私は転生ウマ娘だよ。   作:灯火011

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ひとりは、背追う

「そうか。無敗の三冠ウマ娘は、先に、君が勝ち取ったか」

 

 窓の下。ターフの上で、カツラギエースとビンゴカンタに肩を貸されて立つ、彼女を見る。ここからでも解る。全力を出し切ったウマ娘の姿。汗で髪の毛が顔に張り付き、脚元はおぼつかない。しかし、その顔の満足さたるや。

 

「ミスター、シービー」

 

 彼女の名を口にする。素晴らしい功績である。そう思う。きっと、URA総出で彼女の偉業を称えることであろう。トレセン学園も、学園長、たづなさんを含め、私達生徒会も、彼女の偉業を笑顔で称えることであろう。

 

「御目出度い。ああ、非常に、御目出度いことだ。そうは思わないか。トレーナー君」

 

 隣に控えるのは、私の素晴らしいトレーナー。その顔は、笑顔で彩られている。

 

「思うとも。素晴らしいウマ娘だ。ミスターシービーは」

「君も、そう思うか」

「ああ。だが同時に。君はそれ以上のウマ娘だと思う」

 

 トレーナーの言葉に、ああ、と頷く。

 

「だから、その握られた拳を開くと良い。シンボリルドルフ」

「拳…?」

 

 はっとして、自らの拳を見下ろした。視線の先に現れたのは、固く、固く、それはもう固く握りしめられた己の両の拳。

 

 高い理想を掲げて、ここまで来た。

 

 高い理想を体現せよと、その責任を背負ってここまで、来た。

 

「…存外、私も俗物らしい」

 

 だが、その理想は、今日、一人のウマ娘として私の前に現れた。

 

 追い込みも、先行も、逃げも、中距離も長距離も強い。 

 

 そして、極めつけに3人目の三冠ウマ娘。しかも、無敗の三冠ウマ娘は史上初。

 

「負けて、なるものか」

 

 拳を解きながら、口にする。

 

「負けて、なるものか」

 

 見下ろしたウマ娘を、睨む。

 

「負けて、たまるか」

 

 ミスターシービー、君に、私は。

 

「絶対に、勝ってやる」

 

 絶対に勝ってやる。あのつよいウマ娘に、私は絶対に、絶対に勝ってやる。

 

「…違うな」

 

 感情で熱くなった頭を、理性で抑える。違う、勝つ、というのは違う。そう、そうだ。

 

「すでに私は、彼女を超えていると、証明する。この脚で」

 

 高い理想を、彼女を超えて体現して見せる。そう心に決めて、改めて拳を握る。

 

「流石だな。シンボリルドルフ」

「ありがとう。とはいえ、まだまだ私は未熟だ。君に指摘されるまで、この、内から湧き上がる悔しさに気がつかなかったのだから」

 

 私だけで行ける。そう思っていた節がある。だが、それは無理らしい。彼女は、それにも気づかせてくれた。

 

「故に、トレーナー君。これからも、よろしく頼む」

「言われなくても」

 

 私には、杖が必要だ。皇帝に相応しい、それはそれは、とても尊い杖が。

 

 そして、そして、私はいずれ、名前に恥じぬ功績を挙げ、皇帝となる。

 

 故に。無敗の三冠は達成せねばならぬ。

 

 故に。ミスターシービーとは、雌雄を決せねばならぬ。

 

 故に私は、決意を、背追う。

 

 彼女すらも超える、最強のウマ娘であるという、決意を。

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