三雲修に憑依した転生者が色々する話   作:ジョン

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4話目

「街を…爆撃した!?」

 

 腹から何かを落し、それが地面に落ちると同時に爆発が巻き起こる。そんな現代日本ではまず見られないであろう光景に僕は目を見開いていた。

 

「爆撃型トリオン兵…イルガーだな」

「爆撃型…」

 

 空閑の囁き声を復唱する。あんなものを放置していたら、街は瞬く間に炎に包まれてしまうだろう。そうなる前にどうにかしなければならない。

 

 だが、僕にできることはない。空を飛ばれてしまっては手足もでない。ここは…役割分担だ。

 

「木虎さん、あの近界民を頼みます!僕は街の救助に向かう!」

「え?と、当然よ!任せておきなさい!」

 

 木虎がすぐにトリオン体へと身体を換装し、疾風の如く駆け出した。僕もそれを追う。だが目的地は違う。川を挟んだ向こう側の地域は既に煙を立ち上げていて酷い状況だった。早く向かわなければいけない。

 

「おい、オサム。また行くのか?」

「ああ。空閑は安全な場所に移動してろ!」

「いやいや、俺も行くよ」

 

 空閑の言葉に、思わず立ち止まる。

 

「何言ってるんだ。いかせられる訳ないだろ」

「でもお前、今トリガー持ってすらないじゃん」

「それは」

 

 そう言われて、僕は思わず押し黙る。確かに僕が持っていた訓練用トリガーは嵐山さんに預けてしまっていて手元にはない。

 

「確かにオサム強いけど、生身じゃ出来ること限られてくるぞ。それでも俺を置いていくのか?」

「…わかった」

 

 僕は一瞬思考し、そして空閑に目を合わせる。

 

「でも、空閑。生身でも僕はそこそこ動けるからこっちは大丈夫だ。そうだな、僕じゃなくて木虎についてやってくれ。もし木虎がピンチになったら、バレない程度に手助けしてやってほしい」

「えええええ…」

 

 苦いものを見たような顔を浮かべる空閑に、僕は頭を下げる。

 

「頼むよ」

「…ったく、仕方ないな。オサムは面倒見の鬼だからな」

 

 空閑が折れた。だがすぐに小さく「レプリカ、頼む」と呟いた。

 

「レプリカ?」

『やあ、オサム。こんにちは。初めましてだな』

「うおわっ!?」

 

 僕は思わずのけぞった。空閑の首元から伸びるように現れた黒い謎の物体…いや、ロボット? そいつは当たり前のように僕の名前を知っていた。

 

 こんなキャラいたっけ?と思わず記憶を探って…なんとなく見覚えはあるものの、と思い出せそうななさそうな、そんな骨がのどに刺さったような思いを味わうことになった。

 

『私はレプリカ。ユウマのお目付け役だ。オサムには私のドローン…ミニレプリカを同行させよう』

 

 そう言って自分の身体の一部を切り離し、小さなレプリカを生み出すレプリカ。ミニレプリカからは若干甲高い声で『よろしく頼む』と聞こえてくる。

 

「何かあったらすぐに呼んでくれ。助けに行くから」

「…分かった。レプリカもありがとう」

『礼は必要ない。こうするよう言ったのはユウマ自身だ』

 

 無機質にそう返してくる黒い豆粒に苦笑して、僕は駆け出した。何よりも早く、風のように、鳥のように。とにかく一人でも多くの人間を助ける為に。

 

 たどり着いた先は、いつもの街の様子からはかけ離れた光景が広がっていた。建物が破壊され、瓦礫がそこら中に転がっている。道路に大きな穴が空いており、負傷者も多数いる。

 

「皆さん!僕はボーダーです!早くこっちに!」

「ぼ…ボーダーだ!ボーダーが来てくれたぞ!」

「助けてくれぇ!」

 

 僕の呼びかけにパニック状態の人々がすぐにやってくる。避難すべき場所を指差し誘導しつつ、助けを求める声に近づく。

 

「が、瓦礫に足が挟まって…!」

「わかりました!」

 

 大きな瓦礫に足を挟まれた一般人を、僕はすぐに呼吸の力で瓦礫を持ち上げて助ける。

 

「す、すげえ…さすがボーダーだ…」

「他に逃げ遅れた人はいませんか!?」

「あ、あっちだ。建物の中に取り残されて…」

「わかりました。後は僕に任せてすぐに避難してください!」

 

 駆け出すと、たしかにそこには、入り口を瓦礫で塞がれて建物の中に閉じ込められた人たちがいた。そしてその目の前には小さな子ども。どうやら閉じ込められた母親をどうにかしようとしているようだ。

 

 頭上から瓦礫が降ってきている事に気がついていない。

 

「危ない!」

 

 僕は縮地の要領で鋭く飛び出し、その瓦礫を横合いから蹴飛ばした。着地して、負担が足にじんじんとくるのをなんとか我慢しつつその子の状態を確認する。

 

 外見では、怪我はない。

 

「…君、大丈夫?」

「う、うん…」

「よし。それじゃあ少し離れてて」

 

 僕はそう言うと、入り口を塞いでいた瓦礫に手をかけた。

 

「む、無理です!私のことはいいから、早く娘を連れて逃げてください!」

「そ、そうだぜ兄ちゃん!」

「僕はボーダーです。任せてください…!」

 

 フシュゥゥゥゥ、と呼吸を最大限深く整え、全身に血を、酸素を送る。限界を超えた僕の腕からびきびきと音がして血管が浮き出る。瓦礫はゆっくりと持ち上がり、塞いでいた入り口を微かに開ける。

 

「ふぅぅっ…これで大丈夫!さあ、早く!」

「ボーダーの兄ちゃん、ありがとうな…」

「ああ、ありがとうございます…!」

「ママ!」

 

 親子が抱き合っているのを見て笑みを浮かべて、僕は次の要救助者を探しに行くのだった。

 

 しばらく走っていると、巨大な柱で大勢の人が閉じ込められているところに出くわした。

 

「…こりゃ、僕じゃ無理だな…」

『どうする、オサム』

「…レプリカ。瓦礫の構造を把握できないか」

『なるほど、今すぐに実行しよう』

 

 そう言うと、レプリカは口からレーダー光を出して瓦礫に投射し始めた。そしてすぐに『そこだ』と退かしてもいい瓦礫を指定してくれる。

 

 一つずつなら、僕でもどうにかなる。僕は瓦礫をひょいひょいと退かしていき、入り口を作る。

 

「皆さん、大丈夫ですか!?」

「た、助かった…のか…?」

「安心してください。僕はボーダーです。皆さんを助ける為に来ました」

「よ、良かった…」

 

 僕は人を数人担ぎ上げ、出来た入り口へ向けてひょいひょいとジャンプして出していった。それを全員分繰り返す。

 

「あ、ありがとう…助かったよ…」

「いえ。それよりも、早く避難を!あ、あと、他に逃げ遅れた人はいませんか?」

「そ、それなら、あっちに…」

 

 僕はその言葉を聞いてすぐに駆け出した。途中、視界の端に映るイルガーが空中で大きく身じろぎしているのが見えた。

 

「あれは…木虎さんか?」

 

 見れば、木虎が頭上で銃を乱射している。そしてその下では空閑がイルガーを鎖のようなもので捉えていた。凄まじい力で引っ張られているのが、イルガーの巨躯が引っ張られ不自然な動きをすることから見て取れる。

 

 イルガーは最終的に、川の中に引っ張り落され、大爆発を引き起こしたのだった。

 

 

 

 

 

「流石だ、空閑。助かった」

「別に、このくらいどうってことないよ」

 

 避難誘導をA級で権限も上の木虎に引継ぎ、僕はぞろぞろと避難所へと移る街の人々を見送りながら空閑に話しかけていた。僕の言葉に空閑は得意げにそう返す。なんとも頼もしい限りだ。

 

 しかし、ふと後ろを振り返ると僕の心はずんと重くなる。

 

「…酷いな、これは」

 

 僕は背後に広がる光景に思わずつぶやいた。つい数十分前までごく当たり前の日常が広がっていた街の一画が、あのイルガー一匹の手で瞬く間に破壊されつくされてしまった。

 

『イレギュラー門をどうにかしない限り、また同じような事が起きる可能性があるな』

「…ああ」

 

 レプリカの言葉にうなずきつつ、僕はこの光景を目に焼き付けた。何故かそうしなければならないと、そう思ったからだった。

 

 なんとかしなければならない。僕も、もし時間ができたら街を散策してみるか。原作でも確か空閑がそうしていたはずだ。

 

「あんま考え込むなよ、オサム。イレギュラー門はボーダーがどうにかするだろ…ここから先は、ボーダーのお手並み拝見だな」

「…そうするよ。空閑、僕は木虎さんの仕事を少しでも手伝ってくる。」

 

 災害現場は見ているだけで辛いものがある。僕は見ていた光景を頭を振って遮断させ、今もなお避難が続いている場所へと駆け出した。

 

 

 数分後、ボーダーから人員がやってきて、木虎と僕は引き継ぎを済ませてボーダー入り口までやってきていた。木虎は報告書をいち早く作成するため、僕は元々本部に呼ばれていたため、それぞれの用事を優先する形だ。

 

「じゃ、俺はここまでだな。何かあったら連絡しろよ」

「空閑こそ、帰りは気をつけろよ」

 

 まあ普通の女子よりも強い空閑なら無駄な心配かも知れないが、一応声をかけると「おぅ。」とわかっているのか分かっていないのか分からない生返事が帰ってくる。

 

 ボーダーの入り口はトリガーを認識させることで開く。そこから先はボーダー所属の人間以外は立入禁止だ。

 

 当然、先に進むのは僕と木虎の二人になる。戦闘後、しかも街が破壊された後となって空気は若干重い。僕も木虎も空気を変えるようなタイプでもないので、しばらく無言の状態が続いた。

 

「…さっきの戦闘中のことだけど、他の場所にもイレギュラー門が開いて、別働隊が動いたそうよ」

「…そう、か。被害少ないといいけど…」

 

 やっと会話が生まれたのは、ボーダー内のエレベータの中だった。木虎が顔も見せずにボソリとそう言ったので、僕は直前の惨状を思い出して目を伏せた。

 

 いかん、流石にこのテンションで本部の呼び出しに対応するのは不味い。何とか調子を元に戻さないと。僕は少し考えて、木虎に話しかける事にした。

 

「…でも木虎さんはやっぱり凄いな。避難誘導の時とか、本当に僕と同い年なのかってくらいしっかりしてたし」

「…まあ当然よ、あれくらい」

「そう言えるのがもう凄いよな。慣れてるっていうか、ほとんどの人に顔も認知されてたみたいだし、本当に有名人なんだなって感心したよ。流石A級隊員だよな」

「…ん、んんっ…そ、そうかしら?」

「ああ。僕が生きてきて出会った人間の中で、尊敬できる人間ランキングがあるとしたら上位入りは確実だ。今日は散々な目に遭ったけど、凄腕のA級隊員に会えた事はまさしく僥倖だったと思う」

「…」

 

 …あれ?木虎が黙った。流石にほめ過ぎたか?僕は内心冷や汗を出しつつ木虎に意識を向けていると、

 

「貴方…」

 

 静かに振り返られた。僕は喉を鳴らして、「は、はい…」と返事をする。

 

「―――分かってるじゃない!」

 

 木虎は僕に近寄ってきて、そして満面の笑みで肩を叩いてきた。

 

「良いわ、三雲君。貴方の名前は憶えておきましょう。何か分からない事や、悩みが出来たらすぐに私に言いなさい。力になってあげるわ」

「あ、ありがとう、木虎さん」

 

 背中を向けても尚上機嫌な空気が伝わってくる木虎に、僕はおっかなびっくり礼を言った。

 

「とりあえず携帯出しなさい。れ、連絡先くらいは教えてあげても良いわよ」

「ああ…じゃあぜひそうさせてもらおうかな」

 

 僕たちは携帯を取り出して、連絡先を交換し合った。これは木虎と少し仲良くなれた…のか?途中で別れて笑顔で手を振って去っていく木虎を見送った後、僕は会議室へと向かう。

 

 まあA級隊員の人脈を一つ確保できたのは紛れもなくいい事だ。それにトリオン体の操作についてうまくいってない所もあるし、後で相談がてら対戦でも申し込んでみるかな。

 

 そこまで考えて、気が付いたら僕は会議室の前まで来ていた。

 

 さて、ここからが本番だな。それにしても僕、原作とは違ってトリガーは使ってないんだけどな。

 

 何故呼び出されたのかは分からないが、気を引き締めていこう。

 

 

 

 

 

 

「生身の状態で近界民と渡り合ったぁ!?」

「なんだそれは!本当に人間なのか、こいつは!」

 

 会議室に入ってから数分後。僕は現在非常に不味い事になっていた。

 

 まず、行き違いがあったらしい。僕はどうやらトリガーを無断使用して近界民と戦ったり、市民の救助を行ったりしたと思われていたようだ。

 

 まさしく針のむしろ。僕は完全に既にもうそこにいないものとして扱われていた。

 

 鬼怒田開発室長からは『見つかった馬鹿をクビにするだけの話だ』と断言されてしまった。苦笑いしかできなくなる。今日は随分と誤解を受ける回数が多い日だ。

 

 だからこそ、忍田本部長がその誤解を解き、更に証拠として僕の持っていたトリガーを取り出して見せた事で空気が一変した。

 

「君、本当なのかね?私はてっきり…その、報告によれば、近界民の鎌の部分に破損があったとされているが…本当に生身で!?」

「信じられん、人体の神秘だ!」

 

 湧きたつ鬼怒田と根付に、忍田本部長が更に話し出す。

 

「もう分かっただろう?彼は二度も非常事態に直面しながらも、隊務違反をしない範囲で、最善の結果を残した。非常事態時にここまで動ける隊員が一体どれほどいるだろうか?彼には直ちにB級に上がってもらい、その能力を存分に発揮してもらうべきだ」

「いや、しかし…流石に生身で近界民は…」

「では、このトリガーの傷をどう説明する?」

 

 そう言って、忍田はまた僕のトリガーを見せた。それを見て、鬼怒田が「貸していただきたい!」と手を伸ばす。実際に手にしてみて、鬼怒田は目を見開いた。

 

「ボーダーの技術の漏洩を防ぐために、トリガーは特別丈夫に設計されている。既存の物質ではどのような設備をもってしても傷一つ付けられんし、よしんばトリオンで作られた物質で破壊しようにも相応の力がないと無理だ。それが、ここまで歪むとは…いや!やはり、だからこそ生身でというのは信じがたい…」

「市民の声では、巨大な瓦礫を動かしたり、人を抱えて1m以上飛び回ったという話も出ているのですよ!?」

 

 まあ、それが普通の感覚だよな。僕は騒ぎ続ける大人たちを眺めながらやはり苦笑いしかできなかった。何せ僕が発言する隙間が会話の中に一切生まれないのだ。弁明しようにも偉い人を相手に意気揚々と発言する勇気は僕にはない。

 

 それに、僕は師匠の手で常識という常識を破壊され尽くされたので疑問にも思わないようになってしまったが、やはり人間が近界民に立ち向かって生き残ったり、瓦礫を重機ばりに動かしたりなんて普通じゃないのだろう。

 

「それにだ。今彼の成績も見させてもらったが…トリオン能力も戦闘能力も並程度。入隊日に行われた実戦形式のテストでは一分半と平均より少し上程度だ。いかにして戦闘特化の近界民相手に生き残れるというのかね」

「彼の成績は時間が経つにつれて右肩上がりで改善され続けている。ブースでの対戦でも最初は負けが込んでいたようだが、今は連戦連勝の状態だ。そうだね、三雲君」

「えっ、あ、まあ一応はその通りですが」

 

 こ、怖いな、そこまで把握されてるのか。僕は冷や汗を流しながら肯定する。

 

「経験を積むことで才能が開花されていったと?それにしてはねえ…」

「あ、あの…トリオン体に馴染むのに凄く苦労しまして…それで」

「まあ、確かにトリオン体に慣れるのに時間がかかる隊員はいるが…」

 

 実際、僕はなまじ呼吸を身に着けてしまった所為だからか、トリオン体を操作するのに凄く苦労している。最初の頃などは、むしろ生身で動いた方がよほどマシだったほどだ。

 

 だけど、そんな内情をここでいう事は出来ない。そもそも呼吸の事は出来る限りでいいが秘密にしておけ、と師匠から言付かっている。僕は何を言うこともできずにいた。

 

「では、実力派エリートの俺が、そんな皆さんに最善の案を一つ提案しますよ」

 

 堂々巡りになり始めていた会議室の空気を、一人の男が一変させた。手をピンと突き上げて、不敵な笑みを浮かべている。

 

 迅悠一。実力派エリートを自称するS級隊員。少し遅れてきて、隣の席に座ってきたものだからすでに自己紹介もしあっている。そんな彼が僕の事を見ていた。

 

「…最善の案とは何だ、迅」

 

 それに、今まで静観を決めていた城戸司令が続きを促した。自然と視線が集まり、流れが迅に収束するのを僕は感じていた。

 

「彼の扱いは、俺に任せてください。それが最善だ。俺の副作用がそう言ってる」

「…」

 

 …サイドエフェクト?ってなんだ。そんなの原作にあったか?ヤバい、何も思い出せない。分かっていた事だが、記憶の穴抜けが酷いな。

 

「なんだと!?」

「迅君。君が彼の処遇を預かると?しかしそれは…」

「良いだろう」

「城戸司令!?」

 

 城戸が頷いた。

 

「しかし、三雲君…彼の今後の成績と実力次第では、今回の一件において、何かしらの不正が疑われる事になる。その時は迅…お前もまた処罰の対象になるだろう」

「ええ、もちろん承知の上です」

「…分かった。ならば、この件は迅に任せるとしよう」

 

 城戸の言葉に、鬼怒田と根付は釈然としないながらも肩の力を抜いた。

 

 会議はそのまま、僕がいる状態で進行を再開させた。

 

 当然議題はイレギュラー門についてだ。その会議で分かった事と言えば、被害の規模と開発室総出でも原因を突き止められないという事実のみ。最後には、またしても迅にお鉢が回ってきた。

 

 林藤支部長が、たばこの吸い殻を皿に押しながら迅に視線を向けた。

 

「で、お前が呼ばれた訳だ。やれるか、迅?」

「もちろんです、実力派エリートですから」

 

 の二言でこれに関しても迅が預かる事になった。

 

 鬼怒田に声をかけ、根付に具体的な助言をして、笑いながら会議室を出ていく迅悠一。僕はそんな彼の後姿を見送っていた。

 

 凄い。その一言に尽きた。何せ迅が動く度に会議室の空気が変わった。あの会議の流れを支配していたのは紛れもなく迅悠一だろう。

 

 そして、それを可能としていたのが彼の言う『サイドエフェクト』の存在だ。その言葉を出す度に発言力が増していたような気がする。

 

 サイドエフェクト…って何なんだ。後で木虎に聞いてみるか?

 

「三雲君」

「うわっと…失礼いたしました、何でしょうか」

 

 考え込んでいるタイミングで後ろから声をかけられ、僕は即座に振り返ってその声の主を見た。

 

 城戸司令の後ろにずっと控えていた護衛役?の人だ。

 

「一つ聞いていいか?昨日、警戒区域でバラバラになってた大型近界民…あれについてだ」

「え…」

「あの時、あの周辺には他に正隊員はいなかった。しかも、そこで救助されたのは君と同じ中学の生徒たちだ。…とても不可解な事柄だったから、何か知らないかと思ってね」

「…そうですね。確かに僕はあの日、彼らに呼び出され、そこで近界民に襲われました」

「やはりそうか」

「ですが、僕は彼らを避難させる為、直ちにあの近界民から離れました。その後の事は知りません」

「…では何故あの場に待機していなかった?」

「一般人の立入禁止区域への侵入を止められなかったので、罰則を恐れて逃げ出しました。申し訳ございませんでした」

「…そうか。安心しろ、何もなかったのだから、罰則はない。…時間を取ったな」

 

 そう言って離れていく彼に、僕は内心冷や汗を出しまくりだった。

 

 くそっ、完全にバレてる。絶対に後でアクションを起こしてくるぞ。どうする、空閑…!?

 

 僕は足早でそこから去って、とにかく空閑に連絡を取る手段はないか頭をフル回転させていた。

 

 

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