私は転生ウマ娘だよ。   作:灯火011

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ひといき。ひといく。

 マルゼンスキーの宣戦布告には驚いたなぁと思いながら、練習を重ねる日々を過ごしているわけなんだけど。

 

「…うーん?」

「どうしたんだ?シービー」

 

 なんだか最近、倦怠感というか、気分がスッキリしない。別に練習がキツイというわけでも、足りないというわけでもない。はて、一体なんだろうかと自分でも気づくとついつい首を傾げてしまっている。

 

「や、ちょっとね。最近どうもスッキリしないっていうか」

「スッキリ?一服行く…か、という話でもないみたいだな」

「うん」

 

 頭を掻きながら、天を仰ぐ。どう伝えれば良いのか、いまいち言葉にもならないなんかもやもやの気持ち。

 

「そうか。スッキリ、ねぇ」

「なんだろ?トレーナーから見ててなんかアタシ変?」

「いや、普段どおりに見えるぞ。表情が曇っているくらいだ」

「げ、顔に出てた?」

「ああ」

 

 トレーナーに言われてから、頬を両手で包んでむにむにと解してみる。頬の筋肉は気持ち良いんだけど、ただそれだけ。いまいち、いまいち気分がスッキリしない。

 

「…今日明日は休みにしてどこが遊びに行くか?」

「…うーん…」

「そういう気分でも…ないみたいだな?」

 

 頷く。うーん、うーん?我ながらワガママだなぁと思いながら、トレーナーの顔を見る。

 

「…なんだろ?」

「さぁな。ま、良い。今日の練習もちょうど区切りだ。ほい、タオル」

「うん」

 

 促されるまま、トレーナーからタオルを受け取って汗を拭う。なんだろうなぁ。いまいち、こう、余裕が無いというか、もやもやするというか。トレーナーの顔を見ても特になんか良いことを思いつかないし。そうやって頭を捻っていると、隣からため息が聞こえていた。

 

「ま、ここで悩んでいても仕方ないだろう。一旦上行くぞー。一服やりながらコーヒーをやろう」

「ん?うん」

「今日は俺がコーヒーを淹れる。タバコも俺が選ぶ。お前はくつろいでくれ、ミスターシービー」

 

 おや、珍しい。じゃあ、お言葉に甘えようじゃないか。

 

 

 チョイスしてくれたコーヒーはキリマンジャロ。しかも、カフェモカ。チョコレートの香りが漂う、あまーいコーヒーだ。そしてタバコはアメリカンスピリッツ(ヤンキー)のベリック葉。珍しい組み合わせだけれど、嫌いじゃない。

 

「うん。いい感じの組み合わせ。ありがと、トレーナー」

「口に合ったようで何よりだよ、シービー」

 

 というかカフェモカ作るの結構面倒くさいんだけど、トレーナーの手つきって言えば熟練者のそれだった。もしかして、家とかでも作っているのだろうか?

 

「ん?どうした?妙な顔をして」

 

 疑問が顔に出ていたらしい。

 

「あー、うん。カフェモカ作る手つきがさ、慣れてたから。家とかで作ってるのかなって」

「ああ、これか。お前がコーヒー好きだからな。つられてな」

「お、そうなんだ?」

「ああ。他にもフレンチ、ドリップ、エスプレッソも練習中だぞ」

「へぇー?いつの間に」

 

 驚いた。いつの間にそんなこと練習していたんだか。

 

「ま、お前ほど上手に淹れられないからな。まだ。上手くいくようになったら、披露させてくれ」

「もちろん。楽しみにしてる」

 

 いつも私が淹れていたコーヒーだけど、トレーナーが淹れたコーヒーというのも、トレーナーが用意したタバコというのも良いものだなぁとしみじみ感じながら、交互にタバコとコーヒーを愉しむ。カフェモカはエスプレッソで抽出されたコーヒーと、牛乳、そしてチョコレートがいい感じにマッチして、甘みと苦味の中に、チョコレートの香りが沸き立つ良いものだ。これでまだまだと言うのなら、本格的に彼自信が納得できる淹れ方を覚えたのなら、そうとう上手いコーヒーが飲めそうだね。

 

「楽しみにしててくれ、シービー」

 

 そう言って笑ってくれたトレーナーに、笑顔で頷き返す。アメスピを口に加えて、ゆっくりと燻らせる。何も添加剤の入っていない、シンプルなタバコの香りが鼻に突き抜ける。

 

「うん。アメスピともよく合うね、カフェモカ。美味しい」

「そっか。よかったよかった」

 

 ゆっくりとトレーナーと味わう最高のひととき。もやもやはまだ残っているけれど、だいぶ、スッキリした気がする。

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