合わせると、気分が悪いなら病院まで御一緒しますよと言ってくる。

ああそうか、こんな街中で項垂れてる女がいたら何かあったのかと思うのが当然か。

 

「いや平気、心配させて悪かった」

「あ、日本語大丈夫なんですね!良かったです。長い間座り込んでましたのでほんとに大丈夫です?無理は体に毒ですよ!」

「平気だよ。少し東京観光して疲れただけ」

「それなら良いんですけど、あちらのベンチに移動しましょ!だいぶお疲れのようですし」

「ありがとう」

 

少女に連れられてベンチに座ると、彼女も私の隣に腰を下ろした。

 

「東京は初めてで?」

「いや9年ほど前までここで仕事をしていた」

「そうなんですね〜!なら久々の東京で張り切っちゃった!って感じです?」

「そうだねちょっとはしゃぎすぎてこのザマかな」

「そうですか〜!私も東京住みとしてそこまで楽しんでもらえて鼻が高いですよ〜!」

「ふふ、君は面白いね」

「そうですか?あ!自己紹介がまだでしたね!私は()()()()って言います!千束って呼んでくださ〜い!」

「私は()()()()

「かぁっこいい名前!よろしくお願いします〜!」

「ああよろしく」

 

差し出された右手を握り返すと千束はニッコリと笑って手をぶんぶんと振る。

私の少し可愛げが消えた手と違って、おおよそ10代半ばの彼女の手はスベスベで柔らかくとても触っていて気持ちがいい。()()()()()()()

そういえば()()()達も手と髪は女の命だと言っていたな。

彼女達もこの世界に来れたんだろうか。

願わくば来ていて欲しい、彼女達は私の一番大切なモノなんだ。

 

 

「大丈夫です?クァンシさん」

「握り続けてたね、すまない。君の手に触れていたら恋人達を思い出してね」

「恋人達!クァンシさんさてはモテモテですな〜?」

「ふふ、そうだね。そうだったけど今はもういなくてね」

「あっ、……っごめんなさい」

「良いんだよ千束のおかげで彼女達に触れていた時みたいだったから」

「彼女?」

「私は女が大好きなのさ」

「へー!そうなんですね〜!クァンシさんビックリするぐらい美人だから彼女さん達は幸せ者ですね!」

「ありがとう嬉しいよ」

「えへへ!あ!そうだクァンシさん!ちょーといいですか?」

「?」

 

千束が私の手を広げて指で触ってくる。こしょぐったいな。

 

「クァンシさんって何かやられてたんですか?」

「ああ少し武術をね」

「へぇ〜!かっこイィ!さっき喋っていらしたの中国語ですよね!ならやっぱアッチョッ!ってやつです?」

「ふふふそれも少しかじってるね」

「カッコイイ〜!いつか機会があったら見せてくださいね!そーだ!コレ私がバイトしてる所の名刺でーす!」

「喫茶、リコリコ」

「良い名前ですよね〜?東京観光が少し落ち着いたら是非いらしてくださいね!」

「ああ」

「あ!いっけないもうすぐ交代の時間だ!ごめんなさいクァンシさんまた会いましょ!」

 

そう言って千束はベンチからピョンッと立ち上がると私の手を再度握りしめてブンブンと振る。

可愛いな。この短時間でこの子はとても良い子だと分かった。

他人を助ける正義感に思いやる心、相手を不快にしない話術、ただ1つ気がかりな点があった。

アレを毎日のように使っていなければつかないモノ。手を握った際に唯一気になった。

 

「千束」

「え?クァンシさんどうしました?」

 

置いていたカバンを背負って去る準備をしていた千束がこちらに振り返る。

こんな子に限って()()と繋がってるわけがないとは思うが。

 

その銃はどこで手に入れたんだ?

 

銃。

未曾有の大量虐殺をものの数分で行い世界中から恐怖された銃の悪魔。

ソイツの弱体化のために過剰な程の規制を各国は行い、作り方を知っているだけでも重罪、所持していたら最悪死刑。

裏では国から流れたモノを使う人間もいたそうだが、こんな可愛らしい少女が何故持っているのか。

悪魔の居ない世界の日本は銃規制が無いのだろうか。ただそれなら携帯している人間が限られ過ぎている。

街を回った際に気付いた違和感。

 

特定の服を着ている少女が必ず銃を携帯している。

 

この世界にも何かあるんだろうか。

目を見開いて動きを止めた千束を私は凝視し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





クレイジーサイコレズ参上。
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