ソードアート・オンライン 憂きし心のメヌエット 作:あらびきバナナ
学校にいた時、周りの娘たちは私のことを「天才」だと言ってくる子がかなり多くいたけど私は別にそんなのじゃない
そもそもの天才の意味は「生まれつき備わったすぐれた才能、もしくはその才能を持つ人」だ
私には別にそんなものは無い。勉強だって小さい頃からコツコツとやってただけで得意って訳では無い、むしろ苦手な方だ。特に学校でやる勉強
なんで教科書を読んで問題をいくつかやれば理解出来ることを何時間もかけてやるのか、そんなことをするならもっとやるべきことがあると思う
ゲームは確かに得意だけど、やっぱりゲーセンであんなに持ち上げられるのは何故か分からない。だってあんなのただの統計と推測をひたすら続けてるだけで何も特別なことはしてない、それこそプロとやったら私なんてきっとその辺の石ころと同じだ
それに本当の天才っていうのは…それこそ明日奈みたいな娘のことを言うんだと思う。何をやってもそつなくこなして、人当たりもよく誰からも好かれる
そんな人を天才というのだ
よって、私みたいに大したことも出来ないし人当たりも良くない上に誰にも見向きもされない人を天才というのは間違ってるよ、と学校の娘達に伝えたい
2022年12月10日金曜日、12時38分。昨日、アルゴからもらった情報を元に泊まっていた宿屋から半日近くかけて主街区まで戻ってきた
人の賑わいはそこそこ、トールバーナよりかはプレイヤーが多いかもしれない
1週間ぶりに戻ってきたし、たまには美味しいご飯でも食べよう。1週間くらい堅パンしか食べてなかったからお金なら沢山あるしお肉が出るお店でもいこうかな
確かこのお店だったかな?うわぁ、なんか列が出来てる。数人程度だけど、並ぶのやだなぁ…でもお肉…食べたいし。並ぼう
…そういえば、アスナと食べたパスタ美味しかったなぁ
「…はぁ」
またやっちゃった、どうにかしてこの癖治さないと
それにしてもみんな呑気なものね、こんなご飯屋に並ぶ余裕があるとは思えない装備のやつばっか、本当に何しにここまで来たんだか
というか…日差しが眩しい。1週間森に篭ってたからかな、日差しが鬱陶しことこの上ない…そういえばこのローブ、フードが着いていたような…あった、被っとこ
…あんまり日差し遮れてない?若干眩しいんだけど、救済措置だし別にいいや
っと、ようやく順番が回ってきたみたい。さてどんなメニューがあるのかなー…うん、ステーキしかない。そりゃそうか、だってここの名前ステーキハウスだし
じゃあ1番量が少ないものを注文しよっと、ここで食べすぎて動けなくなったら元も子もないからね
来た来た、それじゃあ早速
「いただきます」
んー!!2ヶ月ぶりのお肉おいしいー!!ジューシーなのにしつこくない脂身、これなら胃にもたれなさそうだしたまになら食べるのもありかな
ソースも癖の少ない和風ソースで後味もさっぱり、でもしっかりとお肉の味を引き立ててるよう
…ステーキを食べる度に思うんだけどこのプレートの端にある野菜はなんなんだろう。お肉を頼んでるのに野菜を出すのはなんなの?しかもよりにもよってコーンとか人参とか味の主張が激しいものばかり
お肉で幸せな口を当たり前のように土足で野菜が支配しに来るとか、なに?悪魔か何か?
というか食べ終わっちゃった、いちばん少ないのにしちゃったけどもう少し多くても良かったかも
「ごちそうさまでした」
さて腹ごしらえもした事だしさっさとクエストを受けに…
「ここ!!アルゴさんから聞いた美味しいお店!!」
「ちょっ引っ張るなって、アスナ!!」
な、なんで…
「あ……ミト」
「っ!!」
「あ!!待って、ミト!!」
なんで貴方がここにいるの!?
ーーーーー
「はぁ、はぁ……はぁ」
時間は…13時32分。場所は…主街区から西に来た荒野フィールド
…また逃げちゃった。私は何度同じ過ちを繰り返すんだか…ほんとバカみたい
別に私に会いに来たわけじゃない、たまたま会っちゃっただけ…今なら分かるけど何故かあの娘を目の前にすると頭が真っ白になって逃げちゃった
何してるんだろう、私
…はぁ、落ち込んでる場合じゃない。切り替えていかないと
確かクエストはもうちょいあっちの方だったような…あったあった、さてさっさと受けて今日もいつもの宿に戻ろう
クエスト内容は確かレアドロップアイテムの納品だったけど、えっと…ん?これ、もしかして持ってる?というかこれレアドロップだったんだ、森にいる時沢山手に入れといてよかった
ん?これもしかしてあの森まで行かないといけない遠征系クエストだったのかな?…なんか裏ルート攻略みたいになっちゃったけど別にいいか
早く手に入ることに越したことはないし
納品っと…で手に入った武器は<牛骨の大鎌>か、この武器ベータの時はなかった気がする。見た目は、名前の通り骨を削って作った感じ
重さこそアイアンサイズより軽いけど攻撃力が若干下がるのか、まぁ+8強化してるアイアンサイズと無強化のこいつならどっちを使うかなんて一目瞭然か
予定外にも早くクエストも終わったことだし、近くの街の鍛冶屋で強化素材を調べてある程度強化まで済ませちゃおうかな
…移動が面倒臭い。転移結晶が手に入るのはベータの時だと5層からだったから最低でもそこまではこういう徒歩の移動が多くなる、というかそれしかないよね
まぁ街から街なら転移門を使えばいいんだけど、こういうフィールドから街へは歩くしかないのがなぁ…スカイリムみたいに馬車とか馬があればもう少し楽なんだけど
でもないものはないんだから文句を言ってる場合じゃない、そんな暇があるなら少しでも歩かないとね
17時26分、主街区から少し離れた小さな村
村に着いてすぐ武器の強化素材を確認してようやくアイアンサイズを超える攻撃力になった、牛骨の大鎌
久しぶりにMMOの素材集めで苦戦した気がする。何せ素材を落とすエネミーが小型で小回りがきいてインファイトに持ち込んでくる、鎌使いの私とは相性がめちゃくちゃ悪いやつだったし
多分これが得意なタイプの敵だったら半分の時間で終わってたと思う
まぁそんなことはさておいてもうさすがに日も暮れてきたし宿に帰らないと…
「あ、あの…!!」
「えっ?」
うわぁ、この娘ちっちゃいなぁ。8歳くらいかな?何かあったのかな
「どうしたの?迷子?」
「うん…お母さんとはぐれたの」
「そう…」
あれ?よく見たらこの子NPCのカーソルが出てる…ということはランダムで発生する系のクエストか何かなのかな
仕方ない、受けてみよう
「…どこではぐれたの?」
「あっち…」
「あっち…もしかして外のこと?」
「うん…」
なるほど、護衛系のクエストか…正直あんまり乗り気しないけど少しでもアイテムとかは貰っておきたいし
「わかった、私が探しに行ってあげる」
「ありがとう、騎士さん」
クエスト名「親探しの道」か…えっとお母さんの特徴は、軽装で槍を装備してる。あと赤いブローチをつけてるのか。報酬はお金と回復薬とランダムな素材か
まぁそんな遠くにはいないしクエスト詳細からある程度のエリアは分かるからすぐに終わるでしょ