純潔ゴリラが転生オリ主をわからせる話   作:投稿するヒゲ

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感想、評価、お気に入りが嬉しくて出来たよ。
モチベが上がれば続くかも




緒方シュウが部屋を間借りているマンションは決して高級マンションというわけではない。寧ろ、メガフロート型都市として発展しているベイロンシティの中では、ボロい貧民層がこぞって住みたがる外観をした格安マンションの部類に入る。

 

それにも関わらず緒方家の家計は常に火の車であった。

それは、シュウの浪費癖とギャンブル依存症に加えて、悪魔憑きに対応する為の武器の調達、他のPMCから情報を買取り、依頼を競り落とす経費を考えれば生活費に回せる金も限られて来る。

そして、いくらPMCの仕事があるとはいえ安定した収入もなければ不定期な依頼ばかりでは生活が安定はしない。

 

だがシュウも馬鹿ではない。

生き方や人としての性格はゴミ屑以下ではあるが、ある程度の常識はまだ忘れてはいなかった。

 

緒方カンナ。

シュウにとっては最後に残された唯一の家族。

そんな大切な妹が貧しく、侘しい生活を送らせる訳にはいかない。なのでまず初めに頼ったのはご存知シュウとカンナにとっては里親であり、幼い頃に亡くした両親よりも親も同然の存在──マイルズ・モーガンその人であった。

 

事情説明を受け、頭を下げるシュウを目の前にしマイルズは腕を組み深くそれはもう深くため息を吐いた。

 

思い出されるのは懐かしい光景だった。

まだ自分の娘とシュウやカンナが一緒に住んでいて物心付く前の事。

マイルズは娘を救う為とは言えシュウ達を騙していることに罪悪感を感じながら、庭で遊ぶ三人を窓から眺めていた。

その時、シュウが徐に娘のスカートの中を覗いた。この事態に戸惑いはしたけれど、マイルズも大人だ。いくら大切な娘とは言えまだ子ども同士の遊びの範疇だと鷹を括っていた。しかしこの主人公、いとも簡単に一線を超えてくる。

 

「おい、お前の股にはなんでチ◯コ付いてないんだよ。穴が空いてるだけじゃん。おっかしーの!」

 

──馬鹿野郎!!

 

見ていた窓ガラスをぶち破り飛び出す。

 

マイルズは激怒した。

必ず、かの野卑滑稽(やひこっけい)の馬鹿を躾けねばならぬと決意した。

 

それから数多の常識を植え付ける為、娘や下の妹よりも厳しく教育してきたつもりだ。

しかし、成人し、独り立ちした息子がダメ人間となって帰って来たはがりか、金をせがんでくる始末。これには長年の苦労が露と消えたばかりか悪化している現状にマイルズは堪らず、こめかみが痛むのを抑える様に頭に手を置き口からようやく絞り出した答えがこれだった。

 

「帰って働け」

 

正に正論。ぐうの音も出ない真っ直ぐな答えにシュウは膝をついて倒れ込む。

ならせめて妹だけはマイルズと共に過ごさせて欲しい。安定した生活を、成長期の身体に栄養のある食事を、とマイルズの足元に縋り付き泣き喚いた。

 

これにはマイルズもドン引きした。

 

成人男性のプライドをかなぐり捨てた姿。土汚れが着くのを厭わず、床を転がり回り暴れる姿を見て心底一緒に住んでいる妹を憐れんだ。

どうしてこうなるまで放っておいたんだ。この馬鹿につける薬を誰か持ってきて欲しいと、悪魔である自身が神に祈らずにはいられない心境だった。

堪らず幾らか纏まった金を渡したマイルズは、金をせびるならこれっきりで縁を切る宣言をしてシュウを家から追い出した。

 

その金で冷蔵庫に保存できるだけの食料を買い、帰宅したシュウ。

妹であるカンナからは相も変わらずの冷たい視線を浴びつつも金策を立てる。

 

やがて一つの結論に辿り着く。

今まではどうしてここまで生活して来れていたのかと。自分が自身の事を一番理解している。後先考えずに使用してきた貯金。入ったばかりの給料を溶かしたギャンブルの数々。夕桐アヤノから借りている金は即座に武器調達資金と情報料(ホテル代込み)に消える。今までの金銭の利用履歴を振り返ってみても、人二人が生活していけるとは思えなかった。

 

シュウはカンナに何か知っているのかと質問をした。すると、近所でも美人と有名な妹の顔が心底歪み、まるで道端に落ちている糞を見る様な視線を向けてこう言った。

 

「今までの生活を支えてくれていたのはジュンお兄ちゃんが仕送りを送っていてくれていたからだよ。そんな事も覚えてなかったの、ゴミいちゃん」

 

これにはシュウも驚いた。

 

佐藤ジュン。普段は教会の仕事をこなしながら、裏で悪魔退治をして過ごしている。

別段、纏まった休日と言ったものを知らない彼の職業柄、休憩時間に費やす金銭は必要なかった。それをどうするか考えたジュンは、原作主人公へと貢ぐ事にした。

何か深い考えがあった訳でも、慈悲の心でもない。ただ自身の身に蓄えられていく金の使い道を何かないかと考えた時、これからいろいろと大変な目に合う被害者(キャラクター)達に楽をして欲しかっただけなのだ。

 

シュウは(ジュン)に感謝した。

これ程までに聖職者の鑑である人間が存在しただろうか? いや、存在しない。

そして、これからの金の心配は不要とばかりにシュウの金使いが荒くなっていったのは言うまでもない事だろう。

 

だからシュウは自分にとって恩人でありながら、神でもある存在のジュンを──

 

「その手を放せ小娘。そのチンチクリンな身体でジュンを穢すな」

「そっちこそ放して下さい! ジュンお兄ちゃんはオバさんみたいな糞ビッチには興味ないんです!」

 

──この暴力ゴリラシスター(シャロン)S級認定悪魔(カンナ)の間に挟まれている修羅場から助け出そうと動いた。

 

「シュウ、この女誰?」

「シュウ、この娘は誰よ?」

 

しかし、封じられていた悪魔(キサラ)元カノ(夕桐アヤノ)に回り込まれてしまった。

 

(すまん、ジュン! 俺は……無力だ)

 

こんなカオスな状況になったのは、数時間前に遡る。

それは、シュウがキサラと無事に契約を交わしてホクホク顔で事務所へとシャロンを連れて帰って来た時の事だった。

 

 

 

 

さぁて、もうシュウを待っててもいい事ないし帰りますかね。

 

窓の外からは夕陽が差し込む。それは、今日にはシュウが帰って来ても話が出来る時間が無い事を意味していた。

 

「ただいまーっと、カンナー、お客サマ一名」

「ゴミいちゃんが帰って来た」

 

俺の腕に両腕を絡ませたカンナちゃんが耳元で囁いた。

このタイミングで帰ってくるんかよ。まぁいい。この流れで俺は帰らせてもらう事としよう。

 

「では夕桐殿、カンナ、今日は世話になった。シュウも帰って来た事だし、私はお暇させてもらおう」

「えー、いいじゃん今日は泊まっていこうよお兄ちゃん」

 

ウルウルとした瞳を向け、コテンと首を傾けるカンナちゃん。どこで習ってきたんですかそんなあざとい動作。こーれ、やり慣れてます。

 

「しかし、部屋が無いだろう」

「な・ん・な・ら、私の部屋に泊まってくれてもいいんだよ?」

 

耳に唇が触れるか触れないかの近さで囁かれる。息がかかり非常にむず痒い。

俺は、カンナちゃんの顔を優しく押し返して額にトンと指を置く。

 

「許せカンナ。また今度だ」

「は、はいぃ……」

 

カンナァ!!

 

カンナちゃんはこれからも純粋な女の子でいてくれな!

じゃ、俺帰るから!

 

そんな感じで俺は玄関へと向かった。

すると、シュウ君の背後に見知った顔が……かの有名な暴力ゴリラシスターが殺気を放ってそこに居た。

 

「ヒィッ!」

 

怯えた様子でシュウ君は俺を素通りして奥へと消える。残されたのは妙に機嫌の悪いシャロンと俺だけだった。

 

「帰るぞシャロン。私達も安い拠点を探さなければならん」

「ジュン、先程のは何だ?」

 

何だとは何だ。

俺がせっかくお前の任務を手伝いに来たと言うのになぜ睨みつけているんだ。腹でも減ったのかな?

 

「何がだ?」

「あの小娘の事だ」

「あの子は緒方カンナ。シュウの妹だ」

「その妹となぜあそこまで仲が良いんだ、うん?」

 

何だなんだ?

そんなにカンナちゃんの事が気になるんすか?

まあ、星天教会のシスターとしては直感的に悪魔だと見抜いてもおかしくはない。やだなぁ。ここで戦闘とかしないでほしい。

 

「そうさな。シャロンには話していなかったが私は昔──」

「その話はもう調べがついた。昔お前が隠れて奴らを救っていた事も。そのせいでお前が四肢を失った事もだ!」

 

俺は爆風を背にマンションから飛び出した。

義足の脚力強化による瞬発力を利用して、隣のビルとビルを移り変わりに移動する。

 

しかし、シャロンの追撃が止む事なく降り注ぐ。拳と蹴りによる純粋な暴力は俺との距離を埋め、追い詰めていくには充分な効果を生み出していた。

 

そして、練習試合の時の様に組み敷かれる。両腕の義手を掴み、凄まじい力で引っこ抜かれた。

俺の義手と義足は悪魔の力によって神経と直接繋がっている。それは皮膚と同化してるも同然であり、即ち義手とはいえ引っこ抜かれてしまえば、俺の体に腕を引きちぎられるのと同じ痛みが襲うのだ。

 

「グゥ!」

 

気絶してしまいそうな程の痛みが全身を襲う。しかし、両腕をほぼ同じ様に引き抜かれてしまったが故に気絶しそうな所を瞬時に、同じ痛みで目覚めさせられる。

 

義手との接続を断たれた俺は棒立ちする事しか出来ない。義足に付いている武装は少なくとも人間にぶっ放していいものじゃないから、実質もう反撃の手立てはない。

 

「見ろ。お前はこの手が無ければただの人間にも負けてしまう雑魚だ。それにも関わらず、誰かを救う? 笑わせるなよ!」

「……何を、怒っている」

 

これ以上ない程にブチギレているシャロン。

今までどんな馬鹿をしでかしても見下しながらも何だかんだと許してくれていたのに、今日のシャロンはどこか変だ。あれか? 女の子特有のヤツか?

 

「わからないのか」

「……すまん」

 

義手を投げ捨て、壁を背にもたれ掛かっている俺をそっと抱きしめてくる。

静かに鼓動を打つシャロンの胸の音が聞こえる。不思議と安心する。幼い頃に一緒に眠ったあの頃を思い出させる。シャロンはよく夜泣きをしたから俺が慰めてあげていた。そんな弱虫がよくここまで成長したものだよ。

 

「お前が病院で両腕、両足を失った状態で眠っている時、私がどんな気持ちでいたのかわかるか?」

 

んなもん、わかる訳ありませんわ。

だってお前、俺が目覚めて開口一番に腹パン仕掛けてきたじゃん。

 

返事の出来ない俺の頭を抱き寄せ一定のリズムで撫でる。いや、お前のせいで俺気絶しかけてるんだけど? 新手のDVかな?

 

「心配、したんだぞ。お前にもしもの事があれば……私は」

 

女の涙に男は弱いと言うが、こうも肩越しに泣かれると女性経験皆無の俺には何をすれば良いのかわかんねーんだよなぁ。

 

少しの間、嗚咽が聞こえる。両腕が無い俺には抱き返す事も出来ない。

 

そして、落ち着いたのか顔を離して改めて向き直る。

 

「なのにお前ときたら、大切な身体の一部を失ってまであんなガキを助けて良い気になっている始末だ。これには貞淑な私も怒りを隠せそうにない」

 

お前が怒りを隠した事ありましたか?

というか、その瞳孔ガン開きでこっち見んの止めろ下さい。

 

そして、不意に額に柔らかな感触を感じた。

 

「私はお前の事が──なんだ。必ずお前をわからせてやる」

 

シャロンが何を言っているのか分からないまま、俺は意識を手放したのだった。




佐藤ジュン
肝心な所聞き逃す雑魚。

シャロン・ホーリーグレイル
登場する度に暴力を振るうゴリラ。そんなんだから長年相手に気持ちが伝わんないんだゾ。

緒方カンナ
オリ主の前では死ぬ程あざといムーブをかます処女ビッチ。オリ主が近くに居るだけで顔が熱くなる恋愛脳。

緒方シュウ
登場する度に最低エピソードが増えていく原作主人公。どんな時でもいつもヘタレな中途半端男。

夕桐アヤノ
キサラがシュウに好意を抱いているのを直感で察して修羅と化した元カノ。

キサラ
契約したばかりでまだまだ原作開始地点まで感情の起伏や言葉遣いが流暢ではないA級認定悪魔。無意識にシュウを好いている。

マイルズ・モーガン
この作品と原作での最大の被害者。
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