ハイスクールD×B~サイヤと悪魔の体現者~   作:生まれ変わった人

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今年最後の投稿と活動報告で言ったが……すまん、あれは嘘だ。

とはいうものの、内容はあまり進まず、開幕ゴングを鳴らすだけの回になりました。
あまり書けてやれず、キリのいい所で終わらせたのを投稿します。


戦いの幕開け

「貴様等、さっきのガキの仲間か?」

 

猿のように長い、毛の生えた尻尾をうねらせながら“そいつ”は俺たちを見下ろしながら冷たく言い放ってきた。

部長が高めてくれた指揮が、熱気が全てそいつの声だけで無慈悲に払われてしまったのがよく分かる。

 

『相棒! こいつっ、得体が知れんぞ!! 絶対に真正面から事を構えるなっ!!』

「……分かってるよ……分かっちまうんだよ、ドライグ」

 

ドライグの声からしても目の前の存在……明らかな殺意を向けてくる敵に慄いているのが分かる。

でも、お前に言われなくても分かっちまうんだ。

俺には小猫ちゃんのように仙術で強さは測れないし木場たちの様に経験も無いから佇まいで具体的な強さなんて測れない。

 

 

それでも分かっちまうんだ!!

宙にういている男を見た瞬間、俺の身体が一瞬で萎縮しちまったんだよ!

俺の本能が“逃げろ”と今でも警鐘を鳴らしてる!

 

身体が震えて、今にも逃げ出したい!!

 

「冗談じゃねえよ……タンニーンのオッサンでもここまで“怖い”なんて思わなかったぞ……」

 

ヴァーリのような強い奴の独特な雰囲気だとかサイラオーグさんの闘気なんてちっぽけに思っちまう!

周りに部長たちがいなければ、カリフという希望がいなかったら今頃背中を向けて逃げてた。

皆も身体を震わせてその場から動けずにいる。

 

しかし、敵はそんな俺たちを面白そうに、馬鹿にしたような笑みを浮かべながら再び訪ねる。

 

「喋ることもできないか……少しは歯ごたえがあると思ったんだが、さっきのガキの方がまだマシだったな」

 

俺たちを汚い物を見るような目で見ながら溜息を吐いた。

 

しかし、敵の言葉の中に気になることがあり、ここで初めて俺を縛り付けていた恐怖を押し退けた。

 

「お前、どこのどいつだよ! カリフをどうしたってんだよ!」

『Boost!!』

 

怒鳴りながら勢いに任せてブーステッド・ギアを出して力を溜める。

しかし、敵はそんな俺の言葉を無視し、俺を見てくる。

 

いや違う、俺の神器を興味深そうに見ている。

 

「ほう、それがブーステッド・ギアか……随分と中々の物を持っているそうじゃないか」

 

まるで俺がいない物だと思っているようにブーステッド・ギアにしか興味を示さない。

 

ば、馬鹿にしやがって!!

 

「俺のことはどうでもいいだろ!! 質問に答えろ!! でないと……っ!」

 

無視された怒りに頭が熱くなったことと敵が余裕そうに何もしてこないことに我慢の限界を迎えて激情をぶつけようとした。

 

 

「でないと、どうするんだ?」

「!?」

 

今まで邪悪な笑みを浮かべていた表情が一変した。

 

己の力も弁えぬ下等な存在が自分と同じ土俵に立っていると勘違いしている。

男にとってはイッセーなど顔の近くで飛び回る虫程度にしか映っていない。

逆に言えばまだ逆鱗に触れなかったことがイッセー最大の幸運と言えよう。

 

敵の顔は怒りに顔を歪ませ、内包するエネルギーを放出させた。

ただの苛立ちによる威圧程度かもしれないが、リアスたちにとっては苛立ちだとか、そう言う次元を遥かに超えていた。

 

「何だこいつ、神クラスと同レベルかよ……っ!!」

 

アザゼルの悲痛な声が響く。

 

決して油断してた訳じゃない、万全の布陣を用意していたつもりだった。

カリフを撃ち落とした、それだけで気付くべきだったのだ。

 

 

敵は遥か格上だということを。

 

万全の準備をしてきたにも関わらず、アザゼルたちは目の前の敵を前にして敵の戦力を過小評価(・・・・)していたと思わずにはいられなかった。

 

しかし、強大な敵を前に別の感情に支配されている者がいた。

 

「……カリフはどこ?」

 

溢れる感情を抑えきれず、恐怖よりも怒りに支配されているのは朱乃だった。

感情と共に内包している魔力を解放させ、雷光が迸る中でポニーテールが狂ったようにうねる。

駒王学園の制服ではなく、戦闘時の巫女服を着用している。

 

完全な戦闘態勢であることは疑いようがない。

 

「朱乃っ……!」

 

奇しくも、怒れる雷光の巫女の姿にその主は冷静を取り戻す。

いつもの優美な口調はナリを潜め、想いを寄せる男の名を呼び捨てにしている。

 

堕天使との混血によって受けている光の魔力の恩恵と雷の魔力を複合させた彼女の最大の武器をこれみよがしに見せつけている。

通常の相手なら今の朱乃の反応は充分に威嚇となり、牽制にもなるのだが相手が悪すぎる。

 

一定の感情を超えると周りの状況が見えなくなり、感情のままに暴走する朱乃の悪癖が最悪の形で表れてしまった。

しかも想い人を傷つけられたのだ、彼女の暴走はそう簡単には解けない。

 

据わった視線を向けてくる朱乃に対し、面白そうに、滑稽そうに男は再び口角を吊り上げた。

 

「そのカリフって奴は誰だか知らんし興味はないが……さっき目付きの悪いガキなら片付けてやったぞ? 随分と腕の立つようだったが、所詮はゴミみたいな奴だったがな」

 

朱乃を焚き付けるように、腕を組みながら答えた。

本当にカリフのことは知らなかったようだが、ターレスの言った特徴を聞いただけで朱乃の臨界点が突破した。

 

これ以上聞く必要は無いと言わんばかりに、朱乃の攻撃は速かった。

 

「雷光よっ!!」

 

掲げた手から眩い雷を繰り出す。

合宿とレーティングゲームを経て鋭さと苛烈さを極めた一撃は迷うことなくターレスへ放った。

 

「朱乃、止めっ―――!」

 

リアスは朱乃の行動に叫ぶ。

衝動的に自分の指示なく攻撃をした朱乃を諌めるため、冷静さを戻すため。

幾ら何でも短絡的な行動に一瞬、組み立てていた作戦が全て水泡に帰した。

 

だが、ここはアクの強い眷属を束ねるリアスの本領が発揮される。

全てが無駄になった作戦を捨て、一瞬にして作戦を立て直す。

 

目の前の相手では決定打にはなりえない。

それでも勢いを取り戻す策にはなる。

 

「ゼノヴィア! 最大の一撃を叩き付けなさい!」

「!? 了解した!」

 

リアスの命令に放心していたゼノヴィアが我に返り、デュランダルを取り出す。

デュランダルに聖なるオーラを溜め、空中に佇むターレスに狙いを定める。

 

「喰らえええぇぇぇ!!」

 

暗い森を照らすほどに眩い光が宿る。

短時間とはいえ、溜められたデュランダルの聖なるオーラは必殺の一撃を持つ。

上級悪魔なら一瞬で消滅させ、人間であるなら肉片を残さず蒸発させる。

 

その一撃をターレスに向けて放ち、雷光と合わさって爆発させた。

 

「やったか!?」

「いや……これは……」

 

凄まじい魔力の爆発。

離れているとはいえ、目が開けられないほどの閃光と焼けるような熱から凄まじい力を感じる。

それ故に期待してしまうが、すぐにそんな淡い希望を捨てる。

 

「まだ、嫌な感じがします」

 

猫又モードになった小猫がターレスの気を感じ取る。

あまりにも邪悪な気に立ち眩みさえ覚えるが、それを踏み止まって我慢する。

 

皆も既に各々の力を解放させて臨戦態勢に入っている。

 

それもカリフという圧倒的超越者との仕合の賜物であるのは間違いない。

 

そして、直ちにリアスたちが指示を出す。

 

「小猫と朱乃、アーシアにギャスパーは私とカリフの捜索! イッセーと裕斗、ゼノヴィアは奴の足止めをお願い!」

「椿姫も共に足止めをお願いします。私を含めた他の皆はリアスたちの護衛を兼ねてカリフくんの捜索に尽力してください。イリナさんは捜索、ロスヴァイセさんとマナさんは足止めをお願いできますか?」

「はい!」

「任されました!」

 

リアスとソーナの指示に異を発する者はいない。

 

この場では戦闘経験に富み、パワーとスピードに特化したイッセーたちを殿とし、小猫はカリフの気を追うため、アーシアはカリフが重傷であると見越して同行させる。

朱乃とギャスパーはもしものための保持戦力として連れて行く。

 

それを察知し、ソーナは自分の眷属から役割と個人の力量をプロファイリングする。

中でも付き合いが長く、戦力的に信用のおける椿姫を残す方法を取った。

それに、彼女の神器ならばもしかしたら、この状況を打破できる物だと信じて。

 

同時に眷属でもないロスヴァイセたちにはお願いと言う手で支持するが、抵抗されることなく協力させてもらえることに。

そんな中、残ったアザゼルが黄金の鎧を装着しながらイッセーたちの傍で宙に浮く。

 

「流石に今回は本腰を上げなきゃならんしな。俺も足止めをするぜ」

「アザゼル……勝機はあるかしら?」

 

リアスが不安をにじませ、色よい返事を期待するが、返ってきたのは予想通りの絶望的な見解である。

 

「ハッキリ言っておくが、間違いなく俺たちではあいつには勝てん。そもそもこうして俺たちが生きているのは奴さんの気まぐれ、強者としての余裕というやつだ」

 

それは言い返せない現実。

一縷の望みがあるとすれば、強大な力故の敵の油断しかありえない。

ターレスが本気になればオカルト研究部も生徒会も既にこの世にいない。

 

そして、セイクリッド・ギアに興味がある素振りからして、恐らくは神器保有者から神器を取り出すためにいたぶるくらいはするだろう。

それもまた、自分たちが今も生きている所以だということを踏まえ、アザゼルはそこに残る。

 

今回のカギはカリフだ。

カリフの生命力なら小猫の仙術で発見できる可能性が高い。

 

時間との勝負。

それは敵が自分たちを舐めている間にしかできない最後にして唯一の一手である。

 

「行け! ここは俺たちが死守する!」

「えぇ、皆も耐えて、絶対に生き残ってちょうだい!」

 

リアスの号令と共に全員が動いた。

一糸乱れぬその動き、生きるために全力を尽くすことを重視した行動はまさしく光そのものだった。

オカルト研究部と生徒会との垣根を感じさせない息の合った今だけが双方100%以上の実力を発揮する。

 

(200%でも届かねえがな)

 

生徒たちの息の合った動きをこの時だけは素直に喜べない。

煙が晴れ、変わらぬ姿で佇む怨敵は遥か化物。

油断の一つ、いや、雑念さえも抱こうものなら間違いなく、全てが終わる。

 

「思い出した。お前たちはグレモリーとシトリー、そしてお前がアザゼルだな?」

 

こうしてすぐに襲ってくることなく、対話で時間を稼げるならこっちとしても万々歳だ。

舐められてる不快感よりも話を引き延ばして時間を稼ぐことが目的のアザゼルたちにとってはありがたい。

 

「俺たちを知ってるのか? そいつは光栄なこった」

「ふ、最近は随分と世界を騒がせている注目馬だ。知ってて当然だ」

「そうかい。高く買ってくれてるようだな」

 

引き伸ばしながら、同時に相手を無暗に触発させないように言葉を選ぶ。

朱乃の感情に任せた攻撃は肝を冷やしたが、あれでもターレスがキレない辺り、線引きは意外と甘く見積もってもいいかもしれない。

 

ターレスは愉快そうに笑う。

 

「そこのガキのブーステッド・ギアを筆頭にした珍しい神器に加えて伝説級の剣や希少種族、その全てが俺たちにとって珍しく、その力も魅力的だからな」

 

愉快そうにイッセーたちを品定めする視線に本人たちは冷や汗を滲ませ、さらに緊張を強いられる。

 

しかし、アザゼルはターレスの何気ない一言の中で一際大きく、耳に残る。

 

―――俺たち(・・)、と。

 

「お前は、禍の団の一員か?」

 

最近、猛威を振るうテロリスト集団であればこんな無謀な襲撃にも納得はいく。

それにターレスほどの強者が今まで誰にも知られることなく、くすぶっていたことも不可解だ。

 

強大な力はどんな場所からでも目立ち、注目され、危険視される。

それは既にカリフがありありと証明している。

 

そして、考えられるとしたら、どこか大規模な組織に紛れ、その身を隠していた可能性の方が高い。

だとしたら、神器も聖剣も稀有な力も欲しがるのも納得がいく。

 

できれば間違っていてほしい、そんな希望は悪い意味で叶えられることとなった。

ターレスの不愉快に満ちた顔で。

 

「俺たちをあんなゴミ共と一緒にするとはいい度胸だな? え? 堕天使総督アザゼル」

 

不快感を目一杯込め、特大級の殺気を漏らした。

 

「っ!?」

 

その瞬間、アザゼルは苦虫を噛みしめたような後悔と共に、改めてその恐ろしさを理解した。

目の前の化物の底知れぬ威圧、殺気、滲み出るエネルギーを前に悟る。

 

―――奴にかかれば自分たちなど等しく、塵にしかならない。

 

「あ、が……」

「う、くっ!」

 

自分でさえも一瞬、逃げ出したい衝動に駆られるのだから、生徒がまともに耐えられる訳がなかった。

木場やゼノヴィアはもちろん、椿姫は一歩下がる。

イッセーに至っては足が笑い、立ってるのもやっとだと見てわかる。

 

他の面子も既に瓦解寸前だった。

 

殺気一つで戦意を根から引き抜かれた気分だ。

それを見たターレスは面白いものを見るかのようにククっと笑う。

 

「おいおい、そんな簡単に壊れてくれるなよ? お前たちには知る権利があるんだからな」

「知る……だと?」

 

柔らかくなった雰囲気に軽くなったが、殺気に怯える身体を立たせる。

今にも崩れそうな体を精神で支えながらターレスの言葉を待つ。

 

強者の余裕、それを期待して真実を聞けるとアザゼルは全神経を次の台詞に集中させ―――

 

 

 

「お前たちの知らない、本物の生き地獄と絶望をその身に知らしめてやろう」

「っ!?」

 

 

その死刑宣告にアザゼルは咄嗟に叫んだ。

 

 

「お前ら呆けるんじゃねえ!! 動かねえと死ぬぞ!!」

 

アザゼルは怯える生徒たちに檄を送りながらターレスへ突貫する。

無謀でありながら、一番槍を演じることで自分たちの戦意をその身を投げ打って奮い立たせる教師の姿に逃げ出す寸前のイッセーたちは正気に戻り、各々の武器を構えた。

 

「ドライグ!! 行けるか!?」

『時間は経過した!! すぐにフルパワーも出せる!!』

「よし!!」

 

開幕前から展開させていたブーステッド・ギアを展開させ、左右から木場とゼノヴィアが飛び出し、後方では幾つもの魔法陣が形成される。

既に全員が戦いの準備ができてると把握し、腹を括る。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

何重にも強化を重ね、オカルト研究部と生徒会連合は死地に入る。

 

 

対する敵は自分に挑んでくる小虫たちを余裕の笑みで見据え、腰に巻き付けてた尻尾を、組んでいた腕を解いて迎え入れるように広げる。

 

 

 

 

「せいぜい楽しませてくれよ? ホープ共」

 

邪悪な笑みを浮かべ、その身に叩き込まれる力の一切合切を向かえ入れ、大爆発の中に消えていった。

 

 

 

獣もめったに寄り付かない程の森の奥地

 

生命の気配すら感じない閑静な森林の柔らかな地面に少年の姿が横たわっている。

 

「う、く……」

 

衣服は黒く焼き焦げ、全身に鈍い痛みが奔る身体を僅かに震わせるカリフ。

不意打ちにとはいえ、その身に負ったダメージは少なくない。

敵の姿に動揺し、一撃をもらった代償はあまりに大きい。

 

 

 

 

それがターレスの最大の、痛恨のミス

 

ここで、スカウターに頼らずに油断せず止めを刺すべきだった。

草の根をかき分けてでも始末すべきだった。

 

 

今も倒れる超絶者はやがて目覚める。

自身の未熟さに、敵に怒れる怒りをバネに強くなる。

 

 

本物の、手も付けられない『怪物』の存在を

 

 

その身をもって知ることとなるだろう。




次回は本当に新年になります。
更新速度は遅いですが、ちょくちょく書いていく予定です。

また来年にお会いしましょう!
さようなら!
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