私は転生ウマ娘だよ。   作:灯火011

40 / 108
「や、社長、ファイアーブレードいい感じだよ。バッと加速してスッと止まる」

「不満そう?あー、バレた?」

「もうちょっとセッティングを追い込んでくれてもいいかな。カリッカリに曲がって加速する感じで。ブレーキはそのまま。大丈夫、大丈夫。いまんところ晴れで状態良なんだし」

「…うん。そんな感じで。雨の時はどうするんだって?あはは、それこそ心配いらないって。私、雨は、すこぶる得意なんだ」


おつまみ、お酒、煙草、体に悪い三点セット

 菊花賞に向かって日々練習を重ねる日々であるが、とはいえ、ウマ娘と言えど疲れが溜まるものであり、どうも最近は体が重い。

 

「今週は一旦休むか」

 

 季節は進んで7月。じりじりと焼かれる灼熱の太陽光にやる気が削がれる中、トレーナーから出た一言は、天の助けと言う他ない。

 

「休み?今週?いいの?」

「ああ。暑くなって身体が追いついていないだろう?お前の顔をみれば一発で解るさ」

「む。そんなひどい顔してるかな?私」

「ひどいぞ?目の下がくぼんでいるし、気持ち猫背だ」

 

 そう言われてしまえば、休みを謳歌するしかあるまいて。ただ、一人で休むのはちょっと嫌だ。

 

「判った。じゃあ、今週はのんびりするよ。あ、トレーナーはどうするの?」

「書類整理や手続き関係があるが…ま、概ね暇だ。俺も身体を休めようとは思っているよ」

「へー?あ、じゃあちょっと土日で海いかない海。バイクで」

「海?お前、もう少しで夏合宿だぞ?」

「そうじゃなくて、トレーナーとオフでいきたいんだけど、どうかな?」

 

 笑顔でそう問いかけてみれば、トレーナーは仕方ねーなーという感じで頷いてくれていた。よしよし。

 

「ホテルは適当で良いでしょ?」

「ホテル?」

「そ。土日でって言ったじゃん?アタシに任せてくれたら、いいところ取るよ?」

「…じゃあ、任せていいか?」

「もちろん!じゃ、軽くとっちゃうね」

 

 さてさて。じゃあウマホを手に持ちまして…海沿い…やっぱり料理は良いところじゃなきゃねー。あとは酒蔵が近くにあると尚良し。温泉でしょー。あと海水浴もしたいから遊泳できるところの近くでー…。

 

 

 ということで早速の休み。トレーナーを連れての海水浴ってやつだ。バイク移動での密着も慣れたもの。ま、私が男の記憶持ちってのが大きいかもしれないけれどね。

 

「男の俺と2人で出かけて大丈夫なのか?」

「トレーナーなら別に何があっても。むしろ、責任とってくれるんでしょ?」

「…その信頼は嬉しいけどな」

 

 カラカラと笑ってみれば、呆れ顔で返されたのは記憶にあたらしい所だ。このぐらいドライだとやりやすくて非常に良いね。バイクは県営駐車場に止めて、さっと着替えて来てみれば、そこにいたのは水着姿のトレーナーである。

 

「それにしてもトレーナー、結構いいカラダしているね?」

 

 水着姿の彼は、腹筋胸筋と鍛えられて、見事なアスリートのような身体をしていた。

 

「ま、鍛えているからな。お前らウマ娘に付き合うには体力勝負ってことだ。お前も綺麗な身体をしているな。ミスターシービー」

 

 おや、これは予想しないところからのお褒めの言葉。ま、良いプロポーションというのは自覚しているけれどね。緑のビキニスタイルで白い肌がばっちり露出。幾人かの男性の視線を受けて、結構自信がある格好だ。

 

「ふふ。ありがとうトレーナー。さ、早速海に入ろうよ!きっと、気持ちいいよー!」

「そうだな。…じゃあ、行くか。ああ、でも沖まで行くなよ?お前、泳ぐの苦手なんだから」

「判ってまーす。さ、行こう行こう!」

 

 トレーナーの手を掴んで、海へと駆け出してみれば、脚にまとわりつく冷たい海水が非常に気持ちがいい。手始めにトレーナーに水を掛けてやれば、思いっきり掛けかえされた。あっという間に全身が磯の匂いで塗れる。不思議と黄色い声が自分の喉から出てしまう。こんにゃろうと、海を掛け返す。気づけばお互いに砂と海水まみれで笑っていた。

 

 だが、海はコレが良い。

 

 

 海でしっかり遊んだあと、海の家でのんびりと食事をとっている。トレーナーと私はお互いに成人であるから、飲むものと言えば、これだ。

 

「乾杯」

「かんぱーい」

 

 黄金色のシュワシュワのやつ。キレッキレのキンキン。軽くジョッキを合わせて、ぐいーっと喉にそれを流し込めば、暑さが吹っ飛ぶような爽快さ。学園じゃ無理だ。

 

「くぅー。やっぱり夏はこれだな!」

「ほんっと、素敵な一杯だよねー」

 

 ちなみにおつまみはソーセージにポテトフライ、あとは唐揚げという油、油、油!更には喫煙も出来るので、お互いにパイプを吹かしちゃっている。酒、油、煙草。身体には悪い三点セットだが、これを謳歌できるのは大人の特権であろう。

 

「あ、ソーセージもらうよ」

「どうぞどうぞ。店員さん。ビールもう一杯おかわりを」

「アタシもー」

 

 2杯目の乾杯。ぐいーっとソレを飲み干して、気づけば3杯目。うん、トレーナーもなかなかヤル口だね。学園だとそんな雰囲気まったくないのに。

 

「よく飲むなぁ、シービー」

「トレーナーだって」

 

 もぐもぐとソーセージを喰らいながら、トレーナーの顔を見やれば、唐揚げを頬張りながらあちらさんもビールを煽る。笑顔で。うん。いいねこのオフの感じ。

 

「そういやシービー。お前、どこのホテルとったんだ?」

「あー。ここから見えるあのおっきい所。オーシャンビューで部屋に露天の温泉付きだよー」

「温泉か、いいな。海で冷えた身体に染み入りそうだ」

「でしょ?夕飯も懐石でいい感じ。ふふ」

 

 グラスに口をつけながら、ドヤ顔でトレーナーに笑いかけてみる。

 

「そりゃあいいな。酒…何か買っていくか?」

「ご心配なく。地酒で良いのを用意してもらっているよー」

「抜かり無いな」

 

 そう言いながらさり気なく4杯目のビールに手を伸ばすトレーナー。キミ、さては普段、そうとう鬱憤溜まっているね?

 

「うん。喫煙もバルコニーならオッケー貰っているしね。2人でゆっくり楽しもうよ」

「流石だな。じゃあ、チェックインしたらどっちかの部屋に集合ってことでいいのか?」

 

 おや、何かを勘違いしているご様子。

 

「え?トレーナーと私、一緒の部屋だけど?」

 

 一蓮托生ってやつさ。と、いうのはアレだけど、別にトレーナーとなら一緒の部屋でも問題ない。むしろ安心する。

 

「…お前、やったな?」

 

 頭を抱えて顔を下げたのを見て、思わず、笑いが溢れてしまった。

 

「あっはっはっは!大丈夫、ベッドは2つあるからさ!」

「そういう問題じゃあないんだが…」

 

 私の笑いを見たせいか、大きくため息を付いたトレーナー。ま、これも信頼関係あってのことだけど。

 

「だってさー。一人じゃ寂しいじゃん。晩酌しながら、ジャグやろうよー」

「んなこったろうと思ったよ。ミスターシービー。判った判った。せっかくの休みだ、お嬢様のわがままに付き合ってやるよ」

「流石。わかってるねーミスタートレーナー。じゃ、改めて乾杯しようかー」

「おうよ」

 

 さてさて。今日のご予定は決まった。海の家で楽しんだあとは、ホテルでのんびりと温泉に浸かり。飯を食い。トレーナーと共に夜遅くまで酒と煙草を呑む。

 

「ふふ。楽しみ楽しみ」

「ご機嫌でなによりだよ、ミスターシービー」

 

 そりゃあ楽しいですから。グラスに口をつけながらも笑顔を隠さずにいると、トレーナーも柔らかく、ふっと笑みを浮かべてくれていた。




「や、佐藤さん。それに千明さん。蹄鉄、いい感じだよ。バッと加速してスッと止まれる」

「不満そう?ああー、ばれちゃった?」

「もうちょっとコーナーを全力で駆け抜けれるようにしたいんだよね。ターフを掴むっていうか。取付角度、もうちょっと追い込んで見たいんだ。あはは。大丈夫大丈夫。多少重くなっても、遅くなるような鍛え方はしてないからさ」

「…うん。そんな感じでお願いできる?え?雨だとちょっと不利になるかもって?あはは、それこそ心配いらないって。アタシ、雨は、すこぶる得意なんだ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。