「どうしたものか。うーん」
自宅でジャグを燻らせながら、頭を抱える。珈琲を煽れば、少し冷めたそれからはオレンジのような香りが漂う。ブルボン珈琲の良い所だ。
「我ながら、いまいち方針が決まらないなぁ。ミスターシービー…いや、私は私だとして…」
ミスターシービーなら、きっとこう、三冠ウマ娘を目指していくべきなのかと思うわけだが、とはいえ、ここはまだミスターシービーがデビューしていない世界である。とはいえ…。
『ウマ娘のリンスならこれで決まり!』
テレビから流れるCMには私が写っている。うーん…我ながら顔が良いからなぁ。こういう宣伝にはもってこいなのだろう。というか、来週末も確かCMかなにかの撮影が入っていたはずだしね。
「とはいえ、この記憶のことはトレーナーに打ち明けるか否か」
数日後に行われる選抜レース。きっと、屋上のときの感触から言えば、私を間違いなくスカウトするだろうし、私もまた彼にスカウトされてもいいと思っている。知識的なところでも、人柄的なところでも。
「…ま、そこは信頼を積み上げたら、でいいか。例えばそう…三冠ウマ娘になった後とか?」
言いながら苦笑してしまう。ミスターシービーというだけで、私は三冠を取るつもりであるらしい。いやはや、たしかに私は他のウマ娘に対して高い実力はあるんだろうけど、カツラギやルドルフを見ているとなかなかどうして本気具合が違うのだ。
「…でもそうだなぁ。やるんなら…本気でやろうか?そのほうが、楽しいでしょう?」
頭の中に某ロボットアクションゲームの主任を思い浮かべながら、そうにやりと笑ってみる。うん、なんかやれる気になってきた。とはいえ、ミスターシービーかぁ。
「改めて考えてみると、偉大なウマ娘になっちゃったもんだよ」
珈琲を煽る。うん。今までなんとなく考えないようにしていたけれど、本格的にスカウトが、レースで走ることが近づいてきた昨今、この名前の重みは半端ない。だってあれだよ?父内国産初のクラシック三冠馬が、しかも神馬以来19年ぶりの三冠馬がモデルなんだよ?国内の血統ってだけでも、後に見ても暴君ともしもし君ぐらいっきゃ存在しない偉業だもの。
「うーん…これは非常に両肩が重いね。重すぎて頭と腕が上がらなそう」
ま、とはいっても、アイドルホースとしての活躍はこのCMや収入を見ればすでに達成しているのだろうか?いや、そこらへんのキオクが無いからなんとも言えないけれどね。
「とはいえ本気でやると考えれば…」
三冠ウマ娘を目指すのは当然としようか。当然として…。史実通りをなぞってもいいんだけれどさぁ…。
「馬のミスターシービーをなぞる?なぞっちゃう?…でもそれってさー」