Command TK: 2nd Round   作:水原渉

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 私が撃たれることになった一番の理由は、あの茶番劇にある。あれで千束は愛想を尽かし、男たちに千束が戦いを放棄したと知られてしまった。

 つまり、千束が一回目に戻ってきた時すでに、私が窮地にあればいい。もちろん、私が千束の戦う原動力になる前提だが、そこはそのままだと信じるしかない。殴られていない分だけ好感度は高いはずだが、千束の方に、殴った罪悪感がないのはマイナスかも知れない。

 私が一人で戦いを挑み、瀕死の重傷を負ったことにする提案をすると、男たちがいやらしい笑みを浮かべた。

「本当に負えばいいんじゃないか?」

「今の時点で私を攻撃するのは契約違反ですよね?」

「殺すなと言われてるだけだ」

「私には千束を逃がす方法があります。それだと、あなたたちは依頼失敗で報酬がもらえませんが良かったですか?」

 あくまで対等に、強気にそう言うと、男たちは渋々承諾した。ここで依頼などどうでもいいと言って襲い掛かられたらどうしようかと思ったが、吉松の提示した額はやはり大きいようだ。

 千束が殺した男の血に服を浸し、さらに肌に塗りつける。そして、思い切り銃声を響かせてもらうとともに、私も怒号のような、あるいは悲鳴のような声で叫んだ。

 すでに千束が音も聴こえない場所にいたら、それこそまた茶番劇になる。それに、千束が戻らなければ、DAからの任務は失敗に終わり、私も死ぬ。私一人ではとてもここにいる17人全員を倒すことはできない。

 ただ、戻って来てくれる確信はあった。あの茶番劇を見ていない今の時点では、千束は私が男たちと繋がっていることを知らない。だから、私が後をついて来ず、一人で任務を遂行しようとしていることを知れば、少なくともこの音が聴こえないような場所にいることはないだろう。

 案の定、千束はフロアに駆け付けると、血塗れで倒れている私を見て絶叫した。

「たきなーーっ!」

 心が痛くなる叫びだ。私のために本気で怒ってくれているが、生憎私は無傷だ。順番は前後したが、やはり1発殴られるのは覚悟しよう。

 それから千束は、鬼神のような動きで17人を撃ち殺した。私の数え間違いでなければ、17発しか打っていない。味方なのに、思わず恐怖に体が震えた。恐らく吉松もまた、今頃どこかで見ていて感動していることだろう。

「たきな!」

 千束が駆け寄って、慎重に私の体を抱き起こした。目に涙を浮かべて唇を震わせる。

「なんでこんな無茶を……。ごめん。ごめんなさい」

 初めて聴く千束の涙声に、さすがに胸が痛んだ。この後、一体どれくらい蔑まれるのかと考えると、いっそ今からでも自分の腹を銃で撃ち抜こうかとさえ思ったが、それでは未来を変えられない。

 未来を変えられる条件として私が考えたのは、私が入院していないことだった。たとえどれだけ千束に嫌われようと、近くにいれば千束がいなくなるのを止められる。

 そう考えたのだが、果たしてこの流れで本当に近くに居続けられるのだろうか。

「千束、落ち着いて聞いてください」

 冷静にそう言って千束の手を取ると、千束は「へ?」と間抜けな声を出してから首を傾げた。

 私は冷たい床の上に正座して、手を握ったまま真っ直ぐ千束の顔を見つめた。

「DAの任務を果たすには、千束の力が必要でした。力のない私には出来なかった。だから、千束を騙しました。ごめんなさい」

「ちょっと待って。おかしいでしょ。だったら、さっきの銃声は何?」

 千束が怪訝な顔をする。私は思わず息を呑んだ。論理の破綻に気付けなかった。

 視線に堪えられずに俯くと、千束が低い声で言った。

「お前、何か隠してるな?」

「いえ……」

「お前はこの男たちと組んで私を殺そうとした。いや、私がこいつらに殺られるわけがない。こいつらを煽って、私にこいつらを殺させた。実弾に入れ替えたのもそのためだ」

 完璧な推理だ。私の嘘と違って、どこも破綻していない。何故なら、それが正解だからだ。

 私が次の言葉を探していると、先に千束が口を開いた。

「どうしてたきなは、人を殺したくない私に、人を殺させた? 私が人を殺すことで、お前に何の利益がある?」

 単純な疑問という声音ではない。返事次第では戦争すら起こしかねない空気だ。

 何を言っても殴られそうだ。吉松はまだ様子を見ているのか、出てくる気配がない。しかし、それならいっそ、ここで未来を変えられるかもしれない。

「全部、私の独断です。私の我が儘と好奇心です。あなたは私に騙されただけです。だから、今日のことは全部忘れてください」

 もう一度深く頭を下げた。

 DAの任務も、吉松の依頼も成し遂げ、千束の抱える罪悪感は全部私のせいにする。これで丸く収めよう。

 質問の答えになっていないことはわかっている。それでも、どうかこれ以上は聞かず、「それなら」と引いて欲しい。

 そう願ったところで、そうされては困る人物が姿を現した。

 

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