「銃って、なんのことですかクァンシさん」
何とか平静を保ちながら笑いかけてくる千束。
その可愛らしい笑顔の裏にある驚愕が全く隠せてない。やっぱり可愛いなこの子。
「銃、持ってるんだろう。あとその防弾用の鞄には弾倉が幾つかあるようだね」
「!?」
警戒して一歩下がる千束に対して私はゆっくりと立ち上がって一歩近付く。
「なぜ分かったのかって顔だね。私は
「そんな理由で納得なんてできるわけないですよ」
「そうか。まあでもソレは君みたいな可愛らしい少女には不相応だと思うんだ、私が処分するよ」
ゆっくりと彼女に近付いて手を伸ばそうとするが、千束が銃を構えた。
「それ以上近付いたら撃ちますよ」
「怖いな」
「本気で撃ちますからね」
「
「なっ!?」
「麻酔弾かゴム弾か、銃にしてはあまりにも鉄の匂いが少なすぎる」
「匂い…?」
すんすんと鼻を鳴らして自分の構えている銃を嗅ぐ千束。
素直なのか馬鹿なのか分からない行動だが、それでも私に警戒の目を効かせ、動くことを許さない。
見た目通りの歳ならかなり幼い頃から経験があるんだろうな、デビルハンターでもやっていける程には隙がない。
「だけど甘い」
「えっ、痛ッ!?なっあれ?!」
走って、銃を無理矢理奪って、また走って元の位置に戻った。
秒数にすれば1秒にも満たない中での事は千束には捉えきれなかっただろう。
私の手にある銃に気付かず、突如として起こった痛みで銃を落としてしまった。と思って探している彼女は何とも愛らしい。
「こっち」
「うっそ」
信じらんない、と呟いて私の手を凝視する千束。
銃を持って見た感じ
なら尚更可愛らしい制服を着た彼女達が銃を携帯しているのかが気になるところだ。
「立場が逆転したね」
「……クァンシさん、貴女何者?」
「私はただの女好きの女だよ。逆に聞くが君は何者なんだ錦木千束」
「喫茶リコリコの可愛い看板娘」
「無理矢理聞くしかないか」
「っ……」
銃を捨てて構えると彼女も構えをとった。
ゴクリと彼女の喉が鳴ったのを合図に私は一歩で懐に潜り込むと、顎目がけて右腕を振り上げるが到達する直前に彼女が上を向いて避けられる。
今のを避けるのか、想像よりだいぶやれる様だ。
「とぉあ!」
「ん」
カウンターで飛んできた右脚の蹴りを掴んで軽く放ると着地と同時に右腕のアッパー、はブラフで左の回し蹴りを再度掴んで腹を軽く叩く。
「くぅッ!」
「強いね千束」
「なんのっ!煽りですかっ!」
背負っていた防弾鞄を投げつけてそれを盾にドロップキック。左に避けて腕で両足をホールドしてから草むらに投げる。
「べっ!口の中が青臭い!」
「ふふ楽しいね」
「ど・こ・がっ!!」
さっき私が捨てた銃を草むらで見つけた千束が2発撃ってくる。
やっぱりゴム弾だ。弾の性質上、至近距離だから当たるかもしれないが遠距離戦では彼女はどう戦うのだろうか。
そんな事を考えていると目の前まで弾が迫ってきていた。
実弾では無いにしろ当たれば少しは痛いだろうし、左手で弾を叩き落として向かって来ていた千束の銃を蹴り飛ばす。
「うっっそ!」
「現実」
蹴りによってバランスを崩した彼女に右脚で足払いして前傾姿勢でコケさせ、顕になった首元に手刀を落として気絶させる。
後遺症が残らないようだいぶ手加減をしたつもりだが慣れない事だからイマイチ自信はない。
意識を失って倒れる千束を抱えて周囲を警戒。
「……目撃者は、いないか」
幸いな事に
とにかく千束には色々と聞きたいことがある。この世界について、彼女について色々と。
しかし聞くにしてもこんな街中では人目に付くし、もしかしたら一連の流れを誰かに見られていたかもしれない。場所を移すのが吉だろう。
「しかし家がないな」
こっちの世界、いや元々日本には家を持っていないんだけど。しかし困ったことにホテルを借りるにも金が無い。
「結局、岸辺のところを頼りにするしかないか」
この世界では所在不明の男だが何となく借りを作るのが嫌だった。
けれどまあ仕方ない、元より金銭的な面で安定するまではどこかに居座るつもりだったんだ。
地下にあるから明かりが照明とテレビしかないのが嫌だが我慢しよう。
とりあえずだき抱えている千束をお姫様抱っこに持ち替えて拠点へと向かった。
──────
side千束.
彼女を初めて見た時、私は鳥肌がたった。
初対面の人に対してあまりにも失礼な事だろうとは思うけど、彼女から発せられるオーラ?覇気?チャ○クラみたいなものを感じた私はとっても警戒した。
仕事が終わってリコリコに帰る途中に見つけたその人は、道のど真ん中で座り込んで項垂れていたのにとっっても存在感があって、なんなら怖かった。
本能的にって言葉はこういう時に使うんだと思う。だって本当に本能的に彼女はヤバいって私の全部がヤバいって伝えてきたんだもん。
でも私は好奇心に勝てなかった。
好奇心は猫をも殺すって言葉は本当で、私は気付いたら彼女に話しかけていた。
さすがに警戒心無さすぎか自分。と思ったけど普通に心配だったからま、いいかって思って話してみば意外に普通で特に変な様子もなかった。
彼女の名前はクァンシっていうカッコイイ名前らしくて中国拳法、ホアッチャァ!ってやつを使えるみたい。
確かに考えてみればアレ系を使える人って気とかを使うって言うし、私が最初に感じたのは達人の気配って事だな!って納得してお喋りを楽しんだ。
そんでバイトの交代時間が近付いて来たからクァンシさんに挨拶して行こうとした時だった。
呼び止められて振り向けばさっきまでとっても綺麗な笑顔をしていたクァンシさんがめっっちゃ真顔で「その銃は……」なんて言うから驚いて顎外れるかと思ったわ。いやーあれはビックリしたね。
そんでそっから私とクァンシさんは戦ったんだけど、クァンシさんの強い事!ほんとに人間?
私リコリスで一番つよーいって言われてんのに足蹴りは片手で掴まれるわ、明らかに手加減されてるわでプライドボロボロ!
それに幾ら非殺傷弾だからって手で叩き落とすって何!?どっかのヒーロー映画みたいな事してる人初めて見た。
んで負けて気絶した私はクァンシさんのアジトに連れてこられて色々と聞かれたわけ。
抗っても無駄ってことは十分理解したから、あんまりにも大事なこと以外は全部喋っちゃった。
楠木司令にバレたらとんでもない、かな?あはは。
クァンシさんはDAやリコリスの事を知っても特に驚かず、口に出しては理解した感じだった。
やっぱクァンシさんってDAの関係者か何か?
そう聞いたけどやっぱり女好きの女だよ。しか返ってこなかった。
一通り話が終わるとクァンシさんは私の拘束を解いて無事に帰れるよう途中まで送ってくれた。女性なのにカッコイイ。
一応クァンシさんには戦闘の様子は監視カメラでDAに伝わってるから警戒はしてね、とは言ったけど誰も勝てる気がしないからその心配はしなくて良さそう。
逆に私がヤバい!
勝手に民間人に見られるかもしれない場所でおっぱじめて挙句負けて情報引き出させられるなんて、ぜっっったい怒られるやつ。
念の為クァンシさんにはDAの人間が来ても私の名前は出さないで〜!と頼んだけど大丈夫かな。
まあでもとにかく!交代の時間から1時間以上も遅れてるから、早く帰らないとミズキがー!
───
sideクァンシ.
千束を送った後、また地下拠点に帰ってきた。
ホコリ被ったソファーに腰を下ろして聞かされたことを思い出す。
「DA、リコリス、リリベル、聞いたことの無い話ばっかりだ」
悪魔、魔人、デビルハンターの単語はひとつも出ないで知らない事ばかりが千束から出続けた。
その中でも興味を引いたのはリコリス。
リコリスは孤児で戸籍を持たず日本の平和を守るエージェント達。それもその全員が
街を回った時だけでもそれなりに多かったと思うんだが、話を聞くにもっと大勢いるらしい。
孤児で戸籍が無く10代半ばの少女達。
「……一人くらい」
いやダメか。
千束と話した際に聞いた事、街中の監視カメラによってDAは全ての人間を監視していると言う。
何か犯罪を犯せばリコリスかリリベルかが派遣され消すまでやって来るという。リリベルはどうでも良いとして、さすがに幼い少女達との接敵は避けたい。
前の世界のように力で奪う方法はこの世界ではあまり意味をなさない事が分かってきた。
色々あってまともな生活を送ってなかった私だ。
今更普通になれと言われてもなれないし、なろうと思わない。
ただこの世界で少しはまともに生活したら、私を気遣ってくれた
※金があった場合、千束はクレイジーサイコレズにホテルへ連れてかれてました。
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