私は転生ウマ娘だよ。   作:灯火011

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Special Record →

 色とりどりのサイリウムが振られ、うっすらと浮き上がるステージ。王冠型のステージに、金色の装飾が施されたそれに、ライトが当たる。

 

ここで今

 

 歌い出しはミスターシービー。腕を天に掲げながら、一糸乱れぬ動きで浮かぶウマ娘たち。

 

輝きたい』 

 

 次に見せるのはマルゼンスキー。軽くミスターシービーと見つめ合うと、頷き合ってみせる。そうして、次の瞬間。

 

叶えたい未来へ 走り出そう

 

 スタネーラ、オールアロングも交えて、4人での合唱が始まる。小指を立てて、腕を前に。そのまま、小指の約束を観客席に手渡すように、手のひらを上に向けて突き出した。

 

夢は続いてく

 

 冒頭のほぼアカペラの部分。メインの4人が歌い終わった瞬間にドラムが入り、ステージを色とりどりのライトが一気に覆った。それはまさに、綺羅びやか。王冠を彩るに相応しい、ウマ娘たちを引き立て、美しく見せる究極の演出。その演出の中、18人のウマ娘たちが華麗な踊りを魅せる。下段のステージには、カツラギやドンボス、キョウエイプロミス、メジロティターンらが笑顔で、そして、ステージ上段ではラストスパートを競い合った本日の主役たちが、次々とステップを魅せ、ポジションを入れ替えていく。

 

 そして、スポットライトが前に出た2人を照らし出すと同時に、ミスターシービーの声が響き渡った。

 

新しい季節がやってくるよ

 

 鏡合わせで踊るのはマルゼンスキー。背中合わせに、彼女らは歌い合う。

 

もっと加速して 全身全霊でenjoy!

 

 2人はハイタッチを行ってから、すっと後方に下がる。そして、スタネーラとオールアロングの海外組がステージの前へと躍り出た。

 

夢に見た景色が見えるよ

 

 まず歌うのはオールアロング。日本語も何のその。美しい歌声が、ステージに響き渡る。

 

君と一緒に目指したキセキ

 

 今度は間髪入れずにスタネーラが、入れ替わり立ち代わり、可憐にステップを踏みながら、場を盛り上げていく。そして、ステージ全体の照明が落とされると同時に、マルゼンスキーとミスターシービーへとスポットライトが当たる。2人の動きに合わせるようにスポットライトが動き、いよいよ、サビへとそのボルテージが上がっていく。

 

涙こぼれるときもあるけど この胸に抱きしめた希望があるから

 

 再度、ステージが光に包まれ、4人が一糸乱れぬ動きでステージを駆け巡る。そして。

 

未来を目指して

 

 紙吹雪が舞うと同時に、ステージの演出も最高潮を迎えた。降り注ぐライトの光、スポットライトは天から地から、ウマ娘を照らし、その輝きをより引き立たせる。

 

ここで今 輝きたい いつでも頑張る君から変わってくよ

 

 観客席を指さしながら、笑顔を振りまく彼女たち。ステージの上も、下も、関係ない。全員が満点の笑みを浮かべていた。

 

day by day さあ 進もう my way

 

 華麗なステップを行いながら、手を振る彼女たち。サイリウムがこれでもかと振られ、まさに、ボルテージは最高潮。そして。

 

Specialな絆で 走り出そう 夢は続いてく

 

 歌い終わると同時に、BGMのテンポが落ちエンディングへと入っていく。全員が一糸乱れぬ動きで、笑顔を浮かべながら、小指を天に掲げ、ゆったりとした動きでステージを回る。ステージから見えるすべてのファンに、その姿を焼き付けるように。頭上からはキラキラと光がこぼれ落ち、ライトはすべて、黄金に染め上げられた。

 

『最高だったー!』

『みんなかっこいい!!』

『また来年も楽しませてくれ―!』

 

 多くの歓声と拍手が沸き起こる。気づけば、ペンライトも全て黄金に染め上げられ、光の中で踊る彼女たちはまるで女神のようだ。

 

 ラスト、ミスターシービーが拳を掲げた。それは、あの専用曲のように、ゴール直後のように。それに合わせて、他のウマ娘たちがミスターシービーに向けて人差し指を掲げ合う。そして、有終の美を飾るように、天高く、美しい花火が打ち上げられた。

 

「お送りした曲はSpecialRecord!センターはミスターシービー!脇を固めるのはマルゼンスキー、オールアロング、そしてスタネーラでお送り致しました!すべてのウマ娘に改めて大きな、大きな拍手をお願いいたします!」

 

 暗転したステージを、去っていくウマ娘たち。あるものは手を振りながら、あるものは、笑顔を浮かべて。ステージ上では、ミスターシービーらと握手を交わしてオールアロング、そしてスタネーラが笑顔で、ステージを去っていく。

 

「素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれましたウマ娘達。彼女たちは、これからも、きっと、努力を重ね、競い合い、切磋琢磨を繰り返し、輝きをより強く、我々を照らし続けてくれることでしょう!今一度、大きな拍手を!」

 

 アナウンスに、大きな拍手と声援が、再び会場を包み込む。同時に、ステージのライトが赤色と、緑色に染め上げられた。合わせるように、サイリウムの色も、その色に変わっていく。ステージ上からみたそれは、まるで、おとぎ話の世界の美しい世界のようだったと、後に、ミスターシービーは語っている。

 

「さて、今からミスターシービーとマルゼンスキーの両名が披露する曲は、この日のために、そして、この2人が勝利した時のために用意された至極の一曲。もし、何か一つでも歯車が狂っていれば、世に出ることのなかった、特別な一曲となります」

 

 おお、と歓声が上がる。そうか、と。彼女らが勝つことを信じていたのは、我々だけでは無かったのかと。落ち着きを見せ始めた観客が、にわかに盛り上がりを見せる。

 

 その盛り上がりに呼応するように、イントロが流れ始め、2人の歌姫がステージを舞い始めた。

 

「しかし、SpecialRecordのように、未来を歌う曲ではありません。ウイニングザソウルのように、情熱を描く曲でもございません。今日、ここに立っている2人の、そのたった2人の競い合いをイメージされて謳われる、その曲の名前は!」

 

 すっと、流れるイントロ以外の音が消えた。観客たちは、静寂を以って曲名を待つ。それと同時に、ステージ上の2人も振り付けを止め、ナレーターの一言を待つ。

 

 そして―。

 

『いけないボーダーライン!』

 

 ナレーターの叫びとともにギターと管楽器の音が入り、一気にボルテージが上がる。2人の動きも激しくなり、観客たちも自然と合いの手を入れ始めた。そして、まずマイクをとったのは赤い勝負服のマルゼンスキー。ベテランの彼女だからこそ歌える、艶のある声で艶めかしさを醸し出しながら、その声をステージに乗せた。

 

見つめ合って恋をして 無我夢中で追いかけて だけどもっと知りたくてメラメラしてる

 

 歌い上げながらミスターシービーを見つめ、笑顔を浮かべるマルゼンスキー。ミスターシービーも答えるように、口角を上げた。

 

願うほど謎が増え 思うほど熱になる だからもっと飛び込むの未開の世界 ah

 

 ミスターシービーから視線を外したマルゼンスキーは、流れるように観客席へと視線を流し大きく、大きく想いを届ける。呼応するように赤いサイリウムが一気に振られていた。

 

恋とか夢とか誰でも信じるけど ソコソコ攻めなきゃつまんないよ

 

 ハーモニーにミスターシービーの声が乗る。そして、赤と緑の2色だったステージのライトが、赤に切り替わると同時にサビが始まった。

 

ギリギリ愛 いけないボーダーライン 難易度Gでもすべて壊してみせる

 

 圧巻の歌唱力。ベテランの彼女から発せられた声が、ステージを、レース場を染め上げる。

 

キリキリ舞 さらなるGへと 意識が溶ける 体は制御不能』 

 

 まさに、全力を出し切ったマルゼンスキーを表すように。熱を持ったその歌声は、ステージから観客たちを魅了していく。そして。

 

いっちゃうかもね

 

 流し目で観客たちをぐるりと見回して、キメた。

 

『うぉおおおおおお!かっこいいぞマルゼンスキー!』

『2人とも!最高だー!』

 

 観客たちのボルテージは上がりきっている。だが、まだ。まだ真打ちはこれからだ。マルゼンスキーはミスターシービーへと拳を掲げ、それをミスターシービーは受け取る。同時に、ステージの色が再び赤と緑へと戻った。

 

 ここで歌い手が変わるという合図。今度は、緑の勝負服のミスターシービー。その、勇ましく、しかし魅力的な歌声で、今度は彼女の色にステージを染め上げ始めた。

 

ふざけ合った友達と 求め合ったあの人と また会える日のためにギラギラしてる

 

 先程のマルゼンスキーと同じように、今度はミスターシービーがマルゼンスキーを見つめながら笑顔を浮かべ、答えるようにマルゼンスキーが口角を上げた。

 

光るほど影はでき 燃えるほど灰になる 走るほど見えてくる 危ないライン ah

 

 こちらも、まさに圧倒的な歌唱力。お互いに違う魅力を持ちながら、しかし、人々を圧倒するその圧力は、筆舌に尽くし難い。

 

自由も平和も望めば生まれるけど モタモタしてたら腐っちゃうよ

 

 今度はハーモニーにマルゼンスキーが名乗りを上げた。ステージの光が、緑色に染まる。今度は、ミスターシービーのサビが始まった。

 

ギリギリ愛 あぶないボーダーレス 非常識だね まだ加速しているよ

 

 魂の叫びか。それとも、嬉しさの咆哮か。伸びやかに謳い上げるその声は、ステージから人々を魅了する。

 

キリキリ舞 限界点なら 塗り替えていい

 

 それを証明するように、緑色のサイリウムが右に左に大きく振られていた。

 

破壊と再生から私が出来る

 

 ミスターシービーのキメと同時に、BGMが一瞬盛り下がる。そして、2人は鏡合わせのようにステージの端に移動しながら、観客席へとその肢体をアピールするように腕を振り、ステップを踏み、ぐるりとステージを縦横無尽に走り抜ける。

 

 そのパフォーマンスが架橋を迎えた時、ふと、照明が暗くなる。同時に、すっとマルゼンスキーはミスターシービーの影に隠れた。そして、今日の主役にスポットライトが当たる。

 

『ギリギリ愛 いけないボーダーライン 難易度Gでも 全て壊してみせる』

 

 一人。ステージで謳う。魂の限りの、叫びを添えて。

 

『キリキリ舞い さらなるGへと 意識が溶ける 身体は制御不能』

 

 思い描くのは、マルゼンスキーか、カツラギエースか。それとも、まだ見ぬ未来の皇帝か。

 

『―いっちゃうかもね』

 

 ソロパートをキメたミスターシービー。再び、ステージには輝きが灯り、歌姫を照らし出した。同時に、音が半音上がり、盛り上がりは最高潮を迎えはじめる。

 

 そして、2人は合わせるように、同時に、マイクに魂を込めた。

 

ギリギリ愛 いけないボーダーライン 燃え尽きながら まだ輝いてみせる

 

 赤と緑で彩られた光。紙吹雪が舞い踊り、サイリウムの草原も、まるで嵐が来たかのように狂い咲く。

 

キリキリ舞 あなたのために 未来のために 何度砕け散っても

 

 そして、最高のボルテージを迎えたステージの上で、彼女らは、お互いの顔を見ながら、最後の章節を謳い上げた。

 

愛することで 生まれ変わる

 

 満面の笑みのマルゼンスキー。

 

愛されたくて 生きて帰る

 

 満面の笑みが輝くミスターシービー。

 

 ―音楽が終わる。

 

 同時に、2人は背中をあわせた。

 

 マルゼンスキーはマイクを持たない左手で、4本の指を立てると、中指と薬指をクロスさせることでピースを2つ作り上げた。そして、ミスターシービーは両の手でピースサインを作り、右手と左手の人差し指をクロスさせた。

 

 その2人のキメポーズが決まった瞬間。

 

 今まで、輝きを見せていたステージの照明が、一気に落とされた。わずかな静寂が、レース場を包み込む。

 

 刹那。

 

『ウォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』

 

 観客たちの声援が、いつまでも、漆黒に染まったステージを包み込んでいた。

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