オリ主がオリキャラみたいになってます。
(オリ主のオリキャラ化とは一体?)
穏やかな日常。平凡な毎日。
南雲ハジメにとって、それは当たり前で、飽き飽きするもので、ありふれたものだった。
朝起きて、朝食を食べ、学校に行く。周りからの冷たい視線を無視し、何をすることもなく、一日が過ぎるのをぼーっとだらけて過ごす。
家に帰れば、両親の仕事の手伝いをしながら、好きな趣味の世界に没頭する。そんな生活を毎日サイクルのように送っていた。
それがこれからも続いていくんだと思っていた。
何の根拠も無く。何の理由も無く。過去を振り返ることで未来を決めつけていた。
しかし、ある日を堺に、ハジメの世界は一変する。
──ピキッ!
平凡な日常が壊れる時、ガラスが割れるような音がすることを知った。
『君は……南雲ハジメ?』
◇ ◇ ◇
カーン、カーン、カーン──……
「……夢か」
部屋の外から響いてくる鉄を打ち付ける音に、ハジメは目を覚ました。
ムクリと身体を起こし、目をゴシゴシと擦りながら辺りを見回す。
「……もう一年経つけど、やっぱり慣れないなぁ」
一年前までは朝起きれば、本やゲームが収納された本棚に、愛用のデスクトップ型のパソコンが置かれたデスクが目に入っていたのだが、今それは無い。
代わりにあるのが、鉄製の作業台に、その上に乱雑に置かれた工具類。その脇には黒光りする一丁の拳銃。
ベットから立ち上がったハジメは、スタスタと机に向かっていき、その銃を手に取る。
「昔だったら、大興奮だったけど……」
実際、最初に手に取ったときは多少興奮したものだが、一年経った今では特に何の感慨も抱けない。
しばらくじっと銃を見つめていたハジメは、一つため息をつくと、テキパキと外出の準備を進め、最後に腰のホルスターに銃を差し込むと扉のノブに手をかけた。
「……行ってきます。父さん、母さん」
部屋を出る間際に、ハジメは机の上に置いてある写真立てに視線を送った。
そこにあるのは、一枚の家族写真。
笑顔を浮かべる両親と、恥ずかしそうにしつつも満更でもない表情を浮かべる自身の姿。
それが、ハジメが持ち出せた唯一の
──二人はもう、どこにも居ない。
◇
「おう、ハジメ坊! 今日も精が出るな!!」
「おはようございます、ウォルペンさん」
鉄を打ち付ける音が響き渡る中、作業に取り掛かるハジメの背から口髭を生やした60代くらいの男が声をかけてきた。
彼の名はウォルペン。ハジメが働く工房で主任を務める筆頭錬成師だ。
「皆さんに技術劣る僕は、少しでも経験を積まないとダメですから」
「何言ってんだ。ハジメ坊のアイデアにはいつも驚かせられてるっての」
謙虚な姿勢を見せるハジメの姿にウォルペンは呆れるように肩をすくませる。
実際、ハジメが持つ知識や発想は彼らにとって斬新なモノが多く、ハジメ主導で既に幾つもの開発が進んでいるくらいだ。
しかし、ハジメからすれば、あくまで自身の世界の知識を自分なりに応用して話しているだけに過ぎず、それをハジメが発案したものとして扱われるのは、本人としては少し罪悪感があるのだ。
そのままいつも通りの作業に入ろうとした時、工房に来客が訪れた。
「南雲ハジメはいるか?」
「「「ッ!? エ、エヒトルジュエ様!?」」」
訪れた人物の正体に、工房の職人達から驚愕の声が上がる。
顎に届く程度の長さで切りそろえられた綺羅びやかな銀髪。肩に掛けるように着流された純白の法衣。
ハジメ達が生活する鋼の街の創設者にして、とある世界の神。
創造神、エヒトルジュエその人だった。
「騒ぐな、用があるのは南雲ハジメだけだ。こいつを少し借りるぞ?」
「は、はい!! もちろんです!! ほらっ、行って来いハジメ坊!!」
「え!? あ、は、はい!」
ウォルペンに背中を押される格好で前に出てきたハジメを一瞥したエヒトは、顎でついてこいと促すと、スタスタと歩いて行ってしまった。
それを慌てて追うハジメの後ろ姿を見送ったウォルペンを含む職人達は、大きく息を吐いた。
「び、びっくりしたぁ」
「ああ、こんなところにいらっしゃるとは思わなんだ」
「ハジメ坊に何の用だろうな?」
「そりゃ、お前……あれだろ」
──”ウロボロス”のことについてだろ。
◇
工房を出て歩くこと数分。
街並みを見下ろせる高台についたエヒトは背を向けたままハジメに問いかけた。
「……”ウロボロス”」
「ッ!?」
「奴について何か思い出したか?」
「……すみません」
「……そうか」
申し訳無さそうに俯くハジメの姿に、エヒトは特に何の感情の起伏も感じない声色で呟く。元々そこまで期待はしていなかったのだろう。
ハジメは視線をエヒトの背中から眼下の街並みに向ける。
一言で表すなら、”工業都市”という言葉が似合うだろう。
街の至る所にパイプラインが設置され、冷たさを感じるコンクリートの地面に建てられた鉄筋製の建築物。巨大な煙突からは黒煙がモクモクと吹き出している。
天井は扇状の鉄の羽に覆われ、等間隔で設置された小型の人工太陽が街を照らし出す。
そんな神聖さとは反対の様相を感じさせる都市を、人々は希望を込めてこう呼ぶ。
──人類の最終砦 【アヴァロン】
「あ、あの……」
沈黙に耐えきれなくなったハジメはおずおずとエヒトに声を掛ける。
「やっぱり、何かの間違いじゃないんでしょうか? 僕があの”ウロボロス”と関係があるなんて……」
「では、何故奴は貴様の名を呼んだ?」
「それは……」
一年と数ヶ月前。ハジメの住む世界にある一人の少女が舞い降りた。
自由気ままに世界中を飛び回る少女に、世界中が注目した。
何せ、少女はまるでお伽噺にから出てきた住人のようだったからだ。
その身一つで空を飛び、手を翳せば空が芽吹き、息を吐けば大気が躍動する。
その力を解明するため、そして独占するために、世界中が彼女に接触を図った。
幸い、彼女は好意的な性格のようで、それらに全て快く対応していった。しかし、少女の語る言葉は支離滅裂で、理解できる者など誰一人とて居なかった。
それがいけなかったのだろう。
要領の得ない発言を繰り返す少女に業を煮やしたある国の団体が、少女を無理やり拘束しようと動き出したのだ。
今となっては詳細は分からぬことだが、どうせ碌なことを考えていなかったのだろう。
それが少女の機嫌を損ねた。
今までの温厚さが嘘のような苛烈さを持って、一つ、また一つと国を滅ぼしていった。
未知なる力に、汎ゆる兵器は通用せず、文明は急激に衰退していった。
そして、ついに少女の魔の手は日本にも伸び……
『君は……南雲ハジメ?』
それが、ハジメとの初めての邂逅だった。
ありえない。そう断言できる。
少女はハジメの姿を見て、驚いたようにその名を呼んだ。
少女のことはテレビ越しで見て知っていた。
世界中の重鎮相手に気負うことなく、無邪気に笑いかける姿。そして、都市に厄災を振りまく後ろ姿を知っていた。
しかし、少女は何故かそんなハジメのことを知っていた。
そして、こう続けた。
『……ダメ。
何故、ハジメのことを
それでも、世界を滅ぼす力を秘めた存在が、たった一人の少年に殺意を向けた。
少女が特定の個人を認識する。それは少女が■■■■でなくなってから初めての出来事だった。
少女の腕がハジメの心臓を貫く寸前、突如現れたエヒトの存在がなければ、ハジメは今ここには居ないだろう。
「貴様には既に話したが、奴には感情が無い。自身に対する敵意には反応するが、基本的に他者に興味を持つことはない。そんな奴が、何故か貴様の名を呼び、無いはずの感情を顕にした」
「それは……」
「奴を一万年以上追い続けているが、初めての出来事だ。貴様はそれだけイレギュラーな存在ということだ」
だから助けた。
一切の希望も見い出せない現状を打破するキッカケになる可能性を求めて。
「まぁ、肝心の貴様が何も知らないのでは意味が無いがな」
「……すみません」
命を救ってくれた恩人に報いることの出来ないことに、ハジメの表情に影が差す。
そんなハジメの姿を横目で確認したエヒトは一つため息をついた後、口を開こうとしたとき。
「「────ッ!?」」
都市中に大音量で響き渡る警告アラート。
天井に設置された人工太陽がパトランプのように赤く点灯し、住民に緊急事態を知らせる。
『緊急警戒態勢発令!! 緊急警戒態勢発令!! 非戦闘員は直ちにシェルターに避難して下さい!! 繰り返します!! 非戦闘員は直ちにシェルターに避難して下さい!』
一泊遅れて響く避難警報に、眼下の街の住民が慌てて移動を始めるのが確認できる。
慌てるハジメを他所に、エヒトはこめかみに指を当てて”念話”を飛ばす。
「私だ。何があった?」
『エヒトルジュエ様!? 至急お戻り下さい!! 奴に……
「ッ!?──何故見つかった!?」
『分かりません! このままでは420秒後にここに到達します!!』
「防衛部隊は!!」
『ミレディさんが部隊を率いて出撃済みです!!』
「奴らに伝えろ! 倒そうとは考えるな、私が来るまで持ち堪えることを第一に行動しろと!!」
『了解しました!!』
”念話”を切ったエヒトは少し顎に手を当てて思案した後、こちらを不安そうに見つめるハジメに視線を向けた。
「エヒトルジュエ様、もしかして……」
「……奴が来た」
「ッ! 分かりました。僕もすぐにシェルターに──」
「いや、貴様は司令部のモニタールームに行け」
「……え?」
「改めてよく見ておけ。私達の敵が何なのかを」
それだけ言い残し、踵を返して走り出す。
転移は使えない。奴からの奇襲を防ぐために、都市全体に転移阻害の結界が張られているからだ。
走り去っていくエヒトの背中を、ハジメは困惑の表情で見つめていた。
いつでも頼もしさを感じる大きな背中が、今だけは何故か迷子の子供のように小さく見えたから……
◇ ◇ ◇
無数の崩れたビル群が立ち並ぶ、広大な廃墟の上空。
かつて”東京”と呼ばれた大都市の上空には、百を越える無数の黒点が立ち並んでいた。
『ミレディさん、エヒトルジュエ様からの伝言です。”倒そうとは考えるな、持ち堪えることを第一に行動しろ”とのことです』
「りょうか〜い。まぁ、端から勝てるなんて思ってないけどね」
オペレーターからの連絡に答える金髪の少女──ミレディ・ライセンは楽観的な声色とは反対に、その目はこれ以上無いくらい真剣な色を灯していた。
「ミレディ、少し落ち着け。それじゃいざという時に身体が動かないぞ?」
そんなミレディに後ろから声を掛ける黒髪の男──オスカー・オルクスはミレディに少し肩の力を抜くように諭す。
「なになにぃ? もしかしてオーくん、ミレディさんがびびってると思ってるの? そんな訳──」
「手、震えてるぞ?」
「……」
オスカーに指摘されたミレディが自身の手を見つめると、確かに小さくだが、震えているのが見て取れる。
それをぎゅっと握り込むことで無理やり抑え込む。
「大丈夫、私は大丈夫だよ」
「ミレディ……」
不安な様子を隠しきれていないミレディの様子に、何か声を掛けようとオスカーが口を開こうとしたとき。
『目標接近!!』
オペレーターからの通信に、意識を一瞬で切り替えた二人は戦闘態勢に入る。
「総員構え! 私達の目的は敵の足止め! 一瞬でも気を抜けば死ぬよ!!」
「「「了解!!」」」
『目標、速度を増し急速に接近! 距離300……200……100……来ます!!』
「……………?」
しかし、オペレーターの鬼気迫る声とは裏腹に、ミレディ率いる部隊の視界は雲ひとつ動きがない。
「オペレーターくん、こっちからは奴の姿を確認できない」
『え!? そんなはずは!? 確かにレーダーに反応が!?』
オペレーターの声に、部隊のメンバーからも困惑の声が上がる。
「反応があるのは確かなの?」
『はい!! 確かにミレディさん達と重なる座標に……』
ミレディがオペレーターと交信する中、オスカーは気を緩めること無く、周囲の状況を観察していた。
アレと敵対してもう優に千年を越えた。だからこそ知っている。アレに自分達の常識が通じないことなど。何度も経験した。理不尽とはどういうことを指すのかを。
だからこそ、気付いた。
空を見上げた瞬間、青空に浮かぶ
「上だ!!」
オスカーが叫ぶのとほぼ同時だった。
空間が歪み、それが姿を現す。
あたかも、初めからそこに居たかのように……
無慈悲に、残酷に。
──絶望が、堕ちてきた。
「避けろぉおおおおおおおおお!!」
「総員回避ッ!!」
ミレディとオスカーの声が響き渡るが、その警告は遅すぎた。
「 あ は っ 」
何も感じなかった。大気を切り裂く音も、そばを通り過ぎた空気の揺らぎも。
それでも確かに
密集する部隊の中心を、ソレは通り過ぎた。
通り過ぎた軌跡に、抉り取るような死を撒き散らしながら。
通過点に居た者達の肉体が弾け飛んだ。
そこを起点に、周囲に居た者達も身体の一部を抉られて鮮血を撒き散らす。
だが、それはただの余波だった。
「足を止めるな!!
ソレの通った軌跡を辿るように残された魔力球。
これこそが本命の一撃。
先の一撃は、ソレからすれば、攻撃にあらず。
文字通り、
ドドドドドドドドドドドドドドッ!!
天空から連鎖するように爆発していく光景は、まるで空を横切る天の川のようだった。
そんな爆発の中から、幾つかもの人影が飛び出してくる。
その中の一人のミレディは、叫ぶように声を荒げる。
「何人残ってる!?」
その声に、生き残りの戦闘員がミレディの周りに集まってくる。
その数は、20にすら届かない。
彼らを代表して、オスカーがミレディに最悪の現状を告げる。
「やられたッ! 100人以上いた戦闘員の8割以上が落とされた!!」
「……ッ!!」
オスカーからの報告に歯を食いしばるミレディは、すぐさま視線をソレに向ける。
困惑するミレディ達に追撃を仕掛ける様子もなく、ふよふよと泳ぐように宙に浮かんでいる存在を。
「おー、きれーな花火」
発された言葉は、目の前の光景に対する、幼子のような幼稚な感想だった。
女神と見間違えるような美貌。
絶えず様々な色彩に移り変わる瞳。
長い歴史に置いて、それは様々な呼び名で呼ばれた。
あるときは死を告げる死神。
あるときは終焉を齎す厄災。
人類史上初。個で完結した唯一無二の存在。
彼女を知る今の時代の子らは、畏怖や恐怖の感情を込めてこう呼ぶ。
────”
「くそったれが……!!」
「ミレディ、落ち着け! 僕らの役目は足止めだ。少しでも時間を稼ぐんだ」
「……分かってる」
今にでも魔法を放ちかねない気配を放つミレディだったが、オスカーの声に怒りを抑え込む。
そうだ、自分の役目は時間稼ぎ。幸い奴はコミュニケーションが通じないだけで、取れない訳じゃない。
「久しぶりだね、”ウロボロス”」
「……? おねーさん誰?」
「……覚えてるはずないか」
分かっていた。これがそういう存在ということは。それでも、今まで何人もの仲間を殺しておきながら、その記憶を一切保持していないことを改めて突きつけられると、抑え込んだ怒りが再び湧き上がってくる。
「どうやって私達に近づいたの? 全然気付かなかったよ」
「あ! 凄いでしょ!! この前識ったこうがくめいさい?ってのを再現してみたんだ!!」
「うんうん、スゴーイ」
笑顔の仮面を貼り付けながらも、ミレディはふざけんなと一喝したい気分だった。
光学迷彩という技術は確かにこの地に存在する。しかし、先程のあれはそんなちゃちな完成度ではなかった。
姿はもちろん、気配も魔力も完全に消失していた。レーダーには反応があったことから、人の五感に影響があるタイプなのかもしれない。
オスカーが気付いた一瞬後に、ミレディも空間の歪みを確認したが、それすらも恐らく技術の欠陥などではなく、隠れているのに飽きたとかそんな理由だろう。
少女を知らない第三者が聞けば何を馬鹿なことをと言うだろうが、少女を知る者からすれば十分あり得る話だ。
つまり、ミレディ達が無事だったのも、ただの少女の気まぐれがもたらした偶然に過ぎなかった。
(こいつが本気で私達を殺しに来てたら、もう全滅してた……!!)
冷や汗が頬を伝うが、その動揺を表に出さないように会話を続ける。
「それで、こんなところまで何か用?」
「んー?」
どうかただの気まぐれであってくれ。その場に居る全員の願いが一致するが……
「……下に何かいっぱいいるね」
(やっぱりこいつ気付いて……!?)
その願いはあっさりと覆された。
ミレディ達が住まう都市アヴァロンは、現在、東京と呼ばれていた都市の地下深くに存在する。
幾重にも施された結界により探知不可の深層都市の存在を明確に感知されていることに、ミレディ達は表情を歪める。
「人間、いっぱいいる。なら……殺さなきゃ」
「……
「彼女の言うとおりだ。
コレに嘘は効かない。だから真実で真実を隠すようにミレディとオスカーは言葉を選ぶ。
「だから──」
「何言ってるの? 君達から仕掛けてきたんでしょ?」
「……」
しかし、それは通用しない。
二人の言葉の真意に気付いたわけじゃない。もっと単純で、めちゃくちゃな理由だ。
「
再度言うが、少女に過去の記憶は存在しない。
だが、一度敵対した存在を少女の肉体と魂は忘れない。
そして、少女にとって人間は一つの枠組みであり、個体別に認識はしていない。
故に──
「殺られたら殺りかえす。ばいがえしだぁああああああああ!!」
少女は拳を突き出して、威嚇するように吠える。
その容姿と相まって可愛らしい光景なのだが、向けられた者にとっては死の宣告でしか無い。
「くそっ、面倒なことをしてくれたよね、この世界の奴ら」
「全くだね、おかげでこっちまで火の粉が飛んできた」
「………あれ、反応が微妙?」
そんな彼らの心境とは裏腹に、少女はつい先程受信した”ワード”に対して反応が薄いことに首を傾げる。
「使い方間違えた? あれ? あれれ〜?」
「……オーくん、あいつめちゃくちゃ殴りたいんだけど」
「落ち着きなって、気持ちは同じだから」
ふざけた言動を繰り返す少女に、こめかみに青筋を浮かべるミレディとオスカー。
後ろにいる部隊の生き残りも揃って同じような心境だ。
「んー? んんー? あっ! そっかそっかこっちか!! これ忘れるなんて恥ずかしいなぁ!!」
一人うんうん唸っていた少女だったが、突如閃いたと言わんばかりに表情を喜色に染めた後、後頭部をポリポリとかく。
その後、片手を持ち上げ、何かを五指で摘むような格好をとる。
「おー」「もー」「てー」「なー」
単語を発する度に、少しずつ指を右から左に動かしていく。
「何してんのあれ?」
「さあ? でも油断は──」
しないように。そう続けるはずだったオスカーの言葉は途中で途切れた。途切れざるを得なかった。
巫山戯た動きをしていた少女が。
笑みを浮かべていた少女が。
いつの間にか二人の目と鼻の先に居た。
「
それはかつて日本と呼ばれた国で、新語・流行語大賞にまで選ばれた、その国の文化の一つ。
客人などに対して、心を込めた歓待や接待やサービスをすることを意味する言葉。
だから少女は恥じた。
そうか、この国では最初に礼でもてなさなければならなかったのか。それなら、私の対応に反応が薄かったのも納得できる、と。
じゃあ……
少女の白雪のように汚れ一つ無い細腕がミレディに向けて振り下ろされる。
腕を振り下ろす。ただそれだけで、凡人の命など容易く刈り取る威力を秘めている。
ミレディも、となりで仲間が殺されかけているオスカーも全く動けない。脳が認識して、身体に命令を出すまでのラグ。その僅かなラグすら、少女にとっては欠伸が出るほどの隙でしかない。
(──あ)
少女と視線が重なった。
コンマ一秒単位で様々な色彩に移ろい続ける瞳。
そのカラフルな見た目とは裏腹に、見つめる者に何も感じさせない無機質な瞳。
喜びも、怒りも、哀しみも、楽しみもない瞳。
淡々と作業をこなすだけの機械的な瞳。
そこに写る、間抜けな表情を晒す自身の瞳。
(私、死んだ)
ミレディが唯一許されたのは、自身の死を認識することだけだった。
「──おい」
地表が爆砕した。
火山が噴火したかと錯覚するほどの爆音と衝撃で飛び出してきた男が”ウロボロス”を弾き飛ばす。
くるくると回転しながらも、体勢を整えた”ウロボロス”は不思議そうに首を傾げる。
自分が吹き飛ばされた。その
「貴様、何勝手に諦めている」
「……ぇ」
はっと我に返ったミレディの視界には、背を向けたままこちらを振り返る一人の男の姿。
「……まぁいい。それは後だ」
ぞんざいにそれだけ言い放つと、男は視線を前に戻す。
「久しぶりだな、大馬鹿野郎」
白銀の魔力に、世界が鳴動した。
舞台:地球
時代:原作開始より数年後。