私は転生ウマ娘だよ。   作:灯火011

27 / 108
タレント

 練習を行いながらも、タレント活動をしないと行けないのがウマ娘の辛いところである。いや、この場合はミスターシービーだからかもしれないと思いながらも、午前中のモデル撮影を終えた。

 

「いやはや、なかなか」

 

 肩の力を抜きながら、私は天を仰ぐ。青空がキレイだなぁなどとちょっとした現実逃避である。というのも今回の撮影は、『ついにデビュー!ミスターシービー!』という名打たれた特集コーナーの仕事であった。聞くところによると10ページもの大型特集なのだとか。ううむ。なかなかのお仕事であった。

 

「制服とジャージはともかくとして、普段着までとはねぇ…」

 

 実際は普段着と銘打たれたスタジオ衣装なのだが、スラックスにシャツといった男装のような感じや、ショートパンツにシャツを腰で纏めたへそ出しなスタイルだったり。いやはや、なんというか落ち着かなかったものだ。

 

「とはいっても、出来上がった写真は見事だったけどね」

 

 なるほどと思うほどの出来。ポーズやストロボ発光の関係性がこうなるのか。と思わざるを得なかった。まぶしい!と思ったけれど、瞳に入ったストロボの光が写真に命を与えていたり、顔の影をつけたり消したり。すごいなぁというのが正直な感想だ。それに加え、私の顔が良い。半端ない。いやほんと。

 

「私って顔小さい上にスタイル良いよね。脚長いし。うーん…」

 

 男の時とは違いすぎる。今回はそれをより一層感じ取ったひとときであった。ちなみに今回はたづなさんは学園でお仕事中である。いい加減、おんぶにだっこも卒業しないとね。ちなみに今回のギャラはなかなかのモノであった。

 

「さてさて…午後の仕事はっと」

 

 そう言いながらプリウスに乗り込んで、スタートボタンを押す。スマホのスケジュールを見てみれば、楽曲打ち合わせとあった。なるほど、前のメイクデビューの録音みたいなものだろうか。さてさて、どんな曲が私の前に現れるものやら。

 

 

「今回、ミスターシービーさんに歌っていただきたい曲のリストです」

 

 録音スタジオについて、早速プロデューサーから手渡されたセットリスト。それをみた私は、思わず、顔をしかめてしまっていた。

 

「これは…」

「やはり、多いですかね。とはいえ、メイクデビューの出来を見る限り、まずはあなたの声で世の中に出す音源を作りたいなと思ったのですが」

「いえ。多さではないんですが」

 

 セットリストを見てみれば、「ENDLESS DREAM!!」「彩 Phantasia」「winning the soul」「本能スピード」「UNLIMITED IMPACT」「NEXT FRONTIER」「Special Record!」の名前が並んでいる。これは、思わずウマ娘を知っているのならば顔をしかめてしまうと思う。

 

「これ、全部新曲ですよね?」

「ええ。新曲です。来年から行われる新体制のウイニングライブに向けての曲です」

 

 こういうことだ。新曲。ウマ娘をプレイしていた私としては馴染みの曲なのだが、どうやら、私はそれらの曲の黎明期に立ち会ってしまっているようだ。

 

「ああ。もちろんご心配なく。シービーさんも来年クラシックからシニアまでを走られると思いますので、今回の収録で使う音源と被らないよう、ステージでは音源を特別仕様にする予定です」

 

 いやまぁ、そういう心配をしているわけではないんだけれどね。とりあえず頷いておこう。

 

「分かりました。歌うことは問題ありません。歌詞と音源を頂いても?」

「ありがとうございます!歌詞はこちらです!音源は…聞いていかれますか?それとも、持ち帰りますか?」

「聞いていっても?」

「もちろんです!」

 

 差し出されたのはMP3のプレイヤー。ハイレゾ対応品。イヤフォンをつけて、歌詞カードを見ながらそれらを聞いていけば、やはりよく知るウマ娘の曲であった。うん。うん。むしろこの曲たちなら練習とかしないでも歌えてしまうのはウマ娘にハマっていたからだろう。

 

 ついつい、歌を口ずさんでしまう。

 

「ここで今輝きたい いつでも頑張る君から 変わってくよ」

 

 うんうん。スペシャルレコード。アニメ13話好きだったなぁ。ああ…でもあそこにミスターシービーおらんかったのはちょっと気になる。もし、この世界があそこにたどり着く場合は、私は引退でもしちゃってるのだろうか。それとも、単純にストーリーの都合でああなっただけなのか。

 

「Specialな毎日へ走り出そう 夢は続いてく」

 

 難しいことはともかくとして、やっぱりいい歌だねぇ。そう思いながら歌詞カードから目を離してプロデューサーの顔を伺ってみれば、完全にこちらに釘付けになっていた。

 

「…どうかされました?」

「…シービーさん。今すぐ。今すぐ録音しましょう」

「へ?」

 

 今すぐ?録音?いやいやいやいや。この前のメイクデビューですら、私の体感でも数日間はみっちり練習したぞ?それを今?

 

「戸惑うお気持ち、分かります。しかし、今、音源を聞きながら歌われましたよね」

「はい」

「それが非常に良かった!今のその感じのまま!すぐに!ブースに入っていただきたい!」

 

 思わぬ剣幕に、ついつい頷いてしまった。そしてあれよあれよという間にブースに連れて行かれて、いざ録音。7曲をしっかりと歌い上げてみたのだが、ほとんどリテイクなし。一発でOKが出る始末。

 まぁ…ウマ娘好きとしちゃあ抑えておきたい歌だったしね。シービーになる前には、男連中でカラオケでよく歌っていたし…淀みなくは歌えたとは思うのだ。とはいえ、本当に良かったのかな?とプロデューサーに尋ねて見たのだが。

 

「最高の出来です!いや、最高ですよ!音源は出来上がり次第すぐに回しますので!」

「あ。はい。あの、もし取り直しとかがありましたらすぐにお声がけを…」

「いえ!大丈夫ですとも!一部、歌詞が少し違いましたが、歌詞カードよりもこちらの音源のほうが良いと太鼓判を押させていただきます!歌詞カードの修正版も一緒におつけしますので!」

「あ…はい。わかりました。お待ち、しています」

 

 いたく興奮しているプロデューサーを後目に、私はプリウスでスタジオを後にしていた。ちなみにたづなさんから後ほど聞いたのだが、このプロデューサーが独断で判断した歌詞変更は相当な物議を醸したらしく、URA上層部でも話題に上がったそうだ。とはいえ、私の音源を聞いた彼らもその出来に納得、ということらしい。

 

 ちなみにこちらのギャラも結構な金額であった。それこそ、相棒とプリウスが2セットは買えるであろう金額が口座に振り込まれていた。高待遇だね。本当に。

 

「…こういう感じで今の貯金額か。ミスターシービー…侮りがたし」

 

 自分の部屋でのんびりとしながらそんなことを呟いてみる。もしかして夢では?と頬をつねってみればすごく痛い。ジャグは良い香りだし、珈琲は旨い。どうやらはやり、ここは現実味がありすぎる世界である。となれば、あとは、しっかりと練習を重ねて、目標の無敗の三冠ウマ娘を目指していくしかあるまいさ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。