こちら廃品転生者回収業者です   作:ロッコス

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第一話こうして俺は殺された

その日は朝からおかしかった。

 

タイムカードを切ると、時刻は八時半で、出社時刻にはまだ三十分。

そんな時間帯だったからかオフィスは薄暗く沈み、入り口近くにある操作盤に指を当てると、柔らかな光が辺りを照らした。

 

管理職メンバーはもうすでに出社しているようで、職員室のように並べられたデスクそれぞれには、本日のノルマが山のように積もり重なっている。

俺がおかしいと気づいたのは、出入り口から対角線の場所、日当たりの良い南側奥にある俺のデスクへ足を運んだ時だった。

 

「無い。」

 

ブラインドの隙間から差し込む朝日を頬に浴びながら、俺は呆然と呟いた。

無い。デスクも置き傘も何もかも。神隠しにでもあったかのように、跡形もなく消え失せていた。

 

「はいはい…ってあなたですか。社員証置いたら出ていってくださいね。ほら早く。」

 

手違いでもあったのだろうと、総務部を訪ねたのがまずかったのか、一瞬の間に、社員証、PC、連絡デバイスなど持っていた備品を根こそぎ剥ぎ取られ、何やら武装した警備員に連行、俺は会社の外に締め出されてしまった。

腕時計を確認すると、出社時刻五分前。

 

仮に誤解が解けたとしても、今から戻るのでは遅刻確定だ。

一先ず上司に連絡、と考えポケットに入れた手にカサついた感触。手にとって見ると一枚の手紙であった。

 

————————

ハチコー君へ

取締役会全会一致で君の抹殺が決まった。

 

これを読んでいるころには、もう君はこの世にいないだろうが、

せめてもの償いに真実を伝えておこうと思う。

 

私が依頼した百十三人、あれが全ての原因だ。

私も知らなかったんだが、彼らは戦争犯罪人でね。

 

絶対に転生させないようにとリストにしてあったらしいんだが、どういうことだが部門長補佐である君のもとに渡ってしまったということだ。

 

君も知っての通り不適格者の転生斡旋は重罪。

それも百十三人となると異世界転生業務事態の存続の危機にまで及ぶ問題だ。

 

私としても、少しでも処罰が軽くなるように努力したのだが、

不要な俺TUEEと悪役令嬢が溢れて世界全体が大混乱に陥っていると、厳罰な対応を求める人間が多く、力及ばなかった。

 

本当に申し訳ないと思っている。

最後の命令を下す。

SMSR商社社員二万人。ひいては人類四十億のためだ。

散ってくれ。

 

追伸

君のご家族のことは任せたまえ。悪いようにはしない。

————————

突如響く獣のような底低い駆動音に顔を上げると、猛スピードで迫ってくる黒いバン。

 

惚けている暇はなかった。エントランスへ逃げ込むや否や、さっきまで俺がいた場所に黒い物体が轟音を立てて突き刺さる。ビル壁面が強化ガラスじゃなかったら、ミンチだった。設計者に感謝…している場合じゃない。

 

どうしてこうなった?『抹殺』?『百十三人』?

 

ハンコを押しただけで、消されるっていうのか。

 

「エントランスにて侵入者を確認、直ちに迎撃してください。」

 

警備システムの警告音に我を取り戻した俺は、物珍しげな顔で黒いバンに近寄ろうとする一般人を掻き分け、壁を背に距離を取る。辺りを見渡すと、エレベーターホールに四人、階上の受付近くにも三人。

 

全員武装している。どうやら本気らしい。

 

「東沿いの壁、紺のスーツの奴だ!」

 

野太い声の後、上下左右からこちらに向けられた銃口が火をふいた。が、そんなこと俺も予知していた。声と同時に、背後の扉を蹴飛ばし、その先の薄暗い通路へ滑り込む。早鐘のように早やる鼓動をどうにか抑え、裏口へと一歩また一歩と駆け抜けた。

 

裏口近くには誰もいなかった。守衛室のガラス窓を開け、制御盤を操作するとシリンダーが回る金属音が聞こえ、黒塗りの扉が解錠される。

そのまま裏口から裏通りへ抜けようとして————立ち止まった。

 

「ハーイ、ハチコークン。」

 

裏通りへ続くコンクリートに囲まれた無機質な空間。

そこには、ややウェーブがかったブロンズ髪に薔薇の髪飾りつけ、見開いた俺の眼差しを向日葵のような笑顔を浮かべて受け止める金蛇杖の持ち主。いわゆる女神がいた。

 

彼女は大口開けた俺に人懐っこくヒラヒラと手を振ると、クルリと向きを変えた。

そして目の前に続く裏路地へ一歩二歩歩いて、また振り向きこちらを手招きする仕草をする。

 

助けてくれるのか?さすが女神だな。

 

などとバカ正直についていったのが運の尽。案内された場所には屈強で強面な男達が待ち構えており、おまけに奴らご丁寧に武装していやがった。

 

もちろん銃口は俺に向いている。万事休すってやつだな。

 

俺の右手が真っ赤に燃え、隠されていた力が発揮、されることもなく。

俺の内に眠る妹への愛情が奇跡を呼び起こす、こともなく。

俺は面白いように簡単に捕獲され、壁に手足を固定されてしまった。

 

その後『バイバイ、ハチコークン。』という少女のような声と同時に、示し合わせたかのように一つまた一つと引き金が引かれ、焼け付くような痛みが足先から順にミシンで穴を開けるかのようにズタズタに引き裂いていった。

 

子気味良い銃声。流れ出る血液と体に突き刺さる弾丸の感覚。

『最後ぐらい名前で呼んでくれよ…って本名教えてなかったか。』。

などと朧げに思いながら、俺は意識を失った。

 

そして、この時から俺は世界から『殺された』存在として見做されるようになったのだ。

 

 




性懲りも無く新作を作ってみました。
こちらは月一更新の予定ですので気長にお楽しみください。
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