change.   作:にゃんさん

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スカ―最高過ぎて、永遠リピート。


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「あー、今日の授業の担当になってしまった不運な鬼道衆です。よろしく」

「ちょ、総帥!もう少しきちんと自己紹介を...!」

 

 静まり返る無駄に広い屋舎。

 ぎょろりぎょろりとこちらを見る瞳。

 怠い。その一言に尽きる。

 

 赤と青の袴が入り混じる初々しい奴らと正直見た目は変わらない。何度か訪れた霊術院で期待に胸を躍らせる馬鹿どもの顔を見ていつも思う。なぜ、好き好んで死神になんてなりたいのか、と。自分だったら、そうだな。前世の酒を取り寄せる商いなんてどうだろう。我ながらぴったり過ぎて頬が緩みそうだ。

 

「もう、しっかりしてくださいよ、、次の鬼道衆の人員もかかってるんですからね!?」

「へいへい」

 

 いつもの空返事で返せば、副鬼道長(実質総帥)の通称パッチくん(八軒くん)がスッと前に出る。

 

「今日は授業で習わない鬼道を主に見学してもらう。印を結ぶ姿勢、霊力の循環を感じ取るように」

「「「ハイ!」」」

 

 サボらないでください、とパッチくんが口パクをしている。言いづらい。知らないフリでもしておこう。何十年か前から君をしこたま鍛えておいた自分を褒めたい。お陰で楽させてもらってるよ。内心ありがとうとパッチくんを拝んではいるが、彼の表情からするに私の顔は死んでいるんだろう。

 

「基本六十番台の鬼道を霊術院在学中はやらせません。未熟な生徒が扱うと爆発したり、霊力が枯渇したりする恐れがあるからです。今回は僕が、詠唱も含めて少し位の高い鬼道をぶつけます」

「え?やるの?」

「アナタそろそろいい加減にしてください。そうだ、鬼道長は何を考えながら鬼道を放ってますか?」

「ダチをころ...「もういいです」

 

 口開けばこれだよ。昔は素直で可愛かったのに。

 へらり、といつもの如くユルい笑いを浮かべてみせれば、パッチ君は深い溜息吐き印を結ぶ。

 君の落ち着いた冷静な詠唱は一体誰に似たんだろうか。

 気配を殺して、少し距離を取ればスラスラと彼の口が開く。

 

「...君臨者よ」

 

 ....おや?

 

「血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ」

 

 君の実力は知っているさ。私も同量の鬼道をぶつけて反鬼相殺する予定じゃん?

 しかも霊子の循環がガチなヤツだ。フラフラしながら見てる生徒もちらほら。

 若干二ヤついている彼を見て嫌でも思い出す。

 ヘラヘラした顔で容赦なく高等鬼道を放つクズのことを。

 

 ...なんか、腹が立ってきた。

 

「蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ」

 

『いつもめんどくさそうにしてるっスけど、実はちゃっかり自分の特訓も兼ねてるんでしょ?努力する様は見せたくないなんて、可愛いっスねぇ』

 

「破道の七十三 双蓮蒼火墜」

 

「縛道の八十一 断空」

 

 黒の塊が白を飲み込む。ひと際大きくなった黒は、自分にしか見えない思いがあった気がする。屋舎をいっぱいに使ったその様子はパフォーマンスかなにかと勘違いする奴もいそうだった。唖然とする生徒はきっと引いている。申し訳ないね、大人げなくて。

 

 珍しく表情筋を使ってみる。

 パッチくんに睨みつける攻撃。

 効果はいまひとつだ。

 

「こうでもしなきゃ、アナタ同量の霊圧ぶつけて終わりそうだったんでね」

 

 はい、可愛くない。

 誰だこんな風にさせたの。あ、私か。

 今更だが、パッチくんだけで十分だと思うんだよね。パッチくんならセルフで破道打って適当に消せるでしょ?仕込んだの私だし。せっかく楽する為に頑張ったのにこれじゃあ意味無いだろう。

 最後の説明やらなんやらは彼に任せよう、そうしよう。トンっと宙に足を浮かせればこれまたタイミング良く肩に手を置かれた。やたら大きなゴツゴツした手に。

 

「ちょっと、凄い音がしたから来てみたけど、って茜ちゃん?久しぶりじゃないの」

「なんだ、京楽か。飲みに行く?」

「お、いいねえ」

「ちょ、総帥!それだけは本当に駄目です!書類、が....」

 

 してやったり顔をして鬼道を放った自分が悪いのだろうか?

 いたずらっ子な笑みを浮かべる彼女は、京楽隊長の派手な着物を掴んで消えてしまった。

 俺は無意識に震える拳を掴みながら言葉を紡ぐ。

 

「皆さん、あれは悪い例ですので、どうか他の死神を困らせない人に、なってください。切実に」

 

 昔からの遅刻癖、サボり癖に、最近一つ脱走癖が追加された。

 そんな彼女だが、実は鬼道衆のトップだったりする。本当に、救えない。

 

 

 

 

「茜ちゃんさ、いくつの地区を担当してるんだい?」

「...6つ」

「はは、ボクに嘘は通じないよ?言ってごらん」

「...55」

 

 おでんの玉子をつまむ京楽の箸がつるんと滑る。熱燗を煽る茜は、現世であれば補導対象だろう。

 

「しょうがないじゃん。もう後々面倒になるのは嫌なんだ」

「少しくらい頑張ってるって見栄張ってもいいんじゃない?」

「一次結界は皆が張ってくれたもの、それに少し上乗せしてるだけ」

「...ボクは結界を張る話じゃなくて、キミの自己アピールの話をしたかったんだけど...」

「要するに、鬼道衆皆が私仕込みの結界を張ってくれるお陰で楽してるってこと」

 

 55の地区を守り切る気力と心の底から面倒事が嫌いだという彼女の大事なアイデンティティが原動力になっているんだろう。そんな針に糸を通し続けるような気の遠くなる仕事をこなせるのは悲しいことに彼女しかいないのだ。

 つるんと滑る玉子を掴み箸で運ぶ。隣の彼女は器用にうずらの玉子を小さい口に運んでいて、そんなどうでもいい光景に平和を感じてしまう自分がいる。

 

「覚えてる?ボクと浮竹でキミ()の授業見学した時のこと」

「さあ、何百年昔の話かな」

「拳で止めた彼女は凄まじかったなあ。ボクならもう少し大人しめな子をそばに置きたいけどね」

「あんな副官が?エロ親父の間違いだろうに」

「まあ、そう言いなさんな。あの子の話を出来る人間もほんの一握りなんだから」

「......」

 

 瀞霊廷からある一つの言語が消えたあの日。

 賑やか過ぎていると思っていた日常、今はおかしいほどに静かだ。

 花笠を置いた京楽の顔が良く見える。尻に敷かれるくらいが丁度良いんだろう。なんだかんだ面倒見のいい怒ってくれる人間が傍に居るのが合っている。

 

「バカ原が、、言ったんだ」

 

 きょとんとした京楽の顔に気付かなかった。

 また一つ墓場に持っていくものが増えた瞬間だ。

 

「....茜サンの鬼道を超えるまでは、ずっと特訓に付き合ってもらうからって」

 

 あの夜の少し前、いつになく真剣な顔で彼は言った。

 一生来ないじゃん、そんな日なんて。

 

 熱々のがんもを恐る恐る口に近付ければ、京楽がボソッと呟いた。

 

「....今一緒に飲んでるのバレたら、殺されるかも、、」

 

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