「パート分けはこんなところで良いかな」
「そうね。1番が私、2番がシービーちゃん。Cパートと、サビは勝ったほう、ね」
ジャパンカップまで後わずか、いよいよ日取りも、段取りも、曲もと様々なものが決まってきた最中、私とマルゼンはレースの練習の合間に、専用曲の練習に勤しんでいた。
「そういえばシービーちゃん。ジャパンカップの課題曲は完璧?」
「もちろん、マルゼンは?」
「問題ナッシング。完璧よ。ルドルフちゃんと一緒に練習したから、振り付け、歌、全てオッケーよ」
なるほどね、ま、ルドルフと一緒に練習しているなら、大丈夫だろう。ジャパンカップの課題曲といえばご存知『Special Record!』。ま、公には大阪杯、宝塚記念、エリザベス女王杯の曲と共通だけれどね。でもあのステージで歌う曲の華やかさったら素晴らしいものだ。海外からのウマ娘を招くには、最高の曲であろう。
「それにしても、シービーちゃん。三冠を獲って、これから貴女の夢はどこまで続くのかしら?」
「うん?」
「ほら、スペシャルレコードにもあったじゃない?『スペシャルな毎日へ走り出そう、夢は続いていく』って。貴女、貴方はどうするのかなって思っただけよ」
うーん…まぁ、三冠ウマ娘、という一つの節目は通過したからね。この先、どういうふうに過ごすか、か。
「マルゼン、ルドルフ、あとピロウイナー、カツラギあたりとは勝負はつけたいな。ただ、無敗で居続けたいわけじゃないし、全力で、強いウマ娘と競い続けられたら言うことなしだね」
ま、当面はこれだろうね。ウマ娘としての能力が衰えないうちは、しっかりと勝負を続けていきたいし。まあ、そうだな。衰えたときには、昔とった杵柄ってことで、バイクのレースにでも参戦するさ。
「そう」
優しい表情でこちらを見てくるマルゼン。なんだろう、雰囲気は完全に保護者のそれだ。まぁ、たしかに、私がシービーになってから最初に頼ったウマ娘ではあるし、ある意味保護者の一人だから、何かこう、感じるところはあるよねー。
「お母さんって呼んで良い?マルゼン」
「巫山戯ないの。さ、そろそろ振り付けの合わせも始めましょ。ジャパンカップまでにはしっかりと仕上げないとイケないわ」
「ちぇー。判った判った。じゃあ、まずはイントロの頭から通しで。暗転でアタシが上手、マルゼンが下手から登場してポージングだね」
「判ったわ。それで…マイクはゴッパチでいいのよね」
「うん。生歌だからねー。やば、リハって言っても、緊張してきた」
リハとは言え音源を聞きながらとなると、どうしても気合が入るというもので。振り付けは練習しているから頭に入っているとは言え…うん。こりゃなかなか。三冠のウイニングザソウルとかは勿論緊張したけれど、今度は世界相手…あ、これ結構ヤバイかもしれないね?
「ほら、固くならない固くならない。リハでも笑顔」
肩に感じる重み。そして、目の間にはマルゼンの顔。いけないいけない。結構考え込んでしまったようだ。うん、ま、そうだな。今日は練習だ。まずは通しで、マルゼンと息を合わせて踊れるようにならないと何も始まらないわけだし。無理にでも、ぐいっと口角を上げておく。
「ありがと、マルゼン」
「気にしないの。さ、じゃあ位置に付きましょう」
「うん。じゃ、音源は10秒後で流れるようにセットするよ」
位置につく。そして、お互いに目を合わせて、頷く。同時に流れ始めたのは、私達用の専用曲。電子音が一定のリズムを刻む。
「さてさて、どのぐらいでマルゼンと息が合うかな」
中央に脚を進め、マルゼンと並んで両の手のひらを観客席側に向けたたま、顔の前で左右から顔を隠すように、平行に伸ばす。マルゼンとは鏡合わせのような形だ。そして、人差し指を伸ばしながら両の手を水平に、左右に広げていく。同時にイントロにトランペットが入り、盛り上がりを見せると共に、私は右手を、マルゼンは左手を天に高く掲げあった。
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『さあ、いよいよ11月も後半に入りましてついに近づいて参りましたジャパンカップ。
まず、クラシック級から世界を迎え撃つのは無敗の三冠ウマ娘のミスターシービー。そしてそのライバルのカツラギエース。シニア級からはスーパーカーとの異名も高いマルゼンスキーが初のG1参戦、他にも天皇賞ウマ娘のメジロティターン、キョウエイプロミスらも注目であります。
そして海外勢で注目なのが、凱旋門ウマ娘のオールアロング。『無敗の三冠ウマ娘と戦えるのならば』と、参戦の意思を表明しております。そして昨年の4着、アイルランドからはスタネーラが参戦と、今年のジャパンカップは国内外共に非常に層の厚いレースとなっております。
とはいえ、このメンツの中でもやはり注目はミスターシービーでしょうか』
『ええ。それは間違いないと思います。皐月賞では追い込んで、ダービーでは先行で、そして菊花賞では大逃げと変幻自在の彼女が今回はどのようにレースを盛り上げてくれるのか注目したいですね。そしてカツラギエース。彼女もミスターシービーに追いすがる勢いで成長を遂げておりますからもしや、という可能性も。
そして忘れてはいけないのがマルゼンスキー。今まで相手不在、条件が合わないなどの理由でG1に出場出来なかった、走れなかった彼女が、ここでついにその実力を世界相手に魅せつけるわけですからねー。非常に楽しみです。無論、キョウエイプロミスやメジロティターン。アンバーシャダイなどのウマ娘たちも侮れませんし、今回は南関東トレセンからダーリンググラスが参戦しますので、そちらも、また注目でしょう』
『なるほど。非常に楽しみですね。そして、天候のお知らせではありますが、ジャパンカップが行われる11月27日は『雨』予報となっております。現時点では木曜日から前線の影響で雨が降り続く、ということもありまして、今年のジャパンカップは雨の中での開催となりそうです。現地でご覧頂く際は、ぜひ、寒さ、雨対策をしながら風邪など引かぬようにお気をつけてご覧下さい』
『雨のジャパンカップですか。これ何か、一波乱、起きそうですね』