私は転生ウマ娘だよ。   作:灯火011

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周りから見たミスターシービー②

 いよいよ無敗の三冠ウマ娘へ王手!

 

 先に行われた東京優駿、日本ダービー。ミスターシービーが見事な末脚で圧勝したことは記憶にあたらしいだろう。

 

 これにより、彼女はついに、無敗の三冠ウマ娘へと手をかけるに至った。あのトウショウボーイ以来無敗の皐月賞ウマ娘だったミスターシービーが、名ウマ娘を超えてついに偉大な記録へと挑む。とはいえ、その道程は険しいものだ。決して楽ではないだろう。

 

 菊花賞の前には夏がある。この夏の間に、ウマ娘たちは一回りも二周りも大きくなってレース場に帰ってくるからだ。

 

 無論、ミスターシービーも大きく成長して帰ってくることだろう。

 しかし、カツラギエース、メジロモンスニーに、ブルーダーバン、ニシノスキー、ボンゴカンタなど、同期のウマ娘達の力量も目を見張る物がある。

 

 皐月賞は不良馬場の中、持ち前のパワーで押し切り、ダービーは戦略で他のウマ娘を出し抜いたとも言えるミスターシービー。

 

 彼女が菊花賞という長距離でどのような戦略と、成長を見せてくれるのか。

 

 そして、他のウマ娘もどのような成長を見せ、ミスターシービーにどうやって対抗するのか。

 

 今からレースの発走が楽しみで仕方がないと、心の底からそう思う。

 

―URA発刊雑誌:ウマ娘ファンより抜粋

 

 

「はああああああああああああ!」

 

 トレセン学園のトレーニングコース。今日も幾人のウマ娘たちが競い合い、鍛え合う。その中にはもちろん、メジロモンスニーやブルーダーバン、カツラギエースの姿もある。

 

「ゴール!クールダウンにもう一周軽く走ってきて!」

「はい、トレーナー!」

 

 トレーナーと訓練を行うウマ娘たちもいれば。

 

「追い切り行くよー!」

「お、じゃあ私もついていく!」

「やる気まんまんだね?でも、負けないからねー?」

「じゃ、位置について、よーい、ドン!」

 

 ウマ娘同士で訓練を行う集団も居た。もちろん、その目標はさまざまであり。

 

「ジャパンカップへ向けてどう?」

「んー、マルゼンスキーとミスターシービーが出るからねー。まだまだ足りないって思ってるよ」

「ああー…今回はあのスターが出るんだっけ」

「うん。でも、負ける気はないしさ。練習がんばんなきゃ!」

 

 シニア級のレースを目指すウマ娘もいれば。

 

「ミスターシービー対策?」

「うん。ダービーの坂を登ったスタミナ。それに、最後の追い込みの脚。アレに対抗するためにはスタミナと…あとパワーをもっと付けなきゃ」

「あー…ハンパなかったよねー」

「ほんとほんと。でも、菊花賞は秋だし、まだまだ時間があるからさ。やれるだけやっとかないと!」

「そうだね。菊花賞こそ、私が勝つ!」

「いーや、私が勝つ!」

 

 クラシック級を目指すウマ娘たちも多い。

 

「…ホープフルは通らなければいけないだろうな」

「ホープフルか。でも、無敗の三冠なら通る必要はないぞ?」

「うん…それは十分承知しているよ。でも…シービーが通った道だ。せめて、その道は超えていかねば、理想など程遠い」

「そうか。ルドルフがそう言うのなら全力でサポートさせてもらう」

 

 先に行った者の背中を見て、ジュニア級を制覇するために、そしてその先のクラシックに挑まんとする者の足音も、たしかに聞こえている。

 

 

「身辺調査に全く曇りは無し、か」

 

 学園長室では、たづな氏に渡された資料を読みながら、学園長がそう呟いた。

 

「はい。以前の資料と相違は何も。家族関係、身辺、金銭関係。すべて相違ありません。以前からの彼女そのままです」

「うーむ。そうなると、記憶が無くなったその原因は身辺にはないということになるか」

「はい。おっしゃる通りかと」

 

 学園長はわかりやすく悩みながら腕を組む。普段、天真爛漫に振る舞う彼女から想像もできない、運営者としての姿だ。

 

「…保留。この件は、進展あるまで継続調査とする」

「承知いたしました。学園長」

 

 たづな氏がそう言って頭を下げれば、学園長は窓へと歩みを進めていた。そして、その眼下で練習を続ける件のウマ娘、ミスターシービーを眺める。

 

「以前の彼女と変わらない。…否。以前の彼女より、ウマ娘に対してより好ましい発言や行動が多くなっている。さらにはその有言実行。無敗の三冠へ向けて邁進するその姿。まさに、ウマ娘の鑑と言っていいだろう」

「はい」

 

 ふと、学園長が振り返り、たづな氏の顔を見つめた。

 

「故に、彼女の秘密は、秘密を知るもののみの中に留め、最高のサポートをしようと思う。たづな。異論はないか?」

「ありません。実際、彼女の走る姿を見てあのシンボリルドルフ、マルゼンスキーですら燃えているようですから。私も、走りたくてうずうずしてしまいます」

 

 たづな氏はそう言いながら、笑顔を学園長に向けていた。その顔を見た学園長も、にやりと笑って頷きを返す。

 

「うむ。…さて!難しい話はここまでにして、無敗の三冠を達成した後について考えるぞ!たづなぁ!」

「はい、承知いたしました!」

 

 学園長室にやかましい声が響き渡る。今日も今日とて、彼女たちはウマ娘の幸せのために全力で動いている。

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