色とりどりのサイリウムが振られ、うっすらと浮き上がるステージ。王冠型のステージに、金色の装飾が施されたそれに、ライトが当たる。
『ここで今』
歌い出しはミスターシービー。腕を天に掲げながら、一糸乱れぬ動きで浮かぶウマ娘たち。
『輝きたい』
次に見せるのはマルゼンスキー。軽くミスターシービーと見つめ合うと、頷き合ってみせる。そうして、次の瞬間。
『叶えたい未来へ 走り出そう』
スタネーラ、オールアロングも交えて、4人での合唱が始まる。小指を立てて、腕を前に。そのまま、小指の約束を観客席に手渡すように、手のひらを上に向けて突き出した。
『夢は続いてく』
冒頭のほぼアカペラの部分。メインの4人が歌い終わった瞬間にドラムが入り、ステージを色とりどりのライトが一気に覆った。それはまさに、綺羅びやか。王冠を彩るに相応しい、ウマ娘たちを引き立て、美しく見せる究極の演出。その演出の中、18人のウマ娘たちが華麗な踊りを魅せる。下段のステージには、カツラギやドンボス、キョウエイプロミス、メジロティターンらが笑顔で、そして、ステージ上段ではラストスパートを競い合った本日の主役たちが、次々とステップを魅せ、ポジションを入れ替えていく。
そして、スポットライトが前に出た2人を照らし出すと同時に、ミスターシービーの声が響き渡った。
『新しい季節がやってくるよ』
鏡合わせで踊るのはマルゼンスキー。背中合わせに、彼女らは歌い合う。
『もっと加速して 全身全霊でenjoy!』
2人はハイタッチを行ってから、すっと後方に下がる。そして、スタネーラとオールアロングの海外組がステージの前へと躍り出た。
『夢に見た景色が見えるよ』
まず歌うのはオールアロング。日本語も何のその。美しい歌声が、ステージに響き渡る。
『君と一緒に目指したキセキ』
今度は間髪入れずにスタネーラが、入れ替わり立ち代わり、可憐にステップを踏みながら、場を盛り上げていく。そして、ステージ全体の照明が落とされると同時に、マルゼンスキーとミスターシービーへとスポットライトが当たる。2人の動きに合わせるようにスポットライトが動き、いよいよ、サビへとそのボルテージが上がっていく。
『涙こぼれるときもあるけど この胸に抱きしめた希望があるから』
再度、ステージが光に包まれ、4人が一糸乱れぬ動きでステージを駆け巡る。そして。
『未来を目指して』
紙吹雪が舞うと同時に、ステージの演出も最高潮を迎えた。降り注ぐライトの光、スポットライトは天から地から、ウマ娘を照らし、その輝きをより引き立たせる。
『ここで今 輝きたい いつでも頑張る君から変わってくよ』
観客席を指さしながら、笑顔を振りまく彼女たち。ステージの上も、下も、関係ない。全員が満点の笑みを浮かべていた。
『day by day さあ 進もう my way』
華麗なステップを行いながら、手を振る彼女たち。サイリウムがこれでもかと振られ、まさに、ボルテージは最高潮。そして。
『Specialな絆で 走り出そう 夢は続いてく』
歌い終わると同時に、BGMのテンポが落ちエンディングへと入っていく。全員が一糸乱れぬ動きで、笑顔を浮かべながら、小指を天に掲げ、ゆったりとした動きでステージを回る。ステージから見えるすべてのファンに、その姿を焼き付けるように。頭上からはキラキラと光がこぼれ落ち、ライトはすべて、黄金に染め上げられた。
『最高だったー!』
『みんなかっこいい!!』
『また来年も楽しませてくれ―!』
多くの歓声と拍手が沸き起こる。気づけば、ペンライトも全て黄金に染め上げられ、光の中で踊る彼女たちはまるで女神のようだ。
ラスト、ミスターシービーが拳を掲げた。それは、あの専用曲のように、ゴール直後のように。それに合わせて、他のウマ娘たちがミスターシービーに向けて人差し指を掲げ合う。そして、有終の美を飾るように、天高く、美しい花火が打ち上げられた。
「お送りした曲はSpecialRecord!センターはミスターシービー!脇を固めるのはマルゼンスキー、オールアロング、そしてスタネーラでお送り致しました!すべてのウマ娘に改めて大きな、大きな拍手をお願いいたします!」
暗転したステージを、去っていくウマ娘たち。あるものは手を振りながら、あるものは、笑顔を浮かべて。ステージ上では、ミスターシービーらと握手を交わしてオールアロング、そしてスタネーラが笑顔で、ステージを去っていく。
「素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれましたウマ娘達。彼女たちは、これからも、きっと、努力を重ね、競い合い、切磋琢磨を繰り返し、輝きをより強く、我々を照らし続けてくれることでしょう!今一度、大きな拍手を!」
アナウンスに、大きな拍手と声援が、再び会場を包み込む。同時に、ステージのライトが赤色と、緑色に染め上げられた。合わせるように、サイリウムの色も、その色に変わっていく。ステージ上からみたそれは、まるで、おとぎ話の世界の美しい世界のようだったと、後に、ミスターシービーは語っている。
「さて、今からミスターシービーとマルゼンスキーの両名が披露する曲は、この日のために、そして、この2人が勝利した時のために用意された至極の一曲。もし、何か一つでも歯車が狂っていれば、世に出ることのなかった、特別な一曲となります」
おお、と歓声が上がる。そうか、と。彼女らが勝つことを信じていたのは、我々だけでは無かったのかと。落ち着きを見せ始めた観客が、にわかに盛り上がりを見せる。
その盛り上がりに呼応するように、イントロが流れ始め、2人の歌姫がステージを舞い始めた。
「しかし、SpecialRecordのように、未来を歌う曲ではありません。ウイニングザソウルのように、情熱を描く曲でもございません。今日、ここに立っている2人の、そのたった2人の競い合いをイメージされて謳われる、その曲の名前は!」
すっと、流れるイントロ以外の音が消えた。観客たちは、静寂を以って曲名を待つ。それと同時に、ステージ上の2人も振り付けを止め、ナレーターの一言を待つ。
そして―。
『いけないボーダーライン!』
ナレーターの叫びとともにギターと管楽器の音が入り、一気にボルテージが上がる。2人の動きも激しくなり、観客たちも自然と合いの手を入れ始めた。そして、まずマイクをとったのは赤い勝負服のマルゼンスキー。ベテランの彼女だからこそ歌える、艶のある声で艶めかしさを醸し出しながら、その声をステージに乗せた。
『見つめ合って恋をして 無我夢中で追いかけて だけどもっと知りたくてメラメラしてる』
歌い上げながらミスターシービーを見つめ、笑顔を浮かべるマルゼンスキー。ミスターシービーも答えるように、口角を上げた。
『願うほど謎が増え 思うほど熱になる だからもっと飛び込むの未開の世界 ah』
ミスターシービーから視線を外したマルゼンスキーは、流れるように観客席へと視線を流し大きく、大きく想いを届ける。呼応するように赤いサイリウムが一気に振られていた。
『恋とか夢とか誰でも信じるけど ソコソコ攻めなきゃつまんないよ』
ハーモニーにミスターシービーの声が乗る。そして、赤と緑の2色だったステージのライトが、赤に切り替わると同時にサビが始まった。
『ギリギリ愛 いけないボーダーライン 難易度Gでもすべて壊してみせる』
圧巻の歌唱力。ベテランの彼女から発せられた声が、ステージを、レース場を染め上げる。
『キリキリ舞 さらなるGへと 意識が溶ける 体は制御不能』
まさに、全力を出し切ったマルゼンスキーを表すように。熱を持ったその歌声は、ステージから観客たちを魅了していく。そして。
『いっちゃうかもね』
流し目で観客たちをぐるりと見回して、キメた。
『うぉおおおおおお!かっこいいぞマルゼンスキー!』
『2人とも!最高だー!』
観客たちのボルテージは上がりきっている。だが、まだ。まだ真打ちはこれからだ。マルゼンスキーはミスターシービーへと拳を掲げ、それをミスターシービーは受け取る。同時に、ステージの色が再び赤と緑へと戻った。
ここで歌い手が変わるという合図。今度は、緑の勝負服のミスターシービー。その、勇ましく、しかし魅力的な歌声で、今度は彼女の色にステージを染め上げ始めた。
『ふざけ合った友達と 求め合ったあの人と また会える日のためにギラギラしてる』
先程のマルゼンスキーと同じように、今度はミスターシービーがマルゼンスキーを見つめながら笑顔を浮かべ、答えるようにマルゼンスキーが口角を上げた。
『光るほど影はでき 燃えるほど灰になる 走るほど見えてくる 危ないライン ah』
こちらも、まさに圧倒的な歌唱力。お互いに違う魅力を持ちながら、しかし、人々を圧倒するその圧力は、筆舌に尽くし難い。
『自由も平和も望めば生まれるけど モタモタしてたら腐っちゃうよ』
今度はハーモニーにマルゼンスキーが名乗りを上げた。ステージの光が、緑色に染まる。今度は、ミスターシービーのサビが始まった。
『ギリギリ愛 あぶないボーダーレス 非常識だね まだ加速しているよ』
魂の叫びか。それとも、嬉しさの咆哮か。伸びやかに謳い上げるその声は、ステージから人々を魅了する。
『キリキリ舞 限界点なら 塗り替えていい』
それを証明するように、緑色のサイリウムが右に左に大きく振られていた。
『破壊と再生から私が出来る』
ミスターシービーのキメと同時に、BGMが一瞬盛り下がる。そして、2人は鏡合わせのようにステージの端に移動しながら、観客席へとその肢体をアピールするように腕を振り、ステップを踏み、ぐるりとステージを縦横無尽に走り抜ける。
そのパフォーマンスが架橋を迎えた時、ふと、照明が暗くなる。同時に、すっとマルゼンスキーはミスターシービーの影に隠れた。そして、今日の主役にスポットライトが当たる。
『ギリギリ愛 いけないボーダーライン 難易度Gでも 全て壊してみせる』
一人。ステージで謳う。魂の限りの、叫びを添えて。
『キリキリ舞い さらなるGへと 意識が溶ける 身体は制御不能』
思い描くのは、マルゼンスキーか、カツラギエースか。それとも、まだ見ぬ未来の皇帝か。
『―いっちゃうかもね』
ソロパートをキメたミスターシービー。再び、ステージには輝きが灯り、歌姫を照らし出した。同時に、音が半音上がり、盛り上がりは最高潮を迎えはじめる。
そして、2人は合わせるように、同時に、マイクに魂を込めた。
『ギリギリ愛 いけないボーダーライン 燃え尽きながら まだ輝いてみせる』
赤と緑で彩られた光。紙吹雪が舞い踊り、サイリウムの草原も、まるで嵐が来たかのように狂い咲く。
『キリキリ舞 あなたのために 未来のために 何度砕け散っても』
そして、最高のボルテージを迎えたステージの上で、彼女らは、お互いの顔を見ながら、最後の章節を謳い上げた。
『愛することで 生まれ変わる』
満面の笑みのマルゼンスキー。
『愛されたくて 生きて帰る』
満面の笑みが輝くミスターシービー。
―音楽が終わる。
同時に、2人は背中をあわせた。
マルゼンスキーはマイクを持たない左手で、4本の指を立てると、中指と薬指をクロスさせることでピースを2つ作り上げた。そして、ミスターシービーは両の手でピースサインを作り、右手と左手の人差し指をクロスさせた。
その2人のキメポーズが決まった瞬間。
今まで、輝きを見せていたステージの照明が、一気に落とされた。わずかな静寂が、レース場を包み込む。
刹那。
『ウォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』
観客たちの声援が、いつまでも、漆黒に染まったステージを包み込んでいた。