change.   作:にゃんさん

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7月まで長いなあ。


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 『準備をする』

 そんな作業、誰しもがすること。けれど、『死ぬほど準備をする』っていうのはあり得ないくらい難しい。そりゃ争いごとは面倒だ、関わりたくない。だが、めんどくさい、だるいと口に出しているだけでは当たり前だが巻き込まれる。やはり、死ぬほど準備するしかないのだ。

 

 流魂街の警備は?結界は?

 護廷隊隊士の配置は?兕丹坊の代わりになるような奴は?

 

 人よりちょっと敏感になってしまった霊圧知覚はビクビクと脳を揺らす。

 そんな難しい考え事の中でも、個人的な思想が捗ってしまう。

 

 そもそも、なぜ処刑に?

 一般隊士を殺して何のメリットがある?彼女に何の力がある?

 四十六室はついに頭がイカれたのか?

 

 100年前から変わっちゃいないなあ。

 溜息を吐きつつ、雲一つない空を見上げる。

 

 さあ、どこからでもおいで。そして、なるべく早く終わってくれ。

 数人の人間がひと月召されただけで助けに来るなんてね。変わり者も良い所。

 

 隣に立つパッチ君も空を見上げた。彼は私の次に気付いたようだ。

 大丈夫。そんな簡単に私の、私の鬼道衆の結界を壊せると思うなよ?

 

 

 バアアアァァンンッッ!!!!!

 

 

「...総帥」

「心配ないさ、ここで大人しく囚われてくれれば殺されはしないだろう」

 

 奇跡的に頭が良い子が居るとすれば、恐らく空を狙うだろうと勘付いていた。白道門からカチコミしようとした子が居た話を聞いた時は、鼻で笑ってしまったが。

 ビリビリと瀞霊廷を覆う球体にめり込んでいく音が聞こえる。人間の癖にこれほどの塊をぶつけてくるなんてやるじゃないかと内心褒めていた時だった。

 

 ピキンッというガラスにヒビが入るような音とともに流れ込んできた霊圧は私の思考を一瞬で止めた。

 懐かしい、おかしい、そんな訳が無い、なんで今更。

 奇跡的に頭が良い子なんて、笑わせてくれる。

 パッチくんが何かを叫んでいる内容すらも聞こえない。ここぞという時、やっぱり私は無力だ。

 

「総帥!!早く打たないと、侵入を許してしまいますよ!!」

 

 分かってる、、分かってるんだって。

 

「...っ!?縛道の三十七「吊星」!」

 

 手も口も震えて使い物にならない私を他所に、とうとうパッチくんが動いた。それでもその一瞬の遅れが彼らの味方をしたようだ。 

 侵入とともに起こった衝撃、その後バラバラに散ってしまった。

 ああ、彼らが殺されるリスクが上がってしまった。内心それどころじゃなかったが。

 

「総帥、一体どうしたんです」

「...いや、ごめん」

「今回「吊星」で先に捕える作戦は我々のみが知っていること。それを貴方が打たなかったことくらい旅禍の行動が予想外だったで終わるでしょう。けれど、今の貴方は貴方らしくない」

 

 そう、先に鬼道衆が捕えてしまえばまず他の死神との無駄な戦闘を省ける。総隊長殿がどんな策を出しているかは知らん。鬼道のプロである私達から逃れることはほぼ不可能だ。効率的に考えてその方が都合が良かった。ああ、何してんだよ自分。

 

「死ぬほど準備した結果、何も出来なかったなんて。そんなの総帥らしくないですね」

「あちゃ~、言うねぇパッチ君」

 

「何十年貴方と一緒に居ると思ってるんですか」

 そんな恋人みたいな気障な台詞を教えた覚えはないよ。まったく、上司が上司なら部下も部下ってね。

 

 バラバラに散った光の中の見知った霊圧を見つめる。

 

 ああ、懐かしいなあ。会いたいなあ。

 人懐っこい褐色の彼女を思い浮かべては、深く、深く息を吐いて目を瞑った。

 

「...生きてたんだな」

「総帥?」

「さてと、尚更早く終わらせないとねぇ」

「?どちらへ?」

 

 私のやることはいつでも一つ。面倒事を未然に防ぐこと。

 百年ぼっちだった私にとっては数時間も数日も変わらない。

 何しにやって来たんだか、今まで何をやってたんだか知りたいことだらけであるが、多分それはこれから起こる出来事と関わっているようなそんな気がしたのだ。

 

 だが圧倒的に人手が足りない。早めに手を打とう。

 

「ちょっと一番隊へカチコミしようか」

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