弟の彼女抹殺作戦   作:異信狂歌

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プロローグ的な何か

 今日も今日とてくっそだるいお勤めが終わった。

 まったくなんで勉強なんてせにゃならんのかねぇ。

 何てことを昨晩メシの席でぼやいたら、ウチのバカ母から「アンタ世の中にはまともに教育を受けられない人間がごまんといるのよ! 甘ったれんな!」なんてテレビの受け売りみてーなくっさい説教された。

 うるせえババア、学生時代に男と駆け落ちしやがったテメーに言えた義理かと言い返してやったら黙り込みやがった。ざまぁ。

 

「うがばべー」

 

 リビングのソファへ疲れ切った体を沈めさせる。

 あーもう、部活やめようかな。

 そもそも勉強だけでもだるいのになんで部活なんて入ったの俺って。バカなの俺って。あーバカだったわ俺って。あのバカ母の遺伝子受け継いでんだからバカで当然だわ俺って。いや待ていくらウチのバカ母がバカ母でも、その理屈は責任転嫁も甚だしいのでは? 

 俺がバカなのは自己責任では? 

 

(やっぱ部活やめよ。明日徳川のヤローに退部届突きつけよ。いやでも今更やめんのもなんかもったいなくない? あーでも……あー考えるのもだるい。ねむくなってきちゃった)

 

 もう寝よう。だるいし寝よ寝よ。部活云々考えるのは後回しだ後回し。

 このまま微睡みに身を委ねて―。

 

「おかえり兄さん。今日は早かったね」

「…………おー、カナメ」

 

 疲れも眠気も綺麗サッパリ吹っ飛ぶ。

 なぜならリビングに妖精が入ってきたからだ。

 妖精ってか、天使。マイエンジェル。

 ふわりとした黒髪、眠そうな半眼、短パンからのぞくスラリとした白い素足。

 天使の名前はカナメ。俺とは似ても似つかぬ美少年小学生。

 本当に俺やバカ母と同じ遺伝子なのかと思ってしまうくらいの美少年。

 うん、これはやはり天使だ。神様が俺のために地上に遣わせた大天使カナメエルだ。そうだ、そうにちがいない。

 というわけで天使を愛でよう。

 ルパンダイブとまではいかぬが気分的にはそれくらいの勢いでカナメに飛びかかる。

 チュッチュッとキスの雨を降らせ、ペロペロとホッペを舐め回す。

 あっ、太ももも堪能せねば。

 カナメの太ももときたらさわり心地といい感度といい、もーサイコーで。

 

「うざい」

 

 どすっと土手腹に一撃を食らう。

 見事に男子小学生のパンチ一発で床をのたうち回る男子高校生という実に情けない構図が出来上がった。

 仕方ないじゃん。カナメがかわいいのが悪い。いやマイエンジェルに罪はない。マイエンジェルはマイエンジェルであり、悪いのはやはり俺だ。ごめんなさい。でも許して。こんな罪深い汚れた俺を許してカナメエル。

 え? キモいって? 

 安心しろ自覚あるから。

 まあ自覚があってもやめる気はさんさらないがね! 

 キモくて上等じゃヒャッハー。

 

「ねえ、相談があるんだけど」

「なんだいカナメエル。お兄ちゃんに何でも言ってごらん」

「じゃあまずその呼び方やめて。悪寒走るから」

 

 ダンゴムシのように体を丸めてダメージを回復せんとする俺のそばにしゃがみ込み、カナメがこちらを覗きこんでくる。

 あっ、このアングルいい。まあカナメの顔はどの角度から見てもかわいいがな。あと脹脛に押しつぶされた太ももエッロ。ペロリたい。

 はあはあと息を乱しまくる俺に弟はゴキブリでも見るかのような目線を送る。

 あらやだやめて。興奮しちゃう。サドだったのにマゾに目覚めちゃう。

 そういえば徳川のヤローがマゾとサドは違うようで根本的には同じとか言ってたっけか。

 なるほど、その意味が少しわかったかも。

 

「……やっぱり母さんに相談しようかな」

「ごめん俺が悪かった、それだけはやめて。あいつだけはダメ」

 

 トンデモ発言をするカナメにすかさず待ったをかける。

 できるだけカナメからあのバカ母は遠ざけたい。

 あのバカ母にはカナメの入浴シーンを盗撮して近所のパパママに貸し出して、レンタル料巻き上げていた前科がある。バカだバカだと思っていたがあそこまでバカだとは思ってもみなかった。

 さっさと自立してもうこんな家から出ていきたい。もちろんカナメを連れて二人で。

 

「おれからしたら兄さんも母さんもたいしてかわらないけど」 

「マジ? 俺あのゴミと同レベル?」

「自分の母親をゴミ呼ばわりはやめなよ」

 

 だってゴミだもんあいつ。

 カナメには内緒にしているけど保育園時代、躾と称してタバコの火を何回も手の平に推し当てやがったのは死んでも忘れない。

 ぶっちゃけ殺したいがあんなんと引き換えに少年院に入るのもやだ。

 てかもうバカ母のことはどうでもいいわ。

 

「で、カナメ。相談ってのは何?」

「うん、実は……」

「いじめ? 痴漢? 痴女? セクハラ? モラハラ?」

「言うから少し黙って」

 

 やっべ、弟が軽くおこだ。

 察した俺は素早くお口チャックする。

 キレたマイエンジェルは何よりも恐ろしい。

 やっと俺が静かになったのを確認すると、コホンと可愛らしく咳払いした。

 

「あのね」

「なになに」

「彼女、できた」

「…………………………………………………………………………………………………………………………」

 

 え? え? え? 

 

「ゴメン、今ナンテ?」

「だからさ、彼女、できたんだ」

 

 彼女? かのじょ? カノジョ? 

 何それ。何それ。何それ。ナニソレ。

 

「兄さん? どうしたのさ兄さん?」

「い」

「い?」

「イヤあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlp」

「……えと、お水持ってこようか?」

 

 この日、俺の世界は音をたてて崩壊した。

 

 

 

 

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