しかも朝の9時くらいに何かタイトルだけで投稿されてた。びびった。
そこを一言で表すのなら、地獄という表現が最も正しいだろう。
足を踏み入れ者の命を瞬く間に奪い去り、大地は凍てつき、天は燃ゆる。
その厄災の名は『星喰い』。
それに意志は無い。それに感情は無い。この世界に満ち溢れる魔力が暴走して降りかかる天災そのもの。
数百年前より突如発生し始めた災禍は、瞬く間に人々の暮らしを破壊し始めた。しかし、人類も黙って見ているわけでは無い。
「壱番隊、弐番隊! 前へ!!」
軍服のような格好をした男の号令に、百人を優に超える人間が隊列を維持したまま前に出る。彼らの手には大小様々な杖が握られている。
「一斉放火!! 放て!!」
男の合図に合わせるように、一斉に魔法が空に色鮮やかな軌跡を描きながら、目の前の渦巻く暴風に向けて放たれる。
「どうだ!?」
「……ダメです!! 対象、顕在! 進行方向も未だ変わらず!!」
「くそったれ!! 今回の“星喰い“はバケモン級か!?」
「隊長! このままでは我らも呑み込まれます!! 一度退却を!!」
「ばかやろう!? どこに退けってんだ!? 俺達の後ろには五千万の国民がいるんだぞ!?」
「ッ!? しかし、このままでは!?」
「──ッ! せめて少しでも進路を変えられれば……!」
『星喰い』とは意志のない災害。悪意を持って襲いかかってくるわけでは無いため、態々相対する必要はない。だが、その進路に国があるのなら話は別だ。
しかし、このままでは部下諸共全滅は必然。判断は一瞬だった。
「……ちっ! 本国に伝令! 緊急避難警報を発令! すぐに──」
「隊長!!」
「っ何だこんな時に!?」
しかし、天は彼らを見捨ててはいなかった。
「本国より連絡が! 隣国より増援です!!」
「ッ! そうか、来てくれたか! して、どの程度の──」
「部隊ではありません! 対象の“星喰い“を第一級に指定! “到達者“による遠隔撃滅術式を発動するとのことです!!」
「──ッ!? 全軍に通達!! 撤退! 撤退だ!! 急げ!!」
「「「はっ!!」」」
部下からの報告を聞いた隊長の男は目を見開いた後に、すぐさま撤退の指示を出した。周りに居た彼らもその指示に一切の疑問を抱くこと無く脇目も振らずに走り出す。
「急げ! 死にたくなけりゃ、全力で走れ!!」
「走れ! 走れぇ!!」
「急げ新入り! 吹き飛ばされてぇのか!?」
連絡が伝わった彼らは半ばパニックになりながらも、撃滅対象から少しでも距離を取ろうとする。
そして、ソレは唐突に出現した。
「お、おいあれ!?」
「あれが噂の……!」
「何という……」
今回発生した『星喰い』を遥かに越える大きさの魔法陣が天高くに出現した。魔法陣は二重、三重と更に数を増していく。そこから漏れ出した魔力が紫電となって現れる。
「来るぞ!!」
「全員伏せろ!!」
「衝撃備えーー!!」
瞬間、天が輝き、『星喰い』をまるごと呑み込むような巨大な光の柱が落とされた。
遅れて響き渡る轟音と衝撃。その余波だけで、空はひび割れ、大地は砕かれる。
まるでこの世の終わりのようなその光景を目撃し、呆気にとられる人々。
しかし、その威力に反して、魔力の柱が放出されたのは約1,2秒。それだけの発動だったにもかかわらず、彼らを苦しめた『星喰い』の姿は跡形も無くなっていた。
「なん……という強大な」
「思ったより短かったな?」
「バカ。あれ以上やれば星ごと砕いちまうんだよ」
「まじかよ……次元が違うな」
彼らは国が誇る実力者で構成された部隊なのだが、命の危機が去った安心感からか、それとも頂きの一角を見られたことによる興奮からか、思わず私語が漏れる。
本来なら、隊長の雷が落ちるところなのだが、今に限って言えば彼も同じような心境のため周りの様子に気付いていなかった。そんな彼の元に部下が一人近づいてくる。
「……地図の書き換えが必要ですね」
「その程度で済んだのなら儲けものだ」
ぼうっとした様子で応える隊長の目の前には、半径数キロはあると思われる巨大な大穴が先程の魔法の威力を物語っていた。
「……これが、“到達者“。魔法の真髄へと至った者の力か」
◇ ◇ ◇
「遠隔撃滅術式“
「“星喰い“の消滅を確認しました」
「周辺魔素の変質、想定値内です」
「術者のバイタル、安定。問題ありません」
いくつものモニターを注視しながら淡々と彼女らが計測結果を告げていく。
“到達者“の、特に
「ふむ、ではこれにて任務を完了とする。各々ご苦労だった」
その光景を見守っていた老齢の男の言葉に、彼女らもほっと息を吐きながら脱力しそうになるが、背後で聞こえてきた声にビクッと背筋を伸ばす。
「なら、私は戻るね」
その言葉を発したのは、10代前半ほどの見た目をした、この世界には珍しい黒髪黒眼の少女だ。
「はっ! 急な任務へのご対応ありがとうございました!」
「いいよ、仕事だし」
少女に礼を告げるのは齢60に差し掛かっている男性だ。幼い少女に敬意を払う老齢の男性という光景に、普通は誰もが首を傾げるかもしれないが、この国……いや、この世界では別段珍しいことではない。
少女は去り際にオペレーターを含めた全員がこちらに敬礼を向けていることに気づくと、少し表情を崩しながらも笑みを浮かべる。
「皆もお疲れ。十分に休息を取ってね」
「「「は、はい!」」」
返事を聞いた少女は満足そうに退出していった。
「……今、笑ってた?」
「笑ったね」
「笑いましたね」
一拍置いて、司令室に黄色い歓声が響き渡った。
「私あの方が笑うの初めて見ました!」
「同期に見たこと自慢されたことはありましたけど!」
「自慢したくなる気持ち分かるなぁ」
「ふふーん、私は二回目」
「「「はあ!?」」」
一人裏切り者が居たことに彼女らの殺気が飛ぶが、本人は余裕の笑みで受け流す。
「聞いてないわよ!?」
「一体どこで!?」
「プライベートであの方をお見かけすることがあってねぇ」
「……ストーカー?」
「違うわよ!?」
「それで! あの方は何を!?」
「ふふん、それはね──」
「──ゴホン」
「「「ビクッ!?」」」
話が盛り上がり始めた彼女達だったが、男の咳払いで一瞬で我に返る。
「今は勤務中なのだが?」
「「「す、すみませんでした!!」」」
慌てて職務に戻る彼女らの背中を見つめて、男は一人ため息をつく。
(まあ、気持ちも分からなくもない)
何せ、彼女はこの世界で最も有名であり、魔法の真髄を目指す者にとっては、憧れの対象と言ってもいい。何を隠そう、幼少の頃の自分も、彼女の活躍に憧れてこの道を選んだようなものだ。初めて言葉を交わした日など興奮で何度ミスをしてしまったことか。
誰もが憧れ、その存在に恋い焦がれる。その隣に立ちたいと何人もの若人が息巻き、現実に打ちのめされてきた。
そこまで行くと普通は近寄りがたい存在になってしまうだろう。現に彼女以外の到達者はあまり融通の利かない者が多い。彼女のことは総じて慕っているらしく、彼女の指示ならば聞くが、それ以外は全くダメだ。天才とはいつの時代も共通して凡人とは歩幅が合わないものだ。
その中でも異質。恵まれた才能を持ちながら、我ら凡人にも気を遣い、寄り添おうとしてくれる者など、この先にも彼女以外現れないだろう。
最古にして最強。始まりの“到達者“──シリウス様以外は……
◇ ◇ ◇
(はぁーーーーー、めちゃくちゃ緊張した)
一人自室に戻ったシリウスは、備え付けのベッドにダイブしつつ、枕を抱きしめながら唸る。
(何で魔法一つ使うのにあんなに大々的にするのさ! ぱって終わるよ、ぱって!)
地図書き換えるほどの魔法をぱって使うな。
(それにしても……オペレーターの子の一人、この前あったよね? 小さく手を振ったら顔を真っ赤にしてそっぽ向いちゃったし、やっぱり到達者って怖がられて不便だよ〜。辞めよかな)
世界中が吃驚仰天するから止めろ。
(でも、皆期待してくれてるしなぁ。辞め辛いなぁ。他の到達者の子達も慕ってくれてるし)
少女は転生者である。地球の日本で生まれた元OLで、成績は優秀だったが、日本人らしくNOと言えない性格の持ち主だった。ちなみに神様とかには会ってない。車に轢かれて、気付いたらこの世界で赤ん坊になっていた。
この世界では『魔法』という摩訶不思議な力が普通に用いられており、それなりのゲーマーだった彼女も唱えれば炎や雷が出せるという事実に興奮し、それを高めるために努力を惜しまなかった。
それなりの苦行のはずの魔法の道を“楽しいから“という理由だけで乗り切るどころか爆走していった彼女は元々普通ではなかったのだろう。
そんな彼女にも弱点はあった。彼女は超がつくほどのコミュ障だったのだ。
魔法学院時代も、周りの人に自分から話しかけられずに、一人が好きなんですよという空気を醸し出していたら、完全に浮いてしまい、友人と呼べる間柄の人は出来なかった。既に頭角を現し始めた魔法の才能のせいで余計に周りとの溝が出来てしまった。(流石にもう大人だからある程度は可能)
さらには、年取ってヨボヨボになりたくないなぁという(女性には当たり前の)想いから気付いたら不老になっており、三千回目の誕生日からは数えるのを止めた。
遊び半分で、目に映っていた不思議な何かを弄ってたら、それが世界の理とか言う凄い何かだったらしく、一気に自分の名が世界に知られることになった。
一人だけ目立つのは嫌だったので、優秀な人材をかき集めて到達者を設立して壁にしようとしたのに、彼らは軒並み私を持ち上げ、優秀な中でも特に優秀みたいな評価になってしまった。
彼女は思う。違う、そうじゃない。確かに魔法には惹かれたけど、ここまでやるつもりはなかった。何で人類最終兵器みたいなことになってんだ?
(ふぅ、落ち着け私。幸い、この世界はどこかのアニメの世界とかそういうわけじゃない。突然人類総決戦とか始まるわけじゃないし……)
先程も言及したが、彼女は軽く三千歳を超えている。それだけ生きてきた彼女だが、在学中に学校がテロリストに襲われるとか、宇宙から侵略者が襲ってくるとか、死んだはずの友人(いないけど)が敵として現れるといった窮地に陥ったことはない。
多少のトラブルはあるが、わざわざ広げる程のことでもない。アニメや漫画を全て見ていたわけではないが、もし、こんな物語があったら、読者が速攻飽きて打ち切り待った無しだ。ほのぼのファンタジー系という線もあるが、それならそれで命の危険も少ないので構わない。
しかし、そんな彼女にも、数百年前から気掛かりがある。
(“星喰い“……今のところ私がどうこう出来ないものではないけど……)
それを抜きにしても警戒はしておいた方がいいだろう。
(まあ。いざとなったら一人でどこか別の世界にでも逃げるかなぁ)
この少女、意外にも薄情である。
そんなことを考えていた時、彼女に“念話“が届いた。
『シリウスさん。すまない、今大丈夫だろうか?』
「構わない。何か用?」
一瞬でオンオフを切り替えたシリウスは、ベッドに身体を投げ出したままだが、声色からはそれを相手に一切感じさせない。相手は自分と同じ到達者の一人だ。
『実は、新しい到達者の候補を見つけた』
「へぇ、最後は確か二百年くらい前だっけ?」
『ああ、俺はもう一目見たが、中々逸材だったぞ?』
「そう、君がそう言うのなら間違いなさそうだね」
『それでだな。その……』
「? どうしたの?」
突然言葉に詰まりだした男の言葉に私は首を傾げる。
はて、この子は結構私相手にもしっかりと意見を言える子なのだが……
『実は新人がシリウスさんに会いたいと言っている』
「ああ、なるほど。そういうこと」
私に憧れて魔法の道に進む者は数多く居る。その中には私の隣に並びたいとか、師事を受けたいという者がほとんどなのだが、中には私が気に入らないと明言してくる者もいる。
“到達者“という同じ地位に上り詰めた途端、勝負を挑まれることも初めてではない。現到達者の中にも二人いる。今“念話“を送って来ている男もその一人だったのだが、ボッコボコにしたら手のひらを返したように尊敬の眼差しを向けてくるようになった。
「分かった。日時さえ教えてくれれば合わせる」
『ま、待ってくれ! 何もアンタが出る必要はないだろ!?』
「下手に要求を拒めば後が面倒だよ?」
『こういう奴は俺に任せてくれれば!』
「君がそれを言う?」
『うぐっ!?』
かつての自分の行いを思い出したのか、男が唸る声が聞こえる。この子、尊敬してくれるのはいいんだけど、ちょっと過保護な気がするんだよね。
「それに、頂点を知ってもらった方がその子のためにもなるしね」
ぶっちゃけ、ここで任せて、影でグチグチやられる方が面倒くさい。それだったら、正面からブチのめした方が速い。
少女はちょっとバイオレンスだった。
『……分かった。そこまで言うなら任せる。時期は決まったらまた連絡を入れる』
「うん、よろしく……あ、聞き忘れてた。その子の名前は?」
『ああ、そういや言ってなかったな。
「……ん? なんて?」
『だから、
「……」
エヒトルジュエ? 何か凄い聞いたことがあるんだけど? ……いやいやまさか。あれって神様だし……いや元人間か。
……え? マジ? 本物?
『おい、急に黙ってどうした?』
「え? あ、いや、何でも無い……あの……」
『ん?』
「その子、プライド高くて傲慢で自分以外全員格下だと思ってる唯我独尊を地で行くような性格?」
『よく分かったな。知り合いか?』
「……んーん、何となくそう思っただけ。ほら君もそうだったし」
『うっ!?』
そこからは記憶が薄っすらとしていて何を話したのか覚えていない。特に当たり障りのないことを言っていた気がする。“念話“を切り、私は驚きのあまり上げていた頭を再び枕に埋める。
『到達者』『理への干渉』
これらの言葉だけでは特に気付かなかった。一瞬頭を過ぎりはしたけど、普通にありそうだったからだ。
だが、ここに新たに『エヒトルジュエ』が加わると話が変わる。
学校にテロリスト? 宇宙から侵略者? 死んだ友人(だからいねぇって)が敵として蘇る?
そんなこと起こるわけが無い。だってこの世界は、物語が始まる前の世界なのだから……
(やべぇ、ここ【ありふれた職業で世界最強】の世界だわ)
別の作品の番外編考えてたら出来た。
自分でも何を言ってるのかよくわからない。
主人公の前世は正真正銘日本生まれ日本育ちですが、転生してから数千年生きているので、本人も気付かないところでちょっと感性が歪んでます。